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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
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72 盗っ人疑惑


 裕二はドワーフ達と別れパーリッドを目指す。そして、その近くまで来ると森を出て街道を歩き出した。

 間近に迫るパーリッドはスペンドラのような大きな街ではないが、人の出入りも多く活気のありそうな街だ。


「見かけない顔だな。パーリッドは初めてか?」


 入り口にたどり着いた裕二は門兵に声をかけられる。


「はい、冒険者ギルドに行くつもりです」

「出稼ぎか。若いのに大変だな。ギルドは中央通り突き当たりの右にある赤レンガの建物だ」

「わかりました。ありがとうございます」


 裕二は難なく入り口を通り抜けた。おそらく冒険者ギルドに集まる若者が多いのだろう。兵士の説明も慣れた感じだ。


 入り口を入ってすぐに見えてくるのが中央通り。立派な石造りの建物もあれば古そうな木造の建物もあり、その前を沢山の露天商が占領している。その店先には服、アクセサリー、食材、料理、食器、武器、骨董品などが処狭しと並べられ雑多な雰囲気を醸し出している。

 そのギリギリを馬車が通るのだが、慣れているのかぶつかる事なく上手く通り抜ける。それを気にする者もいない。


「兄さん。見ていきなよ。この指輪はなんとあのクリシュナード様が作ったサラマンダー召喚指輪だ。安くしとくぜ」


 ひとりの露天商がオーバーな態度で商品を勧めてくる。


 ――うさんくせー。


 すると、別の露天商が声をかけてきた。


「やめときな兄ちゃん。それよりこっちのブレスレットだ。これは魔人を無力化すると言われる伝説の魔法道具だぜ。魔人戦争の時にエルフの王が使った逸品だ。今なら金貨――」

「てめえ俺の客だろうが! 邪魔すんな」

「んだとこの野郎。お前の店は偽物しかねえだろ!」


 裕二は二人が喧嘩している間にさっさとその場を立ち去る。


 ――面白いけど必要な物は絶対なさそうだな。

 ――でも、あれは偽物だったとして本物があるって事なの?

 ――ミャアアア?


 アリーが素朴な疑問を呈す。確かに偽物があると言う事はその元になる物があってもおかしくはない。それについてセバスチャンが意見を挟む。


 ――本物があったとしてもこんな場所にはないでしょう。ペルメニアの使徒の家系なら所有しているかも知れませんが。

 ――それもそうか。テリーなら持ってそうだな。


 と、あちこち寄り道しながら通りを進んで行くと突き当たりが見えてきた。そこを右に曲がると兵士の言った赤レンガの建物がある。周りより立派なのですぐにわかった。


「ここがそうか」


 裕二はその建物のドアを開く。中は郵便局のようなカウンターがあり、その前は待合所なのか丸い木のテーブルと椅子がいくつか置かれている。壁は掲示版になっており依頼書らしき物が貼り付けられている。そして、そこかしこに革鎧、マント、そして武器を携えた如何にも冒険者風の者がいる。それが裕二が入ってきた途端一斉にこちらを見た。


「うっ……」


 単なる物珍しさなのかすぐに興味が失せたようで、ほとんどの者は目を逸らす。しかし、中にはまだこちらを見ている者も数名いる。少し居心地は悪いが無視するしかない。


「さっさと行くか」


 カウンターには二十代前半くらいの女性がいる。彼女が受け付け業務を担当しているのだろう。裕二はそこへ向かった。


「あのー」

「冒険者登録ですか?」

「はい」

「お名前をどうぞ」

「裕二です」

「ユージ様ですね。私は受け付け担当のナスティと言います」


 ナスティは自己紹介してから淡々と説明を始める。

 まず常時依頼のある簡単な採取等の仕事は登録しなくても誰でも出来る。女子供の仕事なので登録者は遠慮してほしいそうだ。

 登録者の依頼は掲示版の依頼書を選ぶかカウンターから直接依頼されるかだ。冒険者にも依頼にもランクのようなものはなく、基本的にどの仕事も出来るが自分の実力に応じた仕事を選ばないとギルド側からストップがかかる場合もある。

