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剣と魔法と七体の人工精霊  作者: ひろっさー
第一章 異世界転移と学院
21/219

21 バイツは塩が好き

年齢設定を変更しました。詳しくは活動報告で。

それと書き溜めもなくなってきたので更新ペースも落ちます。ご了承ください。出来るだけ早くとは思ってますが、基本不定期です。


 クラスの雰囲気はほんの少しだけ変わった。その理由は……


「ごきげんようユージ」

「ごきげんようエリネア」


 と、エリネアが裕二に朝の挨拶をするようになったからだ。とは言ってもそれは、エリネアが近くにいたり、目があった時だけになる。

 だが、裕二としては少し複雑な気分だ。まず『ごきげんよう』という挨拶にはなかなか慣れない。テリーには、おはようと言っているので少しやりにくさを感じる。

 もうひとつは周りの目だ。エリネアが裕二に挨拶する事、裕二がエリネアと呼び捨ててる事に気分を害してる者達が少なからずいる。それはシェリルとその取り巻き、後はエリネアの取り巻きだ。

 裕二としては最初に呼び捨ててしまったので、そのまま通してるだけだ。エリネアもそれについて不快な様子も見せない。

 他の者は裕二にどう対応したら良いかわからず、挨拶をしなくてよい距離感を保っている。

 裕二に挨拶をしたら、その後もし続けなければならない。しかしクラスの情勢は、いつ変わるかわからないので無難な道を選ぶ、という訳だ。

 そしてエリネア自身は、あれからずっとドライな雰囲気を保っている。挨拶はするが、特に仲良くしたりする訳ではない。


 授業の内容も進んでは行くが、裕二はそれより遥か先に進んでおり、相変わらず退屈、という事になる。

 そして放課後はテリーと話しながら帰り、図書館による時に別れる。という毎日だ。


「ところでテリー。養子の件について聞きたいんだけど」

「おっ! その気になったか?」

「いや、そうじゃないけど。ジェントラー家に養子となったら、決めるのはテリーじゃないだろ? その辺――」

「ああ、なるほど。俺もジェントラー家の養子だらかな。説得力がないって事か」

「い、いやテリーは信用してるけど――」

「わかってるよ。しかし説得力か……そうだよな。いざとなって、やっぱり養子は無理とか言われても困るよな。まあ、そのうち裕二が納得する説得力とやらを見せるよ」

「そ、そうなの?」


 相変わらず自信たっぷりなテリーは、笑顔で裕二にそう答える。


「じゃあ俺は図書館行くから」

「ああ、じゃあな」



 ――今日から身体強化系やるか。セバスチャンは術式の書き取りを頼む。

 ――承知致しました。

 ――アリーとチビドラは好きにしとけ。

 ――やったー!

 ――ミャアアアア!


 とは言っても前回のように、実体化して『ドラゴンとクマさん』を読む訳ではない。アリーは何度か実体化して本を読んでいたのだが、その美少女っぷりが話題になり、『図書館の妖精』というあだ名までつけられてしまった。

 一応妖精ではあるが、さすがにそれは裕二も困るので、アリーが本を読む場合は、セバスチャンが自分の使う本、ノート、そしてアリーの読みたい本を並べ、アリーは霊体化の状態でセバスチャンにページをめくってもらう。それをチビドラが一緒に見る。という事になっている。


