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空腹は度を越えると痛みに変わり、痛みも過ぎれば足首にまとわりついてくる。

すでに一歩を踏み出すことすらかなわないと思った。

前後も分からない森を彷徨い、木石を踏み抜いた足は地面を踏みしめるたびに痛覚を的確に刺激し引き摺るたびに鉄の臭いを立ち昇らせる。

今夜は雲が厚く月の光も無い。

もうこのまま突っ伏してしまえばなるようになるかも知られない。

運良く人のいい行商人に見つけてもらえれば物乞いでもして食料の一つでも譲ってくれないだろうか。

そんな世捨て人のようなことすら脳裏に浮かんだ時だった。

木々の間に一瞬明かりが見えた。

一瞬だったがはっきり見えた。

松明の明かりに照らされたレンガの壁が。

希望とはこのことか。

体の芯が少し暖かくなってきて、ぼやけた視界がはっきりとしてきた。さっきまでしつこく鼻をついていた鉄の臭いは自分がまだ息をしていることを確認するためのものさしになっている。

はるか後ろに置いてきた大きな荷物を取りに戻ろうかとすら思えてくる。

両手に握り締めた鋼の塊を杖にして木々の間を突き進むたび明かりが近づいてくる。

やっとの思いで森を抜け、暗闇から逃げるように明かりの中に飛び込んだ。


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