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99 謁見の間

 服装は冒険者の格好で良いってミルクに言われた。意外だった、王国のトップと会うのにいつも通りで良いなんて。


 でも良かった、もし首元や袖口にひらひらの付いた、貴族服みたいなのを着る事になったら、ボクなんて絶対面白くなっちゃうし。


 だけど、さすがに今着ているものではマズい、洗ってないし。着替えはトーマスの居る街の宿屋へ置いたままだ、急いで取りに戻らないと。


 宮殿領から街へ出ると、大通りは普段より多くの人々が行き交っていた。その殆どが野次馬だ、昨日ミルクとブライトさんが破壊した司教館を見に行くんだ。


 ボクも、司教館があの後どうなったのか気になるが、今はちょっと忙しい、人の波に逆らい足早に宿屋へ向かう。


「おいユーノ、見たか? 教会のお偉いさんが住んでる所だろ、あそこ」


 宿屋でボクを出迎えたトーマスも、街の住人と同じだった。今朝は野次馬の一人となっていたらしく、ニヤニヤと興奮した様子だ。


「うん、まだ見てない」

「瓦礫ばかりで何もねぇわ。お前宮殿領に居たんだろ? 何か知らねえか?」


 宿屋にいたトーマスは事件のことを知らない、ボクはただ着替えを取りに来ただけだが、何も言わず宮殿領へ戻ることもない、むしろ仲間としてトーマスも知っておいたほうが良い。


「昨日ミルクの家に行く途中でね、司教館とちょっとゴタゴタがあってね」

「なに? どういう事だ?」

「だから昨日ボクがね、ミルクの家に行くときにね、道を間違えちゃって、司教館の人達に捕まっちゃったの」

「は? つまりなんだ、この騒ぎにはお前が一枚噛んでんのかよ?」

「うん、まあ……」


 一枚噛んでいるというか、発端というか。とりあえず最初から説明した。


「なんだと? じゃあ、ユーノが捕まってから数時間のうちで、司教館はあの有様になっちまったってわけか?」

「まあ、そうだね」

「なんだそりゃ。まったく、道草ついでに壊滅するのやめてやれよ、かわいそうだろ」


 そう言いつつ、トーマスはイジワルな笑いを浮かべる。


「違うもん、やったのはミルクとブライトさんだもん、ボクなんて司教館の地下牢に入れられていたんだから」

「同じだわ、結局お前が原因じゃねーか。それにしても、まーた捕まってたのかお前、そういう趣味なのか?」

「そんなワケないでしょ! すっごく怖かったんだからっ」


 確かに最近、ちょっと攫われすぎじゃないかと思う。本当のボクはオトナなんだから、なんでも一人で出来ちゃうんだから、そう息巻いて、ついつい危険な場所に足を踏み入れてしまうのだろうか。


「しっかしお前ヤベーな、王族でも手が出せなかった教会を、たった数時間のうちに壊滅させるなんてよ。シープ族のガキとっ捕まえたらやられてましたとか、呪いか何かか? ヤベーわ」

「やべーく無いもん」


 まったく、こんな小さな子羊ちゃんをつかまえて、天災のように言わないで欲しい、そういうのとは全然ちがうから!


 トーマスは、「そういやアルッティの館からそうだったな」などとつぶやいている。でもそれは誤解だ、偶然そうなっただけで。


 今回だって、ボクはキッカケではあったが、司教館はメリーナさんの情報により自滅した。そういう今までの色々が積み重なった結果、壊滅したんだ、ボクのせいじゃない、断じて。



