表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/105

25 冒険者の休日

 ギルドの受付窓口には、見たことのない若い女の人が居た。


 二十代前半ほどで、ショート天パブロンドの細身のおねーさんだ。


「すみません、あの、グレイゼスさんは?」

「副所長? 奥に居るけど、呼ぶ?」


 ここのギルド職員は、定期的に持ち場が変わるみたいだ。


「いえ、いいです」

「そう? それで何か用? ここは子供の来る所じゃないわよ」


 む、なんだか印象の悪い人だ。 


「えっと、じゃあこれ、お願いします」


 まあ関係ないか、ボクはいつも通り、ゴブリンとオーガ討伐の依頼書を窓口へ提出した。


「えっ、キミ冒険者なの?」

「はい」

「それは悪かったわね、私は今日からヴァーリー支部へ配属になったレナよ、よろしくね」

「あ、ボク優乃です、よろしくおねがいします」


 新人のギルド員さんだったのか、それならボクのことを知らなくても仕方ない、ただの子どもがギルドに迷い込んだと思われたのだろう。


「って、それよりキミ大丈夫なの? オーガだよ?」

「はい、いつもこなしている依頼です」


 実は、この前オーガを倒した時から、ボクとエメリーは少しずつオーガ討伐にも挑戦していた。


「うそでしょ!? 子共がオーガを狩るなんてデタラメすぎよ」

「あ、もちろんボク一人じゃないですよ、あそこにいる彼女と二人です」


 そう言って、ギルド食堂ジルミで水を買っているエメリーを指差す。


「まだ若い女の子じゃないの、あの娘と二人でオーガを倒すって言うの? ちょっと信じられないわね」

「彼女すごく強いんですよ、オーガが相手なら心配ないです」

「そうなの? 人は見かけによらないものね」


 もちろん、ボクのバフ能力ありきの話だ。


 子どものボクと小娘のエメリーでオーガを狩るなんてと、半信半疑のレナだったが、依頼自体はきちんと受けることが出来た。


 準備を整えたボクとエメリーは、さっそくゴブリンとオーガを狩りに、ヴァーリー東門から出発する。


「今日ギルドの受付、新しい人だったよ、見た?」

「あー、女の人でしょ? なんでイケメン来ないかな、いつもの丸メガネの人も良いけど、お爺ちゃんじゃねー」

「やっぱりエメリーもイケメンが良いの?」

「そりゃそうよ、イケメンじゃないと意味ないでしょ」


 今一瞬、すごいこと言われたような気がする。


「じゃあボクは?」

「ユーノ君? だってまだ子どもだし、あ、ウソウソ、ユーノ君は別腹よ」


 エメリーとは、こんなバカな話をしながらも、毎日楽しく狩りをしていた。


 肝心の魔物討伐については、さらに息の合ったコンビとなっていた、以前苦戦したオーガでさえ、今は普通に倒していける。


 戦闘の数をこなすうちに、オーガの攻撃パターンも分かってきたし、連携の緻密さも向上して、PTとしての熟練度が上がったのだ。


 そして、獲物探索の末、目の前には丁度オーガが二体現れた。


「えいっ」≪弓技:ピアシングアロー≫


 エメリーの短弓から放たれた矢が、オーガ二体が重なる方向へ吸い込まれ、その直後、大きな着弾の音が森に響く。


「よし」


 どうやら仕留めたみたいだ。


 魔石を回収するために近づくと、オーガは二体とも、分厚いと一言で表すには足りないその胸板に、どでかい風穴を空けて息絶えていた。


 そして、矢は射線上にある大木の幹をえぐり、深く突き刺さっている、幹からはブスブスと煙が立ち上り、辺りには木がいぶされた匂いが漂う。


「やったね」


 ニコっと無邪気に笑うエメリーに、ボクは苦笑しか返せない、あいも変わらず武技とはとんでもない代物だ。


 さして高級そうにも見えない弓矢で、どうやって大木を穿つほどの威力が出ているのか皆目見当がつかない、甚だ呆れるファンタジー具合だ。


 これが快進撃のもう一つの理由だった、以前、同じようなシチュエーションでゴブリンを倒した事があるけど、その時と比べても段違いに戦技が強化されている。


