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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
34/53

第卅三話 どこまでも容赦

 なんなの、この子。

 小原は長目の驚異的な射撃精度の()()()に驚いていた。

 長目の弾は残り一発。それは、今まで、躊躇なしに撃っていた銃を撃たなくなったから小原にもわかった。

 然れど、侮る勿れ。

 もしかすると、着弾するかもしれない。防弾チョッキは着ているが、足とかに当たれば、ひとたまりもない。

 だが、小原にも勝機はある。

 長目が、右目を閉じないことだ。

 激しい怒りで、小原の弱点を忘れたのだろうか。それならば好都合と、小原は幻覚で、建物の崩壊を見せた。

「ふふふふふ、あなたの負けよ、神前長目。喰らいなさい、ファシナション!」


 * * *


 奴は逃げてばかりだ。

 逃がすわけがないだろう。

 突然、廃工場が崩れだした。

 なんだ?なんだ?なんだ?

 今さらになって幻覚か?馬鹿だ。今まで右目を閉じなかったのはそれを待っていたんだよ。

 右目を閉じれば、粉塵も崩落も何もない。

 負けなのは貴様だ。小原市南。

 余裕の表情でいる小原の背後に回る。小原に幻覚は見えているのかわからないが、あっさりと、背後に回れた。

 小原の後頭部に銃を突きつける。その瞬間、小原の背中から余裕の気配は消えた。

「クカカカカ。皮肉だなぁ!小原市南。てめえの幻覚はてめえの目にも映るのか?」

「ふふふふふ、私に勝ったつもりなの?あなたが銃を突きつけている相手が幻覚かもしれないのに?偶然、私の後ろに回れたからって勝ち誇るのも大概にしなさいよ。」

 小原の余裕は僕の発言でまたも消える。

「僕が右目を閉じていない幻覚を自分に見せているのか?」

 小原は銃口から離れて、僕に正対する。

「今のがラストチャンスよ?」

 苦し紛れの捨て台詞は無様に見えた。

 しかし、本当にラストチャンスだ。どうするか。

 ・・・!

「クカカカカ。いや、やはり、貴様の敗けだ。僕は今から能力を使う。」

「あなたの能力は知っているわ、物を乾かす()()の能力。こんなタイミングでは役に立たないわ。」

 構わず僕は能力を発動させた。勿論、理由はあるのだが、成功するかはわからない。なんせ、()()()()()()()()()

 でも、物は試し。

 僕は小原の胸ぐらを掴んで、羅々の体から離れたところに投げ飛ばした。

 自分でも驚く程にすんなりと人を投げ飛ばしていた。

 倒れた小原の体の回りを僕は走り回る。

 その様子を小原は怪訝に見る。

「なんのつもり?私を馬鹿にしているの?」

「クカカカカ。お楽しみはこれからだ。」

 一体何が楽しみかはわからないが、僕は走り回る理由を答えなかった。

 走り回る。以外にも鉄パイプを投げたりもした。勿論、避けられたが。

 5分ほど走っただろうか、きっとこれくらいで大丈夫なはずだ。

「クカカカカ。さて、準備体操もここまでにしよう。」

「準備体操?相当、呑気なのね。あなたの弾丸は残り一発。対して私はまだまだ沢山あるのよ?」

 小原はまだ、余裕の表情でいる。

「そうだ。だから、僕の一発を無駄にしないために、瞬発力勝負をしよう。」

「瞬発力勝負?」

 ざっくり言えば、西部劇のガンマンの速撃ち勝負だ。しかし、ルールは大きく違う。

「貴様はもう、構えていていい。僕は両手を挙げていよう。どうだ?好条件だと思わないか?」

 僕はこんな条件を提示していた。

 端から見れば、小原の方が圧倒的に有利。

 しかし、このあとに提示する条件こそが重要。

「だから、合図は僕のカウントで構わないか?」

 小原の返事はyesだ。

「ふふふふふ、余裕なのね、でも、私はカウントの後に撃つという点以外は容赦はないのよ?」

「いいよ。」

 僕は二、三歩後ずさりして、カウントを始めた。

「3、2、1、ファイア。」

 小原の銃口から弾丸が吐き出される。

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