「どれが良いかなー」


 ボクはテーブルの上に幾つかのパーカーを並べて、吟味していた。すべてレティシアのお母さんが作ってくれたものだ。


「どれって、全部同じじゃねーか」

「違うのっ、みんな少しずつデザインが変えてあるんだから、それに一番よれてないやつが良いし」

「はーん、わかんね」


 それにしても、いつもの服装に加えて装備も整えてこいとは。きっと、ひと目で冒険者と分かる格好が望ましい、そういう事なのだろう。


「さっそく新王に呼ばれたか、まあ、これだけの事件起こしたらそうなるわな」


 今の王様は数年前に新しくなった人で、それまでの旧王様は戦争の責任を取って辞めたとか、辞めさせられたとか、勇者さまにやられたとか。


「うん、これでよし!」

「……さっきと変わんねー」


 さて、汚れのないパーカーに着替えたなら、急いで戻らなくちゃ。


「じゃあ、また行ってきます」

「おう、王宮は壊すなよ」


 宿を出て、再び宮殿領へ向かう。


 要人エリアの門はやっぱり分かりにくい、高級リゾート地の雰囲気を壊さないようにするためか、余計に緑に囲まれている。もっと分かりやすくしてくれないと、ボクが迷子になりますよ?


 門からは勇者さまのお家も見えた。昨日は司教館のことを勇者さまのお家と勘違いしたけど、改めて本物を見ると、どう見ても間違えようのない建物だった。


 正直、立派さなら司教館の方が上だ、あれはレベルが違う。大理石のなめらかな外壁に精緻な彫刻がなされて、神々しささえ漂うやり過ぎ感があった。


 しかし、目立つといえば勇者さまも負けていない、勇者さまのお家は老舗の和風旅館のような見た目だった。こっちも別の意味でやり過ぎている、この砂漠の街に和風の瓦屋根は最強に目立っていた。


 いつでも家に来て良いと勇者さまには言われている、早く行ってみたい、そして、まだ聞けずにいる色々なことを確かめなくちゃ。



 一度ミルクの家に戻り、付き添ってくれるレティシアを連れて王宮へ向かう。王宮の入口にも大きな門があって、そこで迎えに来ていたミルクとも合流した。


 王宮内はとても広い、白壁に高い天井、全体的に清く精錬された雰囲気は、ゴテゴテと綺羅びやかそうな司教館よりも好みだ。


 そんな王宮の中にもミルクの部屋があったのには驚いた。とりあえずミルクの部屋で待機して、王様の準備が整い次第、謁見の間へ移動するみたいだ。


 王族やお城について説明を受けていると、すぐに謁見の時間になってしまった。ミルクは普段と変わらないが、ボクは緊張しまくりだ、付き添いのレティシアと手を繋いで行くことにした。


