女子高生?の日常
チャラチャラリンと静かな部屋に音楽が鳴り響く。いつもなら七時に目覚まし時計のアラームが鳴るはずなんだけど、今日はなぜが六時にアラームが鳴っている。アラームのセット間違えたのか? なんて寝ぼけた頭で思いつつ、俺、熾座 智は布団の中から手を出してアラーム停止のボタンを押した。しかし、アラームは鳴り止まない。もう一回、今度はさっきよりも強くボタンを押した。それでも、アラームは鳴り止まない。
「……なんでだ?」
不思議に思った俺は布団の中から顔を出し、目覚まし時計を確認してみると……鳴っているのは目覚まし時計ではなくスマホだった。画面を伏せておいていたのでひっくり返して確認すると電話がかかっていた、相手は……幼馴染だった。無視しようと思ったけど学校で何を言われるかわかったもんじゃないから、俺は眠い目を擦りながら渋々と電話に出た。
「……なんだよ」
「智ー、おはよー、声からして寝起きかなー?」
「……そうだけど、で、何の用?」
「用ってー、忘れたの? 昨日、約束したじゃん」
「……何の事だ?」
「何の事ってー、だから昨日……」
「……何も用がないなら俺は眠いから寝るぞ……待たな」
「あ、ちょっと待っ……」
何か言いたそうだったけど問答無用で切った。
「んぅ……」
再び眠りにつくために温もりのあるお布団の中に潜り込み、目を閉じる……すると、また幼馴染から電話がかかって来た。……いくら長い付き合いと言えども俺の安眠を妨げると許さん。文句を言う為に電話に出ることにした。
「だから、何……」
「グモォォォォォォニィィィィィィグッ! エブリワァァァァァァンッ!」
突然、俺の耳を襲う爆音。襲ったのは俺の耳だけではなく、眠気までも襲いあっという間に吹き飛ばした。
「ッッ! うるせぇ! 電話越しで叫ぶんじゃねぇよ!」
「何さー、約束を忘れる智がいけないんじゃん」
「はぁ!? だから約束って何の事だよ!」
「昨日の夜に約束したじゃん、忘れたのー?」
「忘れたも何ものそんな約束はしてねぇ! あぁもう! まだ寝てていい時間なのに! もう一回寝るから次は掛けてくるんじゃねぇぞ!」
「ちょっとー、待ってよー」
「うるせぇ! 俺は寝るぞ!」
「あっそー、そっちがその気ならー……」
何だろ、嫌な予感がする、俺の直感がそうささやいている。何が起こるか警戒していると、下の階からトトトと足音が聞こえる。その足音は階段で聞こえるようになった……まさか。
「いい加減にしてよねー、智ー」
スマホを耳に当てる赤髪の少女が入ってきた。彼女が幼馴染の明城 朱音。一人称は私。ゆるゆるとした奴。ゆるゆるしすぎて表情に出ない、今日みたいに叫ぶのは珍しい。俺達のクラスの委員長をしていて、周りもから頼りにされている。
まぁともかく、いきなりの部屋突撃に俺は呆気に取られていた。
「……どうやって家に入った」
「合鍵を使ったのー」
「あー、そういえば両親が朱音のお母さんに預けてたな」
俺は一人暮らしをしているために何かあったときのために合鍵を朱音の親に預けていた。それを悪用するとは全く……。
「合鍵を悪用して俺の家に入ったんだな?」
「だってさー、智が約束を忘れて寝ようとしてるのがいけないんじゃん」
「だから、なんだよ?! その約束って?! そんなことより、人の預けている物を勝手に使ってなくしたらどうするんだよ!」
「もういいよー、合鍵の話はー」
「もういい? 俺は今大事な話をしているのにそんなことってどういうことだよ! 勝手に使ったんだから少しくらいは反省しろよ!」
「……お腹空いたんですけどー」
「お前ぇぇぇぇぇぇっ!」
「もう、うるさいなー」
「いい加減にしろよ! してもない約束をしたって一方的に言って、早い時間にたたき起こしやがって、正直、迷惑レベルだぞ!」
と、強く言ったら、朱音が肩を振るわせ始めた。
「だ……だってー……智がいけないんだもん……グスッ……昨日の夜、明日は親が居ないから朝ご飯作ってって電話でお願いしたらー……くぅっ……いいよって言ってくれたのにー……ううっ……わぁぁぁぁぁぁん」
朱音が泣き出してしまった。朱音の言葉を聞き、俺は血の気がサァー、と引いていくのが分かった。
「あ、しまった……」
そうだ昨日、その電話の後、俺がやってるオンラインゲームでめちゃくちゃ欲しかった超絶レア武器がドロップして大喜びしたからそっちのインパクトが強くて飯作る約束なんてすっかり忘れていた。
「あ、朱音! ごめん! 本当にごめん!」
「……あはっ」
と、泣き止むと同時に変な笑いをする朱音。それを聞いた俺は「いぃッ!」と変な声が出てしまい少し身構えた、すると……
「もういいですよー……どうせ朱音は……朱音は……していない約束をしたっていう嘘をつく女の子ですよー……智が正しいんです……嘘つきの私のことなんて構わず……ほっとけばいいじゃないですかー……」
と、ネガティブなことを言い始めた。トボトボと部屋の角まで行き、壁に向かって体育座りをし、ブツブツと何かつぶやいている……やってしまった。こうなってしまった朱音は立ち直るまでかなり時間がかかる。
ちなみに朱音の家は両親が朝早くから働くことが時々あり、朝食を自分で作らなきゃいけないのだがはっきり言うと朱音は料理が出来ない。そういう日には必ず俺の所に来て飯を食べていく。今回も前日に電話が来ていたのだが、さっき説明した通りで忘れてしまった。
「あ、あのー、朱音さん?」
「どうしたのですかー……? 私のことなんてほっといてもいいんですよー……?」
「申し訳ありませんでした!」
「何を謝る必要があるのですかー……? 約束してないから大丈夫ですよー……」
朱音は俺の方を振り向いたが目に光が宿ってなかった……マズいな、謝り続けるしかないか。
「本当に許してください! 約束を忘れていた挙げ句、強くあってしまって!」
「智は何も悪くありませよー……腹ペコなまま朝練に行ってきますねー……お昼まで頑張ります……」
「ちょちょ! どこに行くのさ!」
「どこって学校ですよー……?」
「……」
「ではー……また学校でー……」
「本当に許してくれぇぇぇぇぇぇ! 何でも作るからぁぁぁぁぁぁ!」
「何でもー?……作ってくれるのですかー?」
「もちろん! 何でも作ります!」
「何でも作る」そんな言葉に反応するように朱音はこちらを振り向いた。先程まで朱音の目には光は宿ってなかったが今は目がキラキラしている。立ち直ったようだ。あぁー、良かった。……ホント、すんません。
「やったー、ありがとー、智ー」
涙目になりながら俺の足下に抱きついてきた。
「うおっ! 急に抱きつくなよ」
「それじゃー、早速ご飯にしよー」
「わかった、朱音は先にリビングに行ってろ、俺は顔洗ったり、この寝癖を直してくるからさ」
