最強格闘家、スパーリングの帰り道で異世界へ
こんにちは、はじめまして!
この物語は、UFCで無敗記録を持つ最強格闘家が、ふとした瞬間に異世界へと召喚され、魔力ゼロで「役立たず」と烙印を押されながらも、自らの拳と頭脳で世界に立ち向かう物語です。
本格バトル、ブラックユーモア、そして少しの感動をお届けできればと思っています。
異世界でも強さは魔力だけじゃない…というところを見せていきたいです。
どうぞ、よろしくお願いします!
「ボム!パァク!パァク!ウーシュ!」
熱気に満ちた道場に、打撃と受けの音が響き渡る。ゴムマットが敷かれた床の上で、レイヴンは師範に向かって連続攻撃を繰り出していた。
素早いジャブを左から打ち込むが、難なく防がれ、回し蹴りすらも簡単にいなされてしまう。
しかし、師範が反撃として放ったスピニングエルボー(回転肘打ち)を、レイヴンは素早く身をひねって回避する。
「この戦い…まるでアクション映画のワンシーンだな!」
マットの端で見ていた一人が、興奮気味に声を上げる。
その場にいる全員の視線が、世代を超えた二人の格闘家に集中していた。
「まったく、うちの弟子はすごいもんだ」
師範は満面の笑みを浮かべ、今度は90度の回し蹴りをレイヴンの頭めがけて放つ。
「いえ、師範の方こそすごいです。僕の攻撃、ほとんどすべて防ぎましたから」
レイヴンはそう言いながら、笑顔でそれをかわす。
彼はそのままローキック(足元への蹴り)を繰り出し、師範のふくらはぎを叩いた。
その一撃の強さに、道場の他の生徒たちも思わず動きを止めて振り返る。
師範はそのままマットの上に尻餅をついた。
「うっ、ごめんなさい…ちょっと本気出しすぎました。スパーリングのつもりだったのに」
レイヴンは近づき、手を差し出す。
だが、彼が助けようとしたその瞬間――
師範は座ったまま足払いを放ち、レイヴンを倒すことに成功した。
「はっはっはっ! まだまだ修行が足りんぞ、若造!」
師範は白いヒゲを揺らしながら大笑いし、倒れたレイヴンに手を差し伸べた。
「おいおい! 助けてやろうとしたのに倒すなんて、卑怯ですよ!」
レイヴンは不満げな顔をしながらも、差し出された手を取った。
「まぁまぁ、たまにはワシだって一発入れたいんじゃ。お前さんはUFCの選手で、250勝無敗じゃろう? いつも避けられてばかりでつまらんのじゃ」
師範は満足げに笑う。
「それがどうしたんですか…はあ、もういいです」
レイヴンはぼやきながら、「約束通り、僕が一回でも倒れたら僕のおごりですよ。師範が二回倒れたら、そっちがおごりです」と言う。
「本当に不公平なルールだよ…」そう思いながら、レイヴンは頭をかき、道場を出て、向かいのコンビニへと向かった。
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その夜、街はにぎわっていた。
オフィス帰りの人々や通行人たちが、青信号を待っている。街の灯りがきらきらと輝いていた。
「プーッ!」
信号が青に変わる。
レイヴンはゆっくりと横断歩道を渡り、「MINIMARKET JAYA」と書かれたミニマーケットに入っていく。
エナジードリンクを二本手に取り、レジで会計を済ませると、自動ドアが静かに閉じた。
しかし、彼が歩道に戻ろうとしたその瞬間――
街の喧騒が急に遠のき、代わりに四方八方から驚きの声が響く。
まばゆいほどの光がレイヴンの目を照らし、彼は目を開けられなくなる。
そして――
すべてが、変わった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第0話は、主人公ヴァレンの現代から異世界への転移を描きました。これから彼がどんな冒険に巻き込まれていくのか、ぜひ楽しみにしてください。
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次回もよろしくお願いします!