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14 ミルクといっしょ02

 朝、寝苦しさに目を覚ますと、ボクは、まだ寝ているミルクに抱きつかれていた、長い手足で全身をガッチリとホールドされている。


 まったく身動きが取れない、すっぽんぽんの状態で正面から抱きしめられている、なぜかミルクもすっぽんぽんだ、寝ている間に下着が脱げてしまったのか。


 ボクという快適な抱きまくらをゲットしたミルクは、寝ぼけながら、なおも抱きしめてくる。


「ちょっ、ミル」


 むにゅぅと、まるだしのおっぱいがボクの顔に押し付けられる、ぱふぱふなんて生易しいものじゃない、苦しい、このままではおっぱい窒息死してしまう。


「ぷはぁ」


 ふわふわなおっぱいの谷間から、なんとか上へと顔を出して息をする。


「う、うう……ん」


 ミルクもやっとお目覚めか。


「く、くるしいよミルク」


 おっぱいの間から失礼します、なんて言ってる場合じゃない、ボクは強く抱きしめられて苦しいことを訴えた。


「お? おおっ!? すまん優乃」


 木剣でのテストの時を思い出していた、全力で打っても一ミリも動かなかったあの力で押さえつけられたら、たまったものじゃない。

 

 ボクの危機などつゆ知らず、ミルクはメガネメガネ的なノリで、ブラを探して着けていた。



 朝から少々トLOVEったが、とりあえず干してあったパーカーを着て、部屋の空気を入れ替える。


 お世話になる以上、ただで泊まっている訳にはいかない、無償で狩りの訓練も受けているのだから。


 ボクに手伝えることはないか聞いてみると、家事はどうだと聞かれたので、人並みには出来ると答えた、実は家事全般は得意なんだ。


 なので朝食を用意する、今朝もキノコづくしになったけど、ミルクは飽きもせずバクバクと食べてくれた、きのこの味噌汁も美味しいと飲んでくれた。


 それにしても、ボクが手際よく朝食の用意をしている姿を見ても、ミルクは特に感想は持たなかったみたいだ、褒めてもらえると思ったのに。


 考えてみれば当然だった、異世界の生活は家電も無いし不便だ、全部自分でやらないといけない、それは主に子どもの仕事でもあるのだろう。


 だから異世界の子どもの家事能力は高い、日本の子どもでは到底追いつけないレベルに達している、家事が得意なボクで、やっと人並なんだと思う。


 レティシアの料理はアレだったけど。


 まあそれはいいとして、今作ったお味噌汁だ、台所には数々の調味料が揃っていて、その中に醤油と味噌もあった。


 懐かしい味にびっくりした、それに、醤油と味噌は昔読んだネット小説では定番のチート調味料だ、それが普通に存在している。


「ねえミルク、このお味噌とお醤油は、街に行けば売っているの?」

「うん? いや、それは少々珍しいものでな、ここらでは扱ってはいない、王都に近い街なら手に入ると思うが」

「ふーん」


 手軽には買えないのか、ミルクはすごい冒険者だってドロテオが自慢げに言っていた、そのミルクだからこそ、珍しいものを持っているんだ。


「しかし、よくそれが味噌と醤油だと分かったな?」

「えっ、うん、なんとなくうろ覚えで」

「ふうん? 早く記憶が戻ると良いな」


 危ない、ボクが転移者だと頓珍漢なことを言い出したら、アホな子だと思われる、気持ち悪いと追い出されるかも、ミルクに限ってそんなことはないと思うけど。


 転移者とはどういう存在なのか、ボクの身に何が起きているのか、全くわからない今の状況では、軽々しく転移者のことは口にしないほうが良いと思う。


