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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
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91 食料調達


 裕二はバチルを連れて村人の食料を確保する為、モンスターを狩りに出かけようとした。しかし、テパニーゼが村長から事前に聞いた話しでは、この辺りのモンスターは食べられない種類が多いと言う。


「なんでも、肉に毒が含まれているらしく、そのモンスターが大量発生していて他の動物も減っているそうです」

「な、なんだとぉ」


 タルソット村近くの森。その向こうには小さな山がいくつかある。山に行ければ食料があるかも知れないが、そのモンスターが森にたくさんいるので、それを確かめる事が出来ないと言う。

 その事も村の食料不足に拍車をかけていた。


「それはなんてモンスターだ?」

「え……私はモンスターの名前までは」

「バチル聞いてるか?」

「知らんのニャ」


 ならば直接村長に聞くしかない。四人は外に出て村長を探す。すると、ちょうど村長も村の混乱を納めこちらへ戻ってくるところだった。


「あ、お礼が遅れて申し訳ありません。村を救っていただきありがとうございます」

「いや、それは良いですけど、この辺りのモンスターについて詳しく聞いても良いですか?」

「ええ、もちろん。と言うか、今森にいるのはほとんどウッドリザードですね。毒があるので食用にならず困っているのです」

「ああ、あれか」


 ウッドリザード、と言う事なら裕二は詳しい。かつてドワーフと共に何度も倒し、食べた事もある。


「あれは毒抜きの方法を知っていれば食べられますよ。簡単に捕まえる方法もあるし」

「え、そうなのですか!?」

「食べた本人が言うから間違いないです」

「ユージは毒も食べれるのニャ!」


 ウッドリザードの毒抜きはそれほど難しくはない。まずウッドリザードを解体し肉を切り分ける。その肉を塩漬けにして地中に埋める。

 ブロック肉なら数日。早く食べるなら薄切りにして埋める。薄切りなら数時間経ってから湯通ししてアクを取る。

 肉の色は元々黒っぽい色だが、それが落ちて白っぽくなったら食べられる。


「先に二〜三体狩ってそれを薄切りにしましょう」

「おお、なるほど! では何かお手伝い出来る事は?」

「そしたら、森の外に荷車の用意をお願いします。必要分が狩れたらすぐ運んで加工しましょう。そうすれば今日中に食べられます。後で簡単な狩り方も教えますよ」


 ウッドリザードは倒木に化け、獲物を待って狩りをする。なのでその攻撃範囲は狭い。ある程度なら村人でも近づける。向こうは村人に気づいても滅多に動く事はない。攻撃範囲に入れば動きは速いが、移動はそれほどでもないので、全力で走れば村人でも逃げられる。

 その攻撃範囲の外から、数種の薬草を鍋で煮る。その水蒸気をウッドリザードに扇ぐ。すると、薬草の効果でウッドリザードは寝てしまう。

 ウッドリザードが寝ると、隠していた手足が出てくるのでわかる。そうなったらトドメを刺す。


「それで肉は確保出来るな。後は……」


 裕二はそこで村のハズレに目を向ける。そこには数本の木があるが、その木はたくさんの鳥がとまっていた。


「つーかあれ、食えないのか?」

「ユージ。あれがバナックだ」

「バナック……」


 ヘスの言うバナックと言う鳥。裕二もつい最近ギルドで駆除の依頼を見たはずだ。

 頭が良く狡猾で収穫時に現れる。捕まえても肉がほとんどないので誰も捕まえようとはしない厄介者。それが村ハズレの木にたくさんとまっている。その理由を村長が話す。


「あれは山に行く前に休んでるだけですね。奴らが食うものはこの村に何もないですから」

「山……ちょっと待て」


 そう言うと裕二は村ハズレまで走り出した。そして、バナックのいる木にたどり着く。遅れてヘス、バチル、テパニーゼ、村長もやってきた。

 バナックは裕二がここをすぐには登らないとわかっているのか逃げる様子はない。


「どうしたユージ。あんなの食えないぞ」

「いや違う。まあ見とけ」


 裕二は上着で隠しながら以前、パーリッド中央通りの老婆の店で買った使役術の札を十枚程出す。そして、それを空中に放り投げた。すると、札はあっという間に燃え尽きる。


「全員降りてこい!」


 裕二がそう叫ぶと、樹上のバナック達は一斉に飛び立ち裕二の前に降りてきた。


「クワックワッ」

「なんニャ! 鳥肉集まったニャ」

「お姉様、これは……」

「……なるほど! 小動物ならその札も使えるな。でもユージ。これどうすんだ?」

「だから見とけって」


 裕二は集まったバナックを見渡す。およそ二百はいそうだ。全てのバナックは裕二の方を向き「クワックワッ」と鳴いている。


「良し! お前ら、山に行って食べられる木の実とか野草を取ってこい! たくさんここに集めろ」

「クワックワッ!」


 裕二の号令でバナックは一斉に飛び立ち、山の方へ飛んで行った。後はしばらくすれば、この場にバナックの集めた食料が持ってこられるだろう。

 その光景に村長コーべも目を丸くして驚いている。


「おお、こんな事が出来るなんて。さすがは魔術師様」

「いや、これ魔術師じゃなくても使えますよ。魔力は必要ですけどね。残りの札は差し上げるので、魔力のありそうな村人に使わせて下さい」

「よ、よろしいのですか! この様な高価な……」

「ああ……スペンドラで買ったら高価ですけど、パーリッドで買ったからそれ程でもないので」


 これで食料の目処は立った。後は裕二とバチルがウッドリザードを狩り、ヘスとテパニーゼがツェトランド家の地図と情報を書き、メディッサバイパーの肝臓のスープを作っておけば良い。


