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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第一章 異世界転移と学院
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48 野外演習


 新学期が始まり裕二は二年生として登校する。二年Aクラスは数人の入れ替えがあり、その中にはリサ・スクワイアも含まれ、リサと裕二は同じクラスになった。


 休みの間、全く見かけなかったエリネアも以前と変わらない様子で登校しており、表面上、特に変化はなく、裕二にも「ごきげんよう」と挨拶をしていた。


「エリネア様、あの……試合の時、エリネア様の治療班をお貸しいただきありがとうございました。お礼が遅れて申し訳ございません」

「リサ、気にする事はないわ。私の方こそ面会を断ってごめんなさい。色々と忙しかったの」


 エリネアはリサとの試合後、魔力枯渇になったリサに、自分の治療班を差し向けた。リサはその事に礼を言いたかったのだが、エリネアは面会を断っていた。

 それはリサに原因があるのではなく、エリネアが裕二に負けたショックで塞ぎ込んでいた。その後は訓練に集中する為にそうなった、というだけだ。だが、それをエリネアが口にする事はない。


 その後リサは裕二とも挨拶を交わす。


「おはようユージ」

「おはようリサ」


 そこへ少し遅れてきたテリーも加わる。森で集まってた時と何ら変わらず、朝のひとときを楽しく過ごす。


「二人とも来るの早いな」

「いや普通だろ」

「早くはないですよ」


 Aクラスの他の生徒からすると、裕二、テリー、リサ、というちょっとした派閥が出来てるように見えなくもない。三人の選抜メンバーが仲良くしている光景は割りと目立つのだろう。それを苦々しく見ている者がいた。


 ――なによあの女。テリーと馴れ馴れしくして。


 そう思いながら、その光景を遠くから見ていたのはシェリルだ。

 今のシェリルは裕二に文句を言いにくく、近づく事もほとんどない。その理由は、もし裕二を怒らせてジェントラー家に行かれたら、困るのはシェリルだからだ。だが、文句を言えないとなるとその鬱憤も溜まってくる。裕二への憎しみは以前より増しているとも言えるが、今のところ打つ手が全くない状態だ。


 そんな感じで、それぞれの新学期がスタートする。



 翌日からは、二年生からの授業の一環として野外演習がある。


 今回は全クラス合同で演習が行われるが、それ程厳しいものではなく、街の外にある森近辺で、実際のモンスターの生態等の説明を聞くのが主体になる。

 既に騎士団によってモンスターの討伐がされているが、それは強いモンスターのみで、弱いモンスターは今回の演習の為に残されている。ほとんどはオーク、もしくはゴブリンだ。

 各クラスでチームを作りモンスターを発見したら討伐を開始する。


 護衛につくのは基本的にチェスカーバレン騎士団と教職員だが、中央の騎士団と自警団も少数含まれる。


 そして自警団として任務にあたるのは――


「俺とテリーかよ!」

「まあそうなるよな」


 裕二とテリーだ。


「先生、俺達も二年生なんですが? 護衛される側でしょ」


 と愚痴る裕二に説明するのは一年生から引き続きAクラス担任のディクトレイ先生だ。


「君らは演習の必要ないだろ? 今回は全クラス合同で護衛の人数が足りないんだ。頼むよ」

「む、そう言われると……」

「仕方ない、今回だけだろ。やるかユージ」


 と言う訳で、裕二はEクラス。テリーはFクラスの護衛につく事になった。


「テリーともバラバラかよ」


 仕方なしに裕二はEクラスのところへ行く。同時にテリーもFクラスへ行った。するとFクラスから大歓声が上がる。


「テリオス様よ!」

「凄い! テリオス様が来てくれるなんて」


 歓声はほとんど女子だ。


「ちっ、テリーのここだけは気に入らん」


 と言ってる裕二の方も、テリー程ではないがEクラスから「おお!」と言う声があがる。

 トーナメントで準優勝と言うのは、出場資格さえない下位クラスにとっては憧れる部分もあるのだろう。


 ――しかし女子は少ないな。


「ハッハッハ、ユージ。大した人気じゃないか」

「へ?」

「俺だよ。まさか忘れてないだろうな」

「あ、えーと、確か……アミルさんでしたよね」


 Eクラスの数人いる護衛のうちのひとり。それは以前、武闘大会選抜テストの試験官で裕二の担当だったアミル・シュリコックだった。


「覚えててくれたか」

「アミルさん護衛なんですか?」

「そうだ。まあユージに会いたくてネジ込ませてもらったんだけどな」

「俺に? 何か用でも?」

「そうじゃないけど、単に仲良くなりたいだけさ。深く考えないでくれ」

「はあ」


 どうやらアミルは裕二に会うために、今回の護衛に志願したらしい。そこには何らかの狙いがあるのか、それとも本当に仲良くなりたいだけなのか。それはわからない。


 各クラスの準備も終わり学院を出てスペンドラの門をくぐる。そこから先は街道から森に入る分かれ道を進む。

 とは言っても、この辺りにモンスターは滅多に出ないので、はっきり言ってお散歩コースだ。だが、下位クラスの生徒には緊張してる者も少なくない。


「ユージはモンスターが現れたら彼等の横について指導してくれ。危険な時以外は手を出すな」

「わかりました」


 一応、裕二は感知能力を働かせながら隊列の横を歩く。だが、当分は何もいそうにない。戦闘が一切なく終了と言う事もあり得るのだろう。


「ユージとテリオス・ジェントラーの試合は見てたぞ。凄かったな」

「いやあ、テリーが強すぎて負けましたが」

「テリオスは特別だ。ジェントラーの秘密兵器だからな。それをあそこまで追い込める奴は騎士団でもなかなかいないだろう」

「そうなんですか。テリーの評価は元々高いんですね」

「まあ、そんな事よりユージは将来どうするつもりなんだ?」

「将来……」


 おそらくアミルはそれを裕二に聞きに来たのだろう。騎士団の人間がわざわざ会いに来るのだから、スカウトが濃厚だと思うが、アミルはとりあえず雑談混じりに、その辺を聞きたいと思っているようだ。


