7.
帰りの馬車でアイリスはしょんぼり、ジュノはちょっと嬉しそうにしていた。と言うのもジュノは、宝石店でアイリスをきちんと守れた事をセフィロスに褒められたのだ。
今は御者台の方へノクトと一緒に乗り、馬車馬の操作の仕方を習っている。
一方アイリスはと言うと、たった半日お出かけしただけだと言うのに3回も変身が解けてしまった。自分の不出来さに心底悲しくなってくる。
「アイリス、そんな顔をして楽しくはなかったか?」
「いっ、いえ。そんな事はありません。見るもの全てが新鮮で楽しかったです。それに、セフィロス様とこうして一緒に出掛けられて、楽しくなかったわけありません」
「それなら何故、元気のなさそうな顔をする」
「何度も術は解けてしまうし、世間知らずな上、余計な事も言ってしまったようですし……」
「世の中のことが分からないのは、今日はじめて自由に外を出歩いたから。さっきの宝石店での事は、あの天使の身から出た錆だ。アイリスのおかげであの店にいた客は、偽の宝石を買わずに済んだのだから落ち込むことなど無いだろう。天使には正しく生きて欲しいと思うが、なかなか上手くいかないものだな」
ふっ、とセフィロスが軽くため息をつくとアイリス、ではなく、イオアンナの姿に変身しなおしたアイリスを見る。馬車の中なので元の姿に戻っても良かったのだけど、服のサイズが合わないので変身することにした。
「気持ちが揺らいだり、意識が別の所へ集中すると術が解ける。根底にあるのは恐らく……アイリスは変身をしていると、皆を騙しているような気分になるのだろう?」
「……はい」
「ネプチューンの言う通り、其方には変身は向いていないようだ。外出する時はこれまでのようにローブを着ていくように」
「分かりました」
「これからは風の天使がアイリスの家の物を買い出しに行く時は、虹の天使も1人ずつ同行させるようにしよう。社会勉強にもなるし、虹の天使ももっと外へ出たいだろう」
「そうですね。よろしくお願い致します」
「それからアイリス、今度私の神殿へ来てみないか?」
「え? 風の神殿にですか?」
「短い期間泊まるくらいなら其方の神気に当てられることは無いだろう。もちろんアイリスには滞在中、神気を極力抑えて貰うことにはなるが」
「は、はいっ! 是非行かせてください!」
「元気が戻ってきたみたいだな」
セフィロスがアイリスの頭をそっと撫でて笑う。
色々と凹んでいた気持ちが全て吹っ飛んでいってしまった。セフィロスがアイリスの心に吹かせる風は、いつも温かく不安や憂いを取り除いてくれる。最良の癒しの風だ。
【今日の戦利品】
図書、オクラ、オクラの花、リンゴンベリー、唐鍬、平鍬、三角ホー、鋤、ふるい、小さめのジョウロ、枝切り鋏




