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大邦都地下鉄物語  作者: 切咲絢徒
第一楽章 台柱線
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第十五話 決着

 原山が銃を持った。

 原山の銃はクルクル回る奴だ、名前は知らん。(リボルバーって言います。)

 込み上げる恐怖をなんとか抑える。

 さっきまでの猛攻が途絶えてしまった。

 グラーヴェで重くしようとするも、発動しない。プレストは使い道がない。もちろん、長目のセッコもだ。

「どうした?終わりか?銃が出てきたら怖くて動けないのか?」

 くそ。

 格闘術を覚えていなく、能力もろくに使えない自分が不甲斐ない。

 いつぞやかに読んだ漫画じゃ、主人公は銃をすらすらと避けたり、弾を手で止めたりと、色々やっていたけど、そんなことはできない。

 やはり、銃は怖い。

「さあ、来いよ?」

 原山は銃を天井に向けて撃った。

 どうする?

 ・・・いけるか?

 僕は坂堂と菩巌院に目でサインをした。通じたかはわからないが、見ていたはずだ。

 僕はナイフを拾って投げた。もちろん、能力で対応される。しかし、後ろから坂堂が襲う。

 頼む、当たるな。

 僕は願う。

 原山はナイフを叩き落とし、背後の坂堂を向く。しかし、菩巌院が原山の背後から襲う。

 撃たれるより速く、坂堂が銃を落とす。そして、菩巌院のパンチがヒットする。

 よし、僕は心の中でガッツポーズする。

 原山が怯んでいる隙に落ちた銃を坂堂は僕の方に蹴飛ばす。

 形勢逆転だ。

 僕は弾の数を確認したかったが、方法がわからないのでやめた。

「くそ。だが、銃を奪った程度で調子に乗るなよ!」

 原山は二挺目を取り出した。

「マジかよ、まだあったのか。」

 坂堂は驚く。

 どこに隠していたのかはわからないが、いきなり現れた二挺目に僕らは退く。

 撃つか?

 僕は銃を構えた。

「おいおい、あぶねえだろ!」坂堂は射程から素早く避ける。

 銃というものは案外重たく、見よう見まねで構えるだけでも辛い。

 僕は重い引き金をなんとか引いた。

 うるさい音と共に弾が発射される。

 反動で倒れそうになるのを堪える。

 命中はしなかった。というか、明後日どころでない位置に着弾した。

「素人が、銃はこうやって撃つんだよ。」

 原山は簡単に銃を撃った。1度経験するとわかるが、発砲がいかに難いかがよくわかる。

 乾いた音と共に弾は僕の頬をかする。

「ッ!」

 外したか?いや、わざとだろう。

 僕は傷から出てくる血を拭う。

 菩巌院さんに渡した方がいいだろうか。しかし、どうやって?

 菩巌院の位置は、原山を挟んで反対側。投げても届かないだろうし、向かうのも難い。どうする?

 僕の目的は、銃を菩巌院に渡すことと決まった。

「おいおい、また、びびってるよ。なんだ?もう満足か?」

 煽られるけれど、銃というのが怖い。

 坂堂が叫んだ。

「ビビっていられねえ!俺はいく!」

 走って原山に向かっていった。

 僕は坂堂の勇気に何かを感じた。こうしてはいられない。なにを呆けていたんだ。

 僕も走って原山に向かう。

「ほう。」

 原山は坂堂に銃を向けた。

 しかし、坂堂は怯えずに向かう。

「避けられまい。」

 どうにか原山の銃口の向きを変えたいが、間に合わない。

 引き金の指に力が入る。

 そして、引き金が引かれた。

 その時、

「グラーヴェ!」

 菩巌院が叫んだ。

「しまっ、」原山が虚をつかれたように言う。

 もう遅い。

 銃は重くなり、原山の右手は下に吸い寄せられるように落ちる。

 原山は咄嗟に銃を手放す。しかし、重くされたのは右手の方だった。

「いくつか、質問に答えて貰おうか。」

 と、菩巌院は原山を見下ろした。

「山路君のことか?」

「いや、それは全くの嘘だ。」

 菩巌院は否定する。そして、GPと書かれたあの紙を見せた。

「これはなんだ?」

 原山は目を見開く。予想外だったのだろうか。

「・・・成る程な。俺がそれを吐くと思うか?」

「吐かなければ撃つ。」

 菩巌院は冷酷だ。銃口を原山の頭につける。

「だがな、吐いても撃たれるんだ。俺は。」

「そんなことはしない。もっとも、グラーヴェを解く気はないがな。」

 菩巌院は再び、紙について聞いた。

「これはなんなんだ?」

「その前に、」

 原山は意外な質問を返した。

「本当に撃つのか?」

「ああ。」

 菩巌院はそう答えた。

「だったら、言ってやる。この組織の名前は、」

 原山は少しためて、言った。

「イポジェーオクレアート」

 すると、乾いた銃声がした。たちまち、原山のこめかみからいろいろな物が飛び出した。

 羅々は口を押さえた。僕もとても不快だった。

 ひどくグロテスクではないが、やはり気分はよくない。

 菩巌院は銃声のした方を見た。そこにはちょうど逃げた人影があった。きっと奴が犯人だ。

「く、しかし、いい情報を得た。イポジェーオクレアート。二度と忘れないぞこの名は。」

 菩巌院は誰かに誓った。きっと自分自身に。

 2018年7月23日 加筆、訂正しました。

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