「分かったよー……本当、相変わらずすごい寝癖だねー」
「本当だよ、なんとかならないかな」
「ナイトキャップとか被って寝たらー?」
「多分、意味ない」
「なんでー?」
「寝相も悪いし、寝てる途中で勝手に脱げると思う」
「そっかー」
と、たわいのない会話をしながら、俺達はゆっくりと階段を下っていった。取り敢えず、顔を洗いに行くのとこの物凄い寝癖を何とかしよう。
「ひぃー、水がちべたい」
洗面台に来て早速、水を出して触ってみたがめちゃくちゃ水が冷たい。いくら四月になって、少しばかり暖かくなったと言えども今朝の気温は十度を余裕で下回る。もちろん、水も冷たい。……これはお目々ぱっちりだな。顔を洗おうとしたがふと、鏡に映る自分の顔が目に入った。顔に手を当てながら、そして、一言。
「相変わらず、女だなぁ」
何を言ってるのかわからないと思うが俺は男だ。男なんだけど見た目がガチで女の子なのだ。顔だけだったら良かったんだけど体つきも女の子なんですよ。うん、改めて自分でもすごいと思うわ。この見た目のお陰で朱音を筆頭とした友達から「そんな見た目してるなら女装したら」って言われて半強制的に女装させられる時があんだよね。非常に困っている。あ、でもこの見た目が嫌いなわけではないよ? 女の子扱いされるのも悪くはないし、何よりもこの見た目だと得なこともあるからね。例えば、女性限定のサービスとか男なのに受けられるしね。
顔を洗い始めたがあまりの冷たさに「ヒェッ!」と言いながら顔を洗い、物凄い寝癖を時間をかけて直した。その直後、リビングから「智ー、智ー」と俺を呼ぶ声が聞こえたので、颯爽とリビングに向かった。
「どうした朱……うぉっ! リビング寒っ!」
「ヒーターのスイッチどこにあるのー?」
リビングに来てみるとかなり寒い。やってしまった、冬場とか気温の低いときはいつもだったらヒーターをタイマーで起動するように設定してるのに今日に至って、その設定するのを忘れた。マジかよ、温かくなるまで時間かかるじゃん。とりあえず、温かくなるまで待つことに。
さっきも言ったけど俺はこの家で一人暮らしをしている。通っている学校から近いって言うのが大きな理由だけど、その他にも理由がある。俺には双子の姉と一つ下の妹がいるんだけど、俺達の中学の卒業式の三日後に俺達を置いて、急に海外へ行ってしまった。理由を聞いたけど「仕事で行くことになった」だとのこと。こうして、俺は両親がいつの間にかに建てて、海外に行った日に完成した新築の家で、姉は高校に近いマンションで一人暮らしを、妹は通っていた中学の近くに住んでいる親戚の家で暮らしている。
両親のことは正直に言うとそこまで怒ってない。何故ならば一人暮らしをして独立することもできるし、何より一人暮らしは気楽でいいからね。何気に生活能力はかなりあると思っているし、料理も得意だったりする。掃除も好きだしね。
しばらく待っているとリビングがだんだん暖かくなってきた。俺は朝食の献立を決めるために冷蔵庫へ向かい、中を確認した。中には肉や魚、様々な調味料がたくさん入っており、野菜室にはみずみずしい新鮮な野菜が入っている。この中から今日の朝食を決めよう。
「さてと、さっき言ったけど何でも作るよ、何がいい?」
「うーん、智の料理はおいしいからお任せするよー」
「え? なんでもいいの?」
「うん、なんでもいいよー」
「結局、俺任せかい、て言うかなんでもいいが一番困るんだよなぁ」
なんでもいいというので今日の気分で決めるとしよう。うーん、寒いので汁物が欲しい、ぱっと作れると言えば味噌汁かコンソメスープかな? 主食はパンかご飯、どちらかというと今日の気分はパンだな。パン合う汁物と言えば洋風のスープ、簡単に作れるからコンソメスープだな。おかずは……目玉焼きでいっか。野菜も欲しいなぁ……あっ、昨日のあまり物にイタリアンサラダがあったな、それにしよう。
「今日はパンと目玉焼き、コンソメ卵スープと昨日の残りのイタリヤンサラダだな」
「おぉー、いいねー」
早速、冷蔵庫から材料を取り出し、早速作るとしよう。
「よし、完成」
「おー、相変わらず早いし美味しそうだねー」
作り始めてから二十分、手際よくできたので思いのほか早くできた。一人で使うには大きすぎるテーブルには、焼いたトースト、目玉焼き、コンソメスープ、イタリアンサラダが二人分並べてある。うん、我ながらうまくできた。美味しそうだ。
「いただきます」
「いただきまーす。……んー、美味しいねー」
「そう、それは良かった」
食パンは買ってきたやつだからなんとも言えないけど、目玉焼き、コンソメスープとイタリアンサラダはなかなかよくできた。特にスープとサラダは一手間かけて作ったから自信作と言っていい出来だな……こんなにおいしいなら沢山作って作り置きしとけば良かった。失敗したな。そんなことはさておき俺も朱音もお腹が減っていたらしく、あっと言う間に朝食をたいらげた。
「ご馳走様、なかなかよくできたな」
「ご馳走様ー、美味しかったよー、流石、智だねー」
と、朱音からお褒めの言葉をもらった。
「純粋に褒めてもらうとやっぱり照れるなぁ」
「あれー? 照れているんですかー? 顔が赤いですよー」
「う、うっさいやい」
少し顔が熱くなった、照れていたんだなぁ、なんて思いつつ俺はテーブルに並べられた空になった食器をお盆に乗せ、シンクに運んだ。
洗い物を終えた俺は一旦部屋に戻り、学校へ行く準備を始めた、と言っても準備は制服に着替えるしかないんだけどね。朱音はと言うと今日は運動部の朝練がある日。バレー部に所属している朱音は朝練に出るため、一足先に学校へ向かった。俺は運動部にも文化部にも所属していないので慌てる必要はない。この時間はお茶を飲む時間、何気に至福の一時だ。
「ニュースはーっと」
リモコンを手に取り、チャンネルを変えた。
「今日、午前六時頃、宮都府洛川市で熊が山の麓にいる、と住民から警察に通報がありました。宮都府警は……」
特に大きなニュースはなく、熊の出没情報だけ……平和だな。
「んぁ? もうこんな時間か」
時計を見ると、時刻は八時そろそろ学校に行く時間だ。さぁ、家を出る準備をしよう。
「えっと、電気よし、ヒーターよし、テレビとガスよし、窓の戸締まりよしっと……これでいいな」
戸締まりなどを確認し、そばに置いてあった革製の鞄を持ち、ローファーを履き、家を出た。
「うーん、いい天気だなぁ」
雲一つない晴天だ。さて、学校に行くとしよう。
家から学校までは徒歩二十分、自転車で行けばもっと早いけれど俺は散歩みたいに登校するのが結構好きなんだなぁ。街自体が好きって言うのもあるけどね。
俺の住んでいる街「宮都府神城市」
