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86 実習見学02

「はい、全員練習へ戻りなさい」


 ライチ先生の号令でみんな練習を再開する。生徒たちはボクの弱さを知って緊張が解けたのか、なんだか空気も柔らかくなった気がする。


「ユーノ君は、あそこにある木人を使って練習して良いですからね」


 ボクにも練習のスペースが与えられた。木人での練習は号令に合わせてするようだけど、飛び入り参加のボクには無理なので、自由に打ち込んで良いという。


 木人なんて使ったこと無い、なんだか新鮮だ。丸太から沢山突き出ている棒を腕や剣に見立てて、実際の近接戦をイメージしながらトレーニングするものだ。


 ボクの場合は“影歩き”の練習がいいだろう。ボクは騎士とまったく違う戦闘スタイルの練習を開始した。そして、それは瞬く間に生徒達の興味を引きつけた。


「きゃー、何あの動き、奇妙ーっ」

「ちょこちょこしてるー、可愛いー」

「あはは、なんだか変な踊りを踊ってるみたいだ、おもしれー」


 ボクの影歩きはおしなべて好評のようだ。……だって、影歩きは第三者から見ると、変な動きをしてるようにしか見えないんだから仕方ない。


 そうこうするうちに午前中の授業は終了した。


「明日は次のパターンも練習します、では解散」


 授業を終えて疲労した生徒達は、ボクを取り囲む事もなく、練習用のプロテクターのままえっちらおっちらと準備棟の方へ帰ってゆく。


 ライチ先生は校舎の方をちらりと確かめる。ひょっとしたらボクを迎えにフージ先生が来るかも知れないと、意識してしまうのだろう。


「ユーノ君は明日も見学に来るのかな?」

「まだ分かんないですけど、また見学させてもらえればと思います」

「じゃあまたフージ先生……」

「いや、フージ先生はもう来ないと思いますけど」


 見学できる場所も分かったし、もう案内は必要ない。


「フージ先生と職員室で会わないんですか?」

「教える教科がまるで違うから、なかなかね」


 職員会議でちょっと見かける程度らしい、あとは食堂でお昼を食べる時に少し話せるかどうか。


「先生ってひょっとして、フージ先生に……」

「えっ、いや違うわよ、そういうのじゃなくてね」

「何か用事があったんですか?」

「えっ」

「仕事の話とか」


 大人なのになんだか初々しい、すごく応援したくなってきた。


「そ、そうそう、ちょっと大事なお話があってね、連絡事項というか」

「じゃあライチ先生の所に行くように、フージ先生に言っておきましょうか?」

「えっ」

「今日のお昼から、毎日」

「今日から毎日!?」


 可愛らしいライチ先生に言い寄られたら、きっとフージ先生だってまんざらじゃないはず。


「じゃ、じゃあ明日から、明日からが良いと思います!」

「……分かりました、では明日からライチ先生の所へ行くように言っておきます」


 フージ先生とライチ先生には体験入学中お世話になるし、少しでも何か出来ないかなと思って。ボクに出来るのはこのくらいだけど。


 さてと、ボクも宿直室に戻ってお昼ごはんにしよう、午後からはまた図書館だ。



 アゼリアは今日も図書館に居た。


「アゼリアさん、今日も授業は無いんですか?」

「いいえ、今日の魔法学科は午前中だけよ」


 休みだったり半日授業だったり、それで寮生活とは逆に辛そうだ。魔法学科の規律は他の学科より緩く、学園の外へ出られる日も多いみたいだけど。


「アゼリアさんの言った通リにしたら、なんだか上手くいったみたいです。みんな変にボクを崇めたりしなくなりました」

「それは良かったわ、この学園は噂が広まるのが早いから、すぐ他のクラスの誤解も解けると思うわよ」


 明日か明後日には、お昼休みをずらす必要も無くなりそうだ。


「ボク、本当は魔法の実習訓練が見たかったんです、魔法を使う人ってアゼリアさん以外見たことがなかったから」


 魔法学校も都市部に集中している、田舎で魔法使いなんて出会ったことがない。


 ギルドダンジョンで魔法の存在は感じたが、あれは魔道具のようだったし、ボクはこれまで魔法使いに実際に会ったことはないんだ。


 この学園で魔法を使うところを直接見られると思っていたのに、魔法学科はお休みばっかりだし、いつ行けば魔法の訓練が見られるのか。


「魔法実習は月末に集中しているの、残念だけどユーノ君が学園に居る間には見れないかな」


 それは残念だ。魔法や戦技の行使は授業以外では禁止されている、昨日アゼリアが使ったライトの魔法も、本当は使っちゃいけないんだという。


 無害なライト魔法ならまだしも、火や水が出る攻撃魔法なんて周囲への影響が大きい、いたずらでも誰も使おうとしないみたいだ。


 もっともな校則だ、無理に魔法を見せてくれとも言えない、残念だけど諦めよう。そんな話をしつつ、学園二日目の午後もアゼリアと図書館で過ごした。


 昨日の古代文字の一件があったため、変な本を読んでくれとは言われなかった。むしろ、お詫びにお勧めの本を紹介してもらい、充実した午後を過ごせた。



 夕方になり宿直室へ戻る、今夜もフージ先生と二人きりだ。


 フージ先生が買ってきてくれた夕飯を食べて、図書館から特別に一冊だけ借りてきた本を読む。フージ先生は明日の授業の内容を確認している。


 そうして静かな夜は更けてゆく。フージ先生は仕事も終わり、いつもなら一杯やっている時間なのに今日はおとなしい。


「今日は飲まないんですか?」

「生徒会長にバレてたから、少し節制しないとな」


 生徒会長のルクスどころか、全校生徒が知っているみたいだけど。


「でもまあ、少しな、少しだけにしとこう」


 結局お酒を飲むみたいだ、ライチ先生はこれのどこが良いのだろう、一応見た目はワイルドなイケメンといえなくもない、でもただの無精だと思う。


 しかし、明日からのお昼休み、二人を会わせるとライチ先生と約束している。なんだかボクまでドキドキしてきた、とりあえず言ってみよう。


「フージ先生とライチ先生って仲良いんですね?」

「うーん? そうか?」

「はい、だって話している時、楽しそうに見えたから」

「んー、ライチ先生の事はよく知らんなぁ」


 意外にそっけないお言葉。あんなにラブ臭を振りまくライチ先生に対して、フージ先生は何とも思ってないのか?


