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第一章_05

 俺たちはさっきの小屋、もとい藍先輩の家に集まる。元物置だった小屋を改築して自分の家にした、らしい。今年の春休みのことらしいから、俺はそもそも入学してないし、よく事情は知らない。ただ学園長先生は許可したらしい。正式な許可証が神棚に飾ってあり、たまに藍先輩が手を合わせているのを何度か見たことある。


 この家は改築、というよりはもともと物置の大きさしかなかったために増築したといってもいい。ワンルームでバストイレ別、ロフトつきという、なかなかの上物件。水道、下水、電気関係の工事もしっかりしていて、生活するのに不自由ない。


 ここでわれわれハント部は活動している。……とは、いっても。


「ゆーさく! さぁ、コントローラーを持て! ゆーさくからあたしへのリベンジマッチだ!」


「本人のやる気のあるなしにリベンジ挑むの決定!?」


 だいたい遊んでいる。そもそもこの部活の活動目的が曖昧すぎて具体的に何をすればいいのかよくわからないのが現状。


 部活動の目的、それは、


 『妖精を捕まえる』(部活案内の手引き参照)


 所属してから一ヶ月。具体的に妖精を捕まえるような行動はしていない。だいたいゲームとかして遊んでいる。しかも徹夜で。ていうか妖精ってなんだよ。


 俺は何でこの部活に入ったのか。それは簡単。この学園は部活動に所属することが義務付けられているからだ。しかし、この学園は中高一貫とはいえ、全生徒二〇〇〇人以上を擁する巨大学園。個性もさまざま、やりたいこともさまざま。そのため自由な部活動の設立が学園長の下支持され、こんなよくわからない部活も活動できている。


 それに俺はちょっと人が苦手。だから人が少なく、活動場所が人が多くないところで、しかも意味のわからない部活を選んだ。部長が変人奇人、という噂を聞いていたが(もちろん直接人から聞いたのではなくA君からB君に話している内容を立ち聞きしたのだが)、この際どうでもいいか、と思った(その実、部活が乱立しているために辞書並みに分厚い手引きを読むのを最初から諦め、適当に開いたページから前後から適当に選んだのがこの結果)。


 実質、先輩二人はちょっとずれている気がしたし、後輩なんかも率直に言うと変だ。でも俺がここに居続ける理由は、それでもなんとなく居心地がいいのだ。……まぁ、絶対に口にしたりはしないけどな。


「そんなことより藍先輩、いつまでそのロビンフッド? のコスプレしたまんまなんですか?」


「おっと、忘れてたよ!」


 そういってテレビの前に座ってゲームの準備をしていた先輩は立ち上がってクローゼットの前まで小走りで駆けていく。


 北村藍先輩。奇人変人で有名人。学園長に気に入られてて何かと融通が利いてしまう。小柄でこまこました感じなのだが、何かとスケールがでかく(身体つきが特に)、やること成すこと半分くらいの確率で問題、ないし騒ぎになる。住処をこの小屋に移してからは落ち着いているらしいが、俺は単に認知されなくなっただけだと思っている。


「ゆーさく、こっちみちゃ、だめだよ?」


「マントと帽子取るだけでしょ!」


「悠作、飲み物」


「少しは自分で……いやー、入れさせていただきます!」


 妙な演技の入った藍先輩に突っ込みを入れつつ、駿平先輩にパシられて(さっきの画像を見せびらかしながら)、俺は仕方なくコーヒーを入れる準備をする。もうすでにこの作業は幾度となく繰り返されており、他人の家のキッチンであろうと勝手がわかっていた。


 木山駿平先輩。もうここまでのやり取りでわかるとおもうが、俺の天敵。奇人変人である藍先輩に理解のある数少ない人間。どんな相手にもやさしく接することからこの学園での人気は超絶に高い。まぁ、念を押しておくと俺の天敵なのだが。


 ちなみにこの学園の名前は木ノ山学園という名前だが、先輩とは関係ないそうな(本人談)。


「そういえば、紅葉のやつは今日来ないんですか?」


「今日は来ないって」


 お湯を沸かしながら俺は問いかけ、藍先輩がそれに答える。まぁだいたいいつも居ない気がするけど。


「あたしが依頼したハントツールを作ってもらっているのだよ!」


「またろくでもないもの作らせてんじゃないだろうな」


 駿平先輩がお菓子を食べながら漫画を読み始める。


「あたしたちにとって必要なものだよ!」


「ちなみにどんな依頼を出したんですか?」


「なんか役に立ちそうなものを頼む!」


「絶対ろくでもないものができそうですね」


 漫画に集中し始めた駿平先輩は一言もしゃべらず、主に俺と藍先輩で会話が広がる。


「具体的なオーダー出してないんですか?」


「うん、ほんとにさっきのせりふのままいったよ」


「また困るオーダーですね」


「そう? 一緒にゲームしてたときに言ったんだけど、即答で返事くれたよ!」


「まじですか」


「負けたままではいられないので、勝つためにツール造ってきます、とも言ってた」


「それハントする気ないですよね? むしろゲームする気満々じゃないですか」


 ため息をつきながら、俺は自分を含めた人数分のコーヒーを持って部屋のローテーブルへと持っていく。


「ありがとー!」


「さんきゅ」


 先輩それぞれ感謝を口にして各々の作業、藍先輩はゲームの立ち上げに戻る。


「それで、今日は何する予定なんですか?」


「特に決めてない!」


「じゃあ帰っていいですか?」


「だめだよ!」


「何もしないんですよね?」


「特に決まってないだけで何もしないとは言ってないよ!」


「だから決まるまではゲームをしよう、と?」


「なんだ、わかってんじゃん!」


 強引にコントローラーを持たされ、強制的にひげのおっさんが動く横スクロールのレトロゲームを、協力プレイでやらされる。


 同じゲームなら帰ってレベリングしたいなー。


 という言葉を諦めと一緒に心にしまった。

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