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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
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88 裕二vsバチル、再び


 村人には家に閉じこもってもらいテパニーゼも村長の家に行かせ、外にいるのはバチルのみ。

 そのバチルは村の入り口の前で腕を組み仕返しに来た連中を待ち構える。


「やっぱりユージがいるのニャ」


 一方のキリック団長率いる兵士達。そこに加わった裕二とヘス。彼らの視界にもタルソット村が見えてきた。

 兵士の中には前日、徴税官の護衛をした者も含まれており、その兵士がバチルを見つけるとキリック団長に報告した。


「キリック団長! あの女です」

「奴がそうか。ユージ殿。よろしくお願いします」


 裕二にも村の入り口で立ち塞がる者が見えてきた。しかし、そこにいるのはどう見ても見覚えのある人物。


「あれって……」


 ――バターソテーニャー!

 ――ミャアアア!

 ――だよな……


 裕二は隊の先頭に躍り出て確かめる。だが、そこにいるのは間違いなく裕二のよく知る人物。バチル・マクトレイヤだった。腕を組んでこちらをニヤニヤと見ている。完全に裕二に気づいているようだ。


 ――何故バチル様がここにいるのでしょうね?

 ――大丈夫だセバスチャン。俺にもわからん。


「ニャッハッハッハ。ユージ! なんでそいつらと一緒なのニャ!」

「お前こそなんでそこにいる?!」


 裕二とバチルが知り合いと言う事にキリック団長以下、兵士達、ヘスにも動揺が走る。


「ユージ、どういう事だ。知り合いなのか?」

「まあな。状況は良くわからんが」


 おそらくバチルの方も状況は把握していない。だが、あのバチル・マクトレイヤがいちいちそんな事気にするはずもなかった。


「今こそ決着の時なのニャ、ユージ!」

「ええぇ、なんで?」

「負けた方がバターソテーニャー!」


 そう言うとバチルは剣を抜き一気に裕二の目前まで距離を詰める。


 ――やべーぞ、ムサシ!


 裕二も剣を抜きながらムサシを憑依させる。その直後にバチルは上段から剣を振り下ろし、それを裕二が受け鍔迫り合いになる。


「どういう事だバチル!」

「一流のバターソテーニャー!」


 二人は一旦離れ、間髪入れずに打ち合いとなった。その凄まじいスピード。響き渡る剣の音から伝わる重さは空気を介して周りで見ている兵士達にも伝わる。


「な、なんだありゃ!」

「とんでもねえぞ!」


 裕二は剣を振りながら隙を見て火魔法を放ち距離をとる。


「ニャハ、そんなの通用しないニャ!」

「わかってるさ」


 バチルはそれを籠手ではたき落とす。だが、裕二はそこに作られた短い距離からソニックディストーションを放ちバチルを無力化させようとした。


「ソニックディストーション!」


 しかし――


「ニャアアアアア!」


 バチルは周りの者達の耳がビリビリ響く程のとんでもない大声を出した。


「な、なにぃ!」


 なんと、バチルは声だけでソニックディストーションを相殺したのだ。


「お前、デタラメすぎだろ!」

「私に辞書はないのニャ!」

「それも端折りすぎ!」


 周りの兵士も無我夢中でその光景を見守る中、キリック団長だけがハッと我に返る。


「い、今だ。ユージ殿が敵を抑えている間に村へ突入しろ!」


 その声に兵士達も自分の仕事を思い出し、バチルを回避しながら一斉に村へとなだれ込む。


「ニャ! お前ら汚いニャ」

「つーか何がやりたいんだお前は」


 再びの鍔迫り合いからバックステップで距離を取り、裕二はバチルに言った。


「どういう事か説明しろ! 戦ってる場合なのか?」

「村人は悪くないのニャ! そいつらが食い物全部持っていったのニャ! 食い物がなくなったら今度は邪教徒扱いなのニャ!」

「はっ?」


 ――裕二様。おそらくバチル様は徴税官の事を言っているのでしょう。無理な徴税で村は食料を失った。食べるものがなくなり抗議をしたら、今度は邪教徒の疑いをかけられた。

 ――なるほど。解説されれば何となくわかるな。


 セバスチャンの説明で裕二は何となくだが、状況を把握した。双方に誤解があるのか。それとも一方的な搾取なのか。それとも本当に邪教徒がいてそれをバチルが気づいてないのか。それを確かめる必要がありそうだ。


