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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第二楽章 四番線
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第五十二話 過去

「いや、でも、いきなりあんな虚勢を張るって中々の度胸だよ。」

 僕も素直に感嘆した。

 あれほどまで堂々としていられる奴は中々いないと思った。

「まあ、ね。すっごい怖かったけど。」

 坂堂は疲れきっているようだった。当たり前だ。僕もあの役を受けることになったら、怖くて出来ないだろうし、出来たとしてもおどおどとしてしまうかもしれない。その点、坂堂は物凄い度胸の持ち主だ。

「まあ、草平君の虚勢は素晴らしかったけど、槍形をどこかに行かせてしまったのはこの作戦の短所だよね。」と菩巌院。

「引き続き、血文字の場所を地図にマークして、どこに現れるかを予想していこう。」

 一同、金田に賛成し、また、さっきと同じメンバーで、別れることになった。

 実際に地図を持つことになったのは僕と坂堂のペアで、他二組はメモ帳等に書き入れ、そのあとまた地図にマークすることとなる。

「しかし、なんで僕らが地図係なんだ?」

 独り言のつもりだったが、坂堂は反応した。

「女は地図が読めない。っていう話を聞いたことがある。」

「へえ。なんでだろ。というか、地図が読めないってどういうこと?」

「知らないよ。條原にでも聞けばいいだろ。」

「そうか。」

 地図が読めないってどういうことだ?

 まあ、いいか。

 それより、血文字を探そう。


 * * *


 メトロズ。

 久々に聞いたな。

 かつて、俺が所属していた組織だ。

 所謂、極道だとかヤクザだとかに絡まれ困っている人間を助ける目的で創設された。

 なんでそんな組織を作ったのか。それは創設者に聞かなければわからない。そもそも、創設者すら知らない。

 日常の裏側で暗躍する組織で、極道の敵とはいえ、殺人はしてきたから正義の味方なんて言えるはずもない。そんな組織に身を置いていた。

 それすらも忘れた。

 別に人助けがしたかったわけではないし、人を殺したかったわけでもない。もしかすると興味本位だけで入ったかもしれない。

 でも、メトロズは楽しかった。青春と言ってもいい。

 しかし、それは続かなかった。槍形の言う通り、メトロズは崩壊した。方針の違いから、仲間割れが起こり、内部抗争に発展し、そして、結局、俺のいた派閥が負け、向こう側が今日、イポジェーオクレアートとして活動している。

 言い訳をする訳ではないが、イポジェーオクレアートがメトロズの成れの果てだということは今日気づいた。

 この肥島列章に来て、そして、槍形の血文字を見て、そこで気づいた。

 いや、考えすぎだと思った。だから「思う。」と言ったんだ。

 槍形の登場で限りなく確信に近い疑念は完全に確信へと変わった。

 イポジェーオクレアートはメトロズであった。

 しかし、何故だろう。メトロズ時代、敵対派閥であった人間にほぼ会っていない。

 今までで知っていたのは槍形のみだ。

 そのあたりも気になる。しかし、それは俺の勝手な疑問。なるべく他の四人の迷惑にならないようにしたい。

 とにかく、血文字を探してみるか。


 作戦はこうだ。

 血文字の大体の分布を知る。

 次に、血文字が密集しているところに一人待機する。

 一人か二人が槍形のもとに奇襲する。そうすれば槍形は瞬間移動するだろうから、その後、待機している者が槍形を探す。

 血文字は少しでも歪む(とはいえ、どこまで歪ませるかはよくわからないので三分の一くらい消せばいいかもしれない。)と効果画なくなるので血文字の密集地帯から離れたものは適宜消しておく。

 そうして、転移する場所を絞る。

 また、血文字は使えば消えるので、じゃんじゃん転移させたいところでもある。(しかし、それでは流石に捜索が大変である。)

 俺の役割は血文字と槍形の家の発見。というか全員がそれを担当するのだが、確か、槍形の表札は槍形だから、すぐに見つかるはずだ。

 しかし、何故ここまで、秘密感がないのだろうか。

 家を隠すなら住宅街ってか?

 なんというか、なんとも言えない。

 得策とも言えるし、愚策とも言える。諸刃の剣と言うやつか。だから、金田は能力持ちを見つけられるのだろうか。それとも、途方もなく膨大なネットワークがあるのだろうか。

 つくづく彼女は謎である。

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