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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
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71 ドワーフの知恵


 裕二はフォルンから矢尻の話しを聞いた翌日、ベルグナルとともに森に来ていた。そこでベルグナルから魔剣ヘイムダルの扱い方を教わりながら狩りをする為だ。


「その剣はな。ユージの魔力と意志によって力を持つ」


 裕二が剣に魔力を込めると刀身が緑色に輝き、その光が対象を斬る。これをライトブレードと言う。魔力の量が増える程その威力と大きさは増してくる。


「ライトブレードを上手く扱えるようになれば刀身を越えた大きさになる。どれくらいまでいくかはユージ次第だな」


 裕二は魔剣ヘイムダルに魔力を込め、ライトブレードを作り出す。だが、かなりの魔力を込めてるにも関わらず刀身を越えるライトブレードにはならない。


「出来ないぞ。何かコツでもあるのか?」

「親父が言うには何度も魔力を通す事が重要だと言ってたな。そうすると剣も慣れてくる。剣と一体化しなきゃならねえそうだ」

「へえ、ベルグナルは出来るのか?」

「俺が出来たら今頃その剣は俺が振り回してらあ」


 詰まったパイプを水で押し流すような感覚だろうか。いずれにしても、それを何度も行える者でないと魔剣ヘイムダルは扱えないと言う。


「その最低条件は、剣を持っただけで刀身を光らせるだけの魔力を持つ事だ。ユージはそれが出来てたからな。その剣を持つ資格はあるって事だ」


 今の状態でも裕二なら、ベルグナルの言う最低条件はクリアしているので魔剣ヘイムダルは使える。だが、使いこなすとなると話しも違ってくる。それまでに、どのくらいかかるのかわからないが練習は必要になるだろう。


 裕二は剣に魔力を込めながら歩を進める。集中したいので感知能力は作動させずにセバスチャンとアリー、チビドラに周囲の警戒をさせる。


「あんまりやりすぎるなよ。普通ならその練習だけでもかなり大変なんだ。ユージは呆れる程魔力がありそうだが油断はするな」

「ああ、わかってる」


 今まで魔力枯渇を感じた事のない裕二。チェスカーバレン学院でエリネアが倒れた時、長時間治癒魔法を使っても何ともなかった。その時点でかなりの魔力を保有していたが、武闘大会へ向けての訓練やグロッグをぶちのめした時の魔力暴走でその量も増えているのだろうか。更に安定している気がする。魔剣ヘイムダルを扱う事で裕二はそれを実感していた。


 ――まだ全然大丈夫そうだな。でも一応気をつけておくか。


 と、考えているとセバスチャンが戻ってきた。


 ――裕二様。このまま進みますと三〜四メートル程のトカゲ、おそらくウッドリザードと言う種でしょう。倒木に擬態して待ち構えております。毒持ちなのでお気をつけ下さい。

 ――ウッドリザードか。わかった。


「ベルグナル。この先、倒木に擬態したトカゲがいるぞ」

「なに! 本当か?」

「ああ、間違いない」

「そいつはウッドリザードだな。気づかれないよう慎重に近づくぞ」


 裕二とベルグナルは気配を消しセバスチャンの示す方向に進む。すると本当に倒木にしか見えない大トカゲがいた。手足を体に隠して頭を草むらに突っ込んで胴体だけを見せている。パッと見では全くわからない。


「ユージ。ウッドリザードは見切りが早い。相手が自分より弱いと判断するとどこまでも追いかけてくるが、逆に強いと判断すると速攻で逃げる。俺とユージが相手なら間違いなく逃げるだろう。だから剣を使うなら一撃でやる必要がある。やってみるか?」

「わかった。任せてくれ」


 裕二は身体強化をしてからウッドリザードの斜め背後に近づく。今のところ気づかれている様子はない。そして、草むらと胴体の間にある首。裕二はそこに狙いを定め一気に走り出す。

 同時にガサッと草むらの揺れる音だけが聞こえ、辺りに大量の血が飛び散る。


「良し! いいぞユージ」


 ウッドリザードは全く反応する事も出来ず、魔剣ヘイムダルによって首と胴体がスッパリと切り離された。


「凄い切れ味だな」


 裕二が剣を見ながらそう呟く。


「へへ、そうだろ」


 ベルグナルはそう言いながらロープを用意し、ウッドリザードを木に吊るし上げた。血抜きをしてから身を切り分けて持ち帰るようだ。


「血抜きが終わるまで一休みするか。この先に小川があるからそこへ行こう」

「わかった……いや、コイツ放っといていいのか?」


 裕二は木に吊るされたウッドリザードを指差す。このままにしておいたら他の獣やモンスターに食われるのではないかと思ったからだ。


「そいつの肉は毒まみれだから食う奴なんていねえよ」

「え……じゃあ、これの肉は食えないのか?」

「食えるさ。毒抜きすればだけどな」


 ウッドリザードは通常、食用とはされない。それは肉に毒となる成分が含まれているからだ。だが、毒抜きする方法をドワーフは知っている。こう言った知識の積み重ねが森での生活を豊かにしてくれる。裕二もこう言う知識は是非学びたいと思っている。


