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64 事件の顛末02

 朝、目が覚めるとミルクが添い寝していた。この街で辛い思いをしたボクを慰めるために、様子を見に来てくれたのだろう。


 ミルクは、いつものようにボクを抱きまくら代わりにしながら、おっぱい丸出しで寝ている。どうやら今日は下も穿いていないようだ。


「あっ!」


 すぐに、ミルクのおっぱいがボクのよだれでベトベトになっている事に気が付いた。寝ている間に垂らしてしまったのだろう。


 しまった、美しいおっぱいを汚してしまった。焦ったボクは、おっぱいをぱくりと口に含んで、よだれを拭い取る方法を選択した。


 ……なんか方法を間違えたかもしれない。寝ぼけた頭でそう考えていると。


「おはよう、優乃」


 その声にハッと我に返り、飛び起きる。


 朝っぱらからボクはなんて事を、おっぱいを吸っていたんじゃなくて、よだれが付いちゃったから、それで。


「こ、これは変なことじゃなくて、ヨダレがね……」


 勢いよく飛び起きたせいで毛布が大きくめくれ、褐色の最強プロポーションが目に飛び込んでくる。そんなミルクは優しく微笑んでいた。


「わあ! なんでボクもハダカなの!?」


 そして、ボクも真っ裸で寝ていた、ハダカで就寝した覚えはない。


「ナイフを装備したままだったからな、それでは疲れは取れないだろう?」


 そうか、昨日レティシアにベッドまで運んでもらって、いろいろ考えているうちに、そのままの格好で眠ってしまったのか。


 それにしても、下着まで全部脱がせなくてもいいと思うんだけど。


「もう良いのか? もっと吸っても良いんだぞ? フフ、乳は出ないけどな」


 ミルクはそう言って、ボクの真ん中を見つめる。今起きたばかりだから、当然そこはなるようになっていた。


「ふえっ? わっ、違うよ? 男の子はみんな朝こうなっちゃうの」


 素早く“おはよう”しちゃっている部分を両手で覆い隠す。こんなところ、ミルクにだって見られたら恥ずかしい。


「ふうん?」


 すると、何を思ったのか、ミルクは隠しているボクの手をゆっくりと退けた。


「……ミルク?」


 え、何? 師匠として弟子の健康状態を確認しているとか?


 と、その時。


「むっ」


 突然、ミルクははだけた毛布を掴み寄せ、自分の裸体を隠した。それとほぼ同時に、隣の部屋と繋がる扉が開いて、トーマスが顔を出す。


「おーう、ユーノ起きたかー?」


 頭をぼりぼり掻きながら部屋に入ってくる。そして、ボクと目を合わせた瞬間、トーマスは時間が停止したかのように固まった。


「おまっ、ユーノ、おまえ……」


 トーマスが部屋に入ってくるのを察知して、ミルクはいち早く毛布で胸を隠したが、腰のラインは見えている。何も身に着けて無いのは想像で分かるだろう。


 そのミルクの隣では、ボクもオシリを丸出しにしたままだ。しかも、タイミングの悪いことに、しっかり“おはよう”しちゃっている。


「ウソ……だろ、やっぱりあの噂は、本当じゃねーか……」

「おい、どうでも良いが早く出ていってくれないか、刺すぞ」

「うう、どちくしょーっ」


 トーマスは高速で振り返り部屋を出ていった。その目元には光るものさえ見えた気がする。なんか誤解されたかもしれない。


「まったく、朝っぱらから騒がしい奴だ」


 そう言うと、ミルクはボクの腰を抱き寄せ、再び毛布の中へ引きずり込んだ。


 二度寝ですか!?


