第04話
あの時のおじさんの発言に、近々お母さんとの結婚話がくるかな? と思っていたけど特に進展も無いまま一ヶ月余りが過ぎ、そして大学も後は卒業式を残すのみになって正樹に遅れること一週間…… 私は今日、自宅に戻ってきた。
後、もう一週間もすればバレンタインデーだし、今年もおじさんと正樹にはチョコレートを渡さないとね。
去年のチョコレートケーキは凄く好評だったから、今年もそれでいくか、それとも何か別なものにするか悩んでいるところ。
あれこれと迷いながらリビングで帰りに買ったバレンタイン特集の雑誌を眺めていると、お母さんから声をかけられた。
「暁美、ちょっといい?」
「なに? お母さん」
「大事な話があるんだけど……」
視線をそわそわと彷徨わせ、両手をもじもじとさせているお母さんを見ると、左手の薬指にずっとしていた銀のマリッジリングが外され、代わりに宝石のついた指輪が嵌まっているのに気がついた。
「あ、お母さん、ついに結婚するんだ」
「え? なんで…… ああ……」
そう言いながら自分の左手に目をやり、それで私が理解したと納得したらしい。
「うん。あの人にも、もう許してもらえるかなって……」
「おめでとう、お母さん。大丈夫。許してもらえるよ。死んだお父さんだって、お母さんが幸せにならないといつまでも安心出来ないよ」
「今までだって充分幸せだったわ」
「それでも……だよ。結婚は今までの関係とは違うお母さん自身の幸せの道への一歩を踏み出すんだからね」
「……そうね、ありがとう。それで、結婚の相手なんだけど……」
「大丈夫。わかってるから」
今までどれだけ待たせたと思っているのよ、お母さん。
「え? ほんとに? それじゃ、いいの?」
「当たり前じゃない。大歓迎だよ」
「そう…… 私の取り越し苦労だったのね」
「何を言ってるのよ、お母さん。それで、いつ結婚式?」
「私は結婚式はやらなくていいかな? って思ってたんだけど……」
「駄目よ。二回目だからってこんなめでたいことをお祝いしなくて、何をお祝いするの?」
「そう…… 暁美もそう思ってくれるのね?」
「当たり前じゃない」
「うん、ありがとうね。暁美が優しい子に育ってくれて、お母さん幸せよ」
「これからしっかり予定を立てようね」
「ええ。それで、急なことで悪いんだけど、明日、ごく身内だけで結婚報告を兼ねた祝いを出来たらと思ってるんだけど……」
「大丈夫。こんな大事なこと、何か予定があっても意地でも空けるわよ」
「そう? それじゃ、明日六角亭で午後七時からだけど、いい?」
「勿論。槍が降ってきても行くわ」
「ふふふっ、暁美ったら」
そっか。とうとうおじさんが私のお父さんになるんだ。
うん。寂しさより、お母さんが幸せになれる嬉しさの方が勝ってる。
これですっぱり諦められそう。




