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58 さらわれ(9回目)

「城塞都市編」

 ショタ主人公ちゃんにとって、檻など自室です。

「うう……」


 鈍く思考の重い頭を抱えて起き上がる。


 眠ってしまうあの丸い植物、前にオズマに使われた事があるけど、またボクは引っかかってしまったのか。


「ここは?」


 かなり暗い、でも見通せない程ではない。


 ボクはやっぱり檻の中に監禁されていた。しかも、今のボクは真っ裸だ、衣服の代わりに一枚の毛布だけが傍らに置かれている。


 檻は、小さな扉付きの鉄格子が正面にあって、他は壁も天井も木板で外の様子はよく分からない。


 それでも、鉄格子から首を伸ばして外を覗いてみると、壁にある古ぼけたランプの光で、ここが大きな倉庫だとかろうじて分かった。

 

 そして、ニーナが居ない、他の檻に入れられているのだろうか?


「……ニーナ、ニーナ居るの?」


 小声で隣の檻に声をかけても返事は帰ってこない、物音もしなかった。


 あの黒装束の一団はかなり組織立っていた、ボクを難なく捕らえるほどだ、それなりに腕も立つだろう。


 明らかにニーナを狙っていた、領主の娘と知って誘拐したのだろうか?


 それを阻止しようとしたボクは、そのついでに掴まったっぽい。やっぱりギルドから離れるべきではなかった、今更後悔しても遅いけど。


 とにかくニーナが心配だ、そう思っていた時。


「放しなさいよ、痛い! どこ掴んでんのよ!」


 暗い通路の奥の方から声が聞こえた、あの高慢な言い草はニーナだ、徐々に近づいてくる。


 やがて、数人の黒装束に連れられて、ボクの檻の前まで引きずられて来た。


「放せって言うのが分からないの!? 私を誰だと……」


 黒装束達は、ニーナを囲み、抑え込む。


「ちょっとっ、いやっ! 何するの!?」


 途端にニーナは激しく抵抗を始めた。


「や、やめて、ニーナにヒドイことしないで!」


 殴る蹴るの暴行を加えられている、ボクの目の前で、見せしめのように。


 と思ったら違った。暗がりで何をしていたのかよく見えなかったが、どうやら衣服を剥ぎ取られただけのようだ。


 あっという間にすっぽんぽんに剥かれたニーナは、ボクと同じ檻に放り込まれた。ニーナは、突然の事に驚いて、四つん這いで呆けている。


 黒装束達は裸のニーナに毛布を叩きつけると、鉄格子の扉を施錠し、スゥと暗闇へ溶け込むように去っていった。


 この状況に脳が対処しきれていないのか、変わらずニーナは呆然としながら目を泳がせている。とりあえず投げ込まれた毛布をかけてあげた。


「大丈夫?」

「どうして、この私が、どうして……」


 どうしてを繰り返すニーナを慰めていると、また誰かが檻に近づいて来た。音も無く移動する黒装束とは違う、倉庫内にコツコツと靴音が響く。


 現れたのは獣人の女性だ、犬族だろうか? ピンと立った厚みのある三角耳が頭から飛び出している。


 若く見えるが年齢は多分四十歳以上だ、彼女は黒装束は着ていなかったし顔も隠していない、しかし、その格好は一風変わっていた。


 女の人なのに燕尾服を着ている、またそれが、キツい雰囲気に似合っていた。


「あの、あなた達は何なんですか? ここはいったい何処なんですか?」

「……」


 燕尾服の女は答えてくれない、やはりそんな事は聞いても無駄か、ならばせめてボク達はどうなってしまうのか知りたい。


「ボク達を、どうするつもりなんですか?」

「……お前達は奴隷として売る」

「奴隷……」


 犬耳の燕尾服の女は冷たく言い放った。ニーナだけを狙っていたと思ったが、子供なら誰でも良かったということか……。


 また奴隷だなんて、これで二度目だ。


