まひるの恋
紫式部の純愛物語です。
彼女は物語を書いていた。
想いを寄せる君をモデルとした恋物語である。それは彼女から見た君の姿であり、君を通して見た世の中の恋模様でもある。
そんな彼女に惹かれた君は
想い人《=恋人》がいるかどうか確かめようと、さりげなく和歌を詠んで送った。
彼女は、恋人などいないので
そんな人はいませんと歌にして返した。
ならば想いを伝えるしかないと思った君は
ある晩、彼女の部屋を訪ねた。
彼女はというと、
君が訪ねてくれた晩、こんな夜更けに一体誰が来たのかと怯えたえたものの、もしや君かもしれないと思ったら、やっと想いが通じたと涙を溢して喜んだ。
けれど扉を開けることはしなかった。
案の定、翌朝送られてきた和歌をみて君が訪ねてきてくれたことを知った。
本心では、ずっと待ち焦がれていた想い人だ。駆け寄りたい気持ちをぐっとこらえ
気紛れなあなたのことを受け入れたら、きっと後悔するでしょうと歌にして返した。
彼女は、恋愛というものを良く分かっていた。
恋と言う名の花が咲くのは、ほんのいっ時のこと、咲いてしまえばあとは散るばかりなのだと。そうなれば自分はきっと嫉妬する生き霊になってしまうかもしれないと想像できた。
だから、そんなことになるならば今のままの関係でいた方がいいのだと悟った。
彼女が何故書き続けられたかというと
それは、
“わたし“の想いを伝えたいから。
“わたし”の想いを物語にして、君に受け取って欲しいラブレターなのだから。
君が読んでくれるから、私は書いていられるの。
だから、ずっとずっとそばにいて。
了