 朝食を終え、朝のミーティングを始める。


「今日は少し遠出をするぞ、今夜は野営になるからしっかり準備するんだ」


 訓練も本格的になってきた、わくわくもするが、もちろんレジャーではない、生きるための勉強だ、そのつもりで臨まなくては。



 鬱蒼と草木が茂る山の中を進む、ボクが苦しい思いをしたキモ杉の森を思い出す、だけど、今はミルクが居てくれるから全然怖くない。


 冒険者になったなら、未踏の森や洞窟に踏み入ることもあるだろう、いくら子供の精神状態だとしても、そういった恐怖は克服しなくてはならない。


 今回は、山を二つ越えたあたりで折り返してくる予定だ。


 方角を知り、道標の付け方、飲料水の確保の仕方、または地面の状態による歩き方など、冒険者に必要なサバイバル術を勉強しながら進む。


 そうするうちに、段々と陽が傾いてゆく、暗くなる前に野営の準備に入った、一晩中炎を絶やさないための薪を集める。


 今日の道のりも、けして楽なものではなかった、でも、六日間何も食べず、しかも裸足で森を彷徨っていたボクにしてみれば、何も辛くはなかった。


 限界は遙か遠くにあると分かっていたから、もちろん、油断大敵なのも分かるし、ミルクにも言われているから隙はない。


 野営の準備が整う頃には、辺りは大分暗くなってきた、ボクとミルクは焚き火を囲み、持ってきたイノシシ肉を炙る。


 穏やかな時間が流れる、日中は勉強で忙しかったけど、余裕のできた今なら聞ける、魔法のことを。


「ミルク、魔法って、ミルクも使えるの?」

「ふむ、魔法か」


 魔法という非現実な単語を口にするのはまだ抵抗があった、でもミルクの反応は普通だ、どうやらファンタジーな魔法は一般に普及しているみたいだ。


 そして、ついに魔法のことを詳しく聞けた。


 魔法を使うには魔力が必要だ、その魔力は誰にでもあるし、自然の中にもある、どこにでもあるありふれたものらしい。


 ただし、魔力の大きさには個人差があり、ボクの思い描く通りの魔法を使える人は極僅かだという、ミルクもちゃんとした魔法は使えないみたいだ。


「どれ、丁度良いものがある」


 ミルクはそう言うと、バッグからハンカチほどの布切れを取り出した、そこには魔法陣のような記号が書いてある。


「魔法使いは皆、魔法円環という発動触媒を使う、通常、魔法円環は装飾品などにして身に付けるが、この布はその簡易版だ」


 魔法円環は魔道具の一種で、魔法を素早く確実に発動するのに必要だという、そしてそれは、使用者専用に作られている。


 だけど、この布切れは誰でも使える雑貨らしい、街の道具屋さんで売っているものだ。


「こうして、手に持って集中すると」


 次には、ミルクの人差し指に、ライターの火ほどの小さな炎が灯った、しかし、その火はほんの五秒ほどで消えてしまった。


「ふう、これでも調子が良いほうだ、普通の人ならこの倍以上は灯っているし、火ももっと大きい」


 魔法はからきしだ、などと苦笑いしながら、ミルクはその布をボクへ渡す。


「優乃もやってみると良い、これは使う人の魔力量によって出力が違うんだ、簡易的な魔力の測定器としても使えるぞ」


 渡された布切れを見る、ついにボクも魔法を使う時が来た。


 転移者であるボクがこれを使ったら、どれだけ大きな炎が出るだろう、少し緊張しながら、指先から火が出るように集中してみる。


 ……ミルクのようにすぐには出ないが。


 もっともっと集中する、すると、指先からプスプスと煙が出た、と思ったら、その煙もすぐに収まった。

 

「え?」

「え?」


 二人して間抜けな反応をしていた、いまので終わり? みたいな感じだ。

 