 そして会話終了だ、これ以上膨らみようもない。こうなったらストレートに伝えよう、この朴念仁にはちゃんと言わないと分からない。


「先生、明日から食堂でお昼にしたらどうですか? ライチ先生も来ますよ」

「んー、別にライチ先生に用事は無いが」


 フージ先生はお酒を飲みながら新聞に目を通している、ボクの言葉などうわのそらだ。


「もう! 先生気づいて下さい、分かるでしょう?」

「な、何だ、どうした?」

「だってライチ先生のあの様子、絶対フージ先生のこと好きじゃないですか」

「ライチ先生が? どうかな、そんな感じはしないが」


 どこまで鈍感なんだ、鈍感主人公か。


「そんな感じなんですっ、だからお昼ご一緒したいって、そういう話なんですっ」

「はー、あのライチ先生がね~」


 好きと聞いても喜んでいる様子もない。なんか思っていたのと違う、フージ先生なら“本当か? やったぜ!”ってなると思ったのに。


「ひょっとして、ライチ先生じゃダメですか?」

「いや、光栄ではあるけど」

「じゃあ」

「でも年下はちょっとな、しかもライチ先生とは随分と歳が離れているし」

「えっ、フージ先生って何歳なんですか?」

「オレは今年で三十一だな」

「そんなに離れてないじゃないですか、ライチ先生は二十四歳でしょ?」


 世の中には十歳以上離れているケースだってあるんだ、七歳差なら許容範囲だと思う。しかも若い彼女だなんて、一般的に羨ましがられる対象ではないか。


「だって七つも下だぞ、ユーノ君で言ったら相手は三歳だ」

「子どものボクで例えられても……」


 どうやらフージ先生は年上が好みのようだ、年齢からも熟女好きか。だから年下のミルクにもそれほど興味が無かったのかも。


「何言ってんだオレ、子供相手に。ユーノ君もそんな事ばかり言ってないで、もう寝なさい」

「はーい」


 それでも、明日はちゃんと食堂へ行ってくださいねと言うと、分かったと、なんとか約束をこじつけた。


 結果的には上手く行ったのか? さっきまでドキドキしていたボクの心は少し陰っていた。寝床に入り考えていると、今回の事はただのお節介だった気がする。


 ふとニーナの顔が思い浮かんだ、ボクとレティシアの間にズケズケと入り込んできて、結婚しろとか突飛なことを言っていた。


 あれと同じだ、他人事で、面白ければそれでいい。小学生が良くやる「せんせー達つきあってるのー?」とか言う無神経な質問、ボクはアレを無意識にやっていたのか、久々にやらかしてしまった。



