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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
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90 ステンドット子爵の企み


 キリック団長とその配下の兵士はタルソット村から立ち去り、裕二とヘスは村に残った。


「ニャッハッハッハ、さすがユージなのニャ」

「ニャッハッハッハじゃねーよ! いきなり襲いかかってきやがって」


 久しぶりに会ったバチルは相変わらずの様子だ。それに対応する裕二も別に怒ってはいないが、礼儀としてツッコミをいれておく。


「ユージ。その人を紹介してくれよ」

「お姉様。私にもユージ様をご紹介下さい」


 村の中は落ち着いたとは言えない状況ではあるが、とりあえず誰一人怪我することもなく事態は収まった。その対応は村長コーべに任せ、四人は自己紹介しながら村長の家に向かう。


「ユージ様。ヘス様。村を救っていただきありがとうございます」


 テパニーゼは丁寧にお礼をした。裕二もそれに応える。


「いえいえ。なんでこうなったのか未だに良くわからないですけどね。と言うか説明を聞きたいんだけど」

「私が詳しく教えてやるのニャ」

「いや、お前じゃなくてテパニーゼの方が良いな」


 テパニーゼは今回の事を最初から話し始めた。

 父親の治療法を探して家を飛び出した事。その途中でバチルに救われた事。そして、この村に来てその事情を知り何とか助けようとした事。それを時間をかけて詳しく話した。

 裕二とヘスもその内容を聞くと想像以上に複雑な過程を経てきたのだと知った。そして、まだ解決していない問題がいくつか残っていると。それについて裕二が話しだす。


「なるほど、だいたいわかった。てことは問題はあと三つだな」

「三つニャ?」

「ああ、まずはテパニーゼのお父さんの治療。そして、村の食料問題。最後にステンドット子爵の今後の動向だ」


 こちらもひとつひとつ片付けて行く。

 最初にテパニーゼの父親。レドル・ツェトランド伯爵の治療だ。


「お姉様に聞くとユージ様ならその方法をご存知だと……」

「ミズルガルバイパーか……ヘス。メディッサバイパーとは違うんだろ?」

「その通りなんだけど……話しがおかしいな」

「どういう事だ?」


 ヘスによると、ミズルガルバイパーはメディッサバイパーよりもヴィシェルヘイムの奥に棲息しこの近辺に現れるのは考えにくい。ただその毒に対する治療法がないと言うのは本当らしい。


「そうなのですか……ではお父様は……」

「いや慌てるな。俺がおかしいと言ったのはその症状だ。通常ミズルガルバイパーにやられると、その日のうちに死んでしまう。既にひと月持ってるのは変だって事だ」


 テパニーゼの父親は毒を受けてから既にひと月以上は経過している。これはヘスによるとあり得ないらしい。

 だが、テパニーゼの話しでは、三ヶ月かけて毒がまわり石化しながら死亡すると言う。


「それはどう考えてもメディッサバイパーの症状だ」

「だよな。俺も思った」


 裕二もそれに同意する。続けてヘスが答える。


「おそらくステンドットが他の医者を手配したのもそこから騙す為なんじゃないか?」


 つまり、ステンドット子爵は意図的にメディッサバイパーとミズルガルバイパーを間違えさせた。ミズルガルバイパーなら治療法がないので、それを探されても見つかる訳がない。それがメディッサバイパーだと知るにしてもかなりの時間がかかる。テパニーゼひとりでそこまで調べるのは難しいだろう。ツェトランド家の者がそれを調べろと臣下に言っても、治療法がないと言うのは嘘にならない。


