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70 砂漠の地下ダンジョン02

 後方から迫る二体のロボットは、ここで迎え撃つことにした。


 敵の歩行スピードは遅い、このまま逃げ切る事も出来る。でも、通路の先がどうなっているのか分からない。


 横道などの身を隠す場所があればいいけど、どうもこの通路はそういう感じでもない、一本道が続いている。再びロボットが現れたら挟み撃ちにされてしまう。


 隠れて敵をやり過ごす事が無理なら、後方の二体のロボットは倒さないと。街からの救助隊が到着したら、またフロアの天井の穴から脱出するんだから。


 身構えて暗闇を凝視していると、カンテラの灯りが届く距離にまでロボットが近づいて来た。やはり同じロボットだ、顔のスリットに丸く赤いライトが灯る。


「私とレティシアが討つ、他の者は離れていろ!」


 正直、ミルクとレティシア以外でロボットの相手は無理だ。戦いの邪魔にならないように、他の者はなるべく距離を取る。


 すぐさま戦闘は始まった。


 短距離をシャープに動き回るロボットは、瞬きする度にまったく別の場所に現れる。そう見えるほどのスピードで動き回っている、まるでチープなSF映画だ。


 直立した態勢で移動するロボットから、ノーモーションでパンチが連続で繰り出される。規則的に打ち出されるようでランダムな攻撃がレティシアを襲う。


「きゃああっ」

「レティシア!」

「大丈夫ですミルクさん、痛くないです!」 


 立ち回りや打ち込む技術など、全てにおいてレティシアは素人と言える。ボクのバフで身体能力が異様に上がっているだけで、戦闘技術が高いわけじゃない。


 だから度々ロボットの攻撃をもらってしまう、ダメージは入っていないみたいだけど、やはり押されている姿は不安を覚える。


 一方、ミルクも苦戦していた。あと一撃でも攻撃しようものなら、すぐさまはじけ飛んでしまいそうなボロボロの剣で戦っている。


 さっきの竜巻の技はもう剣が耐えられない、別の技で決定打を打ち込むために、敵の攻撃をひたすら躱しながらチャンスを伺っている状況だ。


 ボクとカイネルとロブの三人は、カンテラの灯りが届くギリギリの距離まで離れて、二人の戦いを見守っているしかない。


 不利な状況に押され、戦闘の場は徐々にこちらへ近づいて来る。


 ――ドゴン!