 複雑な通路の先、騎士が守る扉から謁見の間へ進む。敷かれた赤絨毯の先には玉座があり、王様が座っている。こんなのアニメかゲームでしか見たことがない。


 ただ、謁見の間には変わった箇所もあった。向かって左側は開けた庭のようになっていて、陽の光も差し込み、かなり開放的な作りになっている。


 それにしても、すでに貴族やらなにやら、位の高そうな人達が沢山いる。臨時の謁見のはずなのに、こんなにも人が集まっているなんて。


 その中を緊張しながらミルクに連れられて歩く。ちらりと横を見ると勇者さまも確認できた、隣に居る美しい人は、多分ヒーラーのエリスさんだ。


「あ、ブライトさん……」


 ブライトさんだ、目が合うとブライトさんはニッコリとうなずく。今回は随分と助けてもらった、後でお礼を言わなくちゃ。


 そして、ついに王様の前まで来た。まだ三十代ほどの若い王様だが、少しも身じろぐことなく、玉座の上からジッとボクを見下ろしている。


 ど、どうしよう、めっちゃ見てる。ここで片膝を付くのだろうか? 誰かが起立、礼的な号令をかけるのか? そんなふうに戸惑っていると。


「この騒ぎは何だカイル? 何か催し物でもあるのか?」


 開口一番、ミルクは王様に向かってタメ口で言い放った。


「ミルク殿、ここではべテリウス王と申されよ」


 玉座の横に控える品の良いお爺さんに注意された、さすが山賊冒険者だ。


「別にいいだろレスターク宰相、今日は正式な集まりでもないんだ」


 王様とミルクは旧知の中だとさっき聞いたが、それにしても物怖じしないミルクにハラハラする。


「構わぬ、突然呼び出したのだ。よく来てくれたミルク、そしてユーノよ」

「それで、コイツらは?」

「なに、第二の勇者が現れたとなれば、こうなるのも仕方あるまい」

「フ、暇な奴らだ」


 第二の勇者? 王様は何を言っているんだ? ここに集まった人達はボクをそういう目で見ているのか? だから見物人がこんなに。


 今日は司教館の事件について報告するために来たはずだ、しかし、それよりみんなの興味はボク自身に集まっている。


「では早速だが、冒険者ユーノ、此度の事件について尋ねる」


 ボクへの質問は王様直々ではなく、隣に控えている品の良いお爺さん、レスターク宰相っていう人がやるみたいだ。王様はただそれを聞いている。


 よ、よし、緊張してもハキハキ発言できるように、さっきミルクの部屋で発声練習もしてきた、噛まないように元気よく答えるんだ。


 と、思ったけど、その必要はまったく無かった。なぜならレスターク宰相が読み上げる事に、ただ「はい」と答えていれば良かったから。


 ミルクとブライトさんによって、予め事件の成り行きは報告されていたようだ、ボクはただ質問にうなずき、確認を取ればいいだけだった。


 そんな事で司教館の質問はすぐに終わってしまった、本当ならこれでボクの出番は終わりのはずだが。


 すると、今度は王様が口を開いた。


「ではもう一つ聞こう、そなたは勇者セシルと同じ運命を背負う者か?」

「えっ?」


 あっ、王様に向かって「えっ」とか言っちゃった。でもやっぱり、王様含めて、えらい人達が本当に聞きたいのはボクのことらしい。


「セシル殿と同じく、転生者なのかと聞いている」


 レスターク宰相が、もう少し分かりやすく説明してくれた、ボクがどうやってこの異世界に来たのか知りたいんだ。


「い、いえ違います、勇者さまは転生者ですけど、ボクは転移者です」

「ふむ、それは何か、申してみよ」


 再び王様に質問される。全部言ってしまった方が良い、そもそも、こんなにえらい人達に囲まれて、ウソをつく度量なんてボクには無い。


「は、はい、勇者さまは元の世界、地球って所で、トラックにはねられたか何かして死んじゃって、魂だけがこの世界で生まれ変わったと思うんですけど、ボクの場合はそのまま存在がスライドしてきたっていうか、いえ、元はVRMMOという仮想世界だったんですけど……」


 しどろもどろだけど、緊張してちょっと矢継ぎ早だったけど、一生懸命説明した。言い終わったボクは少し息が上がっていたほどだ。


「ぶいあー……る? レスターク、分かるか?」

「いえ、何の事かまったく理解できません。ミルク殿、分かりやすく言ってもらえるか?」

「私に分かるわけ無いだろ」


 なんだか謁見の間が変な空気になっちゃった、やっぱりボクは牢屋行きでしょうか?


「良くは解らぬが、勇者とは違うと言うことだな?」

「はっはい、そうです」


 詳しい転移の経緯はボクにも分からない、でも王様は、勇者さまとボクが違うという事が確認できれば、それで良かったみたいだ。


「であるなら最後の質問だ、そなたの実力がどれほどのものか、一つ私に見せてはくれぬか?」


 ボクの実力? でも、ボクの能力はバフがメインだ、そのバフも制御できないパッシブスキルのため、検証のしようがない。まさか禁忌技のポイズンブロウを王様の前で披露するわけにもいかないし。


「陛下、後は私が」

「うむ」


 レスターク宰相はそう言うと、ボク達の正面へ躍り出る。


「異界からの訪問者、我々にとって一番危惧しなければならぬのはその力だ。そうであるなミルク殿?」

「まあ、そうだな」

「うむ、そこで我々はユーノ殿の力を把握する必要がある、そのためにセシル殿、力をお貸しいただきたい」


 へっ? 勇者さま?