「あー、そう言う事か。わかったぞ!」


 裕二は今までの話しを聞き何かに気づいたようだ。


「どうしたユージ?」

「ヘスは俺がメディッサバイパーを倒したの知っているよな」

「ああ、もちろん」

「話してなかったけど、そのメディッサバイパーには魔石で作られた矢尻が刺さってたんだ」

「矢尻?」


 裕二は内ポケットから出す振りをしながら異次元ポケットから透明な矢尻を出して全員に見せた。


「これはメディッサバイパーに刺さっていた矢尻だ。ドワーフの魔術師によると、これに使われた術式は魔人の文字で構成されていると言う」


 その確認はヘスの魔食いの指輪で行い、ほぼ間違いないと言う結論に達した。そして、状況的にその術式の内容はメディッサバイパーの使役。おそらく、それを行ったのはステンドット。その目的はレドル・ツェトランド伯爵の暗殺。だが、それには至らなかった。しかし、幸いにも伯爵は毒を受け、放っとけばいずれ死ぬ状態。なのですぐに治療されないようモンスターの名前を偽った。

 おそらく、ミズルガルバイパーは最初からこの地にいない。何故ならパーチは裕二が倒したメディッサバイパーの情報は知っていたが、ミズルガルバイパーの事は一言も話していない。そんなモンスターが未だそこらをウロウロしているのに、倒されたメディッサバイパーの情報があって倒されていないミズルガルバイパーの情報がないのは無理がある。

 仮にミズルガルバイパーが誰かに倒されていたとして、裕二のように異次元ポケットがあるなら、ミズルガルバイパーを倒しても隠す事が出来るが、一般冒険者がそんなのを倒せば大騒ぎになり、すぐに噂が広まるだろう。

 

「ステンドット子爵がそこまで考えていたなんて……でも確かに辻褄は合います」

「メディッサバイパーとミズルガルバイパーの名前を入れ替えれば全て繋がる訳か……でもユージ。そうなるとステンドットは何故その矢尻を持っていたのかって事にもなるよな」

「魔人からもらったんだろ。人の事邪教徒呼ばわりしている張本人が邪教徒だったんだ」


 その魔人にも心当たりがある。裕二とヘスがメイザー坑道跡で偶然出会いすぐに逃げていったアイツだ。


「なるほど。キレイに繋がったな。てことはあの崩された通路は……」


 ヘスが静かに呟く。裕二はその言葉に別の質問を重ねてきた。


「ヘス、ステンドット子爵とロクス商会は繋がりがあるのか?」

「いやそれは知らないな」


 ヘスはそれについては知らないようだ。そこに言葉を被せるテパニーゼ。


「あります! ロクス商会は元々ツェトランド伯爵領で商売を始めステンドット子爵に気に入られてました」


 テパニーゼがそう言うのであれば間違いない。

 メディッサバイパーはそのまま放浪してドワーフのテリトリーまでやってきた。つまり、その時点で目的は達成されていたので放置した。しかし、後から裕二がメディッサバイパーの素材を売ったので、焦って回収しようとオスロットを使った。

 オスロットが裕二にメディッサバイパーの肝臓を寄越せと言ったのはロクス商会の差し金の可能性がある。そこの繋がりはパーチから聞いている。そして、ロクス商会は裕二の事を詳しく探っていた事もわかっている。

 そのロクス商会とステンドット子爵が繋がるなら、メディッサバイパーの肝臓を欲しがっていたのはステンドット子爵でもおかしくはない。その理由は――


「それがツェトランド家に渡ったら困るからニャ!」

「そう言う事だ。その肝臓と必要な薬草は俺が持っている。おそらく、テパニーゼのお父さんはメディッサバイパーの治療法が効く。そうなれば今までの推測もほぼ正しいだろう」

「ではユージ様……お父様は助かると……」

「ああ。まず間違いない」


 だが、そうだとするとステンドット子爵もこの状況で引き下がる訳がない。狙われる最優先は裕二か裕二の持つメディッサバイパーの肝臓。次にテパニーゼ。そして、徴税官を殺したバチルもターゲットにされておかしくない。向こうはなりふり構ってはいられない状況とも言える。


