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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第二楽章 四番線
49/53

第四十八話 もう少し静かにできないんですかね。

「なんで地図が欲しいんだ?」

 僕は羅々に訊く。

「何か手懸かりがあるかもしれないって金田さんが。」

「もしかすると僕らが考えていることと同じことを考えているかもしれない。」

「え?」

「いや、僕らは血文字の位置をマークしておこうかと思っていて。」

「あー、なるほど。凄い偶然だね。」

 どうやら当たりのようだ。

「じゃ、菩巌院さんにも連絡しておくから集合場所決めといて。」

「わかったー。」

 通話終了。

 坂堂が僕に訊く。

「で、シンクロニシティってことは向こうも同じことを考えていたってこと?」

 坂堂は物分かりが良い。

「そう。僕、携帯の充電残量が少なめだから菩巌院さんには坂堂が連絡して。」

「え、地図のこと?」

「うん。」

 まあ、充電もあと46%あるんだけど、念のため。


 * * *


「へえ、あんまりイチャついた会話、しないんだ。」

 携帯の画面を消すと、金田がそう言ってきた。

「まあ、アピールしてもしょうがないので、外ではおとなしくしてます。」

()()()?」

 ぐ、失言か。

「最近の中学生はお熱いのね。」

「向こうが氷点下なので、プラマイゼロですよ。」

 氷点下というのは言い過ぎだが、長目君は私と一緒に居るだけでいい、というような雰囲気を醸し出しているから、手は繋いでもそこから先はない。

「氷点下、ね。案外向こうはただのチキンなのかもよ?」

「それは無いですね。」

 私は金田の言葉を躊躇なく絶ち切った。あんまり躊躇無さすぎて私もびっくりした。

「長目君は臆病じゃなくて慎重なんです。」

 慎重というのも似合わないんだけど、なんと言うか、よくわからないけど、物足りないようで不満ではないこの距離が私は好きだ。(もっとも、もっと距離が近づいてくれても嬉しいが。)

「・・・、とりあえずこの場所をメモしておこうか。」

 金田はポケットからメモ帳を取り出し、携帯の画面とメモの間で、目を左右させる。

 私は血文字を見る。

 相変わらず血文字は赤黒くそこにあった。

 本当に血で描かれているかはわからないけど。

 携帯が鳴った。

 通話ボタンを押す。

「あ、もしもし?長目君?」

 電話の向こうは長目君だ。

「あのさ、菩巌院さんと連絡取れたから駅前集合で。五番出口ね。」

「わかった。」

 通話終了ボタンを押す。

 金田はもう、メモを取り終えたようだった。

「えっと、五番出口だそうです。」

「ん、ありがとう。」

 金田は車の鍵を開けて「乗って」と私に声をかけた。私は車に乗り込んだ。


 * * *


 肥島列章の血文字。俺はこれを知っている。もう五年も前のことだが。

 敵の能力は「ダル・セーニョ」

 主に瞬間移動をする能力。そして、それを持つ者の名は槍形 涼(やりがた りょう)

 組織の生き残りの一人だ。

 さっき草平に五番出口に行くよう伝えた。

 そろそろ、俺も言わなければならないか。


 * * *


「地図はこれでいいよね。」

 坂堂がコンビニの雑誌置き場から地図を取り出す。大邦市の地図だ。

「いいと思うよ。肥島列章の当たりも詳しく書かれているし。」

 値段は千貨。まあまあする。(貨というのは単位だ。)

「で、どっちが出す?」

「えー、僕は嫌だよ。坂堂が出せよ。」

「いや、俺、先月楽譜買ったから金欠なんだよ。」

「そんなにたくさん買ってないだろ。」

「五冊買った。」

 なんでこいつはそろそろ引退する部活に対してそんなに楽譜を買ったのだろう。(まあ、こいつはマイ楽器持ちだから楽譜を持っていても不思議ではないか。)

「仕方ないな、じゃあ僕が出すから、こんどトロンボーン貸せよ。」

「おう。そのときは俺もサックス借りるから。」

 それでは俺が損するだけだが、まあいいや。

 地図をレジに持っていき、千貨札を出す。消費税の分の百貨銀貨も出す。

「二十貨のお返しとなります。」

 十貨銅貨が二枚返ってきた。

 そのとき坂堂はアイスクリームを買っていたので、僕は軽く幻滅した。

「おい、金欠ってのはどこ行ったんだよ。」

「半分やるから許せよ。」

 そのアイスクリームは容器が二つに別れるタイプのものだったので、僕はそれを受け取り、黙って許した。

 アイスクリームを食べながら五番出口へ向かう。

 

 途中、頭を痛めながらも五番出口についた。

 この辺は住宅街ではないからやや賑わいがある。けれど、遠方から聞こえてくる姦しいほどのエンジン音は僕も坂堂も顔を顰めるほかなった。

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