 一回目の仕事は依頼書から低級な依頼を選ぶか、ゴブリン、オーク等のモンスターを五体以上狩るかどちらかになる。その際に討伐した証になる討伐部位が必要になる。多くモンスターは耳か尻尾だ。それを終えると正式に冒険者として登録され冒険者タグが渡される。次回からはタグと依頼書を一緒に提出。と言う感じだ。


「ゴブリンかオークを狩るのか」

「モンスターなら何でも構いません。ゴブリンかオーク以上の、と言う事です。なのでその辺の小動物を狩ってこられてもダメです」

「わかりました。それで買い取りは……」

「買い取りは隣のカウンターになります」


 と言われ隣のカウンターを見ると、さっきまで誰もいなかったカウンターにスキンヘッドの目つきの鋭い男がいる。


「俺はパーチだよろしくな」


 そう言ってパーチはニヤリと笑う。顔は怖いがニヤリとしてくれたので、それ程怖い人でもなさそうだ。


「じゃあ先にこれお願いします」


 裕二はとりあえず売っておこうと思っていたメディッサバイパーの皮を鞄から出してカウンターに置く。皮はドワーフ達により加工され三等分にして折り畳まれている。今回出したのはそのひとつだ。だが、それを見たパーチの顔色が変わりメディッサバイパーの皮を素早くカウンターの下に置いた。


「ユージ……だったな。ちょっと奥へ来てくれ」


 ――あれ? 何かまずったか。


 カウンター横の扉から奥へ入る裕二。そして、パーチの後をついて行く。パーチは立ち上がると身長二メートル近くはありそうな筋肉質の大男だ。


 ――背中デケー。


 と、裕二はどうでもいい事を考えながら後に続き応接室のような部屋へ通された。


「まあ座れ」


 そう言いながらパーチはメディッサバイパーの皮をテーブルに置いた。


「これはメディッサバイパーか」

「そうです」

「どこでこれを手に入れた」

「えっ? ルビンの森ですけど」

「きれいになめしてあるな。素人の加工じゃねえ。誰がやった、お前じゃねえだろ」

「それは……」

「まさか盗んできたんじゃ……」

「違いますよ!」


 加工したのは森のドワーフだ。しかし、パーチはそれを見て商人から売り物を盗んできたと思ったようだ。ドワーフの親切が裏目に出てしまった。


「だったら誰が加工したか言えるはずだろ!」


 とは言っても森でひっそり暮らすドワーフの事を話しても良いのか。裕二は悩む。だが、このまま黙っていると盗人扱いになりそうだ。それも困る。


「最近メディッサバイパーが現れたと言う噂は確かにある。だが、お前みたいな小僧がひとりでメディッサバイパーを倒せるとは思えねえ。そして、この丁寧な加工もお前じゃねえしパーリッドでやれば俺の耳に入る。もしそんな事があるとしたらルビンのドワーフの力を借りねえと無理だろうな」

「ルビンのドワーフ……知ってるのか」

「俺の話しに便乗しようったって無駄だ。もしお前が本当にメディッサバイパーを倒し、ドワーフにその加工をしてもらったなら何でも良いから証明してみせろ」


 そこまで言われたら全て話すしかないのか。だが、全て話しても信用されるかはわからない。迂闊な事を話してドワーフに迷惑を掛けたくはない。


「証明って言われても……」

「例えばあそこには有名な鍛冶職人や魔術師がいる。メディッサバイパーの皮を加工してもらったなら多少はドワーフの名も聞いているはずだ」

「ああ、ガンディナルとフォルンの事か。ガンディナルの息子がベルグナルでその仲間がシートット、フラスコ、ビーカーでシートットの妹が――」

「ちょ、ちょっと待て。お前本当にドワーフに会ったのか? 信じられねえ……」


 ドワーフには会おうと思って会えるものではない。会うとしたらドワーフが街に何かを売りに来た時くらいだ。仮に裕二がメディッサバイパーを倒したとしても、簡単にドワーフと会える訳でもない。しかし、裕二は次々とドワーフの名前を言い、そのいくつかはパーチにも心当たりがある。おそらく裕二はドワーフと会った。だが、どうして会うことが出来たのかを考えるとつい「信じられない」と言う言葉が出てしまった。

