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Shift to the next games   作者: ハルヤ
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理不尽モンスター

逃げろや逃げろ、逃げ出す事は簡単さ。逃げたい物に背を向けて、足を動かせスタコラサッサ。

2「理不尽モンスター」







 SSGソード・シフトガーデンは世界的に有名な会社ファンタスティック・コーポレーションが製作、運営するMMORPGである。

 剣と魔法が交差し、その先に待つ物を探すRPGと名を売った事もあり、このゲームには剣を使った職業《剣士職》と多彩な魔法を扱う《魔法職》が存在する。剣士職の下位職ファイターと魔法職の下位職コモンからゲームスタートし、レベルアップ時に振り分ける技能によって職業が変わってくる。例えばレベル1の剣士職ファイターがHPを重点的に振り分けると重剣士タンカーに、レベル1の魔法職コモンが魔力を重点的に振り分けると《ウィッチ》に……各プレイヤーのステータス振り分けによってクラスチェンジが出来る。

 そしてこのゲームの大きな特徴が《シフト・スキル》と呼ばれる物だ。一般的なゲームにおける必殺技や特殊攻撃と変わらないのだが、ある一定のシフト・スキルの使用回数によって就ける職業があったり、様々な変化が訪れる。次の段階に必要な経験と公式サイトの説明文に書かれていたが、これが職業変化以外に大きな変化をもたらしたと言う話は聞いたことがない。


 この世界での俺の名前は《フリード》、元SSGプレイヤーだ。

 ゲームだった頃のSSGではそこそこ名の知れたプレイヤーだがそれはもう過去の話。モニター越しにコントローラーを握り、ボタンを押してモンスターを狩っていた頃とはまるで違う。全身を使って剣を振らなくちゃならないし、それによる疲労感もある。

 SSGは突如ゲームから人生へ生まれ変わった。俺達SSGのプレイヤーはこの世界に取り込まれ、冒険者としてこの世界で生きている。俺は背中の鞘に片手両刃剣エンポリオを収めると、草原の木陰に腰かけた。


 この人生が始まってから二日が経過した、平原に居るモンスターとの戦闘はそこそこ慣れたと自負している。モンスターの攻撃による痛覚はほとんど無く、そのかわりノックバック《のけぞり》が発生し、俺の身体には疲労感が残る。きっとHPが低下しているという暗示なのだろう、という事で事故解決しているが、これについては後々追求していかなくてはならないと思っている。その他、アイテムストレージなども存在し、道具等の管理はとても楽である。

 恐ろしい事なのだが、ゲームの中に入ったという感覚はちっともない。足で地面を踏みしめ、拳で剣を握り、腹が減れば飯も水も飲む。人間が人間として生活している、そのような感覚に陥るのだ。


「おーい!!フリードォー!」


 そう遠くはない場所から、俺の名前を呼ぶ男の声が聞こえてくる。俺は木陰から立ち上がると、その声のした方を見つめた。遠くから手を振り走ってくる男は、何やら嬉しそうに表情を緩めている。


「おお、おかえりカミナ」


 男、カミナは俺の前に辿り着くと膝に手を当てて肩で呼吸した。カミナはSSG時代からの友達フレンドでよく狩りにも一緒に行ってた仲だ。引退後にオフで一度会っているため、アバターの顔で誰が誰だか判別がつかないこの世界で唯一……顔の判別がついた男だ。これは本当に奇跡的なめぐり合わせだと思っている。

 カミナはSSG上位プレイヤーきっての戦闘狂で、大方のモンスター情報は知っている。攻撃モーションや反撃のタイミングまで独自で研究を重ねていた熱心なプレイヤーだった。性格は真っ直ぐで熱血、曲がった事や卑怯な事が大嫌いな男である。 

 

 少し肩で息をしていたカミナだが、呼吸が落ち着くと顔を上げて興奮しながら話し始めた。


「フリード!すんげぇ情報を仕入れたぞ!」

「すんげぇ情報?なんだよ、それ」


 俺がオウム返しにそう聞くと、カミナは腕を組んで何故か自慢げに話し始めた。

 

「この世界各地で新たなモンスターが確認されたんだよと!」

「新たなモンスター?アップデートでもあったのか?」


「いや、それはわからねえけどよ……なんでも情報ウィンドウに出てくる名前がおかしいんだとよ」


 敵対するエネミーの頭上には、敵の情報を現すウィンドウが現れる。情報ウィンドウで確認できる情報は敵の名前、レベル、種族、主な属性の4つだが、魔法職のシフト・スキル《コンセントレーション》を使う事によって敵の体力値、弱点特攻属性も確認出来る。

