5、もしもこの先に希望があるのなら…
私が一階に行くと母がホワイトボードを取り出し、マジックで何かを描き始めた。描いたのは家と多分、塀だと思う一本線だった。
「この家から抜け出して、食料があるところに行くわ」
母の顔は先ほど、酷いことがあったと言うのにやけに明るかった。私はボソッと「無理をさせてごめん」とつぶやいた。
母の言うことはこういうことらしい。
まず、母が車を出して門を開ける。門は手動でしか開かないため、私が開けたら車にすぐに乗り込む。そして、脱出するらしい。私は先ほどまとめた荷物を持った。ついでに、水を持ってこようと空のペットボトル水を汲み出した。
ちょうど、1Lのペットボトル16本をついで17本目の3分の1ぐらいに差し掛かったとき、水道が止まった。
「水道施設が止まったのね。もうじき電気も止まるわね」
母はそう言うと私の体と同じくらいの蓄電池を車に積んだ。家の車が6人乗りの車で助かった。母は詰めるだけ積むと車に乗った。
「門を開けて」
この家は家の回りに塀がある。そのおかげでやつらが入ってくることはないだろう。でも、門を開けるとやつらが帰ってくるから、一発勝負だ。
私は門を開ようと“ズリズリ”と音がなる。その音に反応したらしく、やつらはこちらに来る。思った通りやつらは遅い。このまま行けば…。
「加奈!!後ろ!!」
母の叫び声で後ろを振り向くとやつらが居た。そして、手を振り上げて私にめがけて振り下ろした…。
「今回の件は一体どうしてくれる!!」
男が机を叩いてそう叫ぶ。男はだいぶ怒りを抑えられないらしく、今でも攻撃してきそうな目をしていた。
「まあまあ。落ち着いてください」
もう一人の男がなだめるように先ほどの男に言う。穏やかな性格らしく、ニヤニヤしている。
「そうですよ。こちら側の責任を問われることはありませんよ」
すると、さらに違う男がそう言った。さらにこう続けた。
「これらのことは全て、一条コーポレーションの責任なのですから…」
その場の全員はその言葉で静かになった。最初に叫んでいた男がこう言った。
「それは一体どういうことだ。俺は聞いてないぞ」
するともう一人の男はにやっと笑顔を作りこう言った。
「何のために一条コーポレーションと…したんですか?」
その言葉を聞いた一同はざわめきはじめる。口々に話し出す。
「みなさん、お静かに。すべてこちらに任せて下さい。あくまでこちらの仕事なので…」
そう、この集まりの長のらしい男がそう言うとあたりが静まりかえった。
私は振りかざされた手を回避すると、その場にあった植木鉢をやつらめがけて振りかざした。やつらの頭に当たったらしく、やつらは倒れて液体をだし始めた。私はすぐに離れ、車に乗り込んだ。
「飛ばすからしっかり捕まっときなさいよ!」
母はそう言うとアクセルを前回に踏み込みやつらを引きながら道路に出た。道路には少しながらやつらがいたが、母は構わず蹴散らす。少しぐらい荒い運転だったが、そのおかげで助かった。