 どうしてこんなに威力が上がったのか、エメリーが成長したからなのか? 素体が強くなればその分強化の振れ幅も大きくなる。


 それにしても尋常ではない威力だ、仮にボクのバフが強くなったと考えても、それには思い当たるフシがない、まったく不明な現象が起きているのかもしれない。


 そんなボクの心配をよそに、エメリーは力を手に入れた事に満足そうで、最近では早く狩りに行こうと、ボクをせっつかせるほどだった。 


 でもそのおかげで、この一ヶ月で大分お金が溜まった、ギルドに荷物と共に預けてあるお金は七桁を超える、一ヶ月でひゃくまんえんだ、ちょーお金持ちだ。



 数日間のオーガ討伐からヴァーリーへ戻ったボク達は、お金も溜まったし、何日か休暇を取ることにした。


 エメリーは食べ歩きの旅へ向かうようだ、この街に来てからずっとギルドへ入り浸っていたから、どんな食べ物があるのかリサーチに行くらしい。


 本当はボクも連れ出す予定だったみたいだけど、ボクにもちょっとやりたい事があったので、初日は別行動にする。


 ボクはまず銀行へ向かった、お金も貯まってきたので、いつまでもギルドの貸しロッカーに入れておくわけにもいかない。


 街の中心地にある銀行で、口座を開設する。


 身分証明の冒険者証とサインが必要だったんだけど、このサインがちと厄介だった、なにせ冒険者証に書いてある文字とボクの書く日本語は違うのだ。


 銀行の人にすごく怪しまれたけど、偶然グレイゼスさんが入店して来て、それで証人になってもらい何とか口座を開くことが出来た。


「助かりましたグレイゼスさん」

「いやー良かったね、しかし、ギルドカードにキミの国の文字で名前を併記しておいた方がいいね」


 最初からそうしてほしかった、でもボクは素直に感謝して、次にギルドに行った時に冒険者証用の特殊インクで追記するという話で、グレイゼスさんとは別れた。


 銀行には、なけなしの百万ルニーを預ける、主に銀金貨と銀貨が中心なため、二重にした麻袋はかなりの重さになっていた。


 手元に残した三十万ルニーと合わせて、百三十万ルニーが全財産になる、元世界基準では生活はカツカツで厳しいレベルだ、大事に使わなくてはならない。


 両替した三十万ルニーを握りしめ、その足で次の目的地へ向かう、次は銀行の向かいにある超豪華な建物だ。



 神殿のような丸柱の奥に、大きくアーチ型に開いた出入り口が見える、すごく荘厳な雰囲気を醸し出している。


 辺境の街には似つかわしくない立派な建物は、ヴァーリーで一番大きなジュエリーショップだ。


 ボクには目的があり、以前から来たいと思っていた、さっそく店内へ向かう。


「お待ちください」

「へ?」


 入り口を通過しようとしたところ、目の前をフォーマルな黒服紳士が遮った。


「申し訳ございません、当店では、そのようなお召し物でのご来店は、ご遠慮いただいております」

「う、うそ? ボク入れないの?」


 パツキンオールバックの若い黒服紳士は、片眉を上げて、バカにしたようにボクを見下した。


「お引き取りを」


 ……ドレスコードだ、多分何か必要なんだ、高級店だもの。


「あの、どうすれば入れますか?」

「残念ですが、当店では貴方様を入店させる訳にはまいりません」

「どうして? ネクタイですか? スーツですか?」

「申し訳ございません」


 なぜか入店条件を教えてくれない、この店へ来る事を目標に頑張っていたのに。


「どーしてー、どーしてなのー」


 ボクは食い下がる、どうしても入店したい。


 徐々にパツキン黒服の頬がヒク付いてきた、するとパツキン黒服はしゃがみ込み、反対側にもう一人居る別の黒服に気づかれないように、ボクの耳元で囁いた。


「ウルセェぞガキが!」

「ひっ!?」

「テメェみてぇな小汚ねぇ羊ヤローの来る所じゃねーんだよ、面倒なガキはお断りだっつってんだ、分かんねーのか、あ?」


 急変したパツキン黒服にビビりまくったボクは、一発で静かになった、ドレスコード、それに引っかかっていたのは、ボクのくるくる角だった。


 せっかく来たのに、ボクは獣人だから、奴隷にもされちゃうし、このお店にも入れないんだ。


