捕まらないストーカー
「本当です! 後ろから確かにつけられてるんです! 早く捕まえてください!!」
「あそこの防犯カメラは全て確認しているのですが、怪しい人物は映ってないんですよ」
「防犯カメラの映像を操作されてるとか? そういう可能性は?」
「いやぁ……。あの辺一体のパトロールは強化しておりますので……」
これではまるで、わたしが虚言癖のある女ではないか。
警察は事件が起きてからしか動かないというが、まるでそうだ。
呆れたもんだ。自分の身は結局、自分で守るしかない。
× × ×
今日は残業で、いつもより遅くなってしまった。
余計に気分もすぐれない。
早く帰ろう。
ん…?
まただ。
誰かにつけられているこの感覚。
気配からして、あの男。
いつもと違う時間なのに?
まさか、わたしが通るこの時間までここで待っていた!?
あいにく会社の帰り道、家に帰るにはどうしてもこの一本道を通るしかない。
男は、わたしの歩くスピードに合わせるかのようで、わたしが止まると足音も止まる。
ゾっと、寒気がした。
わたしは一歩を大きくし、早歩きで我が家を目指した。
後ろから近づくその気配と足音も、つられるように加速していく。
わたしは意を決し、振り返った。
「キャーー!!」
どおりで、犯人は防犯カメラに映らないはずだ。
そして、きっとこのストーカーは、この先も捕まらない……。
そして、その表情すらも窺うことはできない。
目の前には、足から下しかない人物が立っていた。