 これで何度目か、またレティシアが吹き飛ばされた。


 すると、突然ロボットはギュルっとボク達の方へ振り向いた。暗闇に浮かぶモノアイと目が合う


 距離が詰まりすぎた、ターゲットをボク達に変更したんだ。ロボットはすぐさまボク達への攻撃を開始した。


「ひ、ヒィィィ」


 狙われたのはロブだった、ロブはトンネルの壁際を走り逃げ出す。


 ――ドォォオオン。


 ロボットは凄まじい勢いで壁に激突している。壁を這うように逃げるロブに対し、直立したまま連続で体当たり攻撃を仕掛けていた。


 壁際に居たのが幸いし、ロブはわめきながらも奇跡的に体当たりを避けている。あのスピードで立体的に攻撃されたら対応出来ない、そこは運が良かった。


 ――ドォォオオン。――ドォォオオン。


 ロボットが壁にぶち当たる衝撃で、天井からパラパラと砂が落ちてくる。


「はあああああ!」


 レティシアだ、体勢を立て直して戻って来た。すごい勢いで接近するレティシアへと、ロボットは再度ターゲットを移す。


 しかし、レティシアの方が一瞬早い、ロボットが振り向いた頃には、すでに懐深くに潜り込んでいた。


「えいっ!」≪闘羊拳闘技:ハートブレイクラッシュ≫


 凄まじい震脚と共に、ロボットの胸部にショルダータックルをかます。


 シープ族に伝わる闘羊拳闘技は体当たりが主体だ。地面が割れるほどの震脚を使うこの技は、おそらくゼロ距離からも衝突の打撃を与えるものだろう。


「どうだっ! お父さんでもたまにしか成功しない大技!」


 拳闘チャンピオンのアストラでも難しい技をレティシアが放った。しかし、その技は素人のボクから見ても不完全なものだった。


 普段から筋肉の動きや息遣いに注視して、敵の死角を狙う戦いをしているためか、ボクの目には見えた。レティシアの重心位置も、型も、すべてが良くない。


 技術的には全然父親に追いついていないのだろう、それでも、ボクのバフで強化されているレティシアが放った戦技は、強引にロボットを粉砕した。


 可動部分からバラバラと内部部品がこぼれ落ち、ロボットはそのまま床に倒れ、ガラクタとなった。


 何とか一体撃破したか。


 ゴゴゴゴ…………。


「なッ!? て、天井が!」


 助かったと思ったのもつかの間、今の戦闘で通路に衝撃を与えすぎたせいか、天井に次々と亀裂が入り、バラバラと崩れ始た。


「天井が崩れる!? みんな逃げて、ミルク! 早く!」


 崩落はフロア側から始まっている、通路の奥へ逃げるしか無い。どんどん天井の崩れ方は大きくなってゆく、早くしないとみんな生き埋めになっちゃう。


「ミルク!」


 ミルクはまだ残りの一体と戦っていたが、ボクの呼びかけに踵を返し、急いで走って来た。天井からは、すでに砂が水のようにザーザーと流れ落ちている。


 最後のロボットもミルクを追う。しかも、あの超スピードの短距離移動を連続で発動し、すごい速さで追い上げてきた。


 あのロボット、高速の直線移動も出来るのか? いち早く脱出しているボク達と違って、戦闘中だったミルクは遅れている、追いつかれる!