 学園に来て三日目の朝を迎えた。今日も午前中はライチ先生の実習訓練を見学する。


 昨日よりおめかししているライチ先生を見ると若干心苦しい。でもフージ先生もまったくの脈なしでは無いだろうし、後はライチ先生次第だ、まるなげ。


 それはそうとボクも訓練に参加する。日課であるトーマスとの戦闘訓練は、王都に来てから満足に出来ていなかった、なのでここで体を動かせるのは助かる。


 相変わらずボクの訓練風景は好評だ、そして、午前中の授業が半分ほど経過したところで、十五分の休憩となった。


 ライチ先生は一旦校舎へと戻り、ボクは生徒達に囲まれた。


 生徒からはミルクの質問もされたが、ボク自身への話題も多い。そんな和んだ雰囲気の中、校舎の方から歩いてくる人影に気が付いた、ルクスだ。


 真っ直ぐにボクへ近づいてくる、その表情はどこか険しい。


「ちょっと良いか? 妙な噂を聞いたものでね、真相の程を確かめに来た」


 妙な噂? ……嫌な予感がする。ただならぬルクスの様子に、ボクを囲んでいた生徒達からも笑顔が消えてゆく。


「一体どうしたんだルクス、生徒会長が何の用だ?」

「フッ、噂の出処はここだろう? にわかには信じられなかったものでね、オレにも見せてもらおうと思って、従者の実力ってやつを」


 ルクスは男子生徒にそう答えた、やっぱりボクのことを凄腕だと思い込んでいる。それで本当は弱いという噂を聞きつけ、現場に乗り込んで来たんだ。


「そんな事、別に良いだろう?」


 ルクスは従者としてのボクの実力を確かめに来た、それは生徒達も察している。仲良くなった生徒はボクを擁護してくれるが、その程度でルクスは止まらない。


「大事なことだ、この木剣借りるぞ」


 木剣を手にしたルクスは巻藁に向かい合う、巻藁まで十メートルは離れている。


「フゥゥ……、風の刃よ薙ぎ払え! ずああっ!」≪王国剣:ウインドソード≫


 離れた場所から木剣を横薙ぎにした。すると木剣から空気の歪みのようなものが飛んで行き、バン! と大きな衝突音がして、巻藁の上半分が切り飛ばされた。


「す、すげぇ、流石は実技試験上位者だ」


 生徒から声が漏れる。確かにすごい、山賊村の巻藁より大分細いとはいえ、あんなに離れた巻藁を、しかも木剣を使って切り飛ばすなんて。


「さあ次は君の番だ、従者の力を見せてくれ、ユーノ君」


 ルクスは別の木剣を拾い上げ、ボクに投げて寄こした。ボクはその木剣を両腕で抱え込むように受け取ったが、どうして良いものか、そのまま呆けていた。


「な、何やっているのよルクス会長、ユーノ君はそんなことしないわ!」

「そうだ、従者ユーノはそんな挑発には乗らないぞ!」


 するとルクスは、今度は生徒達に向き直った。


「これはどうやら、本当に従者ユーノの実力は低い、という事か」

「だったらどうだってんだ、お前には関係ないだろう?」

「大ありだ! 馬鹿者め!」


 ビシリと、木剣を男子生徒の鼻先に突きつける。


「ミルク様の従者だぞ、普通では無いんだ、そこいらの子供と一緒にするな!」


 改めてそう言われた生徒達は、口をつぐんでしまう。