「わかったバチル。少し様子を見させてくれ。村人には手を出させない」

「そう言う事なのニャ! 今頃わかったニャ?」

「そう言う事なら戦いはいらねえだろ!」


 裕二とバチルは戦いをやめ、村へと走る。そして、その背後で唯一残っていたヘスもそれに続く。


「ヘス! 悪いが――」

「村人には手を出させるな。だろ」

「さすが。頼むぞ」


 三人が村へ入ると、そこには既に数人の村人が外へ引っ張り出されていた。そして、村人は地面に跪かされその前には変な物が置いてある。


「これはいったいどういう事か説明してもらおうか」

「わ、私は知りません。こんな物あるはずが……」


 村人の前に置かれたのは木彫の像。それは細長い手足に尖った耳。そして、背中にはえる大きな翼。その姿は――


「魔人の像……か」


 その魔人の像を隠し持っていた事が邪教徒の証、となるのだろう。周りを見ると更に別の家から、村人が魔人の像と一緒に引っ張り出されている。


 ――セバスチャン、アリー、チビドラ。

 ――畏まりました。

 ――わかったー!

 ――ミャアアア!


 霊体化の三人が裕二から離れる。そして、先程の村人を見るとその隣にいる兵士が剣を抜こうとしていた。それを見たバチルが声を荒らげた。


「何するニャ!」

「バチル! 俺に任せろ。しばらく我慢してくれ」


 裕二はバチルを手で制してから村中に聞こえるよう大声で怒鳴る。


「ここにいる全兵士に告ぐ! 俺の許可があるまで村人に傷をつける事は許さない。もし、それを破ったら……」


 周りの兵士がその手を止め、裕二に注目した。そのまま裕二は言葉を続ける。


「この俺が直々にぶち殺してやる。死にたくなければ無抵抗の者には絶対、剣を向けるな! わかったか!」


 一瞬、静まり返る村。だが、そこへ慌てて口を挟んできたのはキリック団長だ。


「ゆ、ユージ殿。命令権は私にあるのですぞ。勝手な真似をされては困ります。それにその女は――」

「コイツは俺が抑えておくから大丈夫だ。暴れるなよバチル」

「うニャ」


 バチルは裕二を信頼しきっているのか素直に言う事を聞く。だとすると、さっきは何で襲いかかってきたのかさっぱりわからないが。


「キリック団長。俺は自分が納得出来ない仕事はしない。彼らが本当に邪教徒なのか俺の目で確かめる必要があると考えている。それともこの俺に、納得せずとも命令に従えと? 俺はアンタの部下じゃないんだが?」