「じゃあバチル。行くか」

「行くのニャ!」



「じゃあ俺達もユージの指示通りやるか」

「はい!」


 ヘスとテパニーゼは裕二から言われたツェトランド家邸宅までの地図。邸内の部屋の配置。テパニーゼの母、エニメーラの見た目の特徴。それらの情報を資料としてまとめる。

 肝臓のスープに関して、作り方は普通のスープと同じなので、村の女性達に手伝ってもらう。

 村人達はウッドリザードが届けられたら、毒抜きも行わなければならないので忙しくなるだろう。

 だが、それを指示したのは村を救ったユージ、バチル、テパニーゼ、ヘス。その彼らが村の食料を確保する為に提案した事。それを村長から聞いている。

 空腹な上に大変な労働にはなるが、彼らの表情は決して暗いものではない。

 裕二達のお陰で、村はにわかに活気づいてきた。


 ――やはりお姉様の言う事は正しかった。ユージ様が来たら村の邪教徒と言う疑い、それに食料問題も解決しつつある。お父様の治療にも目処がたち、残るはステンドット子爵のみ。ほんの短い間でここまでやってしまうなんて……やはりお姉様は最初からそこまで見抜いていたんだわ。ユージ様とヘス様も素晴らしいですが、お姉様がいたからこそ……ああ、お姉様。


「おーい、始めるぞ」

「は、はい。ヘス様」


 ――ですが……このヘス様。どこかで見た事あるような……


「テパニーゼも早く家に帰りたいだろうが、もう少しの辛抱だな」


 ヘスは笑顔でそう言う。テパニーゼがここまで来るのは大変だっただろう。詳しい話しを聞いているヘスにも、それが良くわかる。その気持ちは、ヘスの表情に労いの笑顔となって表れていた。

 しかし、ひとつ事が終われば考えるのは次の事。まだこの事態は終わってはいない。


「ええ、お母様も心配していると思います。ですが……ステンドット子爵はどうなるのでしょうか? お姉様とユージ様なら力ずくで追い払う事は可能でしょうが……」

「大丈夫。あと数日で全て終わる」

「全て?」

「そう、全てだ」


 ヘスの言う全てとはどういう意味なのか。

 裕二とバチルが彼らを力ずくでどうにかしたとしても、別にステンドット子爵が失脚する訳ではない。この二人が手に負えないなら、普通は更なる兵力が投入されるだろう。それでもダメなら他領地の援軍や国軍の登場さえあり得る。戦いはどちらかが死に絶えるまでエスカレートする可能性もない訳でない。

 しかし、ヘスは数日で終わると言う。

 ヘスもテパニーゼがバチルを信頼するのと同じように、裕二を信頼しているのだろう。

 テパニーゼも既に、バチルと同じ位の信頼をユージに感じている。テパニーゼでは到底成し得ない事、その道筋をいとも容易く作り出した彼らを信じているのは当然だが、それでも、テパニーゼ自身にはその先が見えている訳ではない。


 ――ですが……彼らならきっと、私などでは思いもよらない事をやってのけるのでしょうね。


「テパニーゼは邸宅までの目印かなんかあったら教えてくれ」

「はい!」



「ニャハッ、ニャハッ、ニャハッハッハー!」

「おい、張り切りすぎじゃねーか?」

「ユージ遅いのニャ! これで百体目ニャー!」


 裕二とバチルは森に入ってすぐ、ウッドリザードを見つけた。すると裕二が剣を出す前にバチルが飛びかかり、そこら中のウッドリザードを狂ったように倒しまくる。

 しかし、さすがに百体と言うことは無く、今は二十体目だ。それでもかなり凄い事ではある。


「お前一体目から百体目って言ってるだろ」

「ニャッハッハッハ。関係ないのニャ。常に百体目の気持ちでシェフのバターソテーなのニャ!」


 バチルはそう言いながらウッドリザードを森の外までぶん投げる。そこに置いておけば、後から村人が荷車を持ってきて回収してくれる。


「あと、十万体狩るニャアアア!」

「いや、もういらん」


 必要なのは数日分の食料なので、もうこれで間に合うだろう。バチルはまだ狩り足りないようだが、他にもする事はあるのでバチルに帰るよう促す。


「早めに終わったからのんびり帰るか」

「もう帰るニャ?」


 バチルはやや不満気ではあるが、裕二はこの後ツェトランド家の邸宅に行かねばならないのでしぶしぶ了承する。


「帰りながら聞きたい事もあるからな」

「なんニャ。申してみるのニャ」


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