料理、特にラーメンとカレー、その他にワインが有名な街で城、寺、神社などの文化財も数多くある街。「古の都」なんて呼ばれることもある。俺はこの街で生まれ育った。
そして、俺達が通っている学校「私立神城学院」
山の上に作られた高校のなんだけど、十年前までは超有名な名門女子校であり、共学になった今でも女子校だったときの風習や行事を受け継いでいる。部活が強い学校で特にバレー部と野球部が驚異の強さを誇る。確か、二つとも全国大会十二連覇中だって言ってたっけ? この二つ以外の運動部、それに文化部も大会で優勝するなど優秀な成績を残している。なんか、今思うとすごい学校に入学したもんだなぁ。
体験入学前は物凄く校則の厳しい学校かと思ったけど、いざ体験入学に行ってみると、かなり緩い校則であって驚いたことを今でも忘れない。だって、スマホは常時持ち歩きオッケーとかなどなど。必要最低限の校則しかなかった。他にも行事が多くて楽しそうだし、制服もエレガントでかなりいいデザインだったからここに入学を決めた。唯一、入学して困ったことは学校の敷地が物凄く広くて覚えるのに苦労した。今は完全に覚えたけど。
黙々と歩いていると豪華な校門が見えた。校門をくぐるとさらに豪華な校舎が見えてきた。知り合いの先輩や同級生達と挨拶を交わしながら、俺は自分のクラスである二年三組の教室へ向かった。
「おはよー」
『おはよー!』
教室の中では挨拶がこだまする。この学校はクラス替えがないので卒業までずっと同じクラスだ。個人個人に挨拶をしながら一番後ろの窓際にある自分の席に向かう。
「よっ、おはよう遥」
と、俺は前の席の女子生徒に挨拶をする。
「はい、おはよサト君」
俺のことをサト君と呼ぶ彼女は八乙女 遥。一人称は僕。俺の幼馴染で小悪魔っぽい性格の奴。……そう言えば、さっき俺は遥のことを女子生徒だの、彼女だの言ってたよな、間違いだった。遥は俺と同じ男の娘だ。ただ、どう見たって男には見えない。俺の制服は男子用のを着ているが遥は女子用の制服を着ている。俺は女の子が男の子してるのに対し、遥は女の子が女の子しているのだ。あ、あとこいつは男の娘限定のキス魔だ。抵抗はするがむなしくキスされてしまう。ちなみに俺のファーストキスはこいつに奪われた。
「ねぇ、サト君」
「ん? どうした?」
「今日さ、アカちゃんと喧嘩したの?」
「……なんでわかったんだよ」
「アカちゃんの目に泣いた痕があったからね、これはサト君と喧嘩したのかなって思ってね」
「まぁ、悪いのは俺だけどな」
「詳しくは聞かないわ。ほら僕って、空気の読める人だから」
「それ、自分で言うと信用できないぞ」
「酷いなぁ、そんなこと無いのに」
ぷくーっと可愛らしく頬を膨らます遥。そんな遥を見て、俺は指先で遥の頬を刺した。ふしゅーっと空気の抜ける音がした。すると、俺達のやりとりをみてクラスメイトが……
「ねぇ、熾座さんと八乙女さん」
「ん?」
「どうしたの?」
反応するとクラスメイトは申し訳なさそうに口を開いた。
「お二人って付き合っているの?」
「……」
「……」
その言葉を聞き、俺の体には衝撃が走り、呆気に取られてしまった。いかん、訂正しないと。
「いやいや、俺達は付……」
「そうなの、昨日から付き合っているの」
「……は?」
またしても体に走る衝撃、そして、心の中で「お前何言ってんのぉぉぉぉぉぉ!」思いっきり絶叫する。早く否定しないと。
「いやいや、付……」
「やっぱり、そうなのね! 二人は凄くお似合いよ!」
「ありがとー」
三度走る衝撃、何故この二人は俺の話を遮ってまでこんなことを言うのか俺にはよくわからん。もう一回否定することに。
「だからさ! 付……」
「えぇ! 熾座と八乙女って付き合ってんの?」
「うん、そうだよ」
「八乙女さん、羨ましいなぁ、おめでとう! 熾座君、八乙女さんを大事にね!」
「がぁぁぁぁぁぁ!」と心の中で絶叫した。何故すぐに話が拡散するんだ? とにかく遥に文句を言おう。
「おい、遥!」
「どうしたの? サト君」
「どうしたもこうしたもない! なんで嘘なんか言うんだよ!」
「嘘?」
と、知らないふりをし、首をかしげる遥。グヌヌッ、こいつ……。
「嘘じゃねぇか! 俺達は付き合ってない!」
「昨日、僕が告白したよ、忘れたの?」
「忘れたの何も告白なんかされてない!」
「あ、そうだ。キスしよっか」
「はぁ!? なんで急にそうなる!? やめろ! 顔を近づけるな!」
遥の頬を手のひらで押す。ヤバイ! とにかくヤバイ!
「さぁさぁ、僕と熱いベーゼを交わそうよ」
「やめろ! やめろって!」
いつものような光景だけど、今日は少し違う。それは……。
「テメェら! 何にこっちにスマホのカメラ向けてんだよ!」
クラスメイト全員が俺達のやりとりに対し、カメラを向けている。とある奴は連射をし、とある奴は動画で取る。
とある女子生徒は……。
「BLは至高なのよ!」
とある男子生徒は……。
「百合はいいぞ」
なんて、意味不明なことを発している。
「こいつら全員腐ってやがる! やめろ! やめてくれ!」
「いいじゃないの、減るもんじゃないし」
「確かに減らないがメンタルがえぐられる!」
「もう、素直にキスされちゃいなさい!」
と、言い俺の脇腹を突く遥。
「ヒャヒィ!」
ものの見事に弱点を突かれた。もちろん、俺の腕は瞬時に力が抜ける。そして……
「チュッ」
俺の唇はいとも簡単に遥に奪われる……それで終われば良かったんだけど。
「チュッ……んっ……」
この野郎、俺が背もたれで動けないのをいいのに舌を入れてきやがった。普通のキスからディープキスになってやがる。
「んあ……や……やめ……んはぁ……」
まだまだ続くキス。周りからは歓声が聞こえる。もちろん、連射の長さはさらに伸びる。そして、十秒にわたるディープキスは終わりを告げる。
「ふぅ、ご馳走様」
と、満足げな遥。キラキラと輝く何かが見えた気がする。
「ごめんなさいね、サト君。普通のキスじゃ面白くないと思ってね……ってサト君?」
遥がキラキラしている一方、俺はと言うと目の光が失われ、服は乱れて、口が半開きで放心状態にあった。
「ちょっ、サト君? 大丈夫?」
「……しゅ、しゅごいキスれした」
と、言い残し、机の上に倒れる俺。
「あらら、刺激が強すぎたかしら」
「あぁぁぁぁぁぁ……」
復活した俺は机に顔を押しつけながら低い声で唸っている。
「まさか、こうなるなんて。しばらく、ディープキスは封印ね」
「あー、もうお嫁に行けない……」
「サト君、それを言うなら婿に行けないでしょ?」
「そうですね……」
なんか、キスと同時に気力も吸われた気がする。いまだに無気力状態が続いている。
「おはよー」
『おはよー!』