「同じ異界の者同士でなくては実力は測れまい、我々では敵わぬだろうからな」


 ええっ? いやいやすごい誤解です、勇者さまと戦うなんて勝負にもならない、ボクなんて勇者さまの指パチリの技一つで、フッて崩れ落ちちゃうよ、フッて。


「待て、対戦相手は私が決めさせてもらう」

「ミルク殿、しかし確実に実力を測るには」

「優乃の実力はよく分かっている、安心しろ、その力を最も引き出せる者を指名させてもらう」


 そこまで言うのならと、レスターク宰相も引き下がった。


 良かった、さすがに勇者さまと戦ったら、検証も何もなく一瞬でやられて終わってしまう。ミルクならボクに良くしてくれるはずだ、後は任せよう。


 でもやっぱり、ミルクはこうなることを予見して、いつもの装備で来いって言ったんだ。



 謁見の間で戦うなんて考えもしなかった、隣接している開けた場所で試合をするらしい、えらい人達もボクの実力を見極めようと、各自移動している。


 そして、ミルクが選んでくれた対戦相手も前に出てきた。


 謁見の間に無数にある大きな柱、その柱にも一人ずつ護衛の騎士が居る。もはや風景の一部と化しているが、ミルクが指名したのはそんなモブ騎士だ。


 王様の近くには、かっこいいサーコートを装着した立派な騎士も居るが、それに比べるとモブ騎士は目立たず、とにかく地味だ。多分下級騎士だろう。


 ミルクがこのモブ騎士を指名した意味、それはボクに華を持たせてくれるためだ、王様や勇者さまの見ている前で恥をかかないようにと。


 観衆の中からは、「こんな子供が本当に戦えるのか?」「異界の者というが、どこから見てもシープ族ではないか」という声も聞こえてくる。


 しかし、このモブ騎士が相手ならボクも良いところが見せられる、ボクの戦闘能力は大人にだって負けない、きっとみんな驚くぞ。


 かっこいいサーコートの騎士が審判をする、すっごい威圧感で、実際偉い人なんだろう。ボクとモブ騎士の間に入り、簡単な説明を始めた。


「これより略式だが御前試合を始める、降参するか続行不能で敗北となる、また、確実な有効打が認められたら勝利だ、殺めることは許さん、良いな?」


 この試合は何かを競うものではない、ボクの実力がどれほどあるか測るものだ、もし大技を披露したいなら空に向かって撃ってくれとも言われた。まあ、心配しなくてもボクは戦技一つ使えないけど。


「では双方構え……」


 威圧感出してる騎士さんが右腕を上げる。


「始めぇぃ!」


 腕が振り下ろされた、試合開始だ。


 ボクは合図と同時に、いつものように全力のなめり走りで特攻した。相手の出方を待つ戦法はボク向きじゃない、防御する技に乏しいからだ。


 いくら身体能力が高くても、ボクの小さく軽い体は敵の攻撃に耐えられない、大抵の攻撃はまともに受けたら吹き飛ばされてしまう。


 しかし、逆に瞬発力と小ささを活かした先制攻撃、そして撹乱の後に急所への一撃。今回は寸止めだが、そんな素早い戦い方がボクは得意だ、一瞬で勝負を決めてみんなを驚かせてやる。


 その時モブ騎士は、……なんと、剣を顔の前に掲げてブツブツ言っていた。なんてことだ、騎士学園のルクスと同じじゃないか。


 勝った、やはり所詮はモブ騎士だ、そんな事で戦いに勝てるわけがない。一年中この部屋の柱を守っているモブ騎士さんに、実戦てやつを教えてやるっ!


 スルリとモブ騎士の左側へと滑り込み、影歩きへ移行するため相手の目を注視する、さすがに目は閉じていないが、もう遅い!


 相手の目線と障害物の直線上に身を隠す、特にこのモブ騎士は左腕に大きなカイトシールドを装備している、隠れるのは簡単だ。


 気配を読め、体を点にしろ、マジシャンのように相手の意識外を移動するんだ、そして影に潜んだら、もう相手には倒れるしか選択肢はない! 


