第廿話 多紀 派金
蓋の博物館に入館料(450)を払って入館した。
羅々は早速現れた巨大な瓶の蓋に目を光らせた。
「うわぁ、すっごぉい。」
無邪気に館内を歩き回る羅々を落ち着かせながら敵を探す。今回は観光ではない。
「うーん、どこだ?」
僕は館内を隅々まで探した。
プラスチック館、金属館、など、名前のわりに都営で、更に割りと大きいこの博物館で人探しは大変だ。
困ったな、どうするか。
頭を抱えた僕は後方から視線を感じた。
視線の主は僕と同じぐらいの人だった。見た目は中学生だが、本当はわからない。
彼は僕と目が合うと僕に近づいた。
え、なんだよ。
いきなり胸ぐらを捕まれて床に叩きつけられた。
「痛っ!」
奴は僕に向かってこう言った。
「お前が原山さんを殺したんだな?」
こいつが敵なのかも知れない。
* * *
奴等が別行動をしたようです。部下からの報告だ。奴等とは菩巌院らのことである。
「フ、成る程、さっさと片付けようってのか。馬鹿な奴等だ。固まるべきだったのだ。」
部下も頷いた。
彼らの敵は全員能力持ち。今までは一人だけだったが今度からは二人かも知れないし、人数を上回るかも知れない。
男はまた、馬鹿な奴等だ。と喉で嗤った
* * *
まあ、正直に言うと、というか、屁理屈を言うと僕ではなく、そして、僕らではなく、あの人影が犯人なのだが。
「いや、僕らがやったんじゃなくて、」
「じゃあ誰が殺したんだ!」
あー、面倒だ。
「もう、僕ってことでいいよ。で、なんの用なの?」
絶対仇討ちだろうな。
「原山さんの仇を討ちに来た。」
正解のようだ。
「僕を殺しに来たの?」
「当たり前だ!」
ここは博物館なので、あまり大声を出されたくないし、現にこちらをチラチラと見てくる人が何人かいる。
「ここで?」
「フン、貴様も俺に用があるのだろう?ついて来い!」
僕はついていった。
羅々とははぐれてしまった。あまり巻き込みたくないので、連絡はしない。というか、連絡できない。
連れてかれたのは地下鉄の駅だった。しかし、ゴミが散乱しており今は使われていないらしい。
「ここを貴様の墓場にしてやる!」
「ここは臭いから嫌だ。」
「その余裕も今のうちだ!」
奴は手から赤い半透明の弓を出した。成る程、やはり能力持ちか。
「俺は、多紀 派金能力は『アルコ』見ての通り、弓を出す能力だ。」
「ご丁寧にどうも。僕はなにも明かさないよ。」
「名前なら知っている、神前長目というのだろう?」
あらら、バレてた。
「さあ、死ね!」
多紀は矢を放った。
僕は避けた。そして、銃を取り出す。弾はどれ程あるかは知らない。けれど、一発も撃っていないから15発くらいはあると思う。替えの弾はない。あきれたガンマンだ。
「銃?」
多紀は驚いた。そりゃあ武装ぐらいするだろ。
僕は銃口を多紀に向けて、引き金を引く。残念ながら当たらず。
「当たらんようじゃあ、怖くねぇっ!」
多紀は更に矢を放った。
僕は避ける。しかし、雑に避けて転んだので擦りむいた。痛い。
「さあさあ、ぼさっとしてると当たるぞぉ!」
更に一発。
まずい、避けられない。どうするか。
僕はおもいっきり前転した。あまりにも雑に前転したため、後頭部をがっつりぶつけ、僕は唸る。
「うううー。」
「フン、無様だなぁ!本当に原山さんを殺ったのかぁ!?」
やってないって。
「いや、やってないって。」
「まだ、言うか!」
その台詞をそっくり返したいです。
しっかし、僕一人かあ。ちょっとまずいかも知れない。