第廿三話 有馬 重恵
スイッチ男に向け、引き金を引いた。そしてここで、「プレスト・ストレット」
自分とスイッチ男の間は6メートルくらいだろうか。半径6メートルに設定。
弾丸はいつもより速く飛んだ。当然だ。
スイッチの男は呟いた。
「1754年、アッドレ・アッカー事件。」
なんのことだ?というか、1754年って、200年くらい前だぞ?なんでそんなことを呟く?
すると、銃弾は奇妙なことに、スイッチの男を避け、後ろの壁にぶつかった。
「なんだと!?」
もう一発撃つが、またもや外れる。何故?
スイッチ男は立ち上がる。
僕は間合いを開けた。
なんだ?こいつの能力は?
「さて、坂堂草平と菩巌院帝刃に問う。」
!?
何故、名前を?
もう、情報が回ったのか?それだとしたら迂闊に自己紹介とかはできない。(そもそもしないけれど。)
「貴様らの目的はなんだ?」
「目的?名前が回っているならそれくらいはわかるだろう。」
菩巌院は問い返す。
「フフフ、そうでもなくて、貴様らの情報は身なりと名前だけでね。まあ、仇討ちといったところか?」
勘がいいのか、実は知っているのかわからないけれど、目的は正解だ。
「図星か。」
答えない僕らを見て、スイッチ男は呟く。
そんなスイッチ男に菩巌院が訊く。
「僕らの名前がバレてんだったらそっちも教えろよ?」
「名前くらいなら教えてもいいか。俺の名は堀田 菅崎。能力までは教えんぞ?」
堀田菅崎。苗字が二つあるような名前だなあ。
「そっちの包丁男は?」
菩巌院が問う。
すると、堀田の口から出た名前は衝撃的なものだった。
「有馬 重恵」
「な、ふざけんなよ。真面目に答えろ。」と菩巌院。
有馬重恵とは、15年前に凶悪な連続通り魔事件を起こした犯人だ。殺害された人は5人、重症者は10人を越える。動機は快楽の為。なんとも胸くその悪い話だ。
しかし、既に逮捕されて7,8年前に死刑が執行されたはず。同姓同名の別人か?いや、ニュースでは凶器は包丁と報道されてたから間違いない。
では、何故、ここに有馬がいる?
死者を蘇らす能力なのか?いや、でも、そんな能力、存在するのか?
「てめえの能力は死者を蘇らす能力なのか?」
堀田に訊いた。しかし、
「違う、違うよ。まったく、有馬重恵と訊いた瞬間そんな浅はかな考えをするなんて。馬鹿馬鹿しい。」
違う。というか、こいつ、かなりうざい。
「じゃあ、なんだ?てめえの能力と有馬の能力は。」
菩巌院の問いに堀田は「なら、貴様らの能力も教えろよ?」と返した。
「まさか、能力持ちではないということは、無いだろう?」
チッ。そこまでは回っていたか。
菩巌院さん、教えない方がいいです。と、小声で話すも、
「俺の能力は、グラーヴェ。生物含め、物体を重くする能力だ。」
「ほ、菩巌院さんッ!」
菩巌院はまあまあ、と僕を落ち着かせる。そして、堀田に訊く。
「こっちのガキの能力はこいつが教える意思を持たない限り、教えん。とにかく、僕は教えたんだからてめえの能力を教えろよ。」
堀田はこう答えた。
「フ、フ、馬鹿め。そう、やすやすと教えるかよ。俺の能力を。でも、まあ、騙すのも嫌だから有馬は、能力持ちではないって、ことは教えてやる。」
有馬は能力持ちではない?
「嘘かも知れないですよ。」
菩巌院に訊く。
「いや、それはない。僕らを騙すんなら、堀田が自分の能力を偽ればいい。有馬の能力を偽るなんて遠回りなことする意味がない。」
確かに。
なら、本当に有馬は能力持ちではない?
ということは堀田が何かしら有馬を呼び出す能力であること。一体どんな能力なんだ?
2018年7月31日 タイトルを変更しました。