 それに、燕尾服の女は獣人だ、人族が獣人を奴隷としてさらう事はあるが、獣人が奴隷を扱うとは今まで聞いた事が無い。


「あなたも獣人でしょ? どうしてこんなヒドイことを」

「ビジネスに獣人もクソもあるか」


 当然、こんなのは不当な奴隷取引というやつだ。どうやら、この黒装束の一団はかなり悪い人達みたいだ。


「ちょっと! 私を誰だと思ってい……むぐぐ!」


 突然騒ぎ出したニーナの口を塞ぐ、もう遅いかもしれないが、こちらの素性をぺらぺらと教える事もない、利用されるだけで良いことなど無いのだから。


「騒ぐな、痛い目を見たいのか? なるべく商品に傷はつけたくないが、五月蝿くするなら容赦はしない」

「……むぐぐ」

「静かにしていろ、そうすればここから出るまで身の安全は保証しよう。もっとも、売れた先でどうなるかは知らないが」


 それだけ言うと、燕尾服の女は踵を返した。


「待って下さい」

「……」

「お、お金ならあります、沢山あげますから許してください」


 奴隷商人の目的はお金だ、ビジネスだとこの人も言った、ならば身代金を支払えば開放されるはずだ。


「静かにしろと言うのが聞こえないのか、殺すぞ」


 大金をあげますと言っても本気で取り合ってくれない、お父さんがお金持ちだからと言っても、何を言っても、黙れと言われる。


 子共の戯言など真に受けないというのか、これ以上ヘタに話しかけて怒らせたら、最悪ニーナにも危害が及びかねない。


 取り付く島もない女の態度に、ボクは万策尽きて黙りこくる。


 そんなボクを見下していた燕尾服の女は、またコツコツと踵を鳴らしながら通路の奥へ消えていった。


 こうなっては出来ることなど無い。ボク達が奴隷商人に捕まっている事を、レティシアやトーマスが気づき、この場所を突き止めてくれるのを待つしかない。


「奴隷ですって? この私が奴隷?」

「ニーナ落ち着いて、大きな声出しちゃダメだよ」


 人の言うことなど全く聞かないニーナだが、今回ばかりは無理にでも大人しくしてもらわないと困る。


 言うことを聞かないと本当に痛めつけられるだろう、そしてそれは、ほっぺたを叩かれるくらいじゃ済まない、タコ殴りコースだ。


「落ち着けるわけ無いでしょう! 奴隷なのよ?」


 ダメだ、跳ねっ返りお嬢様は、今にも大声で喚き叫び出しそうだ。


 仕方ない、怒りのガス抜きのためにも、少し話を聞いてやる事にした。


「奴隷って、どんな事するの?」


 なるべく穏便な口調で問いかける。


 奴隷と一口に言っても色々あるだろう、この世界の奴隷とはどんな事をするのか、実はボクもよく分かっていない。


「それは知らないけど、きっと良くないわ、お父様が言ってらしたもの」

「お父さんが?」

「そうよ、奴隷は人じゃないから、人が出来ない事をやらせれば良いんだって」


 ひどい教育だ、奴隷は人じゃないなんて。奴隷の扱いは最悪のケースを想定していたほうが間違い無さそうだ。


「私は奴隷じゃない、人間よ、カーティン家の一人娘なのよ」

「ど、奴隷だって人間だよ、ニーナと何も変わらないよ?」

「うるさいわね、そんなこと今はどうでも良いでしょう? それよりこの状況を何とかしなさいよ」


 どうでも良い問題ではない、しかし、すべてはこの状況を脱してからだ。


 今のボクは武器も無く、ベルトに仕込んだチェーン型ノコギリや、ブーツの隠しポケットにある瞬間強力回復軟膏も無い。


 この檻の壁は鉄格子の一面以外は木製だが、ボクの力ではとても破れそうにない、やっぱりレティシア達を待つしか手立ては無いだろう。


 何とか外へ連絡をつける手段があれば良いのだけど。


「みんなが見つけてくれるまでの辛抱だよ、それまで静かにしていよう?」

「あの無責任なノッポをどう信用しろというの? もうイヤ、帰りたい」