 いやいや眠っている場合じゃない、トーマスの誤解を解いておかないと、またあらぬ噂が広まってしまう。メンドクサイ。



「おはよー」


 わざとらしく大きな声で挨拶を投げかける。


 昨晩会議に使っていたトーマスの部屋は、少し広い。ボクとトーマスの朝食も、この部屋に用意されていた。


 トーマスは黙って自分のパンを貪り食っている。


「違うからね? 誤解だよ?」


 ボクも席に着きながら、やんわりと誤解を解いておく。


「ああ、もう良いんだ、分かってるからよ」

「え? ……うん」


 何が分かっているんだ? とりあえず涙を拭けトーマス。


「それはそうと、ミルクから聞いたか?」

「何を?」


 さっきはトーマスが部屋に乱入して来たせいで、ミルクと何か話し合うこともなく、身支度を整えて出てきた。


「そうか、今日またケイダンの屋敷に行くんだけどよ、お前も付いてこねーかって話なんだけど」

「ボクが?」

「ああ、ニーナのこと気にならねーか? オレ達がケイダンと話し合いしてる間、ニーナの相手をしてほしいんだ、どうせあいつも暇だろうからよ」


 つまり、ニーナの心のケアをしてほしいというのだ。色々な事があって、ニーナもケイダンも憔悴しきっているだろう。


「ユーノにも何か手伝えなんて言わねーからよ」

「うん、ボクも行くよ」

「レティシアも一緒だ、子供は子供同士で遊んでりゃいい」


 こうして、昨日の今日だが、ボクはみんなと一緒にケイダンのお屋敷に出向くことになった。



 あらためて見るケイダンのお屋敷は大きく立派なものだ、特に庭が広い。


 石畳や踏み固められた土で、グランドのように開けている。兵士を招集するのに必要なスペースか、もしくは訓練する施設も兼ねているのだろう。


 ミルク達はケイダンの居る三階の会議室へ通され、ボクとレティシアは、ニーナ付きの執事ロレンスに中庭へ案内された。


 グジクの街の中心にあるお屋敷は、かなり高い場所にある。案内された中庭からも街の様子が一望できて、景色は最高だ。


 陽の降り注ぐテラスに、白くシンプルなガーデンテーブルとチェアが置かれ、テーブルの上には、お茶と色とりどりのお菓子が並べられている。


 すでにニーナは先に居て、外では着ていなかったふんわりドレスを纏い、静かに椅子に腰掛けていた。


 馬子にも衣装とは言うが、その中身も元々美人なので、一種特別なオーラを発しているかのように美しい。子供のくせに堂に入った佇まいだ。


 ニーナはボク達に気が付くと、スッと立ち上がり、広がるスカートの端を摘んで軽く会釈する。あの跳ねっ返りが、本物の貴族のお嬢様のようだ。


「あっこんにちは、本日はおひがらも良く……」


 そんなふうにボクがしどろもどろしていると、ニーナはすぐ態度を崩し、ドカッと椅子に腰掛け、ズズっと行儀悪くお茶をすすった。


「お嬢様!」

「もう良いでしょ、一応やったんだから、下がってなさい」


 執事のロレンスはフゥと小さく溜息をつくと、かしこまりましたと、お屋敷の方へ下がっていった。


「お家の中じゃこれやらないとうるさいのよ」


 さっきの気品あふれる立ち振舞のことか。


 なんだか全然大丈夫なようだ。落ち込んでいないか心配していたけど、取り越し苦労なようで安心した。


「さ、座って」


 まず、なぜボク達がカーティン家で厚遇されてるのか、という質問から、あの山小屋での出来事などを、ボクへの文句も織り交ぜながらニーナは話し始めた。


