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魔法を持たぬ者、異世界で最強と呼ばれるまで  作者: Mr.Raffi
異世界への呼び声
2/2

選ばれし者、拒絶されし者

召喚された男の名は、レイヴン。

ステータスは最強クラス…だが、たった一つの“ゼロ”が、すべてを狂わせた。

勇者と呼ばれたその瞬間から、彼の運命は転落を始める――。

...すべてが変わった。


気づけば、レイヴンは豪華な広間の中央に立っていた。まるで英国の貴族の屋敷にあるような荘厳なホールだ。さっきコンビニで買ったエナジードリンクは、跡形もなく消えていた。


彼の周囲には、見知らぬ者たちが取り囲んでいた。香水の匂いが漂い、気品あふれる装いに身を包んだ人々。なかには、神官のようなローブと帽子をかぶった者もいる。その中で、特に目を引いたのは、金髪で青い瞳の少女だった。


「この者が、予言された勇者……?」


「想像以上に…ハンサムじゃない?」

貴族風の女性が隣の友人に囁いた声が、レイヴンの耳にもしっかり届いた。


レイヴンはただ茫然と立ち尽くし、周囲を見回す。理解が追いつかず、思考は混乱していた。


その時、先ほどの神官の少女がそっと近づき、優しく彼の手を取った。


「勇者様。ステータスの確認をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


その笑顔はあまりにも温かく、目元までやさしく微笑んでいた。レイヴンは思わず頬を赤らめた。


少女は手のひらに青いクリスタルを取り出し、それをレイヴンの手にそっと触れさせた。


すると――


空中に見知らぬ言語の数字と文字が浮かび上がった。


だが、なぜかレイヴンには意味が理解できた。



---


パワー   :100


知力    :150


スピード  :100


耐久力   :200






「この数値…聖騎士クラスのステータスだぞ!」


ホールのあちこちから感嘆の声が上がった。


しかし、すぐ後に表示されたのは――





マナ    :0






その瞬間、場の空気が凍りついた。


「な、なんだこれは!?」 「マナがゼロ!?」 「これじゃあ…役に立たないじゃないか!」 「魔物に対抗できるわけがない!」


嘲笑と怒号が一斉に響いた。


レイヴンは呆然と立ち尽くし、胸の奥に冷たい現実が突き刺さる。


そのとき、一人の老王が玉座から立ち上がった。


「全員、黙れ!」


重々しい声がホールに響き渡る。


「神官よ、召喚に失敗はあったのか?」


「い、いえ…陛下。儀式はすべて正常に完了しました…」


「ふむ……ならば、これは――失敗作だ。」


老王は冷酷に言い放った。


「この者を、都市から遠く離れた最も危険な地へ送り捨てよ。精霊と魔物が徘徊する森にだ。もし生き残れたなら、それでよし。死ねばそれまで。」


「はっ! かしこまりました!」


すぐに数人の兵士がレイヴンを拘束し、ホールから引きずり出した。


黄金の彫刻が施された大扉を抜けると――


まぶしい日差しが彼の目を射抜いた。


「……昼間?」


さっきまでは夜だったはずだ。だがこの世界は、まるで時間が違うかのように明るかった。


空気は軽く、どこか魔法の香りが漂っている。異質で、しかしどこか心地よい温もりを持っていた。


目の前には、金で縁取られた巨大な柱と、美しいステンドグラスのある城がそびえ立っていた。壁にはこの世界の歴史を語るような、勇者やドラゴン、神々の彫刻が刻まれていた。


あまりの変化に、レイヴンの思考は限界を迎えようとしていた。


だが、それよりも――


「おい、離せよ、このクソ野郎ども!」


彼は怒鳴り、腕を振り回すが、兵士たちはびくともしない。いくらレイヴンが格闘技の達人でも、五人がかりで押さえつけられては身動きが取れない。


そのときだった。


先ほどの神官少女が、小さな袋を抱えて駆け寄ってきた。


「待って! これだけでも彼に持たせてください!」


その袋の中には、金貨10枚、小さな短剣、そして回復ポーションが入っていた。


「な、なんだお前は!? 近づくな!」


兵士が制止しようとするが、少女は懇願した。


「…お願いです、一度だけでいいんです。これだけは…!」


「ふん、交渉の基本は金だ。50枚でどうだ?」


兵士の一人がにやりと笑う。


少女は迷わず金貨を差し出した。


「……いい取引だな。」


金貨と引き換えに、袋はレイヴンへと手渡された。


そのすぐあと、彼を乗せた馬車が、森へ向かって静かに出発した――。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

勇者として召喚されたレイヴン、しかし彼を待っていたのは“祝福”ではなく、“追放”。

次回、未知なる森でのサバイバルが始まります。果たして彼は生き延びられるのか…?

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