 裕二の気迫に押されるキリック団長。彼もそれなりの実力者ではあるが、オスロットをひとりで壊滅出来る程ではない。その力の差は重々承知している。


「そ、そうではありませんが……」

「調査はそのまま続けてくれ。処分は後でも出来る。それなら文句はないだろ?」

「わ、わかりました――全員、ユージ殿の指示通りにしろ!」


 調査はそのまま続行され村人が次々と外に出される。かなり雑に扱われているが、裕二の命令があるので彼らを傷つける兵士はいない。


 ――セバスチャンいたよー。アイツだ。

 ――ふむ、なるほど。様子を見ましょう。


 霊体化のアリーとセバスチャンはちょうど今、調査されている家の中にいる。そこには四人の兵士がいるのだが、ひとりだけローブを着た魔術師風の者がいた。


 ――たぶんやるから見てて。


 三人の兵士が家の中を一生懸命探しているが、その魔術師だけは家具の影に隠れてコソコソしている。


 ――あ、今出した。

 ――そう言う事ですか。あれは収納魔法ですね。そこから魔人の像を出して村人に罪を着せる。


 その魔術師は魔人の像を高々と持ち上げ、他の兵士に大声で知らせる。


「あったぞ!」

「な、なに。ここもなのか?!」


 だが、その様子を見ていたセバスチャンは少し違和感を感じた。


 ――返事をした兵士は、彼が魔法で像を取り出した事を知らないのでしょうか?

 ――なんか、それっぽいねー。


 その兵士の返事には、像がある事が意外とも取れる態度が見られた。つまり、魔術師は他の兵士を騙している。最初から兵士がそれを知っていれば「ここもなのか?」とは言わないだろう。


 ――裕二様にお知らせしてきます。


 裕二は戻ってきたセバスチャンから説明を受ける。しかし、その間にも調査は続き次々と村人が外へ連れ出されて行く。その中には村長と一緒に連れ出されるテパニーゼの姿もあった。マントで体と顔を覆ってはいるが、一瞬だけ顔が見えた。それにいち早く気づいたのはキリック団長だった。


「あ、あれは……テパニーゼ様」


 ――こんな所にいたとは……しかし、村人はともかくテパニーゼ様は……


「お姉様!」


 激しく抵抗するテパニーゼ。兵士はそれを抑えようと暴力を振るおうとする。それを見たバチルが即座に駆け寄り兵士を突き飛ばす。


「な、何をする!」

「ユージに殺されたいニャ? それとも私が殺っても構わないニャ!」


 バチルは自分の剣に手をかけた。先程の戦いぶりを見れば自分が敵わないのは明白。それは周りで見ていた兵士も同じ事。


「わ、わかった。わかったからやめろ!」

「ユージが頼むから我慢してやってるのニャ。本当ニャらお前なんかみじん切りニャ!」


 多少のいざこざはあっても裕二の命令があるので大きな混乱には至らない。ほとんどの兵士も裕二がオスロットを壊滅させた事を知っているので、その効果は大きかった。彼らもパーリッドの兵士から詳しい事を聞いていたのだ。

 その裕二はセバスチャンから調査についての話しを聞き終えたところだ。


 ――じゃあ、ほとんどの兵士はその事を知らないのか?

 ――おそらくそうなりますね。

 ――となると、その魔術師のやってる事を暴けば良いんだな。

 ――はい。ですが、その証明は困難かと。


 結局のところ、ひとりの魔術師が他の兵士を騙して村人を邪教徒に仕立て上げている。その黒幕はステンドット子爵なのかキリック団長なのかは現時点ではわからない。しかし、魔術師のしている事を兵士達にわからせれば、村人の疑いはとりあえず晴れるのだ。その中に数人、魔術師側の人間がいたとしても、多くの兵士が納得してしまったら、彼らに手出しは出来なくなる。


 だが、それを証明するのは難しい。


 どうすればそれを証明出来るのか考えてみると、その魔術師自身が兵士の前で収納魔法を使い、そこから魔人の像を取り出す場面を見せなければならない。

 そんな事を魔術師がするはずもなく、仮に裕二が絞め上げたところで白状するかもわからない。それに失敗すれば裕二がデタラメを言ってる事にされてしまう。


 裕二は少し考えた。どうすればそれを証明出来るのか。裕二ならば力ずくで兵士を黙らせる事も可能だろう。しかし、彼らも騙されている立場なら、暴力で黙らせるのではなく、言葉でわからせたい。そうしなければ、少なからず意味のない死人が出てもおかしくないからだ。


 しかし、それを証明する方法はあるのだろうか。


「いや、いけるな」


 裕二は兵士達をじっくりと見渡した。


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