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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第二楽章 四番線
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第四十五話 肥島列章

 あれから一日、要するに翌日、昨日の記憶はとうに昔のようなものに思えるほど、長く寝た。

 この日は菩巌院に呼び出され、いつもの喫茶店に集まることにした。

 ついでに長谷川の墓参りもしようと思った。

 坂堂も一緒に長谷川の墓に行くようだ。


 * * *


「アポロ」に行く道中坂堂と会った、なんというか、久し振りに会う感じがした。

「アポロ」に着くと、菩巌院と羅々は先に来ていた。この二人の組合せは物凄く新鮮に感じる。

 席に着くなり、すぐに菩巌院は大きな茶封筒を取り出した。やはり、金田からの情報のようだが、やけに薄い。

「金田から情報が来た。が、この薄さと来れば、まあ、何があったかわかるよね?」

 菩巌院は僕らに訊くような話し方をしたけれど、答えは求めてないようで、すぐに茶封筒を開けた。

 取り出されたA4の紙には

「調査失敗 料金は後日返却する。」

 とだけ書かれていた。

 つまり、イポジェーオクレアートの他のメンバーについては四番線のどこかにいることしかわからないというわけだ。

「困ったね、気が遠くなりそうだよ。」

 菩巌院は困ったように笑う。

「あのう、ひょっとすると肥島列章(ひじまれっしょう)にいるかも知れないですね。」

 坂堂はそう言った。

「あ、自信は無いんだけど、今までの敵が全て乗換駅にいたから、もしかするとと思って。」

 成る程。一理ある。

 肥島列章とは四番線の終点で、高級住宅街が建ち並ぶ。最近は何か大型ショッピングモールが近くにできたらしいのでそこに行く人も多い。

「確かにね。でも、肥島列章だとわかってもどの辺りに居るのかわかったものじゃないよね。」

 菩巌院はそう反応した。

「じゃあ、肥島列章の辺りでそれらしき人物がいないか金田さんにも協力してもらって、探せばいいんじゃない?」

 羅々の提案にみんなが頷いた。

「それじゃ、まずは金田を呼ばないとね。」

 菩巌院は携帯を取り出して、電話した。

「あ、よう。・・・うん。オッケー。・・・そうそう、肥島列章の駅前で良いからさ。うん。じゃ、頼んだよ。」

 どうやら肥島列章の駅前で待ち合わせとなったらしい。

「というわけだから、肥島列章に行こう。」

 僕らはアポロを出た。


 * * *


 台柱線から直接四番線に乗り換えることはできなくて、棒反から都代(みやこだい)線に乗り、二つ目の乗原で乗り換える必要がある。

 四番線は大邦市の中心から北西方面へ行く路線。四番川を辿るような区間であるため、四番線という。始発は乗原、終点が肥島列章。要するに端から端まで移動するけれど、この路線は大邦地下鉄で最も駅数が少ない路線で、その数は十七駅。余り長いことはない。

 また、肥島列章から先は私鉄の路線に乗り入れるので県境まで行くこともある。だから四番線の路線に私鉄の車両を見かけることも多い。今回は銀の車体に緑のライン。いつもの四番線の車両だ。

 そんなことで、いつもみたいにしりとりをしていたら、肥島列章に着いた。

 金田は赤いスポーツカーに乗っているらしい。

「ない、ですね。」

 階段を上がり、回りを見ても赤いスポーツカーは無い。待ち合わせは一番出口と言っていたらしいから間違ってはいないはずだけれど。

「あ、あれかな?」

 羅々が指差した先には確かに赤いスポーツカーがあった。って、あれは高級車じゃねえか。

 自動車には興味はないけれどさすがにあれが高級車であることはわかる。「ドルチッシモ」というメーカーだ。

 スポーツカーのもとへ行くと、さすがに金田はいつもみたいなだらしない格好ではなかった。

「あ、帝刃ちゃん。どう?驚いた?」

 金田に問われた菩巌院はそこまで驚いていないようで、寧ろ呆れているようだ。

「じゃ、羅々ちゃん。乗りなよ。」

 金田にいきなり指名された羅々は驚いたものの、まんざらではないようで、いいんですか?といった。

 銃をもらった時みたいに目を光らせていた。どうやら彼女はこういうのが好きなのだろう。僕には全くわからない。

 助手席に乗った羅々は落ち着きが無く(とは言っても足をばたつかせたりしているわけではなく、未だ目の輝きは治まらないということだ。)、楽しそうだった。

「それじゃ、金田と羅々ちゃんが二人。三人だと動きずらいから、僕は一人で行くとして、長目君と草平君で西の方を見て回って。」

 菩巌院は僕らに行き先の指示をした。

 金田と羅々は東、菩巌院は南を探し、北はまた余裕がある人となった。

「無理はしないように。あと、エンジン音は迷惑に成らない範囲で。」

「オッケー。」

 金田は早速やかましくエンジンを鳴らしながら東に向かった。成る程、そういうわけで釘を打ったのか。

 周りの人は迷惑そうな顔をしていて、なんだか恥ずかしく成ったので、さっさと西の方へ向かった。

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