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大団円ハッピーエンド企画 「幸せな想定外」  作者: 山口みかん
おまけ ~ 加奈子 ~
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第03話

「加奈子。あんた、いつあの男とくっつくの?」

「え?」

 ある日曜日。久々の友人とのティータイムでそんな事を言われた。


「え? じゃないでしょ。いつ結婚するのよ」

 彼女はあの事を知らない筈。だとしたら……


「あの男って…… 伊藤さん?」

「他に誰が居るのよ」

「それ、誤解よ。お互い、そういうのは全然無いわよ。同士……みたいなもん?」

「えええ、ありえない。あれだけ家ぐるみでべったりで、子供同士も仲良くて何の問題も無いのに?」

「確かにそう見えるかもね」

「誰が見たってそうとしか見えないわよ。それで皆遠慮してるのに」

「遠慮?」

「美男美女の二人が家族ごと仲良くてお似合いで、もう限りなく事実婚に近い状態だから割り込もうって考える人が居ないって事」

「ああ、そういうこと。うん…… そう言う意味では助かってるかも」

「助かる?」

「死んだ夫以外と結婚するつもり無いしね。勝手に誤解してくれてそういうちょっかいを出されないのは正直助かる。向こうもそうじゃないかな? 亡くなった奥さんを溺愛してたみたいだし」

「あんたら……」

「いいのよ。子供のための運命共同体みたいな関係で。和美もこの事は黙っててくれる? 誤解されたままの方が都合良いし」

「いいけどさ、後悔だけはしないようにね?」

「わかってるわ」


 それに今、それどころじゃないのよ……


 そう、あれは一週間前、子供達の中学校入学式から帰り……

 正嗣さんが暁美を連れてコンビニに飲み物を買いに離れていた時の事だった。


「正樹君、中学入学おめでとう。これ、お祝いね」

「ありがとう加奈子さん」

「小さかった正樹君も、もう中学生かぁ…… 身長も抜かれたし、これからどんどん男らしくなっていくわね。これからも暁美のことをよろしくね」

「……加奈子さん」

 正樹君が私の手を握って、真っ直ぐに私の目を見つめてきた。

 元々綺麗な顔立ちだったけれど、少し男らしさが出てきていた彼にこうやって見つめられると流石に少しドキッとした。


「な、なに? どうしたの? 正樹君」

「加奈子さん。将来………… 僕と、結婚して欲しいんだ」

「………………………………は?」

 なんと間の抜けた返事だったのかと思うけれど、その時はこの言葉しか出てこなかった。

 何を言われたのかもまともに理解出来ていなかったと思う。


「加奈子さんを身長で追い抜いたら告白しようとずっと決めてたんだ。小学校も卒業して中学に入学の今が良い区切りになった。加奈子さん、僕のお嫁さんになってください。これからも沢山勉強して絶対に幸せにして見せます」

「お嫁? え? なに? どっきり? エイプリルフールはもう過ぎたわよ?」

「違うよ。冗談でも、どっきりでも、エイプリルフールでもない、僕は本気だよ。今は婚約で良いです。だから将来、僕と結婚して下さい」

「待って、ちょっと待って」

「うん。加奈子さんをお嫁に出来るなら、僕は何時までだって待つよ」

「いやいやいやいや、そういう意味じゃないから」

 何これ? なんで私が正樹君に口説かれてるの?


「何? 加奈子さん」

「いい? 貴方は中学生」

「うん。だから婚約――――――」

「そうじゃなくて、私は貴方より二十歳以上年上のおばさん。これから貴方にはお似合いの子が見つかります」

 それが暁美ならとても嬉しいけれど、そうで無くても小さな頃から見てきたこの子には良い子を見つけて幸せになって欲しい。

 私が…… とかあり得ない。


「年がどうとか関係無いよ、加奈子さんは加奈子さんだ。それ以外に必要ない」

「あのね、正樹君はまだまだこれから沢山の人と出会うの。その中にはきっと正樹君とぴったりお似合いの女の子が居るから、今から早まったことを考えなくて良いの」

「…………わかった」

「わかった?」

 よかった…… 一時の気の迷いでこの子の人生が台無しになるのを見過ごすわけにはいかないから……

 ごめんね、正樹君…… 今の正樹君なりに一生懸命考えたんだろうけれど……


「これから僕の想いが気の迷いじゃないって証明してみせていくから。待ってて、加奈子さん」

「え?」

「僕、加奈子さんに似合うようになる為に一生懸命…… いや、必死に頑張るから」

「ええ?」

「絶対に加奈子さんをお嫁にするから」

「えええ?」


 わかってないー!!!



 それからの正樹君は本当に凄かった。

 サッカー部に入り、朝からランニングをして身体を鍛え、夜遅くまで机に向かって勉強に励む。

 高身長で見目も良く、スポーツマン、そして学年トップの成績をキープ。

 これで女の子に人気が出ないわけがない。

 暁美から伝えられるその状況に、すぐに彼女が出来ると思った。


「暁美も他の子に負けないように頑張りなさいよ?」

「やっかまれて大変なんだけど」

「どういう事?」

「正樹が女子でまともに話すのが私だけだったからかな。お陰で危うく仲間はずれにされるところだったよ」

「え? 大丈夫だったの?」

「正樹が早めに気付いてくれたからね。それで他の子達と少しは話すようになってから下手に私を虐めたら正樹に嫌われると思ったみたいで大丈夫だった」

 流石、正樹君だわ。

 今もあの時と変わらずに暁美をしっかりと守ってくれている。

 本当に正樹君が好きになってくれる相手が暁美なら何も悩む事なんて無いのに……


「それでも一番仲良く見えるのは私だから、やっかみ自体は無くならないんだけどね」

「大丈夫?」

「うん、最近私と正樹を夫婦扱いする人が出てきたから、これに乗っかってやっかみを諦めに変えちゃおうって正樹が言ってる」

「何、それ。凄いこと考えるわね」

「私もそう思う。でも本当にやっかみの嫌がらせとか減ってきた気がするから、やっぱりスゴイよね、正樹」

「そうね……」


 本当に彼はあれから急に大人びてきた。

 まだ少しは子供らしさがあってもいいと思うんだけれど、これもやっぱり私の為なんだろうか……

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