「後で詳しく教えてやるぜ」


 ベルグナルはそう言って先へ行く。そして、しばらくすると小川にたどり着いた。ベルグナルはそこで何かを探しているようだ。


「何やってんだ?」

「ちょっと待ってろ……ああ、あったぞ」


 ベルグナルの視線の先には木の枝になった実がある。それを掴んでもぎ取った。すると、その実はほんの少し動いている。


「何だぞれ?」

「ペイズフライヤーのサナギだ」


 それは木の実ではなく、ペイズフライヤーと言う大型の蝶のサナギだ。以前森で暮らしていた裕二も、これは初めて見る。


「油で揚げると美味いんだけどな。今日は焼いて食うか」


 ベルグナルは手早く薪を集め火をおこす。そして、ペイズフライヤーのサナギを大きな葉でくるみ焚き火の中に放り込んだ。焼き芋を焼くような感じだ。

 しばらく待つと焼き上がったようで、ベルグナルはサナギを取り出す。


「食ってみな」

「お、おう……」


 虫を食べた事のない裕二には少し抵抗があるが、勧められて食べない訳にもいかない。裕二は意を決してサナギにかぶりつく。


「ぐっ………………あれ? うまいな」

「そうだろ」


 ベルグナルは笑いながらそう言って、裕二をバシバシ叩く。


「コロッケみたいだな。油で揚げると美味いってのは何となくわかる」

「ガッハッハ、そうだろ。で、コロッケって何だ?」


 ペイズフライヤーのサナギは普通に探すとなかなか見つからないそうだ。しかし、ドワーフはこの探し方や集め方を知っているのですぐに見つける事が出来る。


「小川を見てみな。オレンジ色の石があるだろ。それをコーク石と言うんだ」

「ん? あ、本当だ。これが関係あるのか?」

「そうだ。ペイズフライヤーはこの石の成分が溶けた水を飲みにくる。その近くに卵を産み付けるんだ。予めそういう場所を作っておけば集める事も出来るぜ」

「ほえー、なるほど」


 裕二はそう言う方法に強い興味を持った。オークと戦って肉を得るのも良いが、様々な方法で様々な食材を得る事が出来れば暮らしも豊かになる。そうなれば食べ物に困る可能性も減るだろう。


「そう言うのもっと教えてくれよ」

「ああいいぜ」


 裕二はベルグナルから森や山での様々な知識を教わりながらドワーフの村に滞在し、しばらくそこで過ごした。

 懸念していたメディッサバイパーのようなヴィシェルヘイムのモンスターは現れず、平穏に時は過ぎて行く。

 しかし、矢尻については何もわからないままだ。魔人が動いてるかも知れない証拠なので、これについては頭の隅に留めておく必要があるだろう。

 裕二の倒したメディッサバイパーは素材として加工され裕二に渡された。売るとしたらその方が価格も上がるだろう。テリーからもらった金貨もあるので、当分の間旅の資金は問題なさそうだ。


 そんな感じで過ごしながらドワーフの村で二週間程経った後、裕二は村を発つ事にした。彼らのおかげで短い間だったが充実した日々を過ごす事が出来た。


「じゃあみんな。世話になったな」

「またいつでも遊びに来い」

「気をつけて行けよ」


 ドワーフをメディッサバイパーから救い、その礼として様々な物を裕二は受け取った。別れ際には沢山のドワーフ達から感謝の言葉をもらい、裕二は冒険者になる為にドワーフの村を去り、再びパーリッドへ向けて出発した。


「じゃあーなー!」

「おうー!」


 裕二はドワーフ達が見えなくなるまで手を振りながら村を後にする。


「さて、だいぶ道草食ったけどパーリッドへ行くか。白虎」

「グルルル」


 裕二は白虎に跨がると、一路パーリッドを目指し森を軽快に走り出す。



「しかし……本当にそのような黒髪の男がいるのですか?」

「証拠はない。だが、間違いなくいる。何としてもその者を探さなければならない。こんなバカげた話し……お前にしか頼めぬのだ」

「……畏まりました」


 豪奢な家具や装飾品の並んだとある部屋。そこに二人の男がいる。

 ひとりはその場に跪き、もうひとりは深刻な顔で窓の外を眺める。その者が命じると跪いていた男が立ち上がり、静かに部屋を立ち去った。


「奴は何者なのか……いや、そもそも余が何者なのか……」



「裕二、パーリッド見えてきたー!」

「ミャアアア!」


 森の上を白虎に合わせて飛ぶアリーとチビドラ。その視界には森の向こうにある平原。そこに街道で繋がれ、七〜八メートル程の壁に囲まれた街を捉える。

 チェスカーバレン学院のあるスペンドラと比べると、その規模は小さく高い建物も少ない。しかし、これがこの世界の平均的な街なのだろう。ペルメニアの貴族が集まるスペンドラと比べるのは無理がある。


「そろそろ森を出て歩くか。白虎もういいぞ」

「ガルッ」


 裕二は街道に出て歩き出した。その後ろから商人らしき数台の馬車が裕二を追い抜いて行き、パーリッドの入り口に向かって行く。入り口からは冒険者らしき者が出て行く光景も見える。活気のありそうな街だ。


 裕二は期待に胸を膨らませパーリッドの入り口へと向かう。


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