「ごめんなさい……」


 ボクは涙目で小さく言うと、ずりずりと引き下がった。


 ここが今日の目玉だったのに、予定が大幅に狂ってしまった、すごすごとジュエリーショップから遠ざかる。


「ちょ、まてよ!」

「ひいぃ」


 突然後ろから呼び止められ、肩を掴まれた。


 振り向くと、パツキン黒服とは別のイケメン黒服が立っていた、栗毛を耳後ろまで伸ばした少々野暮ったい紳士だ。


 どうしよう、しつこくしたボクを懲らしめるつもりだ、下手すると捕まって、ジュエリーシンジケートでボクの臓器は売買されちゃうかもしれない。


 いや、この異世界に臓器移植の概念は無い、だとすると、やっぱりボクの柔らかな黒毛ラム肉を? そんなのイヤだ……。


「お前、さ、なんでココいんの?」

「ふぇ?」


 あれ、なんだかボクを売り飛ばすのとは雰囲気が違う。


「なんでさ、ココ、来たの?」

「えと、ボク、懐中時計が買いたかったんです」

「ふーん、そっ、か」


 その紳士は前後に少し揺れながら、自分の世界全開で話しかけてきた、そして、あさっての方向を見つめながら、ボクに何か紙切れを差し出した。


「お前にやるよ」


 受け取った小さなカードには周辺の地図が書いてあった、地図には、この店と別の場所に、もうひとつ印が付けてある。


「あの、この地図はいったい?」

「それ? 結構腕のある時計技師でさ、オレもよく行ってるっつーか?」

「はあ」


 どうやら、ボクでも行ける時計屋さんを紹介してくれるみたいだ。


「お前の気持ち、分かるん……だよね、昔さ、やってたからさオレも、冒険者?」

「はぁ、ありがとうございます」

「うん、まあ良いじゃん? がんばればさ」

「……どうも」


 ちょっと特殊な空気出してる紳士だったけど、親切にしてもらったので、軽く会釈しておいた。


「グッドラック」


 その言葉を背に受け、ボクはそそくさとその場を後にした。



 変わった雰囲気の人だったけど、あのイケメン黒服のおかげで懐中時計は手に入りそうだ、さっそく指定された場所へ足を運ぶ。


 少し細い路地の両脇に、金物屋さんや衣料店といった庶民的なお店が並ひ、その一角に紹介された時計屋さんはあった。


 ――ガラガラガラ。


「こんにちは~」


 引き戸を開けて挨拶する、小さなお店だ。


「時計屋さん、だよね?」


 あいさつが帰ってこない、とりあえず、そろりとおじゃまする。


 棚や壁には大ぶりの時計が少し飾ってある、他には、用途がよく分からない置物や小型の家具が並べられていて、古めかしい店内だ。


 さらに奥まで進むと、突き当りの机に、ここの店主らしい丸坊主のおじさんが一人座って、静かに作業をしていた。


 机の上には細々とした部品を入れる木箱がいくつも置いてあり、数個の魔石も転がっている。


 時計の修理だろうか? おじさんは作業に集中している、さっき挨拶したけど、多分まだボクに気がついていないんだ。


「あのー、すみません」


 もう一度声をかけると、やっとおじさんは右目に付けていたルーペを外す。


「あの、懐中時計を探しているのですが、ありますか?」

「あるよ」


 おじさんは机の引き出しから時計を取り出した、なんだかイメージしていた物と違う、ボクの手より大きくて、まるで目覚まし時計みたいな。


 エメリーやザコサの持っていた時計はもっと小さかったし、ボクの欲しいのはこれではなかった。


「あの、もっと小さいのありますか? 予算は二十五万ほどなのですが」

「……あるよ」


 予算を伝えると、おじさんは納得したような顔で席を立ち、ボクの横にある長机の錠前を外す、すると、長机の天板がパカリと二つに折れて蓋が開いた。


 中には、羅紗生地の上にキレイに並べられた様々な時計があり、その一角には懐中時計も並んでいる。


「わあ、すごい」


 ボクは感嘆した、そこにある時計はどれも精緻かつシックな彫金が施され、すごくかっこいい、そして懐中時計もイメージ通りの大きさだった。


「あの、この予算だと、どれがおすすめですか?」

「……」


 ん?


