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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第二章 冒険者になろう
70/219

70 矢尻


「大喰いか……邪剣オートソウみたいなもんだな」

「なに?! お前オートソウを知っているのか?」


 スペンドラのゴンズ武具店で大事に飾ってあった邪剣オートソウ。どうやらベルグナルもそれを知っているらしい。

 ゴンズから「剣に喰われるから気をつけろ」と言われたが、裕二は特に問題なくオートソウを扱う事が出来た。『魔剣ヘイムダル』は、それに比べたら魔力消費は少ないのだろう。


「オートソウも親父が作ったからな」

「そうなのか?」

「あれは大喰いと言うよりバカ喰いだ。俺が魔力を込めたら一瞬でぶっ倒れちまう。あんな物を大事に飾るバカがいたとは……やるじゃねえか」


 ベルグナルはニヤリと笑った。そして、奥の部屋に行くとどデカい剣を抱えて再び戻ってくる。


「これだろ?」


 それは正しく邪剣オートソウ。真ん中の支柱に普通の刃とノコギリ刃のついたフォークのようなデザイン。


「あるのかよ!」

「コイツもユージにやるよ」

「いいのか?」

「構わねえ。どうせ使える奴もいねえし、親父からはユージに好きなのをくれてやれと言われているからな」


 裕二はベルグナルからオートソウを受け取る。そして、早速魔力を込めようとするが――


「おっと、気をつけろ。そいつは魔剣ヘイムダルみたく魔力消費の微調整は簡単じゃねえ。一気に喰われるからな。ヘイムダルにも結構魔力を持ってかれてるはずだから今はやめとけ」

「それもそうか」


 裕二としてはいけそうな気もするが、ぶっ倒れて迷惑をかける訳にもいかない。なのでとりあえず魔力を込めるのは諦める。


「ユージ、明日は狩りに行こう。そこでヘイムダルの扱い方も詳しく教えてやるよ」


 裕二はベルグナルから助けてもらった礼として『魔剣ヘイムダル』と『邪剣オートソウ』を譲られた。おそらくどちらか一本でもかなりの価値があるだろう。裕二は充分すぎる礼を受け取り、翌日に狩りの約束をして居住区へ戻っていった。



 裕二とベルグナルが居住区に戻るその途中、二人のドワーフがこちらへ走ってくる。その二人は裕二も見た事のあるドワーフ、フラスコとビーカーだった。彼らは息を切らしてベルグナルに駆け寄ってきた。何かが起きたのか、その雰囲気が普通でない事が裕二にもわかった。


「どうしたお前ら?」

「ユージもいたか、ちょうど良い。一緒に来てくれ」


 そう言ってフラスコとビーカーは走り出す。それを追って裕二とベルグナルも走り出した。

 二人は居住区を抜け別の通路に入る。そこで割りと大きめの部屋に入っていき、裕二とベルグナルもそれに続く。そこは大きなテーブルと沢山の椅子がある会議室のような部屋だ。そのテーブルの上に何かが置かれており、もうひとり見慣れないドワーフがいた。


「フォルンばあさん!」

「来たかい。そこに座りな」


 フォルンと呼ばれた高齢のドワーフ。見た目はしわがある訳でもなく若い、と言うより年齢を感じさせない。大人の女性と言う感じだ。ミルフと同じような緑色のチロルワンピースを着ているが、その色褪せ具合としゃがれた声で年齢を感じさせる程度だろう。ばあさんと呼ばれているが、裕二にはベルグナルとたいして変わらないようにも見える。


「ユージ。このばあさんはフォルン。ルビンのドワーフで最強の魔術師だ」

「ええ?! 最強! マジすか」


 驚く裕二を尻目にベルグナルは言葉を続ける。


「で、ばあさん、何があった?」


 と、ベルグナルは言いながらも全員が注目するのはテーブルの上に置かれたもの。わかりやすくその見た目を言うならガラス細工の矢尻と言った感じだ。透明で先が鋭く尖り返しがついている。