「そうですね……冒険者とか良いかなって思ってますけど」

「冒険者?!」


 アミルは裕二から冒険者と聞き、素っ頓狂な声をあげた。


「ま、まあ悪くはないが、ユージなら魔術師団、騎士団、ゆくゆくは宮廷武官も可能だぞ。そっちのが良くないか?」

「あんまり興味ないですね」

「そ、そうなのか……」


 裕二は淡々と答えるが、アミルは少しがっかりした様子だ。予想した答えと違っていたのだろう。


「しかし、冒険者となるとペルメニアより他国の方が活動しやすいだろうな」

「そうなんですか?」

「ああ、ペルメニアは騎士団、魔術師団ともに強いからな。冒険者の仕事は兵力の弱い領地を渡り歩く事になる。討伐だけが仕事じゃないけど、実入りを考えるといまいちだな。それなら騎士団に来たほうが良いと思うぞ」

「は、はあ」


 ――そうなのか。活動しやすい国ってのがあるって事か?


「どこの国が活動しやすいんですか?」

「ペルメニア以外はどこも大して変わらないが、ペルメニア北西のアンドラーク、南西のサレムはモンスターの多いデカい森に隣接する場所が多い。古代に魔人の召喚したモンスターも野生化して多く残ってると聞くな」

「アンドラークにサレムか……」

「いや、ちょっと待てユージ! お前まさかペルメニアを出る気か?」

「え、いや、今聞いたばかりでそこまで決めませんよ」

「だ、だよな……俺の言った事でユージが国を出たら立場がないからな。それだけはやめてくれ」

「え、はあ」


 アンドラークは初めて聞くが、サレムは以前バイツに聞いた事がある。広大な森に隣接し、森の先には深い谷がある。そこには強力なモンスターが多数棲息し人がそこを越えるのは難しい。更にその先には魔人の棲息する地があると言う。

 だが、テリーがその事に否定的だったので、本当かどうかはわからない。

 

「裕二は卒業までまだ時間があるからな。他の事も考えてみてくれ。いつでも相談にのるぞ」

「騎士団に来いって事ですか?」

「ま、まあ、ぶっちゃけそうなんだが、グラスコード侯爵を無視してユージを勧誘できないからな。言うなよ」


 アミルはいたづらっぽく微笑んで、そう言った。

 グラスコード侯爵を通さず裕二を勧誘すると、侯爵からの心象は悪くなる。そうなると纏まるものも纏まらない。なのでアミルは今回、それとなく裕二の意思を確認しに来たのだ。


「ああ、なるほど。わかりました。言いませんよ」


 そんな話しをしながら進んでいると、裕二の感知能力がモンスターの気配を察知する。他のクラスでもぼちぼちモンスターが現れてるようだ。


「オーク四体出現。慌てず一体を四人以上で取り囲め」


 アミルの指示で生徒が動き出す。オークの数に応じ、四つのグループに別れそれぞれに護衛がつく。裕二もそのうちのひとつを担当する。


「う、うわっ!」


 オークは剣を持っており、それを生徒に振り上げた。本物の殺意に慣れてない生徒は、怯んでしまい尻もちをついてしまう。


 ――ガンッ!


 慌てて裕二がそれを受け止めた。そしてそのままオークを押し返し生徒との距離を離す。


「一旦距離を取って仕切り直せ。ひとりは囮になって防御に徹し、後衛は魔法で威嚇、横から他の者が攻撃しろ」

「は、はい!」


 何度かそれを繰り返し、裕二のアドバイスで何とかオークを倒せたようだ。その後他のグループもオークを次々と倒して行く。


「ユージ、なかなか良いアドバイスだったな。教官も向いてるかもな」


 アミルはそう言って親指を立てた。



 そして裕二とテリーのいないAクラスは護衛の出番もなく、軽々とモンスターを倒して行く。

 エリネア、シェリル、リサがいるので苦戦する事は全くないが、別の意味で不和が起こる。その中心人物はシェリルだ。


「ちょっとあなた。リサとか言ったかしら。そのオークは私達の獲物だったのよ。邪魔しないでちょうだい」

「え、でもディクトレイ先生の指示が……」

「私達の方が近かったじゃない。何を見てるのかしら。その程度の状況判断も出来ないの!」

「は、はい」

「ベストエイトだからっていい気にならないでね。ついこの間までBクラスだった癖に」

「……」


 シェリルとリサの言い争い、と言うよりリサがシェリルに一方的に言われている。だが、そこへたまたまエリネアが居合わせた。


「あなた達いい加減なさい! 今は演習中です。言い争う暇があったら周りを警戒しなさい。遊んでるのではないのですよ」


 という状況になっていた。


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