「……ふむ、その予算だとこれらだね」


 ああ良かった、“あるよ”以外も喋ってくれるみたいだ。


 おじさんが選んだ銀製のフタ付き懐中時計は、他と比べると装飾が抑えられている、それがかえって冒険者が持つにはいい感じだ。


 ボクは、すすめられた時計を買うことに決めた。


「これください」

「はい、まいど」


 ふと、時計が並べられたケースの内側から、隣のケースの中が少し見えた。


「あの、この隣のケースには何が入っているんですか?」

「見るかい?」


 そう言うと、おじさんは隣のケースの錠前を外し、木製の蓋を開けて見せてくれた、中には様々なジュエリーが並べられている。


 ちょっと驚いた、なるほど、あの野暮ったいイケメン紳士がこの店を紹介するわけだ、時計が欲しくてもアクセサリーが欲しくてもここなら揃う。


 ボクみたいな獣人なら、確かにこっちの店のほうが来やすい、もしかしたら、この小さな時計屋さんは、さっきの大通り店の系列かもしれない。


 そうだとしても、目的の物を手に入れることが出来るのだから、どちらにしてもありがたい。


 異世界の装飾品は優れている、元世界の技術には劣るのだろうけど、それでも素人目のボクにとっては、どっちも変わりなくキレイだ。


 しかし、相当に高かった、安いリングでもすぐ十万とかする、こんな小さな店でこれなら、あのジュエリーショップではどれだけ高価なものを売っているのか。


「何か買うのかい?」

「いえ、思ったより高くて、なかなか……」


 実は、ボクにはもう一つ目的があった、エメリーへの誕生日プレゼントを買おうと思っていた、エメリーは三日前に十八歳の誕生日を迎えたのだ。


 ちょっと過ぎちゃったけど、それを聞いて何もサプライズ無しっていうのも味気ないと思って。


 そうはいっても、ここにあるような高価な品は想定していない、恋人じゃないんだから、あまり気張っても重いし、ちょっとした物で良かった。


「これならどうだい?」


 安ければ買うと見ぬいたのか、おじさんは小さな箱に数個ずつ入ったアクセサリーを並べてみせた。


「これは?」

「ピアスだよ」

「みんなバラバラですね?」

「バラ売りなんだ、片側無くした人が買いに来たりしてね、ここにあるのはその余ったやつだよ」


 それでも一つ五千から一万ルニーか、元世界の相場と比較しても少し高価だと思う、でも、これなら何とか買えそうだ。


「じゃあ、この黄色いの下さい」

「はい、イエローダイヤモンドのピアスね、時計と合わせて二十四万ルニーです」


 時計が二十三万、ピアスが一万だ。


 ピアス高いかなと思ったが、天真爛漫なエメリーに似合いそうな、黄色のスタッドピアスはこの一個しかなかったし、ボクも気に入ったのでこれにした。


 革製の硬貨入れから金貨ニ枚と銀金貨四枚を取り出し、合わせて二十四万ルニーを支払う、これで、なんとか今日の目的は達成できた。



 思いのほか良い品が手に入り、ホクホク顔で帰路につく、途中、オープンテラスで一人寂しく、お茶を飲んでるエメリーを見つけた。


 今日は早る気持ちを抑えきれず、ボクの私用を優先したけど、休みの初日くらい付き合っても良かったかな。


「エメリー」

「あら、ユーノ君」


 せっかくだから、ボクも一緒にお茶していく事にした。


