交わらぬ2つ
洞窟のダンジョンに入って暗闇に一つの光が灯ると、俺たちの目の前に2つの道が現れた。4人で行動していた俺たちは、俺とアクア、フレアと優月葉の二手に分かれ行動することにした。
『いや~松明、俺たちに譲ってもらえてよかったな~。それにしてもー…寒くね?』
『フレア君の力が初めて活かされた感じがするわね、ほんと』
『あのー…俺の半袖問題はスルーですか?』
『…でもまさか火の神様としての力がここで活かされるとはな!』
『そうね。』
『…やっぱりスルーなんですね』
少し進むと、どこか離れたところから水の音が聞こえた。
『水の音。』
『水の音?…あ~、確かに聞こえるな~。視界も暗くて見えないし、とりあえず音の方へ向かってみるか』
『そうね』
俺たちは水の音を頼りに、暗い道をひたすら進んだ。
途中、不安になったのか、アクアが暗闇にまぎれて俺のT-シャツの裾をギュッと握っているのを感じた。男子高校生には刺激が強すぎるこの感覚に、いつか心の奥底にしまっておいたはずの煩悩が蘇ってきてしまった。
『…消すわよ』
『少しぐらいスルーしてもらえないですかね、アクアさん…』
いつも通り、俺の心の声はアクアには聞こえてしまっているようだ。しかし、今日のアクアにはいつもの凶器のような言葉に棘がなかった。
しばらくすると水の音が目の前に感じた。
『暗くてあんま見えてはいないけど、着いたみたいだな』
『グギュルルルル!!』
『『 !? 』』
『嘘でしょ…こんな役立たずと…一緒にいる時に限って』
『こんな役立たずとはなんだ!役立たずとは!!』
『だってそうじゃない!あんた手から炎なんて出せないでしょ!』
『そんなことわからないじゃないか!!!』
こうやって俺たちが言い合いをしている間にも、化け物の大きな顔はどんどん近づいてきていたのだ。「これは死ぬ」、「絶対に死ぬ。」、「神様お助け!」と叫びたい。でも、神様は俺の隣で腰をぬかせている。ダメだ、使えない。
『『はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』
次の瞬間、化け物は水の中に姿を消した。
誰が助けてくれたんだろうか。とにかく助けてくれてありがとう。
『おう!別に構わないぜ!!』
『ありがとう!本当に助かったよ…って、え??』
(俺さっき、お礼なんてしたか?)
『してないなぁ!言葉では!!』
『…ってその声はフレア!!それに優月葉も!!!』
『でもどうしてここに?』
『あのね、私たちが進んだ方の道は、4分くらい道に沿って進んだら行き止まりになっちゃて、引き返してきたんだぁ』
『で!お前たちに追いつこうと追っかけて来たら、少し離れた所で怪物みたいな声がしてな。慌ててこっちに向かってきたんだ』
『そーだったのか…でもとにかく助かったよ』
『気にしないでよ。とにかく無事でよかった。』
再会し、再び4人行動となったことに俺は少しばかりの喜びを感じた。さっきまで怯えた表情を見せていたアクアも安堵の表情を浮かべていて、俺はなぜか安心した。
『おい!あそこにあるのは…石板か?何か見える気がするんだが』
『それなら私にも見えてるわ』
『私も!』
『あそこに行ってみようぜ!!』
そこに向かうとやはり見えていたのは石板であったことが分かった。そして、そこには見たことのない言葉がかかれていた。
『なんだよこれ。何が書いてあるのか、そもそもどこの言葉なのかもわかんねーよ』
『…これは古代の神語? 確か、”マティシアド文字”だったかしら。』
『アクア、知ってるのか?この文字読めるか??』
『見たことのない単語があって全部は読めないけど…』
この後、アクアが書かれていた文字を読み上げた。
石板には 【ココ二ケ シ マジワ ナ チ ラソソゲ】と書かれているそうだ。