表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
39/53

第卅八話 行方不明

 僕は羅々を今すぐにでも追いたい気持ちに刈られた。しかし、検討がつかない。堀田菅崎とは誰なのか。

 汚れた服に不潔だ、とでも言うような通りすがる目を無視して、棒反に戻った。

 羅々が連れていかれたことを菩巌院に相談するか迷ったが、やめた。

 あまり使わない筋肉を使ったため、体の節々が痛く、動く気になれず、重い体を引きずって家にたどり着く。姉のテンションについていける気もしないので、さっさと自分の部屋に戻り、寝た。

 どんどん細くなっていく視界に映る天井を見ながら僕は「呑気なものだよな。」と、一つ罪悪感を残しつつ、僕は眠った。


 * * *


 今晩の夢は変な夢だ。なんというか、意識がはっきりしていて、きっとこれが明晰夢というのだろうか。

「クカカカカカカカカ、よく来たな神前長目。」

 この笑い声は。

「お、お前は、僕の・・・!」

 なんと表現すればいいかわからないあの感覚を適当な言葉で、お茶を濁す。

「クカカカカカカカカ、一つだけ、貴様に伝えることがある。再来年だ。再来年。2017年。貴様の身に何かが起こるが、俺にはわからん。」

 な、なんだ?

「再来年のことより、羅々の居場所はわからないのか?」

 僕はどこからか聞こえる声に問う。さっきまで人影のようなものがあったような気がしたが、いつの間にか消えていて、声はエコーのかかった声だ。僕の声に似ているが、半音くらい低い。

「知らんな、俺は神じゃない。だが、再来年に貴様の身に起こる。」

 そこで、明晰夢は途切れ、僕は夜中の二時によくわからない気分で起きた。

 再来年?

 一体何があるのだろうか。

 謎の恐怖に鳥肌が立ったが、僕は再び、眠った。


 再来年。神前長目はまだ知らない。知る由もない。彼の人生が大きく転換、逆回転、再転換、再回転する体験をことを。でも、それは先の話。再来年までのお楽しみ、今は時の流れに従おう。


 翌朝。僕は早速服を着替えて、外に出た。服装はいつも通りで、玄関を出る瞬間、姉に茶々を入れられた(主に羅々について)が、取り合う気はないので、さっさと自転車に跨がり、棒反に向かった。

 棒反に着いたら、一日乗車券を買い、そして、また島ノ橋の廃工場に向かった。

 もう、連れ去られていて、そして、ここには手がかりがないことはわかっていても、何故かここに来た。

 廃工場を全て歩き回っても羅々の姿はない。小原の死体も血もなかった。

 やはりない。

 しかし、僕にはまだ希望があった。金田の存在だ。

 金田に頼めばもしかしたら、何か分かるかもしれない。僕は夕柱丘に向かった。


 * * *


 金田に事情を話すと、金田は開口一番こう言った。

「多分、無理だな。」

「なんでですか?」

 僕は若干鋭い語調になっていたことに気付き、すみません。と小声で言った。

「まず、堀田がどこに行ったかわからないし、大邦を全て調べるのも時間がかかるでしょ?だから、多分無理。」

 金田は冷静にただただ理由を説明した。

「なんとか、ならないんですか?」

 金田は首を横に振った。

「昨日の敵から何か情報は得られなかったの?」

 僕は答えた。

四番(よつがい)線の駅に仲間がいる、とは言われましたけど、」

 金田は僕の続きを予想して訊く。

「そこに羅々ちゃんがいるとは限らない?」

 僕は頷いた。

 金田は腕組みして、考え込んでいる。

 そうして、時間は刻一刻と過ぎていき、経験上、三番目くらいの長さの5分を過ごした。

「ありがとうございました、金田さん。僕はこれで、おいとまします。」

 結論が出てくるとは思わないこのどんよりとしている空間を僕は抜け出した。

 金田の隠れ家から出て、夕柱丘の駅のそばまで来たら、羅々に電話をかけた。勿論、出るはずがない。

 僕は溜め息をついて、どうしようもない自分に殴りたい気持ちを抑えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