「ミルクぅ出ないー」

「ううむ? おかしいな」 


 その後何度か試してみたけど、火が出ることはなかった、それどころか魔力切れですとでもいうように、煙すら出なくなってしまった。


 これはあんまりだ、ボクが転移者なのは疑う余地はない、それなのに、普通の人でも出来る魔法が使えないなんて、チート転移の真逆だ、劣化転移だ。


 ボクは相当残念そうにしていたのだろう、ミルクは「問題ない、元気出せ、私も魔法使えないから」と、しきりに慰めてくれる。


 諦めるしか仕方ない、魔力量は持って生まれた才能で決まる、鍛錬で増やすのも限界があるらしい、それすら地力あっての伸びしろだという。


 心のどこかで魔法チートに期待していた、魔法の使い方さえ分かればボクだってきっと、そう思っていた、でも、ただの夢と消えた。



 翌朝、ボクはもそもそと毛布から出て、熾が残っている焚き火をかき回す、中の赤が表に出て火が復活する。

 

 しばらくしてミルクも起床した、コーヒーとパン、燻製肉をかじって朝食とし、火の始末をして野営場所を出発する。


 ここまで、動物は見かけるが魔物は出てこなかった。


 ボクの見たことのある魔物といえば、赤眼オオカミ(セイクリッドウルフ)のみで、容姿もオオカミに似ていてあまり魔物な感じでもない。


 本当に魔物なんて存在するのか疑っていたが、目的地付近でそれは現れた、今回の目的は、この魔物退治と言って良い、ボクに実際の戦闘を見せるためだ。


 村周辺の魔物は、討伐したばかりでほぼ居ないという、でも、ここまで来ると強力な魔物も棲んでいる。


 遠くに見える魔物は人型だった、しかし、周辺の木々とくらべても異様な大きさだ、三メートルはゆうにある。


 その巨躯は筋肉のカタマリで、とても人間が勝てるようには見えない。


 この魔物はオーガだという、ゲームでもお馴染みの人喰い鬼だ、右手に棍棒を持ち、深緑色の体に襤褸を纏っている。

 

 いくら魔物といえど、生き物をむやみに殺すのはどうかと思ったが、魔物というのは人間に対して害しか与えず、討伐しなければならない対象だという。


 自然界の魔力が作用して、動物や植物が変化したもの、または自然発生的に出現する力の歪みのようなもので、生物と言えるかも怪しい。


 このオーガも知能といえるものは無く、本能のみで武器を拾い、ただ人間を殺すだけの存在だ。


 そして、倒しても数日でリポップし、数ヶ月もすれば元に戻ってしまう、定期的に狩らないと人里になだれ込んでくる場合もある。


 だから駆除するのだと、ミルクは説明してくれた。

 

 この地方は聖なる森が近いため、その浄化の力で魔物の種類も少なく軟弱だと言うが、このオーガはとんでもなく強そうだ。

 

 今からこの巨大な魔物を倒すというのか? 象すら殴り殺せるんじゃないかと思うほどだ、人が対峙するにはあまりにも無謀だが。


「優乃は少し離れて付いてきてくれ」


 ミルクは直刃の片手剣を抜き放つと、オーガの方へ歩き出した。


 一匹で佇んでいたオーガも、近づくとこちらに気づいたようで、グガとかゴォと、言葉にならない声を上げながら、ミルクへ迫ってきた。


 人間より遥かに長いリーチに棍棒を装備した攻撃が、いち早くミルクへと振り下ろされる。


 あぶないと思った瞬間、ミルクはすぅと滑るようにオーガの懐に近づき、そのまま流れるように片手剣を横一文字に薙いだ。


 オーガの動きは、それで一時停止したかのように止まり、右腕から胴へと真っ二つに両断され、その場にゆっくりとバラけた。


 オーガは倒れた、そして、オーガの傍らにあった太い杉の木も同時に切断され、バキバキと枝を折りながら傾き、地面へと倒れ大きな地響きを立てた。


「む、少し力が入りすぎたか」


 ミルクは何気なく言うが、とても信じられない、いくら異世界で常識が通用しないとはいえ、ありえない光景にボクは絶句していた。


 生物であるオーガの肉体を切り裂くことは可能かもしれない、それでも真っ二つというのは想像を超えたものだが。


 しかし、後ろの大木も、まるで大根でも切るかのようにスパっと両断したのは一体どういうことか、理解できる範囲を大幅に越えている。


 少しすると、山の中から先ほどのオーガと同じ吠え声が幾つか聞こえてきた。


 ミルクは先のオーガを速やかに始末する予定だったのだろう、それが力を入れすぎて余計な音を立てた、それで周辺に潜むオーガを呼び寄せてしまったのだ。

 