 確かにそうかもしれない、トーマスのことだ、今頃呑気に酒でもかっくらっていても不思議じゃない。……大丈夫だろうなトーマス、信じても。


「きっと大丈夫だから」


 なんとかニーナをなだめる。


「何の根拠があって大丈夫なんて言うのよ、あなたに何が分かるっていうの?」

「それは……」


 仕方ない、あまり思い出したくないが、奴隷落ちしていた時の話をしてニーナを落ち着かせよう。奴隷落ちしても助かるんだよと、元気づけるんだ。


「実は、ボクは以前、奴隷だったことがあるんだ」

「あなたが奴隷?」

「うん、今と同じように奴隷商人に捕まってしまったんだ」


 眠らされて檻に入れられた、今と状況は似ている。


「その後、どうなったのよ」

「大きなお屋敷に連れて行かれて、牢屋に閉じ込められた」

「痛い事とか、されたの?」

「ううん、ギリギリだったけど、何とか助かったよ」


 どうにか、言い聞かせるうちにニーナは大人しくなってきた、いい調子だ。


「そう、じゃあ希望はまだ絶たれていないのね、それで、どうやって奴隷から抜け出したのよ?」

「……山賊にさらわれた」

「……は?」


 ニーナの眉がぐいと寄る。


「バカッ!」

「しーっ、しーっ、静かに」

「何なのよ、奴隷より酷いじゃないの、バカじゃないのもう!」


 もう少しだったのに、どうやら言い聞かせるのは失敗したようだ。


 ニーナは「どうせそんな運命なのよ」などと自暴自棄になっている。まあ、べそをかいてうつむくニーナはさっきよりは静かだけど。


 その時、コツコツと暗闇の通路から足音が聞こえた、あの燕尾服の女の靴の音だ。今騒いでいたことが聞こえたのだろうか? まずい。


「お前達」

「ゴクリ」


 しかし、燕尾服の女の口からは別のセリフが飛び出した。


「今から客を入れる、大事なお客様だ、粗相の無いようにしろ。もし言う事に逆らえば殺す、いいな?」

「ひぃ」


 箱入り娘のニーナは、こんな悪意を向けられたことなど無いのだろう、小さく悲鳴を漏らした。



 黒装束の一人に案内されて来た客は、漆黒のローブに身を包んでいた。燕尾服といい黒装束といい、ここの人はみんな黒ずくめだ。


 お客さんの纏うローブは全身を隠すものだ、フードも目深に被っていて、この薄暗い中、お客さんの顔を確認することも出来ない。性別すら分からなかった。


「よし下がれ」


 燕尾服の女の命令で、黒装束はスッと闇へ溶けた。どうやらこの燕尾服の女は偉い人らしい、姿からして奴隷商の支配人だろう。


 女支配人は、早速黒ローブ姿のお客さんにプレゼンを始める。


「ようこそお出で下さいました、こちらは仕入れたばかりの商品にございます。まだ活きの良い、本日のオススメ商品となります」


 そして、手に収まるほどの木製の筒を客に渡すと、ボク達に向き合った。


「立て」

「……」


 ボクとニーナは女支配人に言われるまま立ち上がった。


「何をしている、毛布をどけろ」

「……」


 ボクとニーナは顔を見合わせる、毛布を脱いでハダカを晒せというのだ。しかし、言う通りにするしかない、逆らったら殺される。


 二人とも言われるまま、毛布を足元に落とした。


「よし、前へ出て口を開けろ」

「……」


 ボクとニーナは鉄格子ギリギリまで前に出て、口を大きく開けた。


 ボク達への指示はすべて女支配人が出すようだ、黒ローブのお客さんは一言も声を発しない。


 お客さんは女支配人から渡された木製の筒をひねる、すると、筒から強い光が発せられた。小型の魔道具だ、元世界にある強力な小型LEDライトと違わぬ性能だ。


 その光で口の中をくまなく調べられた。


「よし、後ろを向いて手を水平に上げろ」

「……」


 ボクとニーナは女支配人に背を向けて手を上げた。


