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第一章_03
靴を履き替え、いつもの活動場所に向かう。
「今日何するかとかって聞いてます?」
「いーや、知らんな」
すれ違うたびに手を振ってくる女子たちに対して、いちいち手を振りながら先輩が答える。そういう状況に、俺が注目されてるわけでもないのに、居心地の悪さを感じる。
「お前も手、振ってみたら?」
ほんと惚れ惚れするような爽やかな笑顔(もとい、悪い顔。なお、以下、爽笑)。
「遠慮しときます」
俺はイライラを紛らすようにスマホのアプリを立ち上げる。
「おいおい、歩きスマホはだめだぞ」
「何で急に真面目なんすか」
「俺はいつだって真面目だ」
爽笑。
「悪い顔してるのに」
「そう言うのはお前だけだ」
「じゃあこの俺が感じてる気まずい雰囲気をどうにかしてください」
「それは無理だ」
爽笑。
「……確信犯」
俺はなおもゲームをしようと視線をスマホに戻すも、ふと周りの視線に気づく。その視線は、「歩きながらスマホいじってんじゃないわよ、駿平様も仰ってるだろ」と、言っている。俺の曲解だが。
スマホをしまって、代わりに文庫本を出したのは言うまでもない。