 もちろん、全てはケイダンを屈服させるための作戦だったとは言えないので、それに関する質問に答える事は出来ない。


 なので、「大変だったね」とか「無事でよかった」など、とにかく聞き役に徹して、ニーナに不満を吐き出させる形でストレスを取り除いていった。


「ねえニーナ、お父さんは大丈夫?」

「ええ、ご病気だと聞いて最初は心配したけど、でも今はとてもお元気よ。お体も調子がいいって、お医者様もすぐに元に戻るだろうって」


 ニーナの顔を見てから、ケイダンも急速に体調が良くなったみたいだ、そうでなければ今日の会談も延期されていただろう。


 それにしても、昨日の今日でミルク達も無茶をする。まあ、鉄は熱いうちに打てということだろうけど。


「お父さんすごくニーナのことを心配していたんだよ、これからもっと優しくしてくれるんじゃない?」

「そうなの、昨晩なんて一緒に寝ようなんて、まったく、私の年齢も考えてほしいわ、もう立派なレディーなのに」


 そう言うニーナも嬉しそうだ。


「でも、これからの勉強は厳しくなるんですって、基本的な人の権利についてとか、人類の平等についてとか」

「ふーん、難しそうだね」


 と、ついニヤケ顔で答える。どうやらケイダンは本当に心を入れ替えたようだ、このままニーナが育ってくれれば、将来獣人と衝突することも無いだろう。


 その後も、ボク達との旅での事や、普段のお屋敷での生活など、他愛もない話で盛り上がった。


 なんだか、今日のレティシアとニーナは意気投合している。二人とも楽しそうで、レティシアはかわいいお菓子やニーナのドレスに興味津々だ。


 いずれ二人の会話は、どうにもあやしい方向へずれてきた。ボクとのファーストキスがどうとか、いつもお風呂で洗っこしているとか、そんなことだ。


 これも恋バナと言うのか? こっ恥ずかしくてとても聞いていられない。すっかり女子会モードの雰囲気で、こうなると男のボクは入り込む余地がない。


「ぼ、ボクお庭を見てきていいかな?」


 ついにボクは席を外すことを二人に申し出た。しかし、二人は将来何人子供を作るかという話に夢中で、相手にしてくれない。


 丁度、お茶を淹れに執事のロレンスが現れたので、退席したい旨を目で訴えてみる。ロレンスも察したのか、どうぞと言ってくれた。


 ボクが居ないほうが彼女達もハメを外せるだろう、そう心の中で言い訳して、そそくさと退散する事にした。



 お屋敷から庭に出て、敷地内を散歩する。周囲の植木は砂漠では見られない物が多く、まるでヴァーリーの森のようだ、懐かしい。


 城壁には大小さまざまな門があって、守衛の詰め所も各所に設置してある。衛兵はボクを見ても何もしてこないが、まだ敵対心を抱いている人も居るだろうから、あまり近づかない。


 そうやって気をつけていたのだが、突然ボクの前に大きな人影が立ちふさがった。ボクが避けていても、向こうから近づいてくるのは回避できない。


 それは、例の砂漠の重戦士の一人だった。ボクの前に現れたのはフランソワーズ姉さンだ。弟のゴレイアと区別がついたのは、彼女が私服だったから。


 顔から体型から瓜二つのオーガのような戦士の姉弟、戦闘時なら性別すら区別がつかない、当然年齢だって不詳だ。しかし、今のフランソワーズ姉さンは、警備の仕事が非番なのかスカートを穿いていた。