 その情報ウィンドウに表示される名前がおかしいと、カミナは言っている。


「おかしい……って、どうおかしいんだよ?バグってたりするのか?」

「いや……それがよくわからないんだとよ、アマニスタ迷宮で遭難した初心者プレイヤーが見かけたモンスターで、その時の事もよく覚えてねえんだとさ」


 アマニスタ迷宮は、アマニスタ平原から連なるアマニスタ山脈を越えるためのトンネルのような物で、《ジュドス地方》へ行くには必ずそこを通って行かなければならない。遭遇エンカウントするモンスターは比較的弱いが、構造が複雑な為に迷うプレイヤーも少なくない。地図と明かりが必須のダンジョンである。


「だからよフリード、一緒に迷宮行こうぜ!?」

「うーん……確かに、おかしな名前ってのも気になるな……よし、行ってみるか!」


 俺とカミナが居るのはアマニスタ平原中央辺りの小川の傍、ここからアマニスタ迷宮までは歩いて15分程度の距離だ。ゲームだった頃のSSGでは、たった2分足らずの操作で辿り着けたがそうはいかないようで……これまた現実という物を痛感させられる。


「そういえばフリード」

「ん?」


 あえて小川に沿って歩き、水しぶきの涼しさを味わっていた所にカミナが話しかけてきた。


「やっぱお前もレベル1からだったのか?」

「ああ、おまけにアイテムストレージも空っぽだったし倉庫にも何もなかった」


 俺がそう言うとカミナが悔しそうにヘンなうめき声を上げる。

 そもそもレベルという概念が残っているのかが怪しい所だ、所持経験値数も現在レベルも何処をどう探しても見当たらない、情報が入ってこないのだ。


「ちっくしょー、このゲームに費やした時間返せっての!」


 カミナと出会ったのはこの人生が始まったその日の夜、アマニスタ平原で焚き火をしていた所に煙と肉の香りに連れられてやってきた。それから俺とカミナは行動を共にしている、もしかしたらゲーム時のレベルが引き継がれている者が居るかもしれない……やはり皆が思っている事なのだろう。


「……まぁ落ち着けよ、しかし……早く元の世界へ帰りたいなぁ……」


「えらく帰りたがるな、お前は」

「……逆に、カミナは帰りたくないのか?」


「そりゃ俺だって帰りたいさ!やっぱ自分の部屋で起きていつものように仕事に行って、そして仕事終わりに一杯のビールをキュッといくのが最高だ!くぁ~!考えただけでもたまんねえなぁ!」

「なぁ、ビールってそんなに美味いのか?」


「そりゃお前、美味いに決まってるだろ!お前の親父さんは酒飲まないのか?」

「飲んでないよ、仕事の飲み会とかじゃ飲むけど……家じゃ全く飲まない」


 他愛の無い会話を続けつつ、アマニスタ迷宮に向かう俺達の前に二匹の豚のようなシルエットが飛び出してきた。


「お……《ピグラス》か!よっしフリード、昼飯決定だな!」

「や、やるのか?よし……」


 犬牙を剥き出しにして笑い、カミナは背中のグラディウスを引き抜いた。両刃の直刀であるグラディウスの刀身が、太陽の光を反射し輝いている。

 カミナが地面を抉り駆け出した後に、ワンテンポ遅れて俺は背中の剣を引き抜いて構える。カミナは既に前衛に立ち、二匹のピグラスが大きな牙を使ってカミナを貫かんとしていた。


 ピグラスはアマニスタ平原に生息する牙獣種に分類されるモンスターで、ゲーム内ではレベル1。初心者がまず最初に倒すモンスターとして、SSGプレイヤーの間で割と親しまれている。見た目はお世辞にもいいとは言えないが、ドロップする食材がゲーム開始時にしてはいい値で売れるので、お金に困った初心者プレイヤーがよくアマニスタ平原で戦っているのを見かけていた。


「フリード!一匹そっちに行ったぞ!」


 カミナの声にふと我に返る、ピグラスは俺の方を向いて地面を抉りながら突進してきている。咄嗟に横に避けると、ピグラスが俺の居た所を通り抜けていく。あの突進を受けたら大きなダメージになる、無駄にHPを消耗するわけにはいかない。俺は右手に握った両刃剣エンポリオを真っ直ぐ突き出して構え直す。

 ピグラスは前足で地面を抉りつつ様子を伺っている、俺は足を前に出してピグラスを脅かすように威嚇した。するとピグラスは駆け出し、先ほどのように突進してくる。俺は歩を止めずにピグラスに突っ込む。そしてお互いぶつかる直前で……俺は足を斜め前に踏み出しつつ身体を逸らす、そして剣をピグラスの身体に沿って一閃……ピグラスは突進を止めて止まり、ピグラスの大きな身体は地面に倒れ伏した。