「つまり、また来るのは確実って事ニャ」

「だけどすぐには来ないだろ」


 ヘスの考えでは、今日の状況を考えればあの兵士達は全員使えない。戦力的な事もあるが、今日の事で疑心暗鬼になっているだろう。そうなると人員の総入れ替えをしなければならない。そして、こちらには強力な戦力として裕二とバチルがいる。この二人なら部隊の一つや二つは軽々潰せる。


「それに対抗できる人員を揃え対策も考えるだろうから、早くても一週間は必要だろうな」

「でもステンドットは何のためにそんな事するニャ?」

「それはお姉様。我がツェトランド伯爵領を乗っ取る為です」

「乗っ取るのに何で村を潰すのニャ?」

「そ、それは……」


 バチルの疑問はもっともだ。領地乗っ取りを企むならその後の税収も考えなければならない。税を払う村を潰す意味がない。


「そこはさっきの、ユージが魔術師を炙り出した時の説明が一番しっくりくるな」

「あーあれか。ほとんどアドリブなんだけど」


 ステンドットが無実の村人に邪教徒の濡れ衣を着せたのは、そこから生まれる強い憎しみや怒り。それを引き起こす為。それによって瘴気が作られる。ステンドットが魔人と繋がりのある本物の邪教徒なら、当然そこを狙う。

 魔人の矢尻を持っていたのがステンドットなら、その可能性はかなり高くなる。


「で、ではステンドット子爵は我がツェトランド伯爵領を魔人の巣窟にすると……」

「普通に考えたらペルメニアへの前線基地だな」


 蒼白になるテパニーゼに対してヘスがそう答えた。

 いずれ現れるであろうクリシュナード。それと関係の深いペルメニア。ツェトランド伯爵領の前にペルメニアがあるとすると後ろはヴィシェルヘイムの森がある。ヴィシェルヘイムの強力なモンスターを魔人が使役出来るのなら、その前線基地としてツェトランド伯爵領は丁度良いのかも知れない。


「じゃあヘス。魔人が出てくる可能性もあるのか?」

「いや、まだないだろう」


 魔人は今の今まで隠れて出てこない。彼らの第一目標はあくまでクリシュナードだ。それが出てくる前に前線基地を作ってウロウロしていたら、そこにアンドラークばかりかペルメニアの大軍まで押し寄せてくるだろう。なので密かに邪教徒にやらせ自分達が表に出てくる事は考えにくい。いざ事が起きたら一気に占領するつもりだろう。それまでに瘴気の溢れる土地にしておきたいはずだ。そこで必要なのは村人を大量に殺し憎しみを煽る事。


「ニャるほど。私が思ってた通りニャ」

「うそつけ!」


 確定した訳ではないが、ステンドット子爵は魔人と大きく関係してそうだ。様々な状況がそれを物語っている。

 おそらく近いうちに彼らと戦う事になるだろう。その前にやっておきたいのはテパニーゼの父親の治療と村人の食料調達。


「どうするか。テパニーゼの家がわかれば俺ひとりの方がやりやすそうだな」


 裕二だけならタルパを使える。テパニーゼの家の場所、部屋、母親の特徴などがわかれば、その方が良い。それにテパニーゼが戻ったら、或いはその途中で拘束される可能性もある。


「じゃあテパニーゼとヘスはその辺の詳しい情報と地図を書いてくれ。夜になったら俺が行く。それまでにメディッサバイパーの肝臓のスープも作っておこう」


 食料に関しては今朝早く、バチルが盗賊から奪った装備を村人が売りに街へ行った。行きはともかく、帰りは大量の食料を運ぶので数日かかると思った方が良い。それまでの食料は裕二とヘスの分があるがとても村人全員には行き渡らない。


「俺とバチルは食料調達だな。モンスターでも狩りに行くか」

「それがユージ様。この辺りには食料となるモンスターがほとんどいないらしくて……」

「なに?!」


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