第十五話 決着
原山が銃を持った。
原山の銃はクルクル回る奴だ、名前は知らん。(リボルバーって言います。)
込み上げる恐怖をなんとか抑える。
さっきまでの猛攻が途絶えてしまった。
グラーヴェで重くしようとするも、発動しない。プレストは使い道がない。もちろん、長目のセッコもだ。
「どうした?終わりか?銃が出てきたら怖くて動けないのか?」
くそ。
格闘術を覚えていなく、能力もろくに使えない自分が不甲斐ない。
いつぞやかに読んだ漫画じゃ、主人公は銃をすらすらと避けたり、弾を手で止めたりと、色々やっていたけど、そんなことはできない。
やはり、銃は怖い。
「さあ、来いよ?」
原山は銃を天井に向けて撃った。
どうする?
・・・いけるか?
僕は坂堂と菩巌院に目でサインをした。通じたかはわからないが、見ていたはずだ。
僕はナイフを拾って投げた。もちろん、能力で対応される。しかし、後ろから坂堂が襲う。
頼む、当たるな。
僕は願う。
原山はナイフを叩き落とし、背後の坂堂を向く。しかし、菩巌院が原山の背後から襲う。
撃たれるより速く、坂堂が銃を落とす。そして、菩巌院のパンチがヒットする。
よし、僕は心の中でガッツポーズする。
原山が怯んでいる隙に落ちた銃を坂堂は僕の方に蹴飛ばす。
形勢逆転だ。
僕は弾の数を確認したかったが、方法がわからないのでやめた。
「くそ。だが、銃を奪った程度で調子に乗るなよ!」
原山は二挺目を取り出した。
「マジかよ、まだあったのか。」
坂堂は驚く。
どこに隠していたのかはわからないが、いきなり現れた二挺目に僕らは退く。
撃つか?
僕は銃を構えた。
「おいおい、あぶねえだろ!」坂堂は射程から素早く避ける。
銃というものは案外重たく、見よう見まねで構えるだけでも辛い。
僕は重い引き金をなんとか引いた。
うるさい音と共に弾が発射される。
反動で倒れそうになるのを堪える。
命中はしなかった。というか、明後日どころでない位置に着弾した。
「素人が、銃はこうやって撃つんだよ。」
原山は簡単に銃を撃った。1度経験するとわかるが、発砲がいかに難いかがよくわかる。
乾いた音と共に弾は僕の頬をかする。
「ッ!」
外したか?いや、わざとだろう。
僕は傷から出てくる血を拭う。
菩巌院さんに渡した方がいいだろうか。しかし、どうやって?
菩巌院の位置は、原山を挟んで反対側。投げても届かないだろうし、向かうのも難い。どうする?
僕の目的は、銃を菩巌院に渡すことと決まった。
「おいおい、また、びびってるよ。なんだ?もう満足か?」
煽られるけれど、銃というのが怖い。
坂堂が叫んだ。
「ビビっていられねえ!俺はいく!」
走って原山に向かっていった。
僕は坂堂の勇気に何かを感じた。こうしてはいられない。なにを呆けていたんだ。
僕も走って原山に向かう。
「ほう。」
原山は坂堂に銃を向けた。
しかし、坂堂は怯えずに向かう。
「避けられまい。」
どうにか原山の銃口の向きを変えたいが、間に合わない。
引き金の指に力が入る。
そして、引き金が引かれた。
その時、
「グラーヴェ!」
菩巌院が叫んだ。
「しまっ、」原山が虚をつかれたように言う。
もう遅い。
銃は重くなり、原山の右手は下に吸い寄せられるように落ちる。
原山は咄嗟に銃を手放す。しかし、重くされたのは右手の方だった。
「いくつか、質問に答えて貰おうか。」
と、菩巌院は原山を見下ろした。
「山路君のことか?」
「いや、それは全くの嘘だ。」
菩巌院は否定する。そして、GPと書かれたあの紙を見せた。
「これはなんだ?」
原山は目を見開く。予想外だったのだろうか。
「・・・成る程な。俺がそれを吐くと思うか?」
「吐かなければ撃つ。」
菩巌院は冷酷だ。銃口を原山の頭につける。
「だがな、吐いても撃たれるんだ。俺は。」
「そんなことはしない。もっとも、グラーヴェを解く気はないがな。」
菩巌院は再び、紙について聞いた。
「これはなんなんだ?」
「その前に、」
原山は意外な質問を返した。
「本当に撃つのか?」
「ああ。」
菩巌院はそう答えた。
「だったら、言ってやる。この組織の名前は、」
原山は少しためて、言った。
「イポジェーオクレアート」
すると、乾いた銃声がした。たちまち、原山のこめかみからいろいろな物が飛び出した。
羅々は口を押さえた。僕もとても不快だった。
ひどくグロテスクではないが、やはり気分はよくない。
菩巌院は銃声のした方を見た。そこにはちょうど逃げた人影があった。きっと奴が犯人だ。
「く、しかし、いい情報を得た。イポジェーオクレアート。二度と忘れないぞこの名は。」
菩巌院は誰かに誓った。きっと自分自身に。
2018年7月23日 加筆、訂正しました。