序曲
師走の始め。
この世界をまた白銀の世界にした雪達はまだ降り続けている。
まがまがしい大きな鍋のなかには、
緑色のスープといえば嘘になる、緑の液体が半分入っていた。
近くの棚と少しの遠くの棚から材料を持ってくる。
持ってくるといっても一瞬なのだが.......。
「おい、コユキ。手伝え。」
中に水と材料があり、少し藻がはったビンの蓋をあける。
「わかりましたお母様。」
その中の水に浸かっていたまだ生きてる半熟ガエルを鍋に放り込む。
「.....その呼び方、やめてくれといってるだろう。」
近くに来た少女をあきれた顔で見る。
いつも私が毎朝している左右にぶら下がった茶髪のミツアミ。
細く白い、あまり肉がついていない顔には、
大きく見開かれた清んだ青い瞳とスッとした鼻、
プルんと効果音が付きそうなほどの赤い唇。
『さすがあの子の子供だな。』
と時々思った。
「いいんです。お母様がいなければ私はもういませんから。」
コユキの母親は私の家の近くにこの子を手放した。
それから一年はコユキは一人で必死に生きた。
そこでとうとう栄養不足で倒れていたところを私が助けた。
「......コユキ、書斎の魔道書の12番を持ってきてくれ。」
「はい。」
その頃から4年。
もう彼女は明日、14になる。
拾った時に元々魔力があることがわかった為、
4年の間魔法を少しでも覚えさせた。
「タンカーレラ」
隣で呪文を唱えたコユキの手にはもう頼んだ通りの魔道書があった。
「はい、お母様。」
「ありがとな。」
この子の母親の名を聞いたことがある。
だかその名前は知っている人の名前だったのだ。
『パチェシル』
私の大切な__________
元、親友。




