表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
17/53

第十六話 銃ですよ!

 あれから一日。

 昨日は特に悪い夢を見てないが、やはり気分は悪い。

 菩巌院から連絡があり、例のごとく棒反で集合となった。

 自転車で走る。

 夏は暑く、家から出たときからモワモワとした不快な空気が体にまとわりついている。首もとの汗はべたべたしていて、気持ち悪い。

 そんな格闘をしていたら棒反についた。

 既に菩巌院はいた。しかし、さすがに暑かったのか、今日はスーツでなく、カジュアルな服装だ。

 隣にはTシャツ姿の坂堂もいた。こいつはおしゃれじゃないな。そういう僕も似たような服装である。

「やあ、長目君。今日も暑いね。」

「そうですね、天気予報では今週は猛暑が続くようです。」

 菩巌院はふーん、と頷いた。

「あ、いたいた。ごめん。遅れて。」

 顔の前で手を合わせた羅々がやってきた。こいつの服装は昨日と同様にワンピースである。色は黄色。他の種類の服はないのか。

「みんな集まったみたいだね。今日は昨日のことがあって、武装すべきと言うことで、取り敢えず金田のとこにいくよ。」

 地下鉄に乗り込めば、案の定羅々は寝て、案の定男子三人はしりとりをしている。

 珍しく僕が菩巌院と一対一になったり、その後ボロボロになったり、結局僕の戦績で一番いいのは後にも先にもこれだけだろう。


 夕柱丘に着いた。

 前と同じ道を歩いて、前と同じ、狭い路地というよりはただの建物と建物の間を抜けて、金田ところにたどり着いた。

「相変わらず気味の悪いところだな。」

 僕の独り言に坂堂が反応した。

「え、なに?ビビってんの?」

「ち、違うって。」

 扉を開けてると金田がホットパンツとだらしないTシャツという、眩しいというか、面倒だったんだなと思うような服装で出迎えた。目移りはしない。

「よーぅこそ!金田屋へ!著名人の不倫、スキャンダル、過激発言から隣の美人さんの色恋事情まで、何でもどうぞ!って帝刃ちゃんか。」

 よく考えたよな、そのセリフと思った。前回と一字一句(たぶん)違わない。

「用意しといたよ。ただ、」

 金田は僕らを一瞥した。

「あの子達にあんなの持たせてもいいの?」

「警察沙汰になったらウチの親父がどうにかする。」

「流石、菩巌院グループの御曹司っ!」

 菩巌院グループ?聞いたことがないな。いや、聞いてはいけないかもしれない。

「ボウヤたち、こっちに来て。」

 金田は僕らを手招きした。

「あ、まずはお嬢ちゃんのほう。ここの一番奥の部屋ね。」

 めっちゃ暗い廊下があるのだが、暗所恐怖症の羅々は通れるのか?

「あ、あの私、暗いところ苦手なんですけど。」

「じゃあ私と後で行こう。」

 そして、僕らに「ボウヤたちは男の子だし大丈夫だよね。」と言われ、隠れ暗所恐怖症の坂堂は苦労した。


「ここ?」

 僕は指定された部屋に到着した。

 扉を開けると、電灯がついている明るい部屋があった。部屋にはテーブルがあったのだが、テーブルの上の物が異常だった。

「銃?」

 置かれていたのはクルクル回らないやつだった。名前は知らん。(オートマチックピストルって言います。)

 貰ってっていいのかなあ?

 銃のみ置かれていて、西部劇のガンマンがつけてそうな銃を入れるアレはなかった。

 持ち上げると、ずっしりとした重さがあった。

「ちょっと、重いな。」

 片手で撃つのは無理そうだ。

 僕は銃を持って、部屋を出た。また、暗い廊下を明るい方へ向かう。

 武装ってこれのことだろうか。防弾チョッキとかは着ないのかな。やっぱり重いのかな。ああ、暑そうだな。

 菩巌院がいた。

「あ、菩巌院さん、これ。貰ってっていいんですか?」

 菩巌院は、もちろん、と答えた。

「でも、使い方がわからないです。」

「それは、後で教える。あ、草平君だ。」

 次に暗闇から現れたのは坂堂だ。こいつも僕と同じような銃を持ってきた。

「やっぱり、空手じゃ、ろくに闘えないですか?」

 坂堂はもう察したようだ。

「そうだね、実践には余り向かないかもしれない。日常の中の護身術となら十分だけど、やっぱり銃が出てくると、ねえ。」

 尤もだ。

 しばらくして羅々が出て来た。しかし、

「なんでグラサンなんかつけてるんだ?」

 羅々はやや大きいサングラスをつけて来た。

「似合う?」

「似合わない。」

 僕は即答した。

 ちぇ、と呟いて外した羅々。しかし、すぐにキラキラした目を見せてきた。

「見てよこれ、ジャジャーン。」

 羅々僕らと同じような銃を見せびらかした。

「あ、うん。僕も貰った。」

 僕は銃を示した。

「え、嘘。えー。」

 羅々はしょげてしまった。

「そんなにがっかりしないで。」

 金田は羅々を励ました。完全に羅々の姉のようなポジションだ。なんか、あったのか?

「よし、みんな集まったようだね。」

 菩巌院は僕らにこう話した。

「この銃はプレゼントなんだけど、この国の法律で、未成年の銃の保持は犯罪だから、しばらくは僕が預かっとくね。」

 この国では成人は免許を取得することで、一人一挺まで「携帯」できる。(家に置いておく分には五挺まで。)しかし、未成年は携帯も所持も許可されてない。故に、私有地を除くところでは菩巌院が持っていることになった。(私有地であるなら、「生物への発砲をしない」という条件付きで、免許を持たない者も発砲を許可されている。) 

「ちなみに、僕のはこれ。」

 と菩巌院が見せたのはクルクル回るやつだ。

「草平君のと、長目君のは、シグ・ザヴエルっていう国防隊が実際に使っているもの。」

 国防隊とは国家防衛隊の略称である。

「羅々ちゃんのは、スプリングフィールド・アーモリーっていうやつ。」

 そして、と付け加える。

「三人の銃はオートマチックっていうやつで、僕のこれはリボルバーっていうやつ。どっちにもメリットもデメリットがあるから、あんまり文句は言わないといて。」

 へえ。

「ありがとうございます。」

 僕の礼に菩巌院はどういたしまして、と答えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