朝練終わりの朱音が戻ってきた。
「ハルっち、おはよー」
「アカちゃん、おはよ」
「あぁぁぁぁぁぁ……」
「……唸ってどうしたのー? 智ー?」
「俺はお嫁に行けなくなったよ……」
「えー? 智の場合はお婿でしょー? ……一体何があったのさー」
「詳しくは遥に聞いてくれ……」
「ハルっちー、何があったのー?」
「実はね……」
遥は朱音に教室へ来る前のキス騒動について詳しく説明した。
「あーらら、災難だったねー」
「まぁ、いいけどさ」
「あ、復活した」
「こうなったのは誰のせいだ?」
「あはは、ごめんなさいね」
全く、本当にキスは勘弁して欲しい。おかしくなりそうだ。
「ところでさー、一時間目ってなんだっけー?」
「一時間目は数学だな」
「数学かー、今のうちに甘い物摂取しとこー」
「食い過ぎると太るぞ」
「大丈夫ー、運動してきたからー」
と言い、朱音がロッカーに向かっていった。朱音はロッカーに甘い物を少しばかり入れてるんだと、「疲れを取るのに甘い物は至高なんだよねー」とか言ってちょくちょく学校で食ってんだよな。
俺はふと、時計に目をやった時刻は八時四十九分。あと一分でホームルームが始まる。すると、ガラガラガラとドアを開ける音がした。担任の先生である紫雲先生が入ってきた。
「皆、席に着いてくれ」
と、一声。皆、慌てたように自分の席に戻る。右隣の席である朱音も急いで席に戻る。
「挨拶を頼む」
「起立ー、礼ー」
『おはようございます』
「はい、おはよう。今日は重要な話があるので、点呼はやらない」
重要な話があると切り出す紫雲先生。周りの生徒たちもざわざわとし出す。隣から朱音が……
「何だろうねー? 話ってー」
「さぁな、とにかく大事な話だろ」
と、小さな声でヒソヒソと話してきた。
「えー、今日からこのクラスに転入してくる生徒がいる」
さらにざわざわし出す二年三組の生徒達。転入生という言葉に反応したように周りからは「どんな子でしょう?」「男子かな? 女子かな?」などと転入生の話が一気に始まる。
「では、紹介しよう、入ってきてくれ」
と、紫雲先生が転入生を呼ぶと再びドアが開く。同時にクラス全員がドアの方へ向く。美しいという言葉しか浮かんでこないような銀髪、整えられた顔立ち。誰もがその風貌に見とれていた……。しかし、俺達三人を除いて。俺はその銀髪の美人を見た瞬間にびっくりしてしまった。何度も瞬きをし、目を擦った。そして、俺達は驚愕した顔でお互いを見る。そして、転入生は自分の名前を黒板に書き、こちらを振り向いた。
「今日からこのクラスでお世話になります、熾座 雅と言います、よろしくお願いします」
と、自己紹介をした。名前を聞いた途端、俺はさらにびっくりしてしまった。このクラスで誰よりも知っているその名前。このクラスで誰よりもそっくりで誰よりも見てきたその顔。俺は無意識に立ち上がってしまった。紫雲先生、クラスメイト、朱音と遥、そして転入生の熾座 雅、全員が俺の方を向き、転入生とは目が合った。そして……
「ミヤ……姉?」
と、彼女の名前を呼ぶ。
「え? 智……?」
と、彼女も俺の名前を呼ぶ。
少しの間が生まれ次に言い放った言葉は……
『なんでここに居るのぉぉぉぉぉぉ!』
お互いに指を差し合い、叫び合う。そこの声にクラスメイト全員が驚く。そして、紫雲先生が一言。
「な、なんだいきなり。二人は知り合いか?」
「い、いや、知り合いというか」
「なんと言いますか……」
『姉(弟)です。双子の』
と、声をそろえて言うとクラスメイトが色々と言ってきた。
『マジでぇぇぇぇぇぇ!?』
絶叫のあとにクラスメイトの一人が
「ねぇねぇ、隣に並んでみてよ」
と言われたので、「分かった」と言い、止めておいた髪を下ろし、雅姉さんと同じ髪型にして、隣に並んだ。
「どうだ?」
『めっちゃそっくりじゃん!!』
と、驚きの声を上げるクラスメイト達。
「これはもう、智に紹介してもらった方がいいな」
と、紫雲先生が言い、雅姉さんの紹介を任された。
「えっと、熾座 雅姉さんです」
「よろしくね」
『よろしくー』
熾座 雅姉さん、俺の双子の姉さん。一人称はボク。小中までは一緒の学校だったけど高校からは別々になった。小中の時は一緒に遊んだり、勉強を教わったりした。あと、本人には言ったことないけど料理も下手クソである。前にミヤ姉の料理を食べたことがあるけど食べた日には胃腸の調子が絶不調、胃薬が手放せなかった。
ミヤ姉の紹介が一段落つくとクラスメイト達が質問をしてきた。
「前の学校で部活はやってたの?」
「バレー部をやってたよ」
「へぇー、朱音ちゃんと一緒だね」
「そうだねー、ミヤっちとは何回か日本代表の合宿で一緒だったからねー」
「日本代表!? 凄い!」
「それに私と智、ハルっちとミヤっちは小中と一緒の学校だったからねー」
「そうよね、僕達三人はここだったけどミヤちゃんは別の高校に行っちゃったから、また一緒の学校になって嬉しいよ」
「ボクもだよ、これからまたよろしくね、ハル、アカ」
「こちらこそー」
「よろしくね」
「皆もこれから、よろしくね」
『よろしくー!』
……あれ? 俺、思いっきり蚊帳の外、ま、いっか。
「智」
俺が朱音達の輪の外で見ているとミヤ姉が声を掛けてきた。
「どうしたの、ミヤ姉」
「元気にしてたかなって思って」
「俺は元気だよ、ミヤ姉は?」
「ボクも元気だよ、また一緒の学校だね」
「だな」
「まだ、来たばかりで何もわからないから色々と教えてね」
「あぁ、いいよ」
「ありがと、またよろしくね、智」
「こちらこそ、ミヤ姉」
……やっぱり、家族の顔を見るとなんか安心するなぁ、一人暮らしだからなおさらだね。
「盛り上がっている所悪いが話を進める、席に着いてくれ」
と、紫雲先生が言った。忘れてたけどホームルームの途中だったな。
「雅、君の席は遥の右隣だ」
「わかりました」
ミヤ姉は先生の言われた席に座り、遥、朱音、俺と順番に顔を見た。遥と朱音は笑顔で返し、俺は微笑みながらその光景を見て、嬉しさと懐かしさを感じていた。
「(中学の時もこの席順だったなぁ)」
なんて、呑気に思い出に浸っているとあっという間にホームルームは終わっていた。
「起立ー、礼ー」
『ありがとうございました』
「では、各自一時間目の準備をするように」
と、紫雲先生が言うと教室はガヤガヤし始める。皆、一時間目の準備を始めた。一時間目は数学。俺も授業の準備をしますかね。
「この公式をここに当てはめると答えを求めることが出来ますが……」