「ユージとか言ったね。あんたには感謝しているよ。礼が遅れて済まないね」

「いえ、構いません」

「まあ、あんたにも関係あるから一緒に聞いとくれ」


 フォルンはそう言って話し始めた。


「見ての通り、その矢尻の事で皆を呼んだ」

「コレがいったい何だってんだ?」


 ベルグナルは首をかしげる。裕二もこのような矢尻は見た事がない。おそらくここにいる全員がそうだろう。


「コレが解体したメディッサバイパーから出てきたのさ」

「なに?!」


 つまりそれはどういう事なのか。裕二には全く意味がわからない。フォルンはそのまま話しを続ける。


「おそらくこれは何らかの魔法道具。この矢尻は魔石から作られている」


 フォルンによると、この矢尻は解体したメディッサバイパーの尻尾に近い部分から見つかった。誰かがこれを魔法の矢として使い、メディッサバイパーに攻撃した、と言う事だ。


「それが何か問題あるのか?」


 ベルグナルはそう言う。あれだけの化け物ならここに至る迄に誰かに攻撃されていてもおかしくない。その痕跡が矢尻として残っていた。それだけではないのか。


「コレが攻撃に使う矢なら、メディッサバイパーの尻尾に傷や大穴でもなければおかしいだろ。普通の矢じゃないんだ」

「た、確かにそうだな……」


 少なくとも魔法の矢を攻撃として使ったのであれば、取り逃がしたとしても大きなダメージ、その痕跡がないのはおかしい。と言う事は……


「これはダメージを与える為に使われた物じゃないね。何故ヴィシェルヘイムのモンスターがここにいたのか。それはこの矢尻のせいさ」

「ど、どういう事だ!」

「おそらく使役魔法さ」


 使役魔法と言って獣やモンスターを支配下におき、簡単な命令を下せる魔法がある。それは裕二もチェスカーバレンの武闘大会でシェリルが使っていたので見た事はある。だが、その魔法は通常シェリルの使った小さな獣やチェスカーバレン自警団の使う連絡用パローと言った弱い獣に使われる。それを強いモンスターに使うなら大量の魔力、複雑な術式、そして失敗した時の大きなリスクがあり、普通そう言う使い方はしない。

 ましてやメディッサバイパーのような化け物に使役魔法を使うのは簡単な事ではない。それを出来る魔術師がいるのか怪しいレベルだ。だが、確かにそれを使えればヴィシェルヘイムからメディッサバイパーを連れてくる事は可能だろう。


 しかし、フォルンは何故そう思ったのか。


「この矢尻に使われた術式が解読不能なんだよ」


 矢尻は魔石から作られており、魔石にはそれに使われた術式の痕跡が残る。高位魔術師であれば、それを解読する事も可能だ。しかし、解読不能であれば当然これに何の術式が使われたのかわからないはず。フォルンは話しを続ける。


「何故解読不能なのか。それは、ここに書かれた術式は私の見た事のない言語で書かれているからさ」

「ばあさんが見た事ないって……つまり」

「魔人の言語の可能性が高い」

「魔人だと!」


 そこにいる全員が魔人と言う言葉に強く反応した。しかし、それだけではまだ良くわからない部分も多い。少し飛躍しすぎな感じもあるだろう。フォルンはもう少し具体的な説明をする。


「この矢尻は攻撃の為ではなく、矢尻をメディッサバイパーの体内に埋め込む為のもの。埋め込む目的は矢尻の術式を体内で発動させる為。となるとメディッサバイパーを意のままに動かしたいからだね。そして、ヴィシェルヘイムのモンスターの多くは元々魔人が召喚した。奴らは我々よりモンスターの扱いが得意なのさ。だからこの矢尻を作る事が出来た」


 五百年前の魔人との戦争。その初期の頃は魔人が圧倒的な強さを誇っていた。その要因のひとつは、魔人がモンスターを召喚し操っていた事があげられる。その点において、魔人は人類よりも長けていた。