「買いたい物は見つかった?」

「うん」


 ボクは、注文したベリージャムの乗ったシフォンケーキを食べながら、今日の収穫物を披露した。


「良い時計じゃないの、ユーノ君いつも今何時って聞いてくるもんね」

「うん、時間が分からないと落ち着かない性分なんだ、それでエメリーは? 今日どうしてたの?」


 エメリーも様々なお菓子にありつけたようだ。


 実は、こうやって甘いお菓子が食べられるのも最近の事らしい、それどころか様々な日用品が発展したのも最近だ。


 それは全て勇者のお陰だという、勇者が諸外国を渡り歩き、各地の優れた技術をこの国にもたらしたのだと。


 それを聞いて少し違和感を覚えた、エメリーの話す以前の様子からすると、急に発展しすぎな気もする。


 まあ異世界だし、魔法もある、ボクの思っている以上の発展速度があるのかもしれない、それよりも今は。


「はいこれ、誕生日だったでしょ?」

 

 ここでプレゼントを渡すことにした、無造作に取り出した小さな袋を、はいっと手渡す。


「えっ誕生日プレゼント? うそーうれしー」


 エメリーは、ちょっとオーバーに喜びながら、早速、袋からピアスを出して手のひらに取る。


「あれ?」


 エメリーが袋をもみもみしてもピアスは一つしか出てこない、それはそうだ、一つしか入っていないのだから。


「あ、片方だけなんだけど、黄色のピアス似合うと思って」

「ピアスかー」


 あまり嬉しくない様子だ、予算ギリギリを狙って中途半端なプレゼントになるより、安くてもちゃんとした物を買って来た方が良かったかな。


「やっぱり両方揃ってないとダメかな?」

「ううん、片方でも良いと思うよ、ただなー私、ピアス穴無いんだよね」

「あれっ? あーそっかー」


 女性が苦手なボクが、たまに色気を出して慣れない事をすれば、大体こんなものだ、そんな基本的な事にも気が付かないんだな、ボクは。


「でもありがと、すごく嬉しいよ、大切にするね」


 気にしていないように嬉しいと言ってくれるが、ボクはちょっとバツが悪い感じがした。



 一夜明ける、今日はエメリーと二人で街を散策する予定だ。


 色々な店を見て回るのも、どこに何があるか、この世界の生活レベルはどうなのか、それらを詳しく調査するためにも有意義だ。


 ただ、高級住宅地の南西の方面は行きたくない、あそこには奴隷にされていた屋敷があるから。


 昨日買った銀の懐中時計を眺めながら、宿のロビーで待っていると、エメリーが一階の廊下からやってきた。


「おはよー」

「おはようエメリー、あれ? その耳どうしたの?」


 エメリーの左耳に絆創膏が貼ってある、どうしたんだろう。


「昨日、あれから診療所でピアス穴を開けてもらったの、せっかくユーノ君に貰ったんだし、いい機会だったからね、左だけだけど」


 わざわざボクのプレゼントに合わせて?


「……ありがとう」


 そんな言葉が、無意識に口をついて出た。


「もう、お礼を言うのは私の方でしょ?」


 ちょっと照れながらエメリーも言う。


 なんだか、二人してもじもじした朝になったが、エメリーが元気よく「さ、行きましょ」と、そんな空気を吹き飛ばし、ボク達は街へくり出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