授業が始まって約十分が立った。俺は数学が苦手です、数学だけではなく、勉強自体がに苦手です。聞いても分かりませんので今は右から左に聞き流し、教室の窓からグラウンドを眺めていた。グラウンドでは赤いジャージーを来た生徒達が体育をやっている。赤ってことは三年生だな。学年ごとに色が決まっていて、体操着と制服に指定された色が使われている。一年生は緑、二年生は青のジャージーだ。
一方、グラウンドでは風も吹いていないのに土埃が上がっていた。
「(……なんで?)」
おかしいな、木が揺れてないので全くの無風、なのに土埃がめちゃくちゃ立っている。ちなみにサッカーが行われていて今はラインを割ってプレイが止まっている。そして、再開されると大きな土埃が立った理由がわかった。
「!?(な、なんだ!? あの二人! めちゃくちゃ早い!)」
物凄い速度のドリブルとディフェンス。あの二人の速度が大きな土埃を立てる要因となったのだ。それにしても……
「(おかしいだろ! 確かに、乾いたグラウンドでサッカーとかすると少しは砂埃は立つけど、この校舎の二階部分と同じ高さの砂埃が人の力で立つとか……あの二人、本当に人間か!?)」
勝負の行方は水色の髪の女子生徒が青い髪の女子生徒を抜かし、ボールをゴールに叩き込んだ。物凄いスピードのシュートはいとも簡単にゴールネットを貫いた。
「(うぇぇぇぇぇぇ!! ゴールネット貫いた! マジか! あの人! ゴールネット貫くとか人間業じゃない!)」
あまりの衝撃映像に一人でびっくりしていると後ろから肩を突かれた。振り向くと朱音がこちらを見ていた。
「ん? どうした?」
「智ー、真面目に授業受けなよー、また赤点になっちゃうよー」
と、小さな声で注意を受けた。
「あーい、わかりましたよー」
俺は渋々、グラウンドから目を離し、形だけでも授業を受けるようにした。
「(早く、体育やりたいなぁ)」
体育は四時間目、一時間目も三十分しか経っていない。……まだまだ、先は長そうだ。
『ありがとうございました!』
時刻は十一時、三時間目が終わり昼の時間となった。
「うーん、やっとお昼だー、お腹空いたなー、智ー、ハルっちー、ミヤっちー、学食に行こー」
「あいよ」
「うん、行こっか」
「ごめんなさいね、アカちゃん、僕は今日、放送部の仕事なのよ」
「うんーわかったー、明日行こうねー」
「うん」
「よし、行くか」
クラスメイト達もお昼ご飯を済ませるためにずらずらと教室から出ており、遅れて俺達も学食に向かうために教室を出た。
「学食、とても楽しみだよ」
「ここの食堂は凄いよ、ミヤ姉も絶対びっくりするぜ」
「それは楽しみだね、ちなみにどんな感じなの?」
「一言で言うと全てが豪華」
「和洋中何でもござれー、高級レストランみたいで、料理人も超一流の人たちが作っているんだよー」
「へぇー」
「ミヤ姉、この先が学食だ」
豪華な扉を開けるとその先には高級レストランのような学食が現れた。
「わぁー、凄い豪華!」
「よかった、席はまだ空いているな」
「智ー、ミヤっちー、早く並ぼー」
俺達は食券を買うために列に並んだ。幸い、並んでいる人が少なかったため、すぐに俺達の番が来た。
「凄い数のメニューだね、しかも安い」
「学生のお財布に優しいリーズナブルの価格だよー」
めちゃくちゃ美味い上にほとんどの料理が五百円以下、毎日、ここで昼を食べたくなってしまう。ちなみに俺は去年、お昼はずっと学食だった。
「さーって、何にすっかな」
「私はー、天閉じ丼の特盛りセットでいいやー」
「ボクはラタトゥイユ? まさか、フランスの家庭料理が学食で食べられるなんて。これとヴォンゴレにしよう」
「俺は……海鮮豚骨チャーシューメンの並でいいや」
「智、それでだけでいいの?」
「並でも多いくらいだ」
「小食だねー」
回転寿司とか行っても多くて十二皿しか食べれなかったし、今日の朝食だって種類は多いものの量は物凄く少なかったからな。
「大きくなれないよ」
「別に大きくなりたくないからいいんでーす」
「ミヤっちー、ここで食券を出すんだよー」
「お願いします」
「かしこまりました、席におかけになってお待ちください、アナウンスでお呼びします」
「それじゃ、席に着こっか」
俺達は窓際の庭が見える席、俺達のお気に入りの席に座った。
「それにしても、この学校はとてもすごいね、お城みたいだよ」
「バレー部の設備も超凄いよー、部活の時に案内するねー」
「お願いね」
「確かにすごいけど広すぎるんだな、今は全部覚えたから大丈夫だけど入学したばかりの時は迷ってたな、覚えるのに苦労したし」
「それは大変そうだよね、ボク、覚えられるかな」
『食券番号、二十三、二十四、二十五番の方……』
「あ、できたみたいだねー、取りに行こー」
俺達は席を立ち、料理を取りに行った。
「んー、すごく美味しい!」
「だよねー」
超一流の料理人が作った料理を食べ、頬に手を当て体を動かしているミヤ姉。一年前俺も同じような反応をしたな。
「こんな料理を毎日食べられるなんて、お昼が楽しみになっちゃうよ」
「ミヤ姉、その気持ちすごくわかる」
ミヤ姉の気持ちに共感しているとスピーカーから音楽が流れ始めた。
「おっ」
「始まったねー」
「さぁー、始まりました! 一学期初めの神城学園ランチタイムレディオー! 本日は私、二年三組、八乙女遥がお送りしまーす!」
「放送を聞きながら、お昼って新鮮だね、前の学校にはなかったから」
「そうなんだー、放送部のラジオは面白いよー」
「春休みが終わり、入学式も終わり、一学期が始まりました! 一年生の皆さん! ご入学おめでとうございます! 部活に行事に! 神城学院の学院生活はとても楽しいですよ! いち早く慣れるためにわからないことがあったらどんどん先輩達にきいてくださいね! 皆さん優しく答えてくれますよ」
いつもとは違うテンションの遥、部活と言えどもここまで変えられるってすごいと改めて感心する。
「いつものハルとは全然違うね」
「放送の時はいつもそうだよー」
「では、進めて参ります! まず最初はこのコーナー! 八乙女遥の満点回答! このコーナーは生徒の皆さんのあんな質問やこんな質問を私が完璧に答えますというコーナーです! 今回は第一回目なので沢山の質問が来ています、では、さっそく参りましょー」
「いつも思うけどありきたりなコーナーだな」
「智、それは言っちゃダメ」
「ラジオネーム、ただの男子高校生さんからありがとー! 僕は昨日入学したばかりなんですがこの学校に気になる先輩がいます。美しい銀髪の彼女。ぜひ、彼女の名前と学年が知りたいです、どうか教えてください、とのこと」
「難しい質問だな」
「そうかなー?」
「うーん、銀髪の彼女ねぇ……僕が知る限り、この学園には三人ほど銀髪の女子生徒がいますね、一人は一年生だけど先輩って言っているし、残りの二人は二年生だけど一人は転入生だし。それじゃこの人しかいないね!」
「誰だろう?」