 しかし、それを聞く方はそう捉えないだろう。


「だから言ってるだろ! いい加減にしろよ。何だったらガンディナルからもらった剣も見せるか?」

「な、んだと……ガンディナルから……」


 裕二は疑われている事についイライラしてしまい剣の事も話してしまった。しかし、言ってしまったものは仕方ないので開き直るしかない。


「邪剣オートソウでも見せたら信用するか? だが、それを見ておいて勝手によそで話したら俺はお前をぶち殺すぞ! 良く考えてから答えろよ」

「ま、待て、待ってくれ……」


 裕二の剣幕にパーチは慌てだす。


 ――邪剣オートソウはスペンドラのゴンズの店にしかないはず。何故コイツがそれを持ってる。そんな物が盗まれりゃ必ず商人から噂が入る。他にあるとしたらガンディナルがもう一本オートソウを作っていた事になる。ドワーフの村からそれを盗むのは不可能。そもそも普通の人間じゃ絶対村に入れねえ。それを譲られるような奴ならメディッサバイパーも……


「どうすんだ!」

「わ、わかった。この事はクリシュナード様に誓って絶対話さねえ。見せてもらって良いか? そしたら信用する」


 パーチの言葉を聞き裕二は異次元ポケットから邪剣オートソウを出す。本当なら異次元ポケットも見られたくないのだが、こうなっては仕方がない。


「収納魔法持ちかよ……」


 裕二が宙に手を差し出すとそこに漆黒の闇が作られ、そこから邪剣オートソウが取り出された。そして、裕二はそれをテーブルの上に置く。


「触っても良いか?」

「好きにしろ。だが、魔力は込めるなよ」


 パーチはそれに答えずオートソウの柄を両手で握った。


 ――レプリカかどうか調べるには……やるしかねえか。


 その瞬間、僅かだがオートソウのノコギリ刃が動く。


「うっ!」

「魔力を込めるなって言っただろうが! 何やってんだお前は」

「ま、間違いなくバカ食い……本物だ」

「当たり前だ! 返せ」


 パーチは一瞬で汗だくになり顔面蒼白になりながらテーブルに手をついている。見かねた裕二は治癒魔法を使う事にする。そうしなければ話しも進まない。


「横になれ」

「す、済まねえ」


 ――頼むぞテン。

 ――僕に任せて。魔力も回復させる?

 ――そんな事出来るのか?

 ――うん。と言うか出来るかどうか実験だけど。


 通常の治癒魔法は魔力を回復させる事は出来ないが、テンにはそれが可能のようだ。もちろん初めてやるので上手くいくかはわからない。


 ――危険がなきゃいいぞ。

 ――わかった。


 裕二が長椅子に横になったパーチに治癒魔法をかける。しばらくすると険しかったパーチの表情も落ち着いてきた。


「申し訳ねえな……」

「まだだ。しゃべるな」


 次に裕二はパーチが失った魔力の半分程をゆっくりと回復させる。初めてやるのであまり大量すぎても良くないと思ったのと、それだけ回復すればとりあえず動けるはずだからだ。


「治癒魔法もかなりの使い手なんだな」

「まあな」

「疑って悪かった。ユージならメディッサバイパーをひとりで倒せても不思議じゃねえ。その剣もドワーフから譲られた事に間違いない」

「最初からそう言ってんだろ」


 パーチは魔力回復が効いたのか十分程で何とか動けるようになってきた。


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