 一般的でない使役魔法と謎の言語。それらを考えると魔人の可能性が大きくなってくる。それがフォルンの考えだ。


 だがそうなると別の疑問も湧いてくる。魔人がこの矢尻を使った可能性は高いのかも知れない。しかし、そうだとすると何のために魔人はこんな事をしたのか。それがわからない。


「魔人の目的は何なんですか?」


 裕二はその疑問をフォルンに問う。だが、そこにベルグナルが口をはさむ。


「まさか、俺達の村を狙って……」

「いや違うね」


 ドワーフの村に到達するには複雑な迷路のような通路を把握しておく必要があるし、村人しか通れない岩の扉がいくつもある。使役されたモンスターでは到底辿り着けないようになっている。ドワーフの村を襲うなら、別の方法を使うだろう。


「じゃあ……」

「はっきりした目的まではわからないさ。メディッサバイパーは既に役目を終えて放置されてたのかも知れないしね」


 結局のところ全容はわからない。矢尻ひとつでそこまでわかる訳もない。だが、裕二としては出来るだけ多くの情報を知っておきたいと思っている。


「その言語、と言うか文字を見る事は出来ますか?」

「ちょっと待ちな」


 フォルンはそう言って空中に手を伸ばし、何もない場所から石版を取り出した。


 ――おお! これは収納魔法と言う奴か? 使ってる人初めて見た。

 ――ここなら裕二様も異次元ポケットを見られても問題なさそうですね。

 ――そうだな。


 フォルンの収納魔法と裕二の異次元ポケット。原理が同じかはわからないが、やってる事は一緒だ。裕二が同じ事をしてもアレコレ聞かれないで済みそうだ。しかし、それを見たベルグナルは得意気に口を開く。


「へへ、スゲーだろユージ。この魔法を使える人間はなかなかいないだろ?」


 ――そんな事言われたら使いにくいじゃねーか!


 フォルンの取り出した石版には矢尻に使われた術式が彫り込まれている。裕二はベルグナルを無視して自分も異次元ポケットからノートとペンを取り出す。


「ほう。大したものだ」

「や、やはりな。ユージなら出来ると思ってたぜ」


 石版の上に紙をのせペンでそれを写していく。文字なのか記号なのか良くわからないが、この世界の一般的な文字とは違うようだ。


 ――セバスチャン見た事あるか?

 ――いえ、初めて見ました。


 チェスカーバレンの図書館で一番本を見ているセバスチャンも知らないらしい。となると、やはり魔人の言語と言う可能性は高いのだろう。


「今はとりあえずそこまでしかわからない。だからあんた達は森に行くなら見慣れないモンスターには注意するんだ」


 目的がわからない以上、警戒と言っても今はその程度しかできないだろう。フォルンはそう言って注意を促す。


「明日はユージと狩りに行くからちょうど良いな。ユージがいればメディッサバイパーなんぞ敵じゃねえ。もし現れたら魔剣ヘイムダルの試し斬りにちょうど良いぜ」

「調子に乗るんじゃないよ馬鹿タレ! ユージがいなきゃアンタも殺されてたんだろうが」

「うっ……済まねえ」


 明日の狩りはそう言った部分も注意しながら、と言う事になりそうだ。確かに裕二なら多少強いモンスターがいても大丈夫だろう。しかし、この問題はまだわかってない部分がありそうだ。どうしてもそこに一抹の不安は感じてしまう。


「それとユージ。この矢尻の所有者はアンタになる」

「へ? 俺が?」

「そうさ。メディッサバイパーを倒したのはユージだからね。それなりの価値はあると思うが迂闊に他人に見せるのはやめといた方が良いね」

「うーん、確かにそうだな」


 もしこれが魔人の使ったものでそれを知る人物がいたら。何故、裕二がそんな物を持っているのか、と言う話しになるだろう。最悪なのは邪教徒と思われてしまう事だ。人に見せる場合は注意をしなければならない。


 話しはこれで終了し裕二達は部屋を出てそれぞれの部屋に戻っていった。


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