「さぁー?」
「……(イヤな予感がする)」
イヤな予感は見事に当たってしまった。そんな思うんじゃなかった。
「ズバリ! その人は二年三組の熾座 智さんだと思う!」
「やっぱりかぁぁぁぁぁぁ!」
俺の名前が放送で響き渡った時、俺はテーブルに拳を弱く叩きつけた。
「今だったら、学食で海鮮豚骨チャーシューメンの並で食べてるんじゃない?」
「お前はエスパーか!」
「ハルっち、当たってるねー」
「もし確実に会いたいなら、二年三組の教室に行ってみたらいると思うよ」
「……ねぇー、これってさー」
「朱音、何も言うな」
「これはこのあと一年生がボク達の教室に大勢集まるね」
「だから言うなって! ミヤ姉!」
「でも、智のことを気になっているのはほんの一握りだと思うよー」
「だよな」
「ちなみに同じような質問を百通以上いただいています」
『そんな馬鹿な!』
「本当です」
「聞こえてるの!」
「そんなまさか!」
「……では、続いてのお便り! ラジオネーム……」
「何だ! 今の間は! ……食べ終わったし、混んできたから取り敢えず戻るか」
「そうだねー、そだ、教室に戻る前に購買によってこー」
「そうだな、案内もかねて行くか」
「楽しみだなー」
俺達は席を立ち、食器を返却コーナーに返し、食堂を後にした。
「んー! 美味しい!」
と、スイーツを食べて満面の笑みを浮かべるミヤ姉。
「まさか、購買の中にカフェがあるなんて思わなかったよ」
「パンとかスイーツの他に駅前のカフェで飲めるようなプラペチーノとかカプチーノとかがあるんだよね」
「購買の物は全てが絶品だよー」
「だな……それにしても」
俺はミヤ姉と朱音の机の上を見て、一つの疑問を投げかける。
「二人ともまだはいるのか?」
『だって、スイーツは別腹ですし』
二人の机にはスイーツが四つずつのっている。……学食であれだけ食べたのに、まだはいるとか……どうなってんだ?この二人の胃袋は? なんて、答えが見える訳のない疑問を抱いていると。
「はぁー、疲れた」
先程のラジオでのテンションとは全く違う遥が帰ってきた。
「お疲れさん、遥。はいこれ、お前の分」
「あら、サト君ありがと」
「お疲れー」
「お疲れ様」
遥は自分の席に着くと、ドサッと勢いよく椅子に腰掛けた。
「やっぱり、学期初めは質問が多いのよね」
「ラジオもいつもより長かったねー」
「でも、ほとんどがサト君に関する質問はわかりだったわ、全体の八割はそうだったし」
「おおー、智はやっぱり人気だねー」
「またああなるのか? トラウマでしかない」
「トラウマ?」
「あー、それがね」
そう去年、俺は入学生代表として答辞を読むことになった。自分で言うのも何だがあまりの可愛さと美しさに心打たれた上級生が多くおり次の日、俺の教室に上級生が殺到したと言うことが起きたのだ。
「正直、あれ、怖かったんだよね」
「怖かったんだ」
「まぁ、あれはねー」
「どんな感じだったんだろ?」
「一言で言うと」
「一言で言うと?」
「地獄絵図」
「地獄絵図!?」
「智が男だって分かった瞬間、上級生達は悲鳴を上げてたからねー」
「うわぁ」
「どうしてこうなるんだろ……」
俺は頭を抱えて、体をくねらせていると……。
「熾座さん」
クラスメイトに声を掛けられた。
「ん? どうした?」
「あなたにお客さんよ」
「お客さん?」
と、言われ、俺はクラスメイトの指さす方向を向くと、そこには銀髪のショートカットで可愛げな少女が立っていた。
「あれ? 雛?」
「え!? 雛!?」
俺の声に反応するようにミヤ姉が高速で首を回す。
「久しぶり、お姉ちゃん達」
彼女は熾座 雛。一人称は雛。俺とミヤ姉の妹で物静かでとても可愛い子。俺と姉さんはよく雛の頭をナデナデしている。嫌がるけど嬉しそうな顔をするし、ナデナデをやめると寂しそうな顔をする。……本当可愛い妹だ。根っからのインドア派でスポーツなどは物凄く苦手。
「久しぶりだな! 元気だったか? それにしてもどうしてここに居るってわかったんだ?(ナデナデ)」
「うん、元気。さっきの放送で聞いたから」
「よかった、相変わらず可愛いね(ナデナデ)」
「ありがと、雅お姉ちゃん……うー、二人ともナデナデしないで」
「あ、悪かったな」
「ごめんね、雛」
「あ……」
少しばかりショボンとしている雛……はぁ、可愛いなぁ。
「そう言えば雅お姉ちゃん、この高校だったんだね」
「うん、昨日転入したばかりだけどね」
「そっか、嬉しい。またお姉ちゃん達と同じ学校だなんて」
「ボクも嬉しいよ」
ミヤ姉と雛が笑顔で話している……なんとも微笑ましい光景だな
「ヒナっち、おひさー」
「雛ちゃん、久しぶり」
「あ……えっと……うぅ」
と、朱音と遥に声を掛けられたが雛は恥ずかしくなり俺の後ろに隠れる。
「あららー」
雛は極度の人見知り、俺の知る限り家族以外と話すことすらできない。
「ほら、雛」
「うぅ……えっと……久しぶり……二人とも」
と、言いすぐまさ俺の後ろに再び隠れる。……恥ずかしがる雛も可愛いなぁ、なんて思っていると昼休み終了のチャイムが鳴り始めた。
「あ、雛はそろそろ教室に戻る。バイバイ、雅お姉ちゃん、智お姉ちゃん」
『智お姉ちゃん!?』
と、朱音と遥を初め、クラスメイト全員が大きな声を出す。びっくりしたのか雛は「ひっ」と言いながら三度俺の後ろに隠れる。朱音と遥は俺の目の前でこそこそと話し始めた。
「お姉ちゃんだってー、やっぱり、智は女子なんだよー」
「うん、今のは言い逃れできないよね、うん、そうよね」
「……聞こえてるんだが?」
「やっぱり、女子だったんだねぇ、もう隠さなくてもいいよー、智ー」
「違うわ」
「言い逃れはできないわよ、雛ちゃんが言っているんだし、ね? 雛ちゃん? 智お姉ちゃんは女子だよね? ね? ね?」
「ひっ……えっと……智お姉ちゃん……は……お姉ちゃんだから……」
「ほら!」
「違うわ、昔からそうなんだよ、雛は俺のことをお姉ちゃんって呼ぶ、むしろ、お兄ちゃんなんて一度も言われたことないぞ」
「そうなのー? ミヤっちー?」
「うん、雛は智のことをお姉ちゃんって呼ぶし、ボクもお兄ちゃんって呼ばれているところを聞いたことないよ」
『……』
教室がしばらく無音に包まれる。しばらくするとガッカリした声が聞こえ始めた。
「なぁーんだぁ、少し期待したのになぁー」
「俺が男子で悪かったな」
「チッ」
「おい、遥。なんだ、今の舌打ち」
「何の事かしら?」
「完全に聞こえてるのにとぼけても無駄だぞ!」
「え、えっと……雛は教室に帰る。またね、雅お姉ちゃん、智お姉ちゃん」
「おう、またな」
「バイバイ」
顔の横で小さく手を振りながら雛は教室を出て行った。……一つ一つの動作が可愛いな! 畜生!