 現れたのは三匹のオーガだった、三匹は一塊となって突進してくる。


「優乃、戦技を使うからよく見ておけ」


 ちらりとボクに目を向けると、ミルクはオーガへ向け駆け出す。


「そら!」 ≪剣技:ダブルスラッシュ≫


 斜めに長く二線が同時に引かれた、三匹のオーガの胴体はそれに追随するようにバラバラに散らかり、臓物をぶちまける。


 一撃だ、ただの一撃で三匹の巨大なオーガをやっつけてしまった。


 そしてやはり、周囲の何本もの大木は、だるま落としの胴がはじけたように真ん中が消し飛び、けたたましい音を立てながら重なり倒れた。


 攻撃範囲も異常だ、明らかに剣の刃渡りより広い、というか、目の前十メートル以上の範囲の木々が、敵もろともなぎ倒されている。


 鳥も動物も、この事態に逃げ出したのだろう、轟音の止んだ山は静寂に包まれている、ボクは目を丸くして、いつのまにかその場にへたり込んでいた。


「おかしいな……」


 ミルクは剣を握っている自分の右手を眺め呟く。


「優乃、何かやったか?」


 そんな事を聞かれたが、どういう意味なのか見当が付かないので、そのまま呆けていた。


 ミルクは「いや……」とだけ言い、剣の汚れを拭って鞘に収め、座り込んでいるボクに手を差し伸べる。


 ミルクに立たせてもらい、グロい肉塊と変わり果てたオーガを眺める。


 魔物とはいえ人型だ、その無残な姿はさすがに堪える、でも、冒険者になるならこういう事も慣れなくてはならない。


 ミルクは肉塊の側に寄ると、何かを拾い上げた、それは暗い深緑色の石で、五百円硬貨ほどの大きさがある。


「これは魔石だ」


 そう言って、ボクの手に持たせる。


 自然界の魔力で発生する魔物は、死んで肉体が機能しなくなると、内包する魔力が体表の一箇所で結晶化して残るという。


 なぜ結晶化するのかは判明していない、よって、人工的に作り出すことは不可能らしい。


 魔石は魔道具を創り出したり魔法燃料に使う、ただし魔石自体は脆く、武器などに加工することはない。


 魔石はギルドで買い取ってくれるが、それ自体は二束三文で、冒険者にとっての魔石は、主に魔物討伐の証明として使うようだ。


 魔物の種類で大きさや色が違っていて、ギルド窓口の鑑定用スケールで魔石を測り、討伐を証明するという。


 魔石自体の価値は高くなくても、証明に使うため魔石関連の扱いは厳正だ、それはギルド側も同じであり、ド田舎であっても不正はゆるされない。


 そんな事を、オーガの場所から帰りながら聞かされているが、半分くらいしか頭に入ってこなかった、さっきの戦闘が衝撃的過ぎて。



 オーガを倒す目的も果たしたので、また野営場所へ戻ってきた、もう夕方だ、来たときと同じようにここで一泊すれば、明日ちょうど家に帰れる。


 野営の支度を済ませたボクは、今日起きたことを思い返しながら、ボーッと焚き火を眺めていた。


「優乃、おまえは何処から来たんだ?」

「え?」


 唐突だった、一瞬、どこの世界から来たのか聞かれた気がした、でも、そんなことあるわけない、気のせいだ。


 多分、記憶喪失のことを心配して言っているんだと思う、転移者という事実を隠すために、ボクは記憶喪失という事になっているから。

 

