第一章_02
「駿平先輩」
「何だ?」
「こういう連絡だったらケータイでいいでしょ」
「えー。だってああいうときのお前の反応、面白いんだもん」
そういって駿平先輩はまた爽やかに笑う。
「あーあ、みんな騙されて可哀相に」
「騙されて、とは人聞きが悪いな」
「だってそうでしょ。悪巧みしてればしてるほど爽やかに笑うなんて、ある意味詐欺です」
「しょうがないだろ、そうなっちゃうんだから」
先輩は爽やか笑顔を継続中。
「…………」
「まぁ、いいじゃないの。俺は楽しい、周りは幸せ。ほら、誰も損してない」
俺がしてるっつーの。
声に出さずに反論する。言ったところでまた爽やかな笑顔を振りまいて終わるだけだし。しかも先輩は自分のそういう癖をよく知ってる上で、うまいこと利用して楽しむ。
あーあ、憎たらしい。
「どうした、元気ないな」
「誰のせいですか」
思わず諦めのため息が出てしまう。
「あ、そういえば運ぶ荷物ってどこにあるんですか?」
「え? そんなもんないけど?」
「ホント、あんた何しにきたんだよ!」
先輩だろうと関係ない。俺は容赦なく鞄を振り回して当てようとするが避けられて空振り、先輩はそんな俺を見てからからと笑いながら昇降口へと走っていく。俺は息を荒くしながらも先輩の背中を睨むが、周りの女子の視線が攻撃的なのを察して、一気にクールダウン。冷静を通り越して気分は氷点下まで下がるも、とぼとぼと先輩の後について昇降口へと歩く。
もしここで部屋に帰ったところでまた妙な嫌がらせをしてくるに決まってる。俺はおとなしく部活に出ることにした。
さらば、レベリングよ。また会う日まで。