「さて、俺達も体育の準備するかね」
「そうだね」
「それじゃぁ、私たちは更衣室に行くねー。ミヤっちー、案内するねー」
「うん、お願いね」
「また後でな」
朱音とミヤ姉は体操服を持ち、体育館の近くにある更衣室へと向かった。
なぜだか知らないけど男子更衣室がない。共学になるときに何故男子更衣室を作らなかったのか、なんて思ったりもする。男子は教室で着替えることになっている。
「さて、俺達も着替えるか」
「そうね」
俺は制服の上着とブレザーを脱ぎ始めた。すると
「……」
「どうした? じろじろ見て」
「サト君ってさ、見た目通りの体つきよね」
「まぁな」
「くびれできてるし、手脚も細いわね」
「特に気は使ってないけどな、そういう遥だって、プロホーション抜群じゃん」
「僕はプロホーションに気を使っているし、維持もしてるしね。何もしないでその体型のままのサト君が羨ましいわ」
なんてお互いの体型について話ながら俺達は素早く着替えを終え、体育館へと向かった。
「……」
「……」
「……なにこれ?」
「さぁ?」
俺と遥が体育館前廊下に着くと廊下でにらみ合っていた集団がいた。右と左に分かれていて、右には朱音とミヤ姉が。左には多分、一緒にやるクラスかな? その二組が威圧感を出しつつ、にらみ合っている。
「ねぇ、ミヤちゃん」
「あ、ハルと智」
「何があったんだ、ミヤ姉」
「それがね……」
と、俺達が体育館前廊下に来る前に起きたことを説明してくれた。
「あぁ、そういう事ね」
簡単に言うとあいつらが挑発してきて、朱音が怒ったと、なるほどね。体育は二クラス合同で行われる。これは学園長が決めたことで生徒達の闘争心を高めることが目的らしい。……ウチの学園長、争うことでお互いを高め合えると言う思想の持ち主だからなぁ、何かを決める時は必ず争いが行われる。それの影響か、この学校には負けず嫌いな人が殆どだ。このような光景もよく見る。
「で?おたくら、何者?」
「私達は今年から貴方達の体育の相手をする一組よ!」
「へぇー、そうなんだ、で? おたくらに勝つのには俺達は三年早いと」
「えぇ、そうよ! 貴方達三組が姫香様率いる栄光の一組に勝てるわけがないのよ!」
と、腕を組み、ふんぞり返っている。周りの取り巻きも「そうよ!」「その通り!」とか言ってやがる……そこは十年じゃないんだなってツッコみたかったけどスルー、何故だが取り巻きの中心に居る人物、多分そいつが姫香様だとは思うんだが……なんであんなにオロオロしてるんだ? ……あぁ、なんとなく状況が把握できたわ。だけどこいつらの態度、スゲェ腹立つ。
「ほぉ、勝つ前から偉そうなこと言ってるなぁ、相手の実力も知らないのに勝利を確信してるなんて、哀れな奴らだなぁ」
「ふん、何度でもほざくと言いわ、どう足掻こうと貴方達の負けは決まってるんですもの、天才の集団、一組が相手ではね!」
……久々にキレそうだわ、だんだんと解れてきた堪忍袋の緒、それをぶった斬ったのはこの場で一人だけ浮かんでいる人物だった。
「そうですよね! 姫香様!」
急に振られた姫香様、状況が把握できず、ポカンとしながら……
「え? えっと、うん、そうだね」
と、おっしゃった。それを聞き、プッツーンと堪忍袋の緒がキレる音が私の中で鳴り響く。
「先程からワンワンワンワン、負け犬の遠吠えを聞くのは疲れますわぁ」
「な、なんですって!」
「あらあらあら、負け犬という言葉に反応するとはその自覚がお有りのようで」
「ムッキャー! いいですよ! こちらが負け犬ではないことを証明してあげるわ! 覚悟しなさい!」
「無理無理、貴方達のような凡人が私たちに勝てるわけがありませんのよ」
「このクソ……」
と言いかけたところで他の取り巻きが彼女を押さえつける。私はフフフッと含み笑いをしていた。聞くに堪えない戯れ言を言いながら一組の方々は体育館に行ってしまった。一人遅れた姫香様はペコッとお辞儀をし、体育館に走って行った。
「あらあら、お可愛いこと」
と言いつつ、私は振り返ると後ろにいた、朱音、遥、雅姉さんは恐怖の表情を浮かべつつガタガタと震えていた。
「さ、皆さん、行きましょ? 私今回はやる気に満ちあふれているの、任せて頂戴ね」
と、いいながら体育館に入っていった。体育館前廊下に取り残された三人はお互いの顔を合わせて……
『キレた智(サト君)、人が変わってふんわりしてるのが凄く怖い』
と、言いつつ体育館の中に入っていくのであった。
「今日の体育はバスケットボールだ、さっそく始めるぞ」
と、体育の先生がいい、私たちはメンバーを選出する。ちなみに一組のメンバーは先程の男女の取り巻き四人と姫香様。それなら……
「こちらは私と朱音、遥と雅姉、それに岡本くんで行きましょう」
私たちは中央のサークルに集まり、ジャンプボールにクラスで唯一のバスケ部の岡本くんお願いしました。
「では、ジャンプボール、よろしく頼みますね、岡本くん」
「お、おう」
両者並び先生がボールを上げる。ジャンプボールを取ったのは私たち。
「朱音、パスください」
ボールを持った朱音から私にパス。受けた瞬間、一気にトップスピード。
「抜けるものなら抜いてみなさい」
私の前に立ちふさがる一組のディフェンダー、だけど……
「遅いわ」
ディフェンダーとのズレを見逃さずあっさりと抜く。二人目が出てきたがボールを右から左に変え、いとも簡単に抜く。そして、ゴール下まで一気に侵入、渾身のジャンプでゴールに叩き込む、ダンクシュートを選択した。ガコンッ! と大きな音を立て、私はリングを掴む。
リングを離し、床に着地すると体育館は沈黙に包まれていた。敵だけではなく、味方も、そして、審判をやっている先生も驚愕の表情を浮かべていた。
「あれ? どうしたのかしら?」
『どうしたもこうもないよ!』
「え?」
「150センチ代でダンクはびっくりを超えて若干のキモさを感じるよー」
「キ、キモいって……」
「智、その前のあの速さは何さ?」
「何って、走っただけよ」
「あと、何、あのドリブルの巧さ。サト君ってバスケやってたっけ?」
「やったことはないけど、見たことならあるわ」
『見ただけであの巧さなの!?』
「見ただけでできるとか、天才を超えてもはや化け物ー」
「化け……」
「見てよ! 岡本くん、膝着きながら涙流してるよ! バスケ部すらびっくりを超えて絶望させるとか化け物と言わず何というの!?」
「え、えっと、とにかくごめんなさいね」
「さ、再開するぞ」
試合は再開され、次は一組の攻撃。パスを回しつつ、攻めてくる。不意を突き、ドリブルを仕掛け朱音を抜く、スリーを打とうとし、遥がカバーに入り、ブロックに飛ぶが間に合わず。
「もらった!」
「甘いです」