 あ、あれ? おかしい、モブ騎士と目が合ったままだ、視線が外れない、本来ならとっくに影に潜み背後を取れているのに。


 モブ騎士は剣を掲げたまま、その目はボクの動きを完全に捉えている。上体は微動だにせず足さばきだけでボクを追う、位置関係はまったく変わっていない。


 バカな、この動きについて来れるのか? モブ騎士は半身に構えたまま追随してくる、逆に回っても順に回っても、フェイントを仕掛けてもダメだ、影に潜めない。


 すると、ズイと、モブ騎士が一歩踏み込んできた。


 ――バン!


 打ち出されたカイトシールドに簡単に捉えられ、吹き飛ばされた。普段モブ騎士が立っている柱へ背中から叩きつけられる。


「ぐはっ」


 全身がばらばらになるような衝撃、息が詰まる。まさかこんな事が……、初見で影歩きを見切るなんて。


 くっ、偶然という事もある、たまたま防御が上手くいったとか、そうでなくてもこのまま終わる訳にいかない、まだ一撃貰っただけだ、勇者さまの前で醜態を晒したままでは居られない。


「ふうううっ!」


 再度影歩きを試みる、幾つも揺さぶりをかけ翻弄するように仕掛ける。


「…………」


 ……でもダメだった、何度も攻撃を仕掛けたが全て通じなかった。簡単に躱され盾で叩かれ、ついにボクは芝生の上に無様に転がった。


「それまでっ」


 威圧感出してる騎士さんが勝負ありの判定を下す。盾でしこたま全身を打たれたボクは、立ち上がることすら出来ない。


 モブ騎士が近づいてきて、ボクに手を差し伸べる。


「すまないキミ、少々やりすぎてしまった、立てるか?」

「……きゅう」


 考えてみればモブ騎士でも弱いわけがない、地味な鎧を着ていたって、王様の居る謁見の間を守っているエリートなんだ。


 良い所を見せようと思ったのに、結局、王様や勇者さまの前で醜態を晒すことになってしまった。すごい期待されていただけに、恥ずかしさも悔しさも大きい、途中まで勝てると思っていたのに。


「ふぐっ、ぐすっ」


 官女が寄って来て、べそをかくボクにハンカチを渡してくれた。そんな様子を遠巻きで見ていたえらい人達は、「ただの子供ではないか」とざわついている。


「どうだ?」


 モブ騎士はレスターク宰相に問われると、駆け寄って行き片膝を付いた。


「ハッ、報告いたします! 子供とは思えぬ胆力でございます、特にスピードには目をみはるものがあります。しかし、その全てが常人の域を出ません、セシル様やミルク様のような超常の方達とは違うと感じます」

「そうか、ご苦労だった」

「ハッ」


 ボクはレティシアに手を貸してもらい、また赤絨毯の上に戻る。ほとんどレティシアにおんぶされる形の、情けない姿で。


「ううむ、ロイヤルガードの中で一番ランクの低い者にも勝てぬのか」


 うう、弱くてすみません。


「確かに、セシル殿と同じ異界の者と言えど、難しい仕事を頼めるとは思えんな」

「そういう事だ、優乃は異界の者かも知れないが、皆がセシルのようではない」

「ふむ、あい分かったミルク殿」


 ボクは勘違いをしていたらしい、ミルクは華を持たせてくれようとしたわけではなく、逆だ。ボクの弱さを分かりやすく知ってもらうためにモブ騎士を選んだ。


 どうやらレスターク宰相は、ボクも勇者さまと同じように、王国に貢献させようと考えていたようだ。でも今の戦いで役に立たないことが証明された。


 ボクのメインの力はバフ能力だ、しかし、この異世界でバフ能力は一般的ではない、証明するのも難しいし、誰しもそこまで考えが及ばない。


 えらい人達を見渡してみても、みんなボクが弱いという一点のみで納得している、この様子なら王国に利用されなくて済む。


 王国側にバレているボクの情報は、別の世界から来たという事だけみたいだ、レスターク宰相も王様も、これ以上何も追求してこなかった。

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