3、希望があるのなら…。
とうとう家を出る。親しみ深い家を出る。外の世界。もう嫌。本当の嫌だ。
(願いを取り消したいならここにこいよ。)
脳内にあのガキの声が透き通る。私は息を飲む。そうだ、私は死んではいけない。生きなきゃ。願いを取り消せば。死んだバカ兄貴も、父も生き返るに違いない。そう自分に言い聞かせる。正気を取り戻せ。私。
いつものゲスくて非道な私は今更何いってんの。いつもなら「自分さえ良ければすべてよし」をモットーに生きてきた私が何を今更ためらうの?
でも考えれば考えるほど、弱気になっていった。
「ねえ、お母さん。一度だけでいいから、街外れの丘に立ち寄って良い?」
母は少し、困った顔をした。
「どうして?」
私はその問いに答えられなかった。ここで答えたら、私が原因だと言ってるようなものだ。そんなこと言えなかった。言ったらどうなるか分からない。それに、まずは安全に丘までいける方法を考える方が先なのだから…。
「ううん。やっぱりいい。何でもないから。」
私は無理やり笑顔を作った。母は何故か少し不思議そうにしている。本当は聞きたいのだろうがあえて聞かない。本当に良い母親だ。本当に良い、母親だ…。
私は自室に戻り兄の死体を再度確認する。首筋を触っても脈もない。冷たい。本当に死んでいるのだ。私は目から涙が出てきた。自分が兄を殺してしまったこと。その全てに涙が出てきた。
「さっ。片付けましょう。」
私は自分の机の上を整理しようと手をつけると、写真フレームが倒れた。
私は直そうと写真フレームを持つと家族の写真が写っていた。もう、涙が止まらない。皆凄く良い笑顔だ。偽りではない本当の笑顔。もう見えないのだ。この本当の笑顔なんてもう見られない…。
「加奈!!来なさい!!」
母が呼んだので台所へと向かう。これからどうしようそんなことを考えながら向かった。ただ、丘に行かなくては、そう思いながら階段を一つ一つ降りて行った。
これからどうするの。
知りません…。
まあ…そゆことで。
閲覧いただき有難うございます!!