第廿六話 青空ノ下ニ隻眼ノ少年ハ何ヲ思ウ
菩巌院は坂堂と別れた後、レンタカーを借りた。自分の車はもっているのだが、家が遠いので、レンタカーの方がいいと、判断したのだ。
曲田に向け、車を走らせる。
大邦都高速を走りながら長目に電話をかける。
「もしもし、長目君?」
電話は少ししてから繋がった。
「菩巌院さん、どうしたんですか?」
「いや、長目君がどこにいるのか聞いてなかったから、教えてほしくてね。」
「あ、すいません。あとで、住所を送っときます。」
「ありがとう。」
電話は切れた。
長目の声は少し小さく、疲れているように思えた。
どうしたんだろうか。
菩巌院は白い軽自動車を走らせた。
* * *
菩巌院との通話から十数分。僕は裏路地に身を潜め、菩巌院の到着を待った。
白い軽自動車が路地の入り口に止まった。中から出てきたのは菩巌院だった。
僕を見た瞬間に驚いた。
「長目君!どうしたのそれ!?」
それとはどっちだろうか。
「こいつは僕が殺した。左目は潰された。多分もう治らない。」
菩巌院は少し黙り込んで、僕に、服を着よう、と勧めた。
次に、僕を車に乗せた。
多岐の死体はそこに放っておいた。理由はよくわからないけれど。
菩巌院は制限速度ギリギリの速さで、夕柱丘に向かった。金田に腕の良い外科医を探して貰うのか。
大邦都高速をスピードをあげ、走る。島ノ橋ジャンクションで首都環状第二に変え夕柱丘で降りる。
暫くして、車は止まった。どこかの駐車場のようだ。
「長目君、目は大丈夫?」
「大丈夫です。でも、じわじわと痛いです。」
「耐えれそう?」
はい、と答えると、菩巌院は待っててね、と車から離れていった。あの方向は金田のいるところだ。
潰れた左目をあげる。しかし、光はない。それどころか、目からどろりとしたものが出てきて、車を汚してしまいそうになった。
なにも思うことができなくなって、フロントガラスに写る空を見ていた。空は青く、どこまでも広がっていて、でも、その映像は右側しか映らなくて、左側の光は失われたままだった。
左目を無くし、人を殺め、僕はこれからどうなってしまうんだろうか。
ふと、羅々を置いてきたことを思い出して、申し訳なくなった。
本当に、これからどうなるんだろう。