 もうダメだ、そう思った時、不意にミルクはロボットへ向き直った。


「ぜあっ!」≪クヤ族流首刈り術:両腕落とし≫


 下段から上段へ、大きく弧を描く軌跡で剣を切り上げ、そのままロボットに背を向けるように振り抜いた。


 そして、ミルクは敵を振り返りもせず、ボク達の方へ走り出す。


 両腕を肩口から切断され、前のめりに倒れ込んだロボットは、ガシャガシャと脚をもがくだけで立ち上がれず、天井から落ちてくる砂に埋もれていった。


 一旦ロボットの驚異は去ったが、次々と天井が落ちてくる、ボク達は走れるだけ走った。


 そして、ドゴォという地響きを立てて、一気に後ろのトンネルが埋まると、それを最後に崩落は止んだ。砂埃が充満する中、息を整える。


「はあ、はあ、みんな無事か?」


 ミルクがみんなに声をかける、良かった、全員無事だ。


 四つあったカンテラは二つになってしまったが、咄嗟に掴んで逃げたそのカンテラで砂埃の舞う通路内を照らす。


 フロアへ続く方面は完全に塞がっている、もう戻ることは出来ない。



 注意深く通路の奥へ進むと、車の待避所ほどのスペースが現れた、近くに敵も居ないようなので、ここで少し休憩する。


「大丈夫ですか?」


 レティシアがカイネルとロブを気遣って声をかける。すると二人は、コクコクコクと高速でうなずいて返事をしていた。


 なんだかレティシアに対しても恐れ慄いているみたいだ。まあ無理もない、あんな人外の戦闘を間近で見せられては。


「お、おい、お前もあんな感じに戦えるのか?」


 ロブがこっそりボクに耳打ちする。


「ううん、あの二人が特別強いんだよ、ボクじゃ、あの敵には勝てないよ」

「そ、そうか、そうだよな、ははは」


 ロブは乾いた笑いを浮かべる、普通の子ども、つまり自分より弱い者が居ることに安堵しているようだ。


「おいロブ、その子は伝説の薬の調合者だぞ、それにあのゴーレムの攻撃を躱して一撃加えていたのを忘れたのか」

「そ、そうでした……」


 出会った頃と比べれば、カイネルとロブは随分と大人しくなってしまった。


 この絶望した状況に、重く沈黙した空気がのしかかる。


「すまない」


 ミルクがポツリと呟いた。


「敵に挟み撃ちされたのも、帰り道が崩落し埋まってしまったのも、すべて私が逃げようと提案したせいだ」

「そんな……」


 確かに、この通路に逃げ込まなければ今の状況にはならなかった、これで救助隊を呼びに行ったトーマスとも連絡が取れなくなった。


 しかし、そんな事態は予知でもしない限り避けられない。ミルクの対処は悪くなかったと思う、ただ、すべてが裏目に出てしまった。


「あのままフロアで戦っていたら地面が崩れてみんな死んじゃったかもしれない、まだボク達は生きてる、これからだよ」

「そうですよ、ミルクさん」


 フロアの床には大きな穴が空いていた、いつ崩れてもおかしくない、あれほどの戦闘を繰り広げたのだ、床が抜けていた可能性は高い。


 むしろ、命があっただけマシだと思う。


「そうか、そうだな、腐っていても仕方ないな」


 気落ちしているミルクなんて初めて見たが、この危機的状況下でミルクはみんなの希望なんだ、どうか元気を出してほしい。


「ねえミルク、その剣」

「ああ」


 ミルクは鞘から剣を引き抜く、もう剣とも言えないほど原型をとどめていない。ボクは代わりに自分のナイフを使ってもらおうと、ナイフシースに手を伸ばした。


「あのっ」


 その時、静かにしていたカイネルが突然声を上げた。


「あの、ミルク様、どうか私の剣をお使い下さい」


 そう言って自分のサーベルを鞘ごと腰から外す。


「すまんな、その申し出はありがたいが、その剣では私の技に一度すら耐えられないだろう」

「そ、そうですか……」


 サーベルは細く薄身だ、サーベルという武器が悪いということではない、ミルクの大質量の技に一発と耐えられないのだ、つまり相性が悪い。


 対して、ミルクの剣はギルドで売っている安物だが、幅広で直刃のがっしりとした剣、ちゃんと技に耐えられる計算で帯剣している。


 しかし、それでも限界がある、ミルクの腕を持ってしても、技の威力が大きすぎて店売りの剣では数回しか耐えられない。


 普段使いなら大技も必要ない、ギルドで売っている一般的な剣で間に合う、目立たないという理由もあり、ミルクはいつも店売りの安い物を帯剣していた。


 恐らく別に愛刀も持っているだろう、しかし、今回は“普段の日常”の中から、突然に超難度のダンジョンへ引きずり込まれてしまった、準備など出来ていない。


 さっき、ボロボロの剣でも技を繰り出せた事には秘密がある、例えば、レティシアは鋼鉄のロボットに頭から突っ込んでも傷一つ付かない、ナックルも同様だ。それは“気”で体を覆っているからだという、ミルクの剣も同じだ。