私は遥の後ろで跳び、いとも簡単にブロック。そして、速攻ダンク。
「やりました」
『だからさぁ!』
「え?」
「なんで僕の後ろで跳んでブロックしてるの、どれだけ高く跳んでるのよ」
「岡本くん、見てよー。絶望して変な笑い方しながら泣いてるよー」
「な、なんでいいプレイしてるのに怒られているのかしら? と、とにかくごめんなさいね」
試合は進んでいき、私たちは順調に得点を稼ぎ、相手の攻撃を防ぎ試合を有利に進めていった。第二ピリオドで十五対四十二。点差はかなり開いていた。
すると、取り巻き達の話し声が聞こえた。
「はぁ……はぁ……くっそ、ここまでやられるとは」
「前半戦はまぐれに決まってるわ、ここから逆転できるわ、余裕よ、三組ごときに分けるわけないわ」
「そうだな、余裕だよな」
と、まだまだ余裕ぶっている様子。いいでしょう、そちらがその気なら。
「……」
「智ー? どうしたのー?」
「そろそろ、本気を出しましょうかね」
『……え?』
「はぁ……はぁ……」
「へぇー……へぇー……」
「も……もう無理」
後半戦も終わり、三十三対八十六で圧勝。後半は本気を出した俺の独壇場だった。
「勝った」
『ちょっと待って! いい加減にして!』
「へ?」
「なんであんな動きしてたのに息が切れてないの?」
「それは体力があるからな」
「体力と息切れ関係ない!」
「それに見てよー、岡本くん。なんか白くなってるよー? あれ、大丈夫なのー?」
「あれは心折れたね」
「明日になれば戻るだろ」
「そんな、楽観的な!」
言い争いを続けていると姫香様とその取り巻きがこっちに寄ってきた。
「こ……今回は勝ちを譲ってあげるわ。だけど次回からは貴方達が勝つことはないわ! 覚悟しておきなさい! それと特別に勝者の名前を聞いといてげるわ」
「……熾座だ」
「熾座さん、次回からは容赦はないわ、覚悟しておきなさい!」
なんていいながら、一組の連中は体育館をあとにする。姫香様……改め、姫香さんは俺達のところに残り。
「クラスメイトがあんなことを言ってしまって、ごめんなさい」
と、言い残し体育館を去って行った。やっぱり、あの子自身はいい子だな。
「俺達も行くか」
俺達も体育館を後にした。このあとの授業はなんか嫌だな、体育の後の授業はやる気が出ない。渋々、教室に戻り着替えることに。その途中……
「智ってさー」
「ん?」
「キレるとなんで口調変わるのー?」
と、質問されたが……
「俺にもよくわからん」
自分のことなのに本当に原因不明なんだよな。まぁ、気にしてないからいいけど。
「はぁー、終わったぁ」
「お疲れさん」
と、言いながら伸びをする朱音。残りの授業を終え、放課後となった。
「さてとー、私とミヤっちは部活に行くねー、ハルっち、智、また後でねー」
「じゃあね、智、ハルまた明日」
「おう、また明日な」
「うん、またね」
朱音とミヤ姉は鞄を持ち、駆け足で教室を後にした。
「遥は部活あるのか?」
「今日はあるね、そろそろ、行かなきゃ」
「そうか、それじゃまたあとでな」
「うん」
遥は部活へ向かい、俺は帰路につくことになった。
「今日はまっすぐ帰るかな」
通学路の途中にある本屋にでも寄っていこうかと思ったけどお財布と相談した結果、今日はどこにも寄らずに帰ることにした。
「じゃーなー」
「また明日」
俺は教室に残っているクラスメイトに挨拶をし、教室を出た。
「ただいま」
寄り道もせず、真っ直ぐ帰ってきたので早く家に着いた。取り敢えず部屋に戻り、部屋着に着替えることにした。
「えっと、時間は四時半か。少し休むか」
一時間ほど本読んだりなど自由に過ごしていたら、時刻は五時半になった。さてと、夕飯の支度を始めますか。いつも料理の際はいつも付けているエプロンを着て今日の献立を考えることにした。
「さとて、今日は手間暇を掛けてみようかな」
いつもだったらパパッと作れる物にしていたのだが今日はさらに美味しい物を食べたい気分だ。
「何にするかな、うーん」
腕を組みながら考えているとたまたま料理特集が始まり、オムライスが映し出された。
「お、いいね、今日はオムライスにするかな」
夕飯の献立決定。さっそく、調理に取りかかろう。
「よし、完成」
手間に手間を掛けたのでおかずを含め、三十分程度でできた。
「さてと、割ってみるかな」
チキンライスの上に乗っている卵を割ってみるとトロトロの卵が現れた。ふわふわトロトロのオムライスができた。さっそく食べますかな。
「いただきます。……完っ璧!」
ふわふわの卵とチキンライスの相性は抜群だな、これは手間暇掛けたかいがあった。美味しい物は黙々と食べるのが俺の食べ方。あっという間に今日の夕飯をたいらげた。
「ご馳走様でした」
さてと、食べ終わったお皿はさっさと洗いますかな。
「……はぁー」
洗い物を終えると食後のお茶の時間。やっぱり、食後の飲み物はお茶に限る。ちなみに今日は紅茶である。俺は紅茶を飲みながら時計を確認する。
「そろそろか、お茶の準備でもしておくかな」
時刻は七時ちょい過ぎ、そろそろ二人が来る時間だ。なんて思っていると。
「お邪魔するねぇ」
「サト君、来たよ」
噂をすればなんとやら、朱音と遥がウチに来た。
「おし、行くか」
俺は先程準備したお茶を持ち、俺の部屋へ向かった。
部屋に着くなり遥が……。
「サト君、あの武器ドロップしたって本当?」
と、ゲームの話を投げかけてきた。
「本当だ、見るか?」
「見せて見せて!」
と、目をキラキラさせながら俺のパソコンを付ける。
遥は俺と同じオンラインゲームをやっているユーザーだ。
「ほれ」
「わぁー、本当だ! 本当にドロップするんだ!」
と、驚きを隠せない様子。
「俺も落ちたときマジで驚いた。存在しないに等しい武器だもんな、一つのサーバーに一つしかドロップしないんじゃないのか?」
「そうだね、サト君以外のユーザーからドロップしたって情報はないし、そのぐらいの排出率なんだろうね」
「まぁー、その武器がドロップしたせいで今日の朝酷い目に会ったけどねー」
と、ロフトの上で足をバタバタしながら漫画を読んでいた朱音が皮肉交じりに言う。ちなみに朱音も同じオンラインゲームのユーザーである。
「だから、ごめんって」
「許してあげるからさー、レベリング手伝ってー、新しいジョブをやり始めたからー」
「はいよ、そんじゃやるかね」
「やろやろ!」
と言い、遥と朱音は持ってきたパソコンを起動させる。今からゲーム三昧、まだまだ夜は長そうだ。
この小説を読んでいただきありがとうございます!作者の菊理媛命と言う者です。文章にするのがうまくない初心者が書いた作品でしたがいかがでしょうか?続編も製作中なのでぜひ読んでもらえると嬉しいです!