表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
18/53

第十七話 長電話

 翌日。この日は敵の情報がないため、休みということになった。

「っていうか、僕の能力って役立つか?」

 僕は真剣に考えていた。

 血液を乾かすったってできるの?そんなこと。ナイフを投げたり銃を撃つくらいしかできないじゃないか。いや、別にそれでもいいか。

 ピンポーン。

 インターホンが鳴った。

 今の時間帯は家に僕しかいないので、僕が玄関に向かう。

 覗き穴から見ると、宅配業者だった。

 チェーンを外して、鍵を開ける。

「はい。」

「神前様ですか?」

 配達されたものを確認した。

「はい。」

「では、ここにサインをお願いします。」

 紙とボールペンが渡される。

 宛先は僕の名前だから、僕の名前でいいだろう。扉を下敷きにして名前を書いた。

「はい、ありがとうございます。」

 荷物が渡された。

 大きさはティッシュ箱三個くらいか。重さは1キログラム以上あるかも知れない。もっと重いな。

 僕は悪戦苦闘しながらガムテープを剥がし、段ボールを開く。現れたのは小さなアタッシュケースみたいな金属製の箱だった。

 僕はこの中身を知っている。

 金属製の箱を開くと、昨日貰った銃を貰った。説明書付きだ。

 説明書は100ページくらいあって読む気が失せた。

 銃の箱を僕は自分の部屋の押し入れに入れた。ここなら家族も開けない。だからバレないと思う。


 * * *


 同刻。坂堂は銃を配達され、それを家族の目の届かないところに置いた。

 坂堂には一つ気になることがあった。

 原山が幾度か呟いた「ストレット」という単語についてだ。

 坂堂は何か手がかりがあるのではないかと菩巌院に電話した。

 一度は繋がらなかったものの、二回目で繋がった。

「もしもし?」

「こんにちは菩巌院さん。あの、今日は聞きたいことがあって。」

 菩巌院は申し訳なそうにこう言った。

「うーん、ごめん。ちょっと忙しいからあまり長話はできないよ?」

 坂堂は大丈夫です、と答えた。

「ストレットってなんですか?」

「ストレット?原山が呟いていたあれ?」

「そうです。」

「あー、あれはね、長くなりそうだからメールしとくね。」

 そんなに長いのか。

「わかりました、一段落ついてからで大丈夫ですので、ゆっくりでいいですよ。」

「お気遣いありがと。じゃ。」

 しかし、通話が切れた後すぐにメールが届いた。コピペなのか、やたらとタイピングが速いのか。

 その内容はこうだ。

『能力におけるストレットとは、自分の能力の効果範囲を定めるものである。

 効果範囲が広すぎる能力(アッチェレランドやラルゴ等の時間操作系など)の発動によって社会を混乱させるため、効果範囲を定めなくてはならなかったために開発された。

 発動は比較的簡単で、範囲を決めてストレット、と呟くだけで発動する。効果範囲は発動者の心臓を中心とした半径になる。また、効果範囲を発言する必要はなく、頭で思い浮かべるのでもよい。』

 何かの資料から引用したのだろうか。文章が辞書の文のようだ。

 試しにやってみよう。

 坂堂は2メートルと思い浮かべ、「プレスト、ストレット」と呟いた

 特に変化はない。というより、周りに動く物がないので変化を感じない。

 坂堂は落ちていたボールペンを壁に向かって投げる。壁との距離は2メートル以上はある。

 投げた瞬間ものすごく速く飛んだが、2メートル程離れたところで、減速した。しかし、落ちない。そして壁にぶつかった。そしたら、もちろん落ちた。

 坂堂はストレットを覚えたのだ。というか、もとから使えたのだが。

 これは條原に教えるべきだ。と、思ったが、坂堂は女子と話すのが極端に苦手なのを思い出した。いや、重大な問題なのだが、坂堂はよく忘れる。ということで長目に連絡することにした。

 すぐに出た。暇だったのだろうか。

「もしもし?坂堂?」

「そうそう。あのさ、條原に知らせて欲しいんだけど。」

「えー。羅々にぃ?お前が言えよぉ。」

 なんだよ、てめえの彼女だろうが。

「俺の性格を覚えろ。」

「覚えてるって、女子と話すと、上がっちゃうんだろ?」

 長目のからかうような口調にややイライラとしつつ、

「ああ、上がる、上がる。上がり過ぎて高血圧になって倒れる。それで病院に2回担ぎ込まれた。」

「3回じゃなかったっけ?」

「え?小6のときの沢口と、2年のときの丹崎だろ?」

「あと、新島。」

「あー、あれね。」

 話が脱線しているのに気付いた。

「んで、條原に頼む。」

「しょうがないなあ。で、なんて言えばいい?」

「ああ、ほら、原山がちょくちょく呟いてた、ストレットってのあるだろ?あれを教えてやってくれ。」

 長目は少し間を開けた。

「えーっとあれか。え、でもやり方わかんねえよ。」

「なあに簡単だよ。範囲を決めて、ストレットって言う。終わり、完了、発動、社会に迷惑かけない、気遣い、な、便利だろ?」

「あーはいはい、理解、理解、了解、伝えます、方法を知れる、社会に迷惑かけない、素晴らしい。確かに便利だな。」

 電話が切れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