「気が付いたら森の中に居たの、みんなの話を聞いていると、昼間ミルクも言っていた聖なる森だと思う」


 嘘は言っていない、記憶喪失と誤解される言い方だけど、堂々と嘘を付けるほど図太くないし、上手く立ちまわる自信もなかった。


「ほう、聖なる森で迷っていたのか?」

「う、うん」


 ミルクは、相変わらず子どもをあやすように優しく語りかけてくる、でも、心なしか若干声のトーンが低くなった気がする。


「そんな所で一人、辛くなかったか?」

「すごく辛かったよ、本当に死んじゃう手前まで行ったから、それに、あの森すごく気味が悪いでしょ?」

「いや、私は森の中は見たことがないんだ」

「そうなんだ? 変な木しかないし、動物も居なくてゾッとする所だったよ」

 

 大変だったなと頭を撫でてくれる。


「それより、昼間のミルクすごかったね、まとめて全部まっぷたつだもん」

「ふふ、そうだな、私も驚いたよ」


 きっと、ボクが居たから張り切りすぎたんだろうな。


 それにしても本当にすごい、ボクには魔法の才能はなかったけど、あの戦技がいつか習得できればと思う。



 さて、そろそろ寝る時間だけど、その前に、ミルクにひとこと言っておくことがある、やたらめったらに抱きしめないでくれと。


 昨夜は、ボクが魔法を使えなかったことで、ミルクも気を使ってボクを抱きまくら代わりにはしなかったが、今夜は抱きまくらにする気まんまんだ。


 オーガを一刀に切り伏せる剛力だ、そんな力で抱きしめられたら、ボクの仔ひつじの体など簡単に〆られてしまう。


「強くしないでね? ギュッてしたらヤダよ?」

「大丈夫だ、今度は痛くしないから」


 今夜は優しく抱いてくれるという、その言葉を信じて、ミルクの毛布に潜り込んだ。


 そして、森の動物も寝静まった頃。


「んっ……、あっ……」


 ボクは後ろから抱きしめられていたのだが、案の定というか、ミルクの抱きしめパワーが強まってきて、苦しくて目が醒めてしまった。


 徐々にキツく締まってくる、流石にこれでは眠れない。


「ミルク、ミルク起きて、ちょっと痛いから」


 それでもミルクに反応はない、そろそろ洒落でなくなってきた、大きな声でミルクを起こす。


「ミル――」


 その瞬間、明らかな故意と思える強い力が加えられ、声を出すことも出来ないほど締め上げられた。


「ガっ……ハっ……」


 ミシミシと悲鳴を上げるボクのアバラ骨は、その力にさして耐えることも出来ず、グシャリと簡単にひしゃげてしまった。


 胸部はクビレが出来たように細まって、同時に口から肺が飛び出す。


 ボクは、釣り上げられた深海魚のように臓物を吐き出した、完全に心臓も潰れているだろう。


 しかし、暫くは意識があり、十分な苦痛と死への恐怖を与えられた後、徐々に意識は暗転していき、ボクの存在はここで潰えた。


 ミルクは、腕の中で息絶える優乃を薄目を開けて確認していた、完全に優乃の息が無くなると、血に濡れた毛布を退かし、優乃の死体を足蹴に転がす。


 しばらくすると、優乃のひしゃげた胸元に紫色の魔石が出現した。


「ふふ、魔王討伐か、楽なもんだな」



「んはぁ! はあ、はあ」


 ボクは飛び起きた。


「……夢か」


 急に俯瞰視点になったから変だと思った、そもそも、魔力の無いボクから魔石が出る設定もオカシイ。


 まったく、昼間あんな光景を見せられては、こんな悪夢だって見る。


 隣を見ると、ミルクはスヤスヤと心地よさそうに寝ている、ボクがうなされて飛び起きたというのに。


 それにしても、早く慣れないと、多少のスプラッタを見ただけで夜眠れなくなるとか、子どもじゃあるまいし、子どもだけど。


 やっぱり子どもの精神は厄介な足枷だと思いつつ、自分の毛布にくるまり、ミルクとは別々で横になる。


 とはいえ、夜に魔物に襲われたらそれも怖いので、毛布は別だがミルクにひっついて寝ることにした、色々怖くて大変だなと思った。

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