雨天
「雨って、いいよね」
彼奴が突然言い出した。
空はどんよりと曇っていて、大粒の雫を落としていた。
其の空を眺めながら、俺の隣に居る俺より少し背の高い〝彼奴〟はそう言った。
「急になんだよ」
「ふと、そう思っただけ。雨って良いなぁって。」
「へぇ」
「君もそう思わない?」
「別に」
俺は彼奴を横目に見ながら、彼奴に聞こえないように、雨は嫌いだ。そう呟いた。
彼奴は楽しそうに、大粒の雫を落とす、灰色の雲を見ながら口遊んでいた。
なんで。
「ん?何か言った?」
「ナンデ、雨が良いんだよ。どうせなら、晴れてた方がいいだろ。」
彼奴はニッコリと、作ったような笑顔で
確かにね。
と呟いた、俺は彼奴の作っような笑顔が大嫌いだった。
「確かに、晴れてた方が良いかもしれない、けど。私は雨が好きなんだ。」
弾むような声で、そう、彼奴は言った、相変わらず彼奴の視線は空だった。
俺は彼奴とは逆に視線を落として、地面に溜まって行く雫を眺めた。そんな、昼下がり。俺と彼奴で雨に少し濡れた服を乾かしながら、雨宿りしていた。
「扨、そろそろ時間かなぁ?雨も止んできたし、服も乾いたからね」
暫くして彼奴がそう言った。
目線を上げると空はどんよりと曇っているものの、雨は小雨程度になっていた。
「そうだな、仕事に戻るか」
「そうだね」
そう言って歩き出す
「矢っ張り、晴れてた方がいいじゃねぇか」
俺はボソッと呟き、歩を進めた。
空は灰色の雲の間から微かに、オレンジ色の光が差し込み。遠くの空は朱色に染まっていた。