第08話
翌日……
正嗣さんとお母さんが仕事に出た後、正樹と話す時間が取れたので、正樹にもウエディングもどきケーキを食べに来て貰った。
「今年はこんなの作ったのか……」
「まあね。ちょっと特別だったから」
「特別?」
「…………」
「どうした?」
うん。正嗣さんの子供の正樹には誰よりも先に言っておくべきだね。
そう思い、気持ちを落ち着けるために大きく息を吸って……
「私、正嗣さんと結婚を前提に付き合うことになったんだ」
「なんだ、やっとか」
「………………は?」
「いつになったら告白するんだって思ってたよ」
「……はい?」
「でも、そうだな、バレンタインデーみたいなイベントにかけた方が告白しやすいか。うん」
「え? えっと…… え?」
「……いや、違うな。暁美は、加奈子と父さんが……って誤解してたんだよな。なら、俺が加奈子との事を暁美に内緒にしてたせいだな。それが無かったらもっと早く行動を起こせてたんだよな?」
「あ、あの……」
「でもごめん、お陰で助かったんだ。先に暁美に父さんを落とされてたら実は加奈子がフリーだって周囲にバレてたもんな…… そしたら俺が加奈子を妻に迎えるのはもっと大変だったと思う………… あー畜生、そんな風に考える俺が嫌になる。ほんっとーにごめん、暁美」
「いや、そうじゃなくてさ……」
「ん? 何?」
「どうしてそういう反応になるの?」
「どうしてって…… だってバレバレだったぜ? 暁美が父さんを好きなのって」
「ま、待って。お母さんはわかってなかったよね?」
「ああ、加奈子は気付いてなかったな…… ん? そういや、父さんも気付いてなかったよなぁ。でも、俺にはわかってたぜ?」
「…………いつから?」
「高一の頃? 体育祭の父兄リレーで走ってる父さんをポーッと見つめてた暁美を見て、ひょっとして? と思った」
「………………」
「それから暁美を観察してると、どんどん恋する乙女な目になっていってたし」
「……ぐあ」
「まあ、俺も暁美を子供の頃から見てたからこそわかる変化かもな。それで、その変化が同じ年上に恋する者として理解出来た……ってとこだな、きっと」
「恥ずかしい……」
なによ、わかってたなら早く言ってよ、教えてよ。
「恥ずかしがること無いって。年上を愛する同士だろ? 応援するよ。加奈子にも帰ってきたら教えないとな」
「お母さんに言うの!?」
「当たり前だろ? ここまできて、今更恥ずかしがるなよ」
「うあー、どうしよー」
「心配すんなって。間違いなく喜んでくれるさ」
「そうだけど、そうだろうけど!」
「加奈子が帰ってくるのが楽しみだなぁ」
「うわーん」
結局、女は度胸。仕事から帰ってきたお母さんには私から伝えましたよ。
勿論すっごく喜んでくれて、結婚式は一緒にしましょうね、なんて言われた。
こうして、『お母さんと一緒にウエディングドレスを着て、おじさんと正樹の元に二人で嫁いで二組合同結婚式なんて未来』が現実になったのです。
あの時想定してた相手とは逆だけれどね。
でも、こんな想定外なら大歓迎。
私達、幸せです。