「カミナ!そっちはどうだ!?」

「おう、こっちも終わったぜ!」


 グラディウスを背中の鞘に収めつつ、カミナは俺の方へ歩いてくる。

 ちょうど腕を曲げた程度の距離の空中に、半透明のガラスのようなウィンドウが現れた。それには俺が読める文字……日本語でこう書かれていた。


『you win! ピグラスの肉×2 ピグラスの霜降り肉』


「あ……霜降り落とした」

「マジでか!?フリード、早速焼こうぜ!」


 ウィンドウの決定ボタンを押すとガラスは消散し、アイテムはストレージに送られる。最初こそ驚いた物だが、戦闘を何度も繰り返しているのでウィンドウの出現には慣れてしまった。


「飯にしようぜフリード!腹減っちまったしよ」

「そうだな、もう少しで迷宮入り口だし到着したら火を起こそう」


 俺は剣を背中に納めつつ、カミナと共に歩き始めた。


・ 



「迷宮に潜むヘンな名前のモンスター……一体どんなヤツなんだろうな」


 漫画肉のように丸まった肉が刺さった串を片手に、カミナがそう呟いた。俺は肉に貪りつき、飲み込んでから言葉を放つ。


「……やばそうなモンスターだったらすぐに逃げよう。死んだらどうなるかわからないし」

「だな、流石に俺も死にたくねーや」


 一つの行動を取るたび、これが現実だとひしひしと痛感させられる。肉を焼いている時の香ばしい香りと、焼きたての肉を口一杯に頬張った時に広がるジューシーな肉汁とほんのり感じる塩味。これら全て、SSG外の世界で普段感じていた事だ。


「……街の連中はまだ落ち着いてないのか?」

「ああ、まだ腑に落ちてないプレイヤー共で溢れかえってるぜ。気持ちはわからない事は無いが、何か行動をしろってんだよなぁ」


 俺も気持ちはわかる。突然この世界で生きろだなんて、混乱しないわけがない。


「でもしっかし、カミナはこの状況を楽しんでる節もあるよなぁ」

「え?バレてた?」


「バレバレ、さっきピグラスが俺達の前に出てきた時なんてすごく嬉しそうな顔してたし」

「まぁ、一度はこの世界に来てみたいとは冗談でも思ってたし……な、だけどタイミングが悪いんだよなー!」


 タイミング?と俺が聞き返すと、カミナは串の肉に齧り付いて、飲み込んでから話を始めた。


「何も会社で上手く行ってる時にこっちに連れてくるこたぁないだろ!?」

「……だな、俺にもその気持ちが痛いほど分かる」


 ほう?と怪しく微笑み、顎に左手を乗せるカミナ。


「な、なんだよ」

「さてはフリード……女か?」


「ば、ばば馬鹿!そ、そんなワケねーだろ!!」

「はっはっは、テレるなテレるな!」


 まぁ……図星だったのだが。

 茜の事を想うと夜も眠れない。茜の笑顔が見たい、一刻も早く帰って抱きしめてやりたい。


「……なら、尚更早く帰らないとな」

「そうだな、お互い頑張ろうぜ、カミナ」


 帰る方法が無い?それがどうした。意地でも元の世界へ帰ってみせる。

 その時俺は、揺ぎ無い決心と間違いない友情を感じていた。





 炎の始末が終わり、俺とカミナは迷宮の入り口に立ち尽くす。モニター越しに眺めた景色と同じなのだが、やはり目の前に広がると別物のように思えてくる。


「よし、行こうぜフリード!」

「お、おう」


 どんどん迷宮に足を踏み入れるカミナと違って、少し恐怖を覚える俺の足は少しずつしか前に進めない。入り口からしばらく歩くと、外の明かりが中に届かなくなったので、俺とカミナは松明に火を付けた。

 明かりが燈ると周りの風景も見えてくる、所所朽ち果てた石畳の床と壁、それらには木の根がびっしりと蔓延っていた。気をつけて歩かないと足元をすくわれて転んでしまいそうだ。


「おいフリード、これ見てみろよ」


 しばらく歩いていると、カミナがたいまつで壁を照らす。そこに見えたのは何かの壁画だった、大きな龍と……人型の何かが戦っているようだ。こんな壁画ゲームの時には確認出来なかったが……。


「これは……」


 壁画に描かれている龍に、俺は多少の見覚えがあった。刃のような黒い鱗で身体を覆い、鉄をも噛み砕く牙と全てを焼き尽くす炎ブレス……。そこまで考えて俺はあるモンスターを思い出した。


