聖地巡礼
『さぁ!しゅっぱーつ!!お兄ちゃん、フレア、それにアクアさん!!!』
『やけにテンション高いなお前』
『全くだ。アミューズメントパークじゃないのよ、あんた』
『でも、ワクワクするじゃないかよ!』
俺たちは昨日の夜にGoggleでアクアの言っていたダンジョンがどこにあるのか検索した。最初は「絶対検索しても載っているわけないじゃん」と思っていたのだが、さすがはGoggle先生と言うべきか。しかし、こんなにも簡単にどこにあるのか記されると、隠されたダンジョンというよりはスリル満点のテーマパークと言った方が正しいのかもしれない。それにGoggleで得た情報によれば、この世界にあるのはパラレルワールドに存在するダンジョンへのゲートだけらしい。そして何よりも驚いたことはダンジョン全てが予約制であったということだ。
『まずはどこのダンジョンを攻めるつもりなんだ?どこもダンジョンも割と遠かったぞ』
『とりあえず日本にあるダンジョンゲートのところに向かおうと思うんだけど…』
『それなら、東京の秋葉原にあるゲートかな。ここから新幹線で約二時間。ダンジョン攻略にかかる時間にもよるけど、東京なら日帰りで大丈夫そうだ』
『雄也、ダンジョンは予約したのか?』
『…ふっ、私を誰だと思ってるんだ』
『ただの凡人さんでしょ?』
『じゃあ、しゅっぱーつ!!』
『だから一言多いんだってーーーー!!!』
俺、妹、フレア、アクアの四人はダンジョンへの箱舟に乗って目的地を目指した。箱舟では相変わらずの問題児二人が炎を手から出して遊びだそうとしていたため、慌てた俺とアクアがいわゆる鎮火をして難を逃れた。以前、京香と一緒にコミケにいくために新幹線に乗ったときはお互いひたすら自分の好きなアニメを見続けていたので平和だったのだが…
『ついたーー!』
『思ったよりもすぐについたな!優月葉!!』
『そうだね!それはそうとなんでお兄ちゃんとアクアさんは疲れてるの??』
『『あんた達のせいだわ!!』』
これが俺とアクアが初めて意見を揃えたタイミングであった。
秋葉原駅に着き外に出るとなんとそこには母にソックリな女の人が待っていたのだ。母を誘った人は俺を含め4人中にはいなさそうだし、新幹線もギリギリ間に合った俺たちに最寄りの駅まで車で送ってくれた母が追いつく、もしくは先に到着するわけがない。だから、たまたまソックリなだけだと思っていたのだが…
『雄也、遅かったわね~。ダンジョンの管理人であるお母さんが入口まで案内してあげるわ』
『…!? かかかかかか母さん!!?』
『何を驚いているのよ~。私の顔に何かついているかしら?』
『いや、どうやって俺たちよりも早く到着したんだよ。それに、かか母さんがダダダダンジョンの管理人っていいみわかんねぇーし!』
『私はダンジョンのテレポートで自由に移動することが出来るのよ』
17年間知ることのなかった母の謎の設定に頭が混乱した。他の3人の顔を見る限り、どうやら誰もこのことは知らなかったようだ。だが俺が一番食いついた点は、母の謎の設定ではなく、テレポートできることだった。単純に現実離れし過ぎたぶっ飛んだ話だからという理由もあるが、何よりも俺がいつも東京を往復する際にかかる何万という大金を払っていないというところに羨ましさといら立ちを同時に覚えたからだった。そんなことを考えている間にどうやら入口に到着したようだ。
『…って、ここ。メイドカフェだよねーーーー!?!?』