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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第一章 異世界転移と学院
37/219

37 二回戦


「院長先生。なかなかやりますね。シェリル・グラスコード。あれならエリネア殿下とも良い勝負が出来そうです」

「ほっほっ、一応魔法科一年Aクラス四位の実力者ですからな。努力さえすれば更に良くなるでしょうな」

「おそらくグラスコード侯爵は、彼女とユージを結婚させたかったのではないですか?」

「でしょうな。そうなればグラスコードは使徒の家系にも無視できない存在感を示せるかもしれません」

「ふむ、確かに……まあそう簡単にはいきませんが」

「悪い顔になってますぞ、ジェントラー卿」


 貴賓席では、リシュテイン学院長とジェントラー侯爵がそんな会話を交わしている。

 そして舞台の上では、バイツがシェリルの攻撃を受け地面に転がり、今まさにトドメを刺される瞬間だった。


「これで終わりね。ロックファイアーシューティング!」


 だが、地面に這いつくばるバイツの手には、拾った魔石が握られていた。


「シューティング!」

「きゃっ!」


 油断したシェリルに近距離から魔石の攻撃が行われる。バイツは倒れた振りをしながら魔石を拾っておいたのだ。シェリルはダメージを受けながらも距離を取る。

 続けてバイツは、魔石を集めているペルシュにも同じ攻撃をする。


「ギャッ!」


 ペルシュは魔法が解けたのか集めた魔石の袋をほっぽり出して逃げて行った。そしてその袋をバイツが素早く回収する。


「ちょっと! 人の物取らないでよ!」

「戦闘中に武器や道具を奪われ相手に使われる、破損される。これについての責任は持ち主が負う。規定にはそう書いてあるが?」


 バイツはそう言いながら魔石を袋から取り出す。


「俺は魔石を使ったロックファイアーシューティングは使えないが、その下位魔法のシューティングは使える」


 シューティングはロックファイアーシューティングの炎がないバージョンだ。威力はそこそこだが、大量に使われたらそれなりのダメージは与えられる。


「うっ!」

「良い作戦だったが、穴だらけでもあるな。俺には通用しない。お前は俺に観察されていた事に全く気づいていなかったようだ」


 バイツは魔石を握ったままシェリルに向かって走り出す。シェリルもすぐさまリトルソーンで対応するが――


「魔法が……発動しない!」


 すぐそばまで来たバイツは魔石によるシューティングを放つ。シェリルはポイントエアーを使うが、これも発動しない。


「きゃあっ!」


 攻撃を受け顔を背けたシェリルの鳩尾にバイツの剣の柄頭が突き刺さる。


「うっ!」


 強い衝撃を受けたシェリルはそのまま意識を失い、ばったりと倒れた。


「リトルソーンもポイントエアーもジャミングで防げる下位魔法だ。勉強不足だったな」


 シェリルに駆け寄った審判は気絶を確認すると、バイツを呼び寄せた。


「勝者、バイツ・エストローグ!」


 そして会場から大きな拍手が巻き起こる。舞台の上では気絶したシェリルが担架に乗せられ医務室へ運ばれる。大した怪我もないので心配はいらないだろう。


「アイツ危なかったな。ギリギリ勝てたんじゃねーか?」

「だろうな。今の戦いじゃ、次のテリオス・ジェントラーに勝てるとは思えねーな」


 会場からそんな声もちらほらと聞こえてくる。だが、裕二は違う考えのようだ。


「わかったのはバイツがジャミングを使う、盾が広がる、これだけだな。シェリル相手じゃ実力は出さないって訳か」

「そ、そうなんですか? シェリル様はかなり健闘したように見えましたが……」


 マレットは裕二の意見に驚いたようだ。マレットにはシェリルが終始有利だったが、僅かな隙をつかれ逆転されたように見えていた。


 バイツは騎士科ナンバーワン。かなりの技量があるはず。そして裕二はバイツと演習場で会った時に魔法の訓練もしていると言っていた。ジャミングだけとは思えない。シェリルの作戦を把握するまでは、まともに攻撃せずやられた振りをしていたのだろう。余裕がなければそれも難しい。それが出来る実力差があるという事だ。バイツはほとんど実力を見せていないと考える事ができる。


「もしかしてテリーやばくね?」


 裕二がそう漏らすと後ろから頭をバシッと叩かれた。


「イテッ。何だテリーか」

「お前は俺より自分の心配をしろ。次戦うのはお前だぞ!」

「わかってるよ」

「お前はバイツと戦わない。だからバイツの事は考えなくていい。何故なら俺がバイツに負ける訳がないからだ。決勝は俺とお前が戦う。ユージはまずはエリネアに勝て」

「だからわかったって」


 これで一回戦の戦いが全て終わった。二回戦の第一試合がユージ対エリネア。第二試合がテリー対バイツとなる。

 

 次に戦う裕二は先ほどのエリネアとリサの試合を思い出す。エリネアはリサの召喚獣が消える前、何かをやろうとしていた。あれは何だったのか。強力な魔法と考えるべきだろう。それに加えエリネアの使う防御魔法、ロイヤルアイスガード。あれを突破するのも簡単ではないはずだ。簡単ではないからリサは召喚魔法を使ったのだろう。


「突破は可能なんだけどなあ……」


 単に破壊するだけならサイコキネシス、リアンやムサシの攻撃で可能だろう。それが使えれば苦労はない。それらの力を知られない為には、様々な魔法を試しながら戦うしかない。



「学院長。次はユージとエリネア殿下ですね」

「興味深い試合ですな」


 リシュテインは裕二の能力と、それを隠しておかなければならない事を知っている。その状態で高い実力を持つ魔術師のエリネアとどう戦うのか。学院長ではなく、いち魔術師としても興味深い試合と言える。


 ――欲を言えばリアンが見たいのじゃが……


「テリーから聞いたユージの実力なら、エリネア殿下に負ける事はないそうです。ですが、手こずる可能性は高いと言ってました」

「ふむ、エリネア姫はかなり力を付けてるようですぞ。精霊魔法は使うでしょうな」

「やはりそうですか……殿下はユージの実力を高く評価してるが故でしょう」



 エリネアはリサとの試合が終わってから自分の席にゆったりと座り、ほとんど動かなかった。少しでも体を休め、魔力を回復する為だ。出来るだけ万全の状態で裕二と戦いたいと思っている。


 ――ユージが使った雷属性の移動魔法。あれ自体は大した事はない。でもあれはオリジナルでもある。他にオリジナルがないとは言えない。そしてユージは剣もある程度使える。そちらも注意しなければ。


 エリネアはギリギリまで体を休めながら、裕二対策を考えているようだ。


 方や裕二もエリネアとどう戦うか考えてはいるが、裕二にとって有利なのはセバスチャンがいる事だ。戦闘中でもセバスチャンから助言を受ける事が出来る。


 ――頼むぞセバスチャン。

 ――畏まりました。

 ――ミャアアアア。

 ――チビドラも助言したいってー。

 ――また今度な。


「これより二回戦第一試合を始めます。ユージ・グラスコード、エリネア・トラヴィス。舞台へ」


 闘技舞台に上がった審判から二人の名が呼び出される。ユージとエリネアは返事をしてから舞台へ上がった。


「やっと戦えるわね」

「ああ」


 ユージとエリネアはほんの少しだけ言葉を交わし、審判の注意に聞き入る。それが終わると二人は開始位置についた。


「では試合始め!」


 審判の声と共に鐘がなる。同時にユージとエリネアは身体強化。エリネアは更にロイヤルアイスガードを発動する。

 しかしリサ戦とは違い、六枚あった盾を二枚にしている。


「節約バージョンか」


 ユージはエリネアの出方を窺うが、エリネアも動く気配はない。どうするつもりなのか。


 ――裕二様、エリネア様は精霊を集めてます。

 ――なに!


 裕二には見えていないが、霊体化のセバスチャンには精霊が見えている。エリネアは精霊魔法を発動する時間稼ぎにロイヤルアイスガードの縮小版を使っているのだ。


 ――不味い!


 裕二は剣を抜きエリネアに向かって行った。まずは二枚のロイヤルアイスガードを突破しなければならない。


「うおおお!」


 裕二は勢いをつけ氷の盾に斬りかかる。盾はゴンッと低い音をたててヒビがはいる。するとその盾を破壊する前に、もう一枚の盾が裕二の前にくる。エリネアはこちらを見てるような見てないような曖昧な感じだ。


 ――ヤバイな。これじゃ盾の修復もかなり早くなる。


 ヒビの入った盾は後ろに下がり修復。もう一枚が前に出る。これを繰り返されたらいつまでも突破できない。


 ――裕二様、雰囲気が変わりました。距離をとって下さい。

 ――そうみたいだな。


 裕二は盾を諦め後ろに飛び退く。


「バインドシャドウ」


 エリネアがそう唱えると、裕二の影から無数の黒い手が出てくる。


「何だ!?」


 そしてその手は裕二の体をガッチリと捕まえた。


「あ、あれはバインドシャドウ。マッドの比にならないくらい強力な拘束力を持つ、闇の精霊魔法じゃ」

「初っぱなからエリネア殿下は本気ですね。ユージはどうするんでしょう?」

「あれを使われたら騎士科では太刀打ちできんな。闇属性を使える魔術師でなければ対応は難しいじゃろう」


 短い時間制限で拘束力も弱いマッド。バインドシャドウはその何倍も強力だ。普通ならこれで攻撃されて終わりだろう。


「ブレイク」


 エリネアは氷の盾を壊した。それを攻撃に使わず別の魔法を詠唱する。


「エクスプロードフレイム」


 不定形の炎が裕二に向かって飛んで来る。当たれば爆発し、大ダメージだ。


 ――ダメだ! あれをやるしか……


 裕二はかろうじて動く手を、バインドシャドウに叩きつけるように当てた。


「なっ!」


 それによりバインドシャドウは一瞬で弾かれて消える。そのまま裕二は転がるように横へ飛び退いた。直後にエリネアのエクスプロードフレイムがそこを通過し、地面に当たって爆発する。


 裕二が使ったのは、グロッグの頼んだ裏家業の者が攻撃した時に魔法を手で叩き落とした。それを応用したものだ。超能力の部類に入るので使いたくはなかったが、一瞬の事なので気づかれない可能性もある。追及されなければバレないだろうが頻繁には使いたくない。


「あぶねー」


 ――今のは……ダークブレイカー?! 闇属性の対抗魔法まで使えるなんて……バインドシャドウはもうつかえない。なら!


 どうやらエリネアは既存の魔法と勘違いしているようだ。裕二としては助かったが、エリネアも直ぐに頭を切り替える。


「ロイヤルアイスガード!」


 今度は三枚の盾が現れ、そのうちの二枚がエリネアのガード。一枚が裕二に向かってきた。


「なに! そんな使い方あんのかよ」

「これが本来の使い方よ」


 リサ戦でのやり方は、そのイメージを固定させる意味もあった。早いうちから要の防御魔法を見せるのには意味があるという事だ。

 盾はかなりの速さで裕二に突進する。体当たりのような攻撃をするのだろう。裕二は剣を握り直し盾に攻撃を加える。


「くそっ!」


 しかしこれを破壊しても、直ぐに次の盾が来るだろう。無駄に体力を消耗してしまう。


 エリネアは短杖で氷の盾を操作する。


 ――ユージの動きが鈍ってきたらあれを……


 エリネアの視界には氷の盾と格闘する裕二が写っている。そして裕二の体力が消耗してきたら、複数の盾で裕二を囲い、そこに強力な魔法を使う。その強力な魔法にエリネアはかなりの自信がある。


 だが、その様子を離れて見ていたエリネアが、微妙な違和感を感じた。その直後、盾の攻撃は裕二をすり抜ける。そして裕二はこちらへ向かって走り出す。


「あれは……ファントムプログレス!」


 ファントムプログレスは裕二が選抜の時に使った魔法だ。闇属性の幻術で、本体は見えている裕二の後方にある。通常はそれがわかれば対処出来るのだが、エリネアは焦ってしまい裕二の接近を許してしまう。


「エクスプロードフレイム!」


 それを使ったのはエリネアではなく裕二だった。自分が良く使う魔法を相手に使われ、エリネアは更に焦る。


 そしてエリネアのすぐ前まで不定形の炎が迫った。


「ロイヤルアイスガード!」


 エリネアは咄嗟の判断で氷の盾を三枚重ねて自分の前に並べる。


『バキッ!』


 そのうちの一枚が破壊され、不定形の炎は消えた。同時にエリネアは後方に素早く距離を取る。


 ――やっぱこの盾がメンドイな。どうするか……


 裕二が考える間にも氷の盾はやってくる。しかも今度は三枚だ。エリネアを守る盾はない。


「くっ!」


 壊しても意味のない盾は出来るだけ相手にしたくない。裕二は後方へ飛び退きながら策を考える。


 ――不味いです裕二様、エリネア様は再び精霊を集めてます。

 ――マジかよ。何する気だ?


 エリネアとユージの間にかなりの距離が出来た。最早物理攻撃は難しい。精霊を集めてるなら通常魔法も効かない可能性がある。考えてる間にもエリネアは準備を終えてしまった様子だ。突き刺さるような視線で裕二を見据える。


 そしてその直後、会場が暗くなる。観客もその変化に気づきざわめき始める。そして気温が急激に下がりだした。


「ダイヤモンドダストバースト!」


 キラキラと輝く冷たい大気が舞台の上を覆い始めた。その幻想的な光景に誰もが目を見張る。だが、その対象にされた裕二は強い危機感を覚えた。舞台を覆われたら逃げ場はない。


 ――あのキラキラに触れるのは不味い! どうする……


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