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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
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第四十二話 潔癖

 人はみな、穢れを嫌う。

 いつでも純白で、いつでも無垢でいたい。

 どれ程徹しても結局、黒い粒は見つかり、それを消そうと、白色の塗料を使うけれど、色味が違って、かえって目だって、塗料を剥がせなくなって、結局塗料を全部使ってその色に染まる。

 そこでやっと、塗料を使うことが愚かであることに気づく。

 馬鹿馬鹿しい。

 塗料を使う前にそれに気づいても、黒点のついたことが愚かで、そこから目を背けようと擦ることも愚かで、いつまでも愚かである。


 ◆ ◆ ◆


 いつの間にか縛られ、いつの間にか目隠しされ、為す術もなく、あっという間に椅子に縛られた。

 考えてみれば、私はかなり役立たずなんだと気づいた。

 いつまで経っても銃をとらない。引き金を引かない。いつも彼に甘えていて、結局、人質にされている。

 私はなんのためにここに居るんだろうか。

 それを思うと、どんどん自己嫌悪に陥っていく。

 もう、可愛らしい女の子ではいられない。

 ここに足を踏み入れたなら、純白は望めない。ある意味男女平等でそれは最悪の意味だった。

 自分の身は自分で守れ。守ってもらってはそれは荷物と同義、そんなことの無いようにしなければならない。


 連れてこられたのはどこかの民家の一部屋で、やはり、あっという間に椅子にくくりつけられた。

「今日から、俺が監視役だ。」

 目の前に一人の男が座っている。

 あれ、どっかで見たことがあるような。

 ・・・もしかして田野上ビル立て籠り事件の容疑者の一人かな?

 田野上ビル立て籠り事件とは、4年前に起きた立て籠り事件のことだ。

 主犯は野末 彰(のずえ あきら)、その他に2人メンバーがいる。多分、この男はその一人、名前は忘れたけど、確証はある。

 でも、今は刑務所にいるはず。それがどうしてここにいるのか。

 ・・・あ、そういえば、前に菩巌院さんたちが戦った相手に、過去の事象を再現する能力を持った奴が居るって言ってたっけ。

 多分、それか。

 しかし、どうしよう。どうやって逃げようか。縄もきつく縛られたし、口もガムテープで塞がれた。下手に動けば、殺される。

 だけど、運はあった。銃は取られてない。

 普段ワンピースしか着ない私がどこに銃を隠しているか、それは言いたくないのだけれど、ポケットでは無い。入らないから。

 一応、すぐには取り出せそうな場所にあるけれど、太ももにあるとかそんな女性スパイみたいなところでもない。

 兎に角、この縄が外れない限りはどこにあっても取り出せないし、逃げようも無い。まずはそれを考えよう。


 ハァ刃物もねぇほどけねぇ関節そんなに外れねぇ

 駄目だ、思考を深めるに連れてこのフレーズがご丁寧に私の状況を表したバージョンに替え歌されてやって来る。

 始めてやって来たときには思わず吹き出しそうになったけど、でも、もう馴れた。

 私に圧倒的な筋力があれば、この縄を内側から引きちぎれそうだけど。それも無理だな。

 うーん、私、そんなに大きくないからアニメ見たいにお色気作戦、とかもできないし、はあ。

 駄目だな。これじゃ、助けが来るまでなにもできない。

 ・・・あ、中々いい作戦を思い付いた。けど、怖いな。

 どういう作戦かというと、何らかの方法で男に発砲させる。次に私の能力で私付近の時間の流れを遅くする。

 揺ったりと飛んできた銃弾をうまく使って縄に当てて切る。

 ってものだけど、うまくいくかな。

 他にも無いし、やってみよう。

 ・・・どうしたらこの男を発砲させれるんだろう。

 口も塞がれて、取り敢えずなんか叫べばいいかな。でも、今まで冷静沈着だった美少女(自称)が叫び出したら逆に怪しむよなあ。それで撃ってくれればいいけれど。

 やってみよう。ラレンタンド・ストレット。

 これで半径一メートルの中は回りの60分の1の速さになった。

 外から見るとこの中は60倍の速さで見えるようになるのかな?それならやたらゆっくり椅子をガタガタさせなきゃだけど、それだと倒れるよね。どうしよう。

 ・・・。

 確か私の能力は生物には干渉できないんだから、世界にはが非生物を動かしたところで結局は外からは等速に見えるのかな。

 まあ、いいか。

 私は椅子をガタガタさせた。自分の体を左右に揺らした。このとき外側(半径一メートル圏外)からどう見えたかは知らないが、野末(かと思われる)男は立ち上がった。

「大人しくしろ、でなければ撃つ。」

 むしろ撃って欲しい。

 私は構わず椅子を揺らす。

「大人しくしろ!」

 早く撃ってよ。

「チッ、舐めやがって、ブッ殺してやる。」

 漸く、野末は引き金を引いた。

 そこで私は椅子を止めて、飛んできた。弾丸を見る。

 弾丸の速さは時速1000キロメートル、それを60で割るから大体時速15、6くらい。そんな単純計算でいいのかわからないけれど、目で追える速度になったのは確かだ。

 体を傾け、うまいことして、縄に当てる。

 加減を間違えてしまったので肩を少し切ったけど、これも掠り傷。致命傷ではない。

 その後、弾丸は私の後ろを通り過ぎた。

 よし、これで縄は切れた。

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