02 目覚めました。
優しい光に目が覚める。依然ここは姫部屋だ。そして今世?の6年間の記憶が急速にフラッシュバックする。クラクラする頭を抱え身を起こす。「思い出した…私、西条 乃蒼じゃん!ゲームの登場人物で助っ人役とは体のいい、ただの貧乏くじ美少女じゃん!」ストレス解消にドはまりしていた乙女ゲームに転生だと!しかもチートのくせに単なる助っ人役?ゲームではハイスペックなのに婚約者も出て来ず、ヒロインを成長させる為だけの役割だった。まぁ、ゲームファンから可哀相キャラと言われていたし、私も思っていた。やるせなさに再び柔らかな布団に身を沈めた。そして思い出したのはバイト終わり、一人暮らしの部屋に辿りついてそのまま玄関で倒れた所まで。「やっぱり死んだのかな?」大学の授業に論文制作、生活費を稼ぐためのバイトで過労気味だった認識はある。でもまさか死ぬとは思わなかった。しかしこうして生を受けている以上、前世?の常磐 菖蒲の人生は終結したのだろう。「まぁ、私が死んだ所で悲しむ両親でもないしね。」両親はお見合い結婚だった。仕事第一の彼等にとって結婚等ステップアップの為の行為でしかない。その為、物事つく頃には父方の祖母に育てられていた。愛情深い祖母から何故あの様な息子が出来上がってしまったのか心底疑問だ。その祖母も菖蒲が高校を卒業して間もなく亡くなったのだ。大学の費用だけは両親が払ってくれているが、多分体裁を考えての事だろう。正直前世に心残りはない。「ちゃんと西条 乃蒼としての記憶があるのは有り難いな。」ドはまりしていたといても、所詮ゲームのみの知識だ。幼少期のエピソードなど数える位しか出て来ない。救いは乃蒼の立場だ。悪役令嬢でもないから、ざまぁもない。ならやる事は決まってた。「よし!面白おかしく暮らそう!」人生の目標が決まった瞬間だった。