「お前達の目標は何だ? 何のためにこの学園に居るんだ? オレには目標がある、目的があってこの学園に居る。それはミルク様の従者になるためだ!」


 ルクスはそう言い切った、だからミルクへの執着が半端なかったのか。そして弱いボクを従者と認めることが出来ないんだ。


「おかしいじゃないか、その従者が弱いだなんて、それならオレでも成れるんじゃないか? 資格があるんじゃないか?」


 ボクがミルクの、英雄の従者というのは誤解だ。でも誤解を解こうとしてもルクスは聞き入れてくれなかった、これ以上どうしたら良いんだ。


「ユーノ君、オレの力は今見た通リだ、従者の違いを見せてくれないか?」


 ボクは身の丈に合わない長い木剣を両腕で抱えたまま、立ち尽くしていた。


「ならば仕方ない、このオレと勝負してくれ。悪いなユーノ君、どうしても付き合ってもらうぞ」


 ええっ、ボクと勝負? 途中まではルクスの言い分も分かったけど、急に勝負とか、それでどうにかなるの?


「君を倒せばミルク様にオレの名を知ってもらえる、従者として優れている所を見てもらえる」


 まさか。……確かにこの世界では、剣一本で貴族にまで成り上がった事例は本に書いてあったけど、こんな下克上が実際にありえるのか?


 とてもじゃないが理解できないし、ついていけない。


「や、やです、ボクやりません」


 ボクは抱えていた木剣を足下へ落とした、実技試験で上位だというルクスとの勝負なんて、冗談じゃない。


「ではその腰のナイフを使っても良い、オレは本気だぞ」


 全然話を聞いてくれない。ルクスが木剣を構えると、周りの生徒達もボクから距離を取る。


 空気が張り詰める、本当に今ここで戦うつもりだ。でもボクは戦いたくない、しかし、残された選択肢は逃げる事くらいだ。


 じりじりと後ずさる、ルクスとの距離は二十メートルは出来た、これだけ離れれば逃げられるだろう。そう思った時、ルクスがニヤリと笑みを浮かべた。


「行くぞ!」≪移動術:クイックムーブ≫


 あっという間だった、ルクスは移動戦技を発動し、ボクの背後へと一瞬で移動した。こんな技を受けたのはギラナ以来だ、しかもギラナと同じくらいの距離を移動している。


 驚いたけど、この時点で“背後へまわった”とボクに認識されている、ボクも素早く“なめり走り”で横へとスライドした。


 ルクスの空振りした木刀が地面に叩きつけられる。


「さすがに避けるか」


 しかし実力の差は明らかだ、ルクスの移動戦技はニ十メートルの距離を縮めた、それに対してボクは二メートルしか移動していない。


 咄嗟だったので二メートルだったが、通常時に全力で頑張っても十メートルの縮地が限界だ。なめり走りでニ十メートルを進むにはギラナ並の練度が必要になる、今のボクには出来ない。


 先程見せられた巻藁を切り飛ばした戦技と合わせ、ルクスは技、スピード、力、全てにおいてボクを大きく上回っている、到底ボクなんかが敵う相手じゃない。


「これはどうだっ!」


 間髪入れずルクスは大上段から一撃を振り下ろした。ボクはまだナイフも抜いていない、それどころか逃げることしか頭になかった、戦う気構えすら出来てない。


 ――ガツッ!