 しかし、それを含めての限界だ、これ以上このボロボロの剣では戦えないし、サーベルも同様にミルクの技に耐えられる強度が無い。


 でも、長剣であるサーベルがダメなら、ボクの刃渡り十五センチのナイフではなおダメだろう、そう思いナイフから手を離した。


「ん? 優乃」

「なに? ミルク」

「そう言えば優乃のナイフは……」


 それを見ていたミルクは、ボクのナイフを見せてくれと言う。


「そうだ、鋼クロトカゲの牙、これなら」


 鋼クロトカゲとは、異国の火山地帯に突然現れた巨大な魔物だという、鋼の鱗にコウモリのような翼を持ち、高温のブレスを吐く災害レベルの魔物らしい。


 ミルクたち勇者一行も相当苦労して退治した魔物で、その素材を用いて作ったナイフは、一級品の硬度を保ちつつ切れ味も落ちないという。


 このナイフはミルクに譲ってもらった物だ、ルコ村の片隅にあるミルクの家で、適当に放置されていたナイフがそんなスゴイ代物だったなんて。


 あと、鋼クロトカゲは多分ドラゴンだと思います。


「しかし、優乃の身を守るものが無くなってしまう」

「ううん、ミルクが使って。ポイズンブロウが効かないんじゃ、ボクが持っていても敵を倒せないもん」


 ボクがナイフを持っていても役に立てない、ロボットが倒せるならミルクに使ってもらわなくちゃ意味がない。


 それに、言うなればボクの剣は、バフ能力を受けたミルク自身なのだから。


「そうか、分かった、しばらく借りるぞ」

「うん」


 借りるだなんて、元々ミルクの持ち物なのに、遠慮なんてしなくていい。


「そう言えば、先程ゴーレムの攻撃をたやすく避けた優乃の動き、確かに見事だったが、よくあれを避けられたな」

「うん、あのロボットの動きは予め予想できたから」

「ロボット? あのゴーレムの事か?」


 そうだ、ここで敵の事を相談しておいたほうが良い、一度言おうとしたが機会を逃したままだった。


「ロボット……、確かそのような事をセシルも呟いた気がする。しかし、多くは語らなかった、ロボットとは一体何だ?」


 勇者は説明しなかったのではない、知らないのだ。ロボットであることは分かるが、オーバーテクノロジーすぎて勇者でも分からないんだ。


 それはボクも同じ、二足歩行の戦闘ロボットなんて映画やアニメの世界の話だ。


 それでも、人型に捕らわれてはいけない、爆発物を持っているかも知れない、大量のツブテを高速で打ち出してくるかも知れない、そんな未知の人造カラクリ人形だと説明した。


「優乃やセシルでもよく知らないのか、だが、常識にとらわれてはいけない事は良く分かった」


 転生者の勇者と行動をともにし、世界を回って来たミルクは、初めて見るものでも頭ごなしに否定はしない、一応の理解を示してくれた。


「それにしても、ロボットが魔物でないならば一体誰が作ったのか、この巨大なダンジョンも自然魔力により発生したものでは無いということか? だとすると、誰が何の目的で、こんな砂漠の地下に巨大な施設を作ったのか」


 ミルクは自分に問いかけるように呟く。


 すぐに思いつくのは秘密裏に建設された軍事施設だ、やはり転生者か転移者の仕業だろうか? この地下施設にそんな人が潜んで居るのか?