「これ……イプリクス・ドラゴンじゃないか?」

「あー……言われてみればそうかもな、俺は戦った事無いけど……フリードはあるんだろ?」


「一応……ね、あれを倒すのはきっと骨が折れるよ」


 神龍イプリクス・ドラゴン、ギンヌンガガップ神火山の最終ダンジョン《ギヌ・ドラゴ空中回廊》の奥地に潜むこのゲームの最終ボスでもある。俺はSSGがまだゲームだった頃、調査がてらギヌ・ドラゴ空中回廊を散策していた時。偶然見つけたダンジョン7階の黒くて大きな扉、モニター越しでコントローラーを握る俺ですら固唾を呑まずには、その扉を開ける事は出来なかった。その奥で待ち構えていたのは最終ボスに相応しい風貌のドラゴン、情報ウィンドウには《イクリプス・ドラゴン、125Lv》と表記された。その表記を見て、思わず噴出してしまった事を覚えている。SSGのレベル上限は70で、10Lv以上敵とのLv差があるとかなりきびしくなる。一番強いモンスターでも80レベル前後で、頑張れば勝てる程度の難易度のモンスターだったが、これは……骨が折れそうだと、そう思いつつ俺のPCフリードは剣を構えてイクリプス・ドラゴンと対峙した。回復アイテムを全て使い尽くし、MPも尽きた俺のキャラはイクリプス・ドラゴンの炎ブレスを受け、HPを全て失った。俺一人の攻撃力では、イクリプス・ドラゴンのHPの1割も削れなかった。

 その後、最強のラスボスに挑むパーティがあったがクリア報告はされなかった。もしかしたらクリアしたパーティもあるかもしれないが、引退した俺には関係無い話だ。


「でも……どうしてこんな所に壁画が?何か意味があるのかな……」

「考えてても仕方ねぇ、とりあえず先へ進もうぜ」


 カミナは先に歩き始める、俺はしばらく意味深な壁画を眺めていたがカミナの呼びかけにより俺は先に進んだ。



「お、空洞に出たみたいだな」


 カミナがたいまつの炎を消しながらそう言った。先には蒼い光が見える、そこに辿り着くと中は巨大なドーム状になっていた。天井の穴から外の光が幻想的に差し込んでくる。


「わぁ……!」


 俺は思わず驚嘆と感動の声を上げた。この空間は知っているし、モニター越しには何度も見た光景なのだが……先ほどの迷宮入り口といい、やはり現実と言う物を痛く痛感させられる。ここはボスの部屋、迷宮のボスの名前は《クロウ・ウルフ》、大きな爪と牙による攻撃を得意とする巨大な狼モンスター。初心者の壁として、更にSSGでも最もいい調整を施されていたボスだと思う。


「さぁて……ボスの登場か?」


 何処か楽しそうにそう言うカミナ、俺はちっとも楽しくない。緊張して変な汗をかいてしまうし、心臓の鼓動も呼吸も速くなる。


「落ち着けフリード、たかがクロウ・ウルフだ。落ち着いて戦えばきっと勝てるはずさ」

「そ、そうだな……」


 深呼吸をして、背中の剣に手を伸ばし思い切り引き抜く。金属音がドーム状の空間に響き渡る、俺とカミナが空間に足を踏み入れた瞬間、異変が起きた。



 ―グギャアアアアアッ!!



 獣の悲痛な断末魔の悲鳴が聞こえた、俺とカミナは思わず身構えるが……何か出てくる気配すら感じない。


「なぁ、今のってクロウ・ウルフを倒した時の咆哮に似てないか!?」

「……フリード、気をつけたほうがいいかもしれねえ」


 嫌な予感がする。そういいながらカミナは背中の剣を抜いて構えた。

 この迷宮の食物連鎖の頂点はクロウ・ウルフだ、雑魚モンスターにやられるようなボスではないはずなのだが……。


「ま、まさか……」


 思い出した、理由を。俺達がこの迷宮に足を踏み入れた理由を。

 嫌な汗が額だけでなく、全身万遍なく出てきた。グローブの下の手に手汗が滲んでくる。鼓動が更に早くなる。

 

 ―ズシン


 大きな地響きと共に、天井の穴から蒼い光を纏ったモンスターが現れた。見たこともないモンスターで、馬に似た4mほどの体躯、頭には角が生えている。リアル知識で言うと幻獣ペガサスによく似ている。

 隣のカミナが、顔を真っ青にしてそいつを見ていた。


「フリード……アイツの情報、見てみろ……」


 俺は恐る恐る、目を凝らしてそのモンスターを見た。すると情報ウィンドウが音もなく現れる。





《背徳のヴァルシオン Lv158 幻獣 》





 我が目を疑った。最終ボスのイクリプス・ドラゴンをも凌駕するレベルに、初めて見る幻獣と言う種族。


「な、名前が……!」


 固有の名前、今までのモンスターには無い二つ名のような名前がついている。おかしな名前っていうのはこういうか、という余裕な思考ではいられなかった。全身をビリビリと包む緊張感に、身が固まってしまった。背徳のヴァルシオンは俺達を見つけると、物凄い速さで突進を仕掛けてきた。


「逃げろぉ!!」


 俺がそう叫ぶと、背徳のヴァルシオンに背を向けて、俺とカミナは迷宮の通った道を疾駆した。



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