 やられたと思った、しかし木剣はボクの目の前で停止した。いつの間にか休憩から戻ってきたライチ先生が割って入り、ルクスの攻撃を防いでいた。


「何をしているのですか!」


 片手で打ち下ろしたルクスの攻撃を、ライチ先生は両手で握った木剣で防いでいる。戦闘訓練の先生だから強いのだろうけど、それでもやっと防げた感じだ。


「フっ、休み時間は終わりですか?」

「そんな事は聞いてません、どういうつもりなのですか、ルクス君」


 ライチ先生のおかげで、なんとかルクスは木剣を引く。


「別に大したことでは無いでしょう? 生徒間の力比べなど良くあることです」


 背の高いルクスは先生を見下して言う。生徒会長とはいえただの生徒だ、超権限を持つトンデモ生徒会じゃあるまいし、その態度は普通にふてぶてしい。


「何を言っているの、従者と力比べ?」


 やれやれと、ルクスは木剣を放り投げ、何も言わずに踵を返す。


「ま、待ちなさい」

「では伺いますが、従者ユーノとオレ、どちらが強いですか?」

「なっ」

「実技担当の教師なら、彼の実力だってよく分かるはずでしょう?」


 ルクスはボクに成り代わって、ミルクの従者になりたいんだ。


「従者は主たる英雄と共に過酷な環境下に身を置ける者、ややもすれば英雄と肩を並べるほどの実力がないと務まらない、その資格が彼にありますか?」


 確かに、本来の従者にはそれくらいの能力は求められるのかもしれない。でもこんなやり方でミルクがルクスを認めるはずがない、余計に嫌われると思う。


「まって下さい! こんな強引な方法じゃミルクだって嫌がるよ、従者なんかになれないと思う」


 根本的な間違いを指摘したと思った、しかしルクスだけでなく、ライチ先生も生徒達もキョトンとした顔をする、なんかボクの方が間違った事を言ったみたいな。


「ははっ、実力以外の何があるというんだ?」


 実力至上主義、まさか本当にこんなことで下克上が成るのか? 異世界では実力や使命が全て、いや、それは前世界も同じだけど、異世界の住人は極端過ぎる。


 でも、ボクは強いからミルクの傍らにいるわけじゃない、ただの仲間なんだ。それを説明したいのに、誤解が加速していて聞き入れてもらえない。


「まさか、汚い手を使ってミルク様に取り入ったんじゃないだろうな?」


 弱いボクがミルクの傍にいる事がルクスには理解できない、ボクが従者をしている理由を無理やり考えれば、不正行為によって地位を得たとなるのだろう。


「そんな事ありません!」


 声を荒げたのはライチ先生だ、どういう訳かボクのことを庇ってくれる。


「なぜそう言えるのですか? 先生」

「ユーノ君は、すっごく良い子だからですっ!」


 ルクスは弱いボクが従者というのが信じられない、それは教師であるライチ先生も同じだ。そのライチ先生の答えは、ボクが良い子だから従者だと言う。


「何ですかそれ、関係無いですよね?」


 ルクスは呆れているが、ボクからしても理由になってないと思う。


 多分、フージ先生の一件で、積極的にライチ先生の味方をしたのが功を奏したのか、ライチ先生は少々強引でもボクの味方をしてくれるみたいだ。 


「まあ良い、今は引き下がります。しかしオレは間違ってはいない、将来を実力で掴み取るのは当然のことだ。従者ユーノよ、次は勝負してもらうぞ」


 もう授業が始まってしまうからと、生徒会長らしくヘンに真面目に言うと、ルクスは校舎へと戻っていった。


 校則では授業以外で戦技を使ってはならない、今さっきルクスはそれをいともたやすく破ったのに、授業時間は守るらしい。


 それにしても面倒くさい事になった、ルクスからは執念とも言えるものを感じる、やっかいな人に目をつけられてしまった。


 そして、ライチ先生にも悪いことをしたと思う。今日のお昼はフージ先生と二人きりになれるのに、きっと話題はボクとルクスの事になっちゃう、ごめんねライチ先生。

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