 でも人が住んでいるようには見えない、先のフロアの大穴が空いた天井や床、崩落したトンネルを見てもかなり老朽化している、長く放置された施設のようだが。



 休憩を終えたボク達は、また通路の先に進む。フロアへ戻れなくなったので、新たに地上への出口を探さなければならない。


 勇者一行が攻略に乗り出した地下ダンジョンの入り口は、アーデルアより向こう、あの壊滅していた小さな街の近くだったらしい。


 しきりに巨大なダンジョンとミルクは言っていたが、壊滅した街があった場所から全部同じダンジョンなら巨大どころではない、地上の街よりはるかに大きい


 地上への出口も一つや二つではないはず、それでも良い予感はしない、いま進んでいる通路は徐々に下っている。どんどん地下深くに潜っている。


 そして、敵だって現れる。ロボットは一定の距離を置いて存在していた、侵入者を排除する警備ロボットだと思う。


「せいっ」≪我流剣術:旋風斬せんぷうざん


 最初に見た大旋風斬りだいせんぷうぎりという奥義と違い、一陣の風が敵に巻き付くような下位互換の技だ。結果は竜巻の時と同じ、ロボットはバラバラになって壊れた。


 ボクのナイフでは射程が短い、威力も剣より落ちるだろう、そもそもミルクはナイフ使いじゃない。それでもボロボロの剣より威力が出ている。


 これでも加減して技を放っているらしい、トンネルを壊さないようにロボットに限定して確実に破壊してゆく。


 短いながらもしっかりした武器に持ち替えたので、それだけの余裕が出来たということだ。本来のミルクならこんなロボットに遅れは取らない。


「きゃっ」


 武器を持ち替えてパワーアップしたミルクと違い、やはりレティシアはロボットの攻撃を食らってしまう事もある。


「レティシア、重心を安定させ、絶えずリズムを作って不意の攻撃に備えるんだ」

「はい!」


 それでもミルクの指導の下、徐々にロボットとの戦いに慣れつつあった。


「やはり優乃の力はすごい、セシル達でさえ辛勝だったのに……」

「え?」

「いや、こっちの話だ」


 索敵しながら慎重に進んで来たが、やはり地上へ向かう道は無く、どんどん地下へ潜ってゆく。そんな時、ふと、トンネルの壁に見覚えのあるものを見つけた。


「あっ、アレは?」


 通路の壁に小さなボックスがある、配電盤だ。中にはブレイカーと、その下にもスイッチが沢山並んでいた、丁寧に操作の仕方も書いてある。


 必要なスイッチをONにする、すると天井に埋め込まれている照明が点灯し、トンネル内が昼間のように明るくなった。


「うおおおっ」

「なんスかこれはアニキ、魔法ですか?」


 カイネルとロブと同様に、みんな驚いている。こんな放置された地下施設の照明が作動するとは思わなかったので、ボクもビックリした。


 明るくなった所でもう一度トンネル内を見渡すと、壁に何か文字が書いてあった、ほとんど消えかかっているが、なんとか読んでみる。


「……三階? ……倉庫⇔軍事開……搬入口……か」


 消えた文字を予測して読むと、このまま下っていけば地下三階。後ろの埋まった通路を挟んでフロアがあり、もっと戻れば出口の搬入口がある。


 運が無い、やはり出口と逆方向へ逃げて来てしまった。しかし、あの状況で敵が迫ってくる方向へ逃げる選択はしないだろう、仕方なかった。


 このまま奥へ進むと地下三階となり、そこには倉庫があるらしい。それにやっぱり、ここは軍事施設みたいだ。


 地下何階まであるのか、他にも案内板など情報を取れる物が無いか探したが、それらしき物は見当たらない。


「あまり良い状況じゃないみたいだね、でもきっと、どこかに地上に出る出口があるはずだよ」

「……ユーノちゃん、この模様、なんて書いてあるのか読めるの?」

「えっ」


 レティシアにはこの字が読めない? では世界共通語ではないのか? デルムトリアの国民も世界共通語を話す、しかし、この壁の文字は違うらしい。


 ボクには翻訳能力がある、見るもの喋ること、すべて日本語に訳されるとんでもない能力だ。だから、ボクには壁の文字が本来何語で書かれているのか分からない、全部日本語に見えてしまう。


「ふーむ、これは古代文字のようだが違う、もっと前のものかも知れん」

「そんな、ちょっと待ってミルク」


 ボクは一つの可能性を思いついた。もし、ここの住人が日本からの転生者や転移者なら、壁の文字はそのまま日本語のはずだ、照合してみよう。


「ねえミルク見て? この文字なんだけど、あの壁に書いてあるのと同じかな」


 壁に書いてある文言を日本語でメモ帳に書いて見せた、ボクの書く文字には翻訳能力が乗らない、他の人から見ても日本語に見える。


「いや違うな、これは日本語という言語だろう? セシルが以前書いていたのを見たことがある」


 そうだった、ミルクは転生者の勇者と長く居たわけだから、多少なリとも日本語を知っていても不思議ではない。


 そもそも、ボクの名前をしっかり発音できるのは、やはりそのおかげもあるのだろう。もし壁の文字が日本語なら真っ先にボクに教えてくれたはずだ。


「しかし、この壁の文字は小さな四角の集合体のような模様だ」


 どうやら、壁の文字はQRコードのような文字らしい、この施設を作ったのは日本からの転生者かとも思ったが、その憶測は間違っていた。


「ねえ、なんでユーノちゃんは勇者様が使う文字を書けるの?」

「えっ、いや、それは」


 しまった、ただでさえレティシアの家で勇者に間違われているのに、うっかり勇者とボクの共通点を話してしまった。


「それはなレティシア」


 う、言うのかミルク? ボクだって、勇者とボクが元日本人だという事を、ミルクの口からきちんと聞いていないのに。


「秘密だ」

「えー」

「ここから出たら教えてやろう、優乃の秘密をな」

「本当ですか?」

「ああ、きっともっと好きになるかもしれないぞ」

「ええー、早く聞きたい」

「ふむ、そのためには早くこのダンジョンを脱しないとな」


 ふう、ミルクの機転で、限定的だがとりあえず凌いだ。今その話題でゴタゴタしたり気まずくなるのも面倒くさい、ミルクに感謝だ。


 それにしても、この文字がそんなに古い物だと言うのなら、このダンジョンは超古代文明の遺跡、ということだろうか。

 ショタ視点なので、あえてロボットやパンチなどと書き、チープ感が出れば良いなと思いましたが、いつにも増して文章が酷いことになっただけという。

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