 完全に世紀末覇者の風貌だが、スカートのため女性だというボクの判断だ。昔のヨーロッパ人のように男でもスカートを身につけるとなれば、もうお手上げだが。


 フランソワーズ姉さンは、ゆっくりとコブシを突き出してきた。その巨体からして当然手も大きい、ボクの頭など一掴みで握りつぶされてしまうだろう。


 ボクは動けなかった。以前の戦闘で見せたフランソワーズ姉さンのスピードは、明らかにボクより上だ。


 スピードには自信があったが、それも人間の範疇での話、こんな怪物が相手では逃げることも難しい。


 これはもう、トーマスに人に対して使用を禁止されているが、ポイズンブロウをぶち込んでも良い案件ではなかろうか? ……とても人には見えない。


「プシュウゥゥ――」


 フランソワーズ姉さンのパージバルブ(くち)からエアが排出される。すると、目の前に突き出されたコブシがゆっくりと開かれた。


 そこに握られていた物は……。



「ユーノちゃーん、ユーノちゃん何処に居るのー?」


 遠くでレティシアの声が聞こえる、しかし、ボクはそれどころでは無い。


 現在ボクは、フランソワーズ姉さンに囚われ、彼女の好き勝手にされていた。


「すごーい、サラマンディーヌより、ずっとはやい!!」


 ボクはフランソワーズ姉さンの首のうしろにまたがっていた、肩車だ。


 そのままフランソワーズ姉さンは疾走する。木を飛び越え壁を走り、城壁の上に駆け上がり、すごいスピードで。砂漠の重戦士流お馬さんごっこだ。


 ちなみにサラマンディーヌとはミルクの馬の名前です。


 ボクのくるくる角には花飾りが付いている、さっきフランソワーズ姉さンが手に握っていたものだ、ボクへのプレゼントだという。


 それから二人して、領主の館を走り回って遊んでいた。


「ユーノちゃーん、帰るよー」

「あ、もう時間みたい、遊んでくれてありがとうフランソワーズ姉さン」

「ふしゅるるるー」


 フランソワーズ姉さンはボクをひと目見た時から、ずっと一緒に遊びたかったらしい。ボクも暇をつぶせて良かった、すごくスリルがあって面白かったし。


「ばいばーい」


 フランソワーズ姉さンと別れてトーマスの待つ馬車まで急ぐ、みんなもう集まっているみたいだ。


 レティシアとニーナは今日で大分仲良くなったのか、ニーナが正門まで見送りに来ていた。そして、ボク達は見送られ、グジクの山賊アジトまで戻った。


「おねえちゃん、ニーナと随分話し込んでいたね」

「うん、なんかね、応援してくれるんだって、良い所あるよねあの子も」


 ああ、そういう。レティシアから見て、ニーナは初めボクを寝取った敵という認識だったから、その誤解が完全に解けたんだな。



 アジトへ戻ってみると、今日の会談も上手くいったらしく、リタの集落の人達にはどことなく浮ついた雰囲気が漂っていた。


 みんなごきげんだが、ボクは少し腑に落ちない。今日は楽しかったし悪くない一日だった、でもなんか……。


「なんだユーノ、まだしょぼくれてんのか?」


 その原因のトーマスが、またちゃちゃを入れてくる。


「おい、ちょっと来てみろ」

「えー、なにー?」

「いいから早く、すげーから」


 しぶしぶトーマスの後をついて行くと、街を囲む外壁へと着いた。


 アジトから近い場所の外壁には階段が設置してあり、上へ登れるようになっている、トーマスはその階段を登って行く。


 ニ十メートルはある高い外壁を登ると、てっぺんは万里の長城のように道になっていた。ここは索敵や外敵に矢を射るための場所だろう。


「どうだユーノ、良い眺めだろ」

「ふーん」


 足元の外壁を挟んで内側に広がる街並み、外側に永遠と広がる砂漠、それらが夕日に照らされて雄大な景色を見せていた。


「まったく、これでもご機嫌斜めですか?」


 ふーっと、トーマスは一息つく。


「今回のことはよ、騙して悪かった。でも正直言うとよ、アレしか手がなかったんだ、お前がニーナを連れて来た時点でな」

「どういうこと?」

「あのままサンドウエストから王都へ向かっていたらどうなってた?」

「それは……」


 ケイダンは、普通にミルク達に襲撃されていた。


「ニーナは死なないにしても、相当酷い目にあっていたと思うぜ、いや、マジで死んでたかもしんねー。少し前ならこんな事はしょっちゅうよ、オレ達の手はけしてキレイじゃねーんだ」


 元盗賊を束ねたルコ村の戦士達、当然手荒なこともいとわない。アルッティ邸を襲撃した時のように、ケイダンの館も壊滅していただろう。


「お前はニーナと出会っちまった、そんなニーナをミルクが殺していたなんて、後で知ったらショックだろ?」


 それはイヤだ、悪夢だ、共に旅をしたニーナをミルクが討つなんて。


「今回はいつも通りやらせる訳にいかなかった、でも時間も無くてよ、あんな作戦しか思いつかなかったのは、すまねーと思ってる」


 そう言えば、ニーナの依頼を受ける事になってから、トーマスはすごく急いでこの街まで来た。襲撃実行日まで時間も無く、切迫した状況だったのだろう。


「それじゃ、ボクのためだって言うの?」

「ユーノが毎日ふさぎ込む姿は見たくねーからな、オレは今回の作戦が、お前のために一番だって考えたわけよ」

「うん」


 早急な作戦で多少の歪が生じたけど、トーマスはボクの事を思って。……そのためにウソをつく事になってしまった。


「ユーノの為でなければ、レティシアやミルクが協力してくれるわけ無いだろ?」


 そうかもしれない、結果ボクの一人負けでは、あの二人は納得しないだろう。


「それにやっぱり、今回の事はユーノの手柄なんだぜ? どうやったか知らねーが、領主の娘をとっ捕まえてくるし、あのケイダンに言うことを聞かせたのも、お前だからこそだ、他の誰にも出来ない、レティシアでもな」


 確かに、ニーナと共に囚われ、辛い思いをし、それでも獣人のボクが人族の家族を救う。だから説得力が出たのかもしれない。


 トーマスの言うように、ルコ村で騎士団を殲滅したレティシアでは、ボクみたいにナヨナヨした対応も出来なかっただろう。


 それ以前に、檻など簡単にぶち破れるレティシアでは、この役は不自然だ。


「ミルクは結構直情的な奴だからな、目の前の障害は全てその場で蹴散らす、だけど今回はそれも遠慮してもらった」

「どうして?」

「ニーナの家の者も、なるべく無傷で済ませたいじゃねーか、後の交渉で不利になる事は避けたいというのもあるが、お前はお人好しだからな、無闇に人が傷つくのはイヤだろ?」


 そうか、だからミルクは最初にわざわざ城門を派手に壊して、兵士の戦意を削いだ。結果誰も大きな負傷はしていない。


 唯一対峙した、あの砂漠の重戦士姉弟にも命に別状はなかった、トーマスが傷つけるなと指示していたのか、ボクのために。


 ボクがニーナを連れてきたため、誰も命を落とすこともなく、重症を負う者もなく、ケイダンを完全に屈服させる事が出来た。


 それは、全てトーマスがボクに配慮した結果だった。


「そんなにボクの事を……」

「良いってことよ、仲間だろ? 当然だぜ」

「ありがとう、トーマス」


 ミルクはルコ村の威信を背負って村を出て来た、遺族の気持ちを背負ってケジメを付けに来た、どういった形であれ復讐は成さなければならない。


 しかし、それはニーナにとって、ボクにとって、悲しい結末だ。トーマスはそれを回避してくれたんだ、みんなが納得する形に収めてくれたんだ。


 それなのにいつまでもうじうじと、こんな事じゃいけない、ボクが中心だというのなら、なおの事しっかりしなきゃ。


「な、どうだった?」

「え、何が?」


 トーマスの言葉に、気持ちを入れ替えないといけないと思っていた矢先。


「今のオレ、すっげーイケてたろ?」

「はあ?」

「さすがオレだよな、すべて完ぺきにこなすナイスガイだぜ」


 すぐ調子に乗る。


「でも何でモテねーのかな、世の女どもはオカシイんじゃねーのか」


 ただでさえ山賊顔で人を寄せ付けないのに、そのナイスガイな部分があるとして、そこまでの壁が厚すぎるんだよ。今だってボクしか分からないじゃないか。


「全然! ちっともカッコよく無いよ! ガサツだし野蛮だしいい加減だし!」

「なにを~」


 今回は、結局みんなボクのために動いた結果だった。


 トーマスは、ボクがニーナを連れて来た瞬間から、いや、その前から、いつもボクの身を第一に考えているんだ。


 感謝しか無い、でも、分かりづらいんだよ、もう。


「……チョロいな」

「は? 今なんて?」


 今さらっと、聞き捨てならないことを言わなかった?


「うん? イヤ良かったなって」

「ウソ! さっきと違うもん!」


 チョロいって言ったよ? 聞こえてたし。


 危なく半分見直していた、またトーマスの手に引っかかるところだった。


 このガサツで野蛮でいい加減なトーマスが、そんな都合よくきれいなトーマスになるわけがない。


 子供だと思ってバカにして。この元盗賊の言うことなんて、いちミリも本気にしてはいけない、余計なエネルギーを使うだけだ。


 でもまあ、今回だけは許してやるか、偶然、本当に偶然、行き当たりばったりの作戦でも、結果丸く収まったんだから。

 おねショタ物ということもあり、冒頭のシーンは表現を抑えて残すことにしました。肝心の語句は入っていないので、文章が意味不明になっていたらすみません。(むしろ意味不明でいいです)

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