第廿八話 小原 市南
翌日。
姉と、羅々に挟まれ、なんというか、昨日は、生きた心地のしない話をした。羅々は一時、家に帰ったため、姉の質問攻めにあった。
具体的に言うならキスはしたのだとか、ヤったのかとか、キスはともかくとして、中学生なんだし、ヤることはないだろう。(誘惑はされたけど。)
でもそれは昨日のこと。今日はまた、出撃だ。気を引き締め、棒反に向かう。
今回は島ノ橋に向かう。坂堂たちは笠岡に向かうらしい。
途中までは同じ方向なので、同じ電車に乗る。
相変わらず羅々は寝て、僕ら三人はしりとりをした。
僕がズタズタであるが、笠岡に着きそうになったので、お開きとなった。
「笠岡だね。」
菩巌院が呟く。
「菩巌院さん、健闘を祈ります。」
「うん、長目君たちもね。」
僕は頷く。
坂堂にも話しかける。
「頑張れよ。」
「おう・・・って、なんか、長目、左目、変じゃないか?」
「え、いや、気のせいじゃない?」
バレたのか?別にいいけど、こういうことを隠すと坂堂は物凄く怒る。だから気付かれたくないのだが。
笠岡に着いた。
「じゃ、吉報、待ってるよ。」
菩巌院と坂堂が開いたドアから降りていった。
坂堂は列車が見えなくなるまで手を振っていた。
さて、暇だ。
羅々は寝たので、僕はやっぱり携帯を弄くることにした。今回は水平思考クイズだ。
* * *
島ノ橋に着いた。
羅々は一駅前に既に起きていて、僕と一緒にクイズを解いていたが、結局解けなかった。
ホームから地上に出て、菩巌院に渡された資料の場所に向かう。ちなみに今回は羅々は携帯を持ってきた。というのも、いつの間にか買ってもらったらしい。これで、はぐれない。
資料の場所とは、とある廃工場。普段は立ち入り禁止らしいが、セキュリティはなく、町中から少し離れたところにあるので、まず、バレない。
廃工場に入ると、異臭などの不快感に襲われた。
「うぅー臭い。」
羅々は僕の肩甲骨辺りに顔を押し付けた。僕だって臭いのだが。
「しかし、陰気なところだなあ。」
廃工場の中は機械類が沢山置いてあり、製造中であろう製品を見ると、ネジを作る会社のようだ。他にもボルトとか、ナットとかある。
見たことのないほどの大きなネジや、一体どういうところで使うのかわからないほど小さいボルトとかがあった。
「誰?私の家に入るのは。」
女の声。今回の敵は女か。
「こんな陰気なところが家だなんて、あなたはさぞ大変な暮らしをしているのね。」
羅々が女の声に反応する。
別にそんな捨て台詞みたいなこと言わなくて良いのに。ちなみに油臭い異臭にはなれた。
「へえ、ボーイフレンドにいつまでもくっついてお荷物にでもなるんじゃないの?條原羅々。」
お前も言われているぞ。
羅々はなにも言い返せなくて歯痒そうにしている。羅々は頭が良いので、ここで、「そっちこそ陰気じゃない!」なんて水掛け論になりそうなことは言わない。
「おい、なんで僕らの名前を知っている?」
「おい、だなんてレディに向けて言う言葉じゃないわ。ちゃんと、小原 市南っていう名前があるの。」
「質問に答えろ。何故僕らの名を知っている?」
小原は黙った。
そしていきなり笑いだした。
「ク、アハハハハハ。そんなこともわからないの?私達の仲間を散々殺しといて?」
なんとなく、わかった。
「じゃあ、質問を変える。僕らのことをどこまで知っている?」
「それを教えたら、私が不利じゃない?」
なるほど、馬鹿ではないようだ。
「っていうか、コソコソしてないで出てきなさいよ。」
羅々がどこかに叫ぶ。というか、まだ、僕にくっついてるのかよ。
「嫌だ。」
廃工場とは言えど、凄くボロボロで、スカスカというわけではなく、建物も原型は留めていて、隠れる場所ならいくらでもある。
しかし、出てきてもらわないと僕らも防戦一方で大変なんだけど。
取り合えず、上、左、前、右、後ろ(羅々にはあたらないように)に、撃った。
どれも手応えはなくて、すべて当たらず。
「闇雲に撃ってもダメ。本当に下手な鉄砲は数撃っても当たらないの。」
小原の声は上から降ってくる。
リロードしてまた、構える。うーむむむむ?でも、どこにいるんだ?
闇雲に撃ってもダメって、闇雲以外にどうやって撃つんだ?探せば良いのかなあ?
「羅々、ちょっとここで、待ってて、別にそんなに離れないから。」
羅々はうん。と答えた。
僕は二階部分に上がり、回りを見回すが、誰も居ない。困ったな。けれども、当たったりするかも知れない、という、淡い期待を込めて、前、後ろ、右、左、上に発砲した。もちろん当たらず。
これで、弾を10発使った。持ってきたのは30発。残り、20発。もう、でたらめに撃ちたくはない。
二階部分は事務所のような感じで、応接、休憩室、会議室等があった。トイレ含め、すべての部屋をまわる。トイレにしては男女両方の個室も見た。
しかし、誰も居ない。いるのはネズミや、虫で、あとはイタズラで書かれた下品な落書きのみだった。
まさかと思ってゴミ箱の中も見る。しかし、居ない。いるのはネズミの死骸だ。
「どこだ?」
これでは復讐とか以前の問題だ。まずは一刻も早く敵を見つけなければ。