 後ろから当てられている光が、ボク達の全身をなぞっている。その様子は目の前の壁に映し出された自分の影で分かる。


「よし次だ、そのまま四つん這いになり尻を上げろ」

「……」


 ボクとニーナは言われるまま、ワンワンスタイルになった。


 商品として奴隷の健康状態を客に知ってもらうための行為だ、それは理解できるが受け入れ難い、ニーナなどすでに涙目になっていた。


 同じように後ろから光が当てられているのが分かる、特に股間の部分は入念に調べているようだ。


「よし良いぞ、立ってこっちを向け」

「……」


 ボクとニーナは立ち上がり、女支配人達と向き合った。


「分かっているな? これはお前達を買ってもらえるようにアピールするためだ、分かったらそっちのお前、足を広げろ」


 指名されたのはニーナだ、ニーナはしぶしぶ足を肩幅ほど広げる。


「もっとだ、そうしたら自分で開いて見せろ」

「えっ?」


 ニーナは最初、何を言われているのか理解できないようだったが、女支配人がやり方を指示すると、途端に目を剥き、信じられないと、小さく首を横に振った。


 しかし、逆らったら何をされるか知れたものではない。ニーナは目に涙を一杯に貯めながら、悔しそうに下唇を噛む。ボクはとても見ていられなかった。


「よし、次はお前だ、剥いて見せろ」

「えっ?」


 そしてボクも同様だった。


「もっと檻から突き出すように! それで限界か?」

「うう、限界ですぅ」


 ここまでの恥辱を受けたのは、異世界に来てからは初めてだ。それに、こんなのすぐ終わるだろうと思っていたのに、なぜかニーナより長い時間調べられた。


 ニーナ、そんなに見ないで欲しい、キミの時だって見ないでいてあげたじゃないか。


「よし良いだろう、戻れ」


 うう、今微かに、思ったより小さいなって言わなかった? 傷つきます。


 ボクとニーナはそれぞれの毛布を拾って、元の位置へと座る。


「いかがですか? 別の奴隷もご覧になりますか?」


 女支配人は黒ローブ姿のお客さんにそう言うと、連れ立ってどこかへ行ってしまった、別の檻を見て回るのだろう。


 くまなく身体検査されたボクは、檻の端っこで背を丸めて座り込んでいた。


 そこへニーナが後ろから手を伸ばして来て、ボクの股間に掛かっている毛布をつまんで持ち上げようとする。


「やめてよ!」


 さっきので、また厄介なニーナの好奇心に火がついたようだ。


「……ぐすっ」

「ちょっと泣かないでよ、そんなに小さくないわよ? 他の見たこと無いけど」


 なぜか今度はボクが慰められている。


 しかし、おかげでニーナの恐怖心は少し和らいだようだ。ボクは謎のダメージを心に負ってしまったが。



 その後もお客さんは度々来た。やはり誰かは分からないし性別も分からない、みんな同じように黒いローブを纏っていた。


 お客さんは全員一言も発しなかった、すべて女支配人が指示を出す、お客さんの素性は一切不明だ、それがここのルールのようだった。


 お客さんも一人ずつしか招き入れない、お客さん同士の接触も禁止のようだ、完全秘密主義の特殊な奴隷商なのだろう。


 こんなに徹底して秘密にしているのなら、トーマスやレティシアがここを突き止めるのにも時間がかかるかもしれない。


 またお客さんが来たようだ、ボクとニーナは何も言われないままに鉄格子の前で全裸待機した、女支配人のあのキツイ口調で命令されるのが怖いからだ。


 五人目ともなるともう慣れたものだ、羞恥心もどこかへ消えてしまった。どうでも良くなってくる、隣に目を向けるとニーナも暗い顔で淡々と指示に従っていた。


 あやしい奴隷商だが、コンスタントにお客は訪れる。早く助けに来てくれないと、その前にボク売れちゃうかもしれない。



 徐々に気温が低くなってくる、この感じだと夜の七時頃だろうか?


 外光の差し込まない倉庫の中、ゆらめくランプの灯りだけで薄闇は一日中変わらない、そのため、外の様子は一切分からない。


 喋るなと言われているので、女支配人に時間を聞くことも怖くて出来ない。


「あのー、すみませーん、あのー」


 騒いじゃいけないと言われているので、弱々しく通路の先に呼びかける、するとすぐに女支配人が来た。


 女支配人には極力話しかけたくないが、どうしようもないこともある。


「何だ?」

「すみません、トイレ……」


 この檻の中にはトイレが無い、トイレだけはどうしようもない。


 申告すると、女支配人は鉄格子の外からボクに手枷を嵌めた、木製の手枷は両手を同時に拘束する板状のものだ。


 檻から出されると、黒装束の一人がボクに付き添う。そして、檻の裏手にあるトイレへと連れて行かれる。


 当然、自由に歩き回れないので他の檻の中を確認することは出来ないが、女支配人にキツく言われているためか、他の奴隷達は随分静かだ。


 そんな中を歩きながら、ボクは黒装束に小声で申告した。


「あの……う○ち」


 一日我慢していたがもう限界だった。


 今日は黒装束の監視の下でオシッコはしてきた、そのオシッコも手枷されたままでは出来ない、だから黒装束の人にアレをつままれて腰をポンポンと叩かれる、黒装束の人は喋らないので、それが“しろ”という合図だった。


 でも今度はう○ちだ、さすがに手枷を片方だけでも外してくれるだろう。


 そうすれば逃げられるとも思っていた、いつも付き添うこの黒装束の人は背が低く力も弱そうだ、相手が一人ならボクの力で振り切れる。


 ニーナを置いてゆくことになるが、別に人質というわけじゃない、奴隷時代のレティシアのように、ボクの代わりに酷い事をさせられる状況でもない。


 一旦外に出て、トーマス達を連れて戻ってくればいいんだ。


 しかし、う○ちでも手枷を外されることは無かった。


 トイレは和式に近いものなので、しゃがみ込む。暗くてよく見えないが、黒装束の人と目が合った気がする。いくら何でもコレは恥ずかしすぎる。


 当然、している時も監視されている。この暗がりでどこまで見えるか分からないが、音やニオイは絶対分かっちゃう、もう涙目だが、がんばって全部出した。


「終わりました……」


 やはりボクの手枷は外される気配は無い、手が使えないので黒装束の人がオシリを拭いてくれる。


 相変わらず一切声を出さない、何を考えてボクのオシリを拭いているのか。


「うう~」


 前も後ろもおしり拭きシートみたいな物で拭かれた。商品である奴隷が汚れていてはマズイのだろう、仕方ないとは言え、さすがにこれは泣きそうになる。


 結局、逃げることも出来ず檻に戻った。


 床に座り込んでいるニーナは、少しボクを見上げたが、すぐにまた顔を伏せてしまった。ニーナもこの生活にうんざりしているんだ。


 ボク達は商品であるため待遇は悪くない。温かい食事は出て来るし、トイレだって全部やってくれる。ある意味、どこかの悪趣味な貴族様のような生活だ。


 しかし、決定的に違うものがある、人間扱いされていないのだ。こんな檻の中で喋ることもままならない、出荷前の仔羊のように丁寧に飼育されているだけだ。


 早くここから出ないと、今度こそ本当に黒毛ラム肉になってしまう。


 あのナマイキなニーナもずっと口数が少なくなってしまった。当然だ、こんな所に居たら精神がおかしくなる、心が砕けてしまう。

 一応伏せ字にしておきます。

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