「毎日通ってるのに最近見ないんだよなあ……」

「『図書館の妖精』だろ? あの麗しい方はどなたなのだろう」


 図書館前で話す少年たちからは、時折そんな声も聞こえる。



 身体強化に関する内容は魔法を使えば強くなる、という単純なものではなく、使い手の経験と魔力に大きく左右される。

 例えば部分強化で足が速くなっても、思考が追いつかなければ、次の動作もない。

 早い車を買えば、とりあえず速く走る事ができるが、速すぎて他の車のウインカーを見る余裕がなければ、接触事故の可能性は高くなる。そんな感じだ。


「なるほど。経験は重要か……身体強化で対ムサシ。セバスチャンを身体強化して戦うのも良いな」


 ジャミング系の魔法が通じるのは低位の身体強化魔法で、高位の身体強化にはそれを妨害する術式が組み込まれており、通用しない可能性は高い。


「そうなると、他のやり方のほうが効率よいかも」


 時間はいつもより少し早いが、裕二は身体強化を使ってみたくなり、図書館を出て森の演習場へ向かう。

 歩きながらセバスチャンの書いたノートを見て、その中の低位部分強化を使うと、割りとあっさり使う事ができた。


「でも、なんかちぐはぐな感じは確かにあるな。これに慣れろって事か」


 裕二は森に着くまでに低位の全体強化状態にしておく。そして森に着くと、その感触を確かめる様に高速で木々の間を走り回る。


 その時、何者かの気配を感じ立ち止まる。


「そこに誰かいるのか?」


 声を出したのは裕二ではなく、その何者かだ。しかし、その声には聞き覚えがある。


「なんだ、お前か」


 森の木々の間から出てきたのは、バイツ・エストローグ、騎士科ナンバーワンと言われている男だ。


「確か……バイツだったか?」

「ああ、お前はテリオスと一緒にいたユージ・グラスコードだな」


 裕二は名乗ってないのに自分の名が知られている事に驚く。


「名前を知ってる事に驚いたか? 編入してすぐに、あのエリネア様を追い抜きテリオスに迫ってるのだから、アイツは誰だとなるのは当然だろ」


 そういう事になってるのか。


「お前とも戦うかもしれんな」


 バイツはそう言いながら笑顔を見せてきた。この間の印象とはだいぶ違う。これが本来のバイツなのだろう。


「見たところ身体強化を使ってるようだな。騎士科の研究という訳か」

「まあな。そっちは何してる」

「俺も多少は魔法を使うのでな。ここなら他の者に見られにくいし、あわよくば魔法科の偵察もできる」

「偵察も兼ねてるのか」

「ああ、まあ俺は挑発して手の内を見ようなどとは考えてないがな」

「やっぱりばれてたんだ」


 話してみるとバイツは意外といい奴だった。色々聞くとゴンズ武具店の常連でもあるらしい。


「ソードケースが欲しいのか。それはゴンズの店では買うな。一応置いてあるけど、武器屋にとっては力を入れてる商品じゃない。布屋で作るか鞄を置いてる店のほうが良い」

「なるほど。餅は餅屋という事だな」

「良ければ俺のをやろうか? 容量が大きすぎて使ってないのがある」

「え?! まじか。俺はでかい方が良いんだが」

「詰め込めば二~三十本は入る。さすがにそこまで必要ないし、コンパクトなソードケースを新調したからな。貰ってくれると助かる」

「え、でもただという訳には……」

「そうか……しかし金を貰うのもな。何かいらない物と交換するか?」


 裕二のいらない物となると、オークやワイルドウルフの毛皮。それと岩塩。武器類もいらないと言えばいらないが、それを入れる為のソードケースだ。少しならあげても構わないが騎士科のナンバーワンが欲しがる武器はないだろう。

 だが、その話しをするとバイツが食いついてきた。


「岩塩あるのか?! それが良いな」

「それで良ければ俺は助かる。岩塩なんて抱え切れないくらいあるからな。売りに行くのも面倒で困ってた」

「そ、そんなにあるのか……岩塩は安くはない上に、スペンドラでは数が少ないので買うのが大変なんだ。是非それにしてくれ」


 二人は意気投合し、一度寮に帰りそれぞれの物を持ち寄る事にした。そして裕二はバイツの部屋の場所を聞き、そこへ岩塩を持って向かう事になった。


「じゃあユージ。部屋で待ってるぞ」


 とは言っても裕二は部屋に帰る必要はない。異次元ポケットから出すだけだ。

 バイツの去った森で、裕二は布を出しそこに岩塩を入るだけ入れて包んだ。


「意外と重たいな。石をいっぱい入れてるから当たり前か」

「裕二様。私が憑依致しましょうか」


 セバスチャンなら力持ちなので、この程度は楽に持ち上げるだろう。


「いや、せっかくだから身体強化で持ってく」

「おお! さすがは裕二様。早速覚えた魔法の使い道を考案なさるとは」

「凄いね裕二!」

「ミャアアア!」

「そんな大袈裟な事でもないだろ」



「随分早かったな。まあ入れ」


 バイツの部屋は裕二とは違う騎士科一年生の寮だ。裕二の部屋とは少しデザインが違うが、内容は大して変わらない。

 ベッドの上にはさっきの話しのソードケースらしき物が置いてある。容量も大きく作りも頑丈そうだ。バイツからすると毎日持ち歩くにはデカすぎるのだろうが、裕二からするとベストと言える大きさのソードケースだ。


「いいのか、これ。高そうだぞ」

「いやいや、それはこっちのセリフだ。これ全部岩塩なのか?!」


 お互い持ち寄った物に満足しているようだ。その後、バイツの塩に対するうんちくを聞きつつ様々な話しをする。だが、武闘大会についてはお互い話さない。それは警戒というよりはマナーに近い。


「バイツは騎士を目指してるんだろ?」

「ああ、いずれ魔人がこの国にも現れる。その時に何も出来なければ後悔するからな」

「魔人か。でも今はいないんだろ?」

「いや、魔人は今もいる。攻撃してこないだけだ」

「え?! そうなのか」

「そうだ。授業では教えないが、クリシュナード正教会の公式発言記録にもある」


 バイツによると魔人はクリシュナードに倒された後、逃げた者が多数おり、それが再び攻める機会を狙っているのだという。


「クリシュナード様もそれを知っていたのだろう。だから再びこの地に戻られると言ったのだ」

「じゃあ、どこかに魔人が隠れ住んでるって事だな」

「そうだ。その場所もある程度はわかっているみたいだぞ」


 その場所はペルメニアの隣国、サレム王国に隣接する広大な森があり、その先にある深い谷を越えた場所だそうだ。


「だが、その森は強力なモンスターが多く、そこを越えても谷を渡るのは困難だそうだ。だからなかなかこちらから打って出る、という訳にもいかないって話しだな」


 その森と谷が人間世界と魔人を大きく隔てている。例えば軍隊がそこを越えて魔人のいる場所に到達しても、その数は、良くて当初の三分の一くらいには減るだろうと言われている。

 そんな事情もあり、人間と魔人の戦いは今は行われない、というのがそのへんの事情を知る者の認識だ。


「クリシュナード様がこの世界に顕現されたら、それが戦いの合図、という事だな。それでも今すぐどうこうという事はないだろう」

「そういう事なのかあ……」


 裕二は新たに知る事